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それからの体育の授業は、不思議なことに彼女と一緒になることが多かった。
週に何回かある体育で、お互いに最後まで余り、二人組になることが続いた。
最初は偶然かと思ったけれども、次第にそうではないと感じてきた。
私は性格の都合、人をそんなに引き寄せない。湖水さんは自分から話すのが苦手なタイプ。両者の共通点は対人関係が好きではないこと、だろう。
彼女のことを知る余地はあまりない。ただ、なんとなく親近感は沸いていた。
今日も彼女と一緒に体育の授業を進めていく。
ふとした時間に、湖水さんに問いかけてみた。
「……私と一緒にいて、面倒だとか思わない?」
ぶっきらぼうだとかなんとか言われることが多いから、それだけが心配だった。
「特にそう言ったことは思ってないです……」
相変わらず、物静かな声で彼女はそう返答した。
その後も、何か言いたそうに悩んでいる。
「言いたいことがあるなら、言ってもらって構わないわよ」
「え? えっと、その……」
少し急かしてしまう形になってしまったか。
若干忍びない気持ちになりながら彼女の次の言葉を待つ。
すると、言葉を悩ませながら湖水さんが言葉を繋げてきた。
「……強いて、思ったことを言うならば……歌詫音さんって、怖い方じゃないんだなと思いました」
噂が尾を引いていたのか。
怖い対象だと思われていた時期もあったみたいな言い回しだ。
「変な噂を流されていただけ。別に怖がらせようとは思ってないわ」
「……どうして、怖がられるのでしょう」
「それは」
すぐに答えようとしても、言葉が思い浮かばなかった。
理由は単純で、言葉足らずみたいなものがあるから。反論していないから。これらがあげられるだろう。
ただ、それだけを返答するのは、少しだけ違うと思った。
……だから、言葉を選んで返す。
「言葉数が足りてないだけ」
「言葉数、ですか」
「それと他人と関わるのが面倒だから、変な噂が立てられてもどうでもいいと思ってる。怖がられたって構わないなんて考えてるから」
思い浮かぶ理由を端的に説明していく。
「どうでもいいのよ、他人と関わることなんて」
「どうしてですか?」
「他人の様子を見て、自分の意見を話せなくなることとかは多いし、グループによってはなあなあの態度で馴れ合いを要求されることもある。全部、めんどくさいの」
珍しく喋っていると思った。
内心を打ち明けている気がした。
湖水さんがグループに属していない存在だからこそ言えたことかもしれない。
「……今のは聞かなかったことにして構わないわ」
少し熱くなりすぎた。そう思って、忘れることを促す。
すると、湖水さんは首を横に振った。
「多分、忘れることはできないと思います」
「そう、残念ね」
「……ただ、話し相手にはなれるかもしれません」
「……どういうこと」
「その、放課後、一緒に帰ってみませんか……?」
勇気を出して、そう言葉にしていることは態度からも見て取れた。
私を相手に、帰ろうなんて言う人、そうそういなかった。
だからかはわからないけれど、私自身彼女に興味を抱いた。
「……そこで話せることがあるなら、それでも構わないわ」
「わかりました、ありがとうございます……!」
嬉しそうな表情。
もしかして友達が欲しかったのだろうか。
……だとしたら、随分な変わり者だ。私と一緒に帰りたいなんて。
会話をそこで終わらせて、改めて体育の時間に打ち込んだ。
今回はそれなりに動けたからよかったと思う。




