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荒くれ騎士の嘆き歌  作者: OWL
第三章 都落ち(1428~1429)
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番外編:諸家さまざま

 アイラグリア家の当主ヴィキルートは長男を既に後継者と定めて選挙戦の準備を始めていた。


「ヘンルート、お前には諸皇家の思惑がわかるか?」

「いえ・・・愚鈍な私にはまったく思いもおりません」

「ここに他者の目は無い。好きに意見をいっても良い」


ヘンルートは尚も意見を固辞したが、三度求められてようやく口を開いた。


「父上、暗殺教団の追跡に失敗した我々は近いうちに諸家より批判されて内務省の実権を奪われます。その前に帝都から私兵を退去させて諸家に治安維持を任せるべきです。然れば諸家は睨みあい、我らを追及する手を緩めるでしょう」

「500万にも達する帝都の臣民と要地を自ら放棄するとは思い切った事を言う。弱みを見せれば乗じられ滅ぼされるのが世の習い。我が家を滅ぼしたいのか」


近衛兵団に叛逆の疑いがあり、現在もなお帝都防衛軍団に監視され帝都はトゥレラ家とアイラグリア家の私兵によって統治されている。

全大陸に散らばる軍団に対して転移陣で即時、命を発する事が出来る帝都を放棄するというのは惜しまれた。


「弱みではありません。教団は散り散りになって諸外国へ逃げました。我々はその追跡の為、私兵を遣わせるのです。帝都に乱あらば諸家の罪を問い我が軍を戻します」

「乱が無ければ」

「重畳な事かと。官僚達は無用な兵の退去を願うでしょう」


乱の無い事が文官武官の摩擦を招くとヘンルートは予測した。


「乱があればお前の身が危うくなるのだぞ」

「帝都に軍を進める口実となさいませ」


 ◇◆◇


「バンスタイン。お前は諸家の動きをどう思うか」


武門の誉れ高いオレムイスト家の当主は息子に意見を求めた。

ひと昔前は大いに蛮族と戦い、軍務省の中で高官の地位を独占したがマッサリアの災厄において次々と失態を繰り返し、軍で横領を行う者も出た為今は公職から一族の者を退かせている。


「諸家の動きなど気にする必要があるでしょうか」

「と、いうと?」

「神帝スクリーヴァが神々から人類を統御する役割を任せられたのはその時、もっとも力があったから。イシュトヴァーン帝がサガより帝位を推戴されたのも同様です。我々はただただ力を示すのみ。さすれば帰順するものも増え我々の力は多いに増すでしょう」

「単純だが真理ではある。しかし、いったい何処で力を示すべきか」

「北です。アル・アシオン辺境伯は領土の半ばを蛮族に占領されて奪還を求めています。帝国の為に彼はマッサリアに救援に赴き自領を失いました。我々が全軍をあげて奪還に動けば彼も感謝するでしょう」


 ◇◆◇


 センツィア家の当主メチェナは間諜の報告を息子達にも見せ意見を求めた。


「さて、お前達。我が家には武力も財力も無い。しかし高祖サピエンティウス以来700年我が家が生き残ってこれたのは何故だと思う?」

「「知恵に勝る力なし」」


三人の息子達は同時に家訓を唱和した。


「そうだ。しかしそれでは生き残れただけだった。我らのように力無き者は屋台骨が無くなれば共倒れしてしまう」

「それはどうでしょうか、父上。屋台骨が無くなれば他の家屋を探せばよいだけではないでしょうか」


息子の言葉に当主メチェナが笑う。


「それも一計だが、さすがにそれは芸が無い。我らは未だそこまで追い詰められてはおらぬ」

「追い詰められてからでは時既に遅いかと」

「窮鼠猫を噛むという言葉もあるぞ」

「我らは鼠では無く人であり、人々の上に立つ皇家であります」


メチェナは呵々大笑して頷いた。


「よろしい。で、あれば今後も生き残る為にはどうすればよいと思うか」


当主は報告書を指してまず長男に尋ねた。


「ラキシタ家については悲観が過ぎますね。フランデアンにはいくつもの問題があり力を減ずる事は可能です。他の国々も伸びようとすれば職工会が足枷になって改革は進まないでしょう」

「フランデアンの力をどうやって減ずる?」

「まずは外堀を埋めます。先のスパーニア戦役以来の同盟国ピトリヴァータ王の娘が蛮族と駆け落ちしたという情報がありそれを追及します」

「カールマーンはフランデアン王と親しい。庇うかもしれんぞ」

「ならば、手を緩める事で両者に恩を得ることが出来て重畳ではありませんか」


頷いて次に次男にも尋ねた。


「フランデアン王と縁戚関係になるのがよろしいかと」

「フランデアン王は選帝侯である。息子はいるが皇家と縁戚関係になるのは拒否すると思うが」

「王には右腕たる従兄リカルド殿がおります。彼には一人娘がいて何よりも溺愛されているとか」

「娘の名は?」

「セイラ」

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2022/2/1
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