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荒くれ騎士の嘆き歌  作者: OWL
第七章 終章 星火燎原
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第3話 友人達②

 コンスタンツィアの現在の居場所は分からなかったが、当日やって来る事は分かった。その日にさらえばいい。しかしナクレスは前日から警備体制が強化されていて要人を招く準備がされていた。


武装した人間は近づけない。


討ち入りして死ぬならせめて彼女の前で死にたい。

彼女に何も知られずに警備と戦って死ぬのは嫌だ。

披露宴の情報が嘘で、彼女がいなかったらただの馬鹿だ。

故郷の城よりも巨大なナクレスは一人では監視出来ず、どこに馬車がやってきて彼女が降りるかもわからない。もっと正確な情報が欲しい。


だが、ノエムやソフィー達をこれ以上巻き込めなかった。

イーヴァル達も。


襲撃は一人でやらねばならない。

自分は明日死ぬ。

それでも彼女の本心が知れればそれでいい。

彼女への愛を知って貰えればそれでいい。

もし、もう一度彼女に愛してると言って貰えるなら満足して死ねる。


街角で雪に振られながらじっとナクレスを見つめ続けた。


「あ、いたいた」


深刻に思い詰めているエドヴァルドの前にノエムがやってきた。


「・・・なんです?」

「ちょっとお話が・・・まあ、来てくださいって」


面倒だが、ヴェーナ市からアージェンタ市まで戻って来てとある事務所で知人に引き合わされた。


「ヴィーヴィー出版?」


看板を見るとそんな名前が書かれている。


「どうぞどうぞ」


ノエムに早く入れと押し込まれた。


 ◇◆◇


「お久しぶり、エドヴァルド君」

「あんたは確か・・・」


前にソラといかがわしい店で会った事がある。


「ヴィヴェット・コールガーデンとかいう」


エドヴァルドはかろうじて名前を思い出した。


「あれ、ヴィターシャさん。そんな名前で活動してたんですか?」

「まあね、ペンネームよ」

「で、何の用です」

「コンスタンツィア様を攫いたいんでしょう?」

「ノエムさん・・・」


喋ったのかとちょっと睨みつけた。


「ソフィーさんに話した時点でこうなっちゃったんですよ」


退学後もヴィターシャとソフィーには親交があり、ソフィーが手を回して調べて貰っていたようだ。


「コンスタンツィア様ほどの影響力がある女性がこのまま結婚して世間から忘れ去られては困ります。良ければお手伝いしましょう」


だから早く帝国から去れと忠告したのに、とヴィターシャは溜息を吐いた。


「じゃあ、どうするっていうんです?」

「私達のような弱小紙では披露宴に招かれませんでしたが、一部の大手は招待されて明後日の新聞で大々的に発表する予定です」

「では、本当だったんですね」

「ええ、ですが披露宴を台無しにしてしまえば予定が狂います」

「延期させたところで事態は解決しません」

「貴女がコンスタンツィア様を連れ出す事に成功すれば私達が議会前で記者会見を開き、貴方との婚約を発表しましょう。それには現場で誰も傷つけない事が必要です」


ヴィターシャは平和的な解決を提案していた。


「どうやって台無しにするんです?」

「婚約披露はナクレスの最上階。翡翠宮と呼ばれている場所で行われます。そこの使用人を買収しているので何か騒動を起こして貰います。貴方は隙をついて連れ出しなさい。確認しますがお二人の結婚の意思に間違いは無いんですよね?そこが崩れると計画の意味がありません」

「僕はそう思ってる。彼女もその筈だ。しかし、握り潰されたりしないのか?」

「コンスタンツィア様は民衆から人気があります。議長とも親交がありますからそうそう潰せません。先に発表してしまえばこちらのもの」

「ほんとうにそれでうまくいきますか?」

「帝国祭祀界最高権威である女祭祀長エイレーネ様に祝福して頂きます。それが最後の決定打です。向こうがコンスタンツィア様の意思を無視して秘密裡に事を進めている以上、先んじて公にして皆でお祝いムードにしてしまえばこっちのもの。しかしこれはコンスタンツィア様に貴方との結婚の意思があるという前提です」

「間違いない。だが、俺は忍び込むとかそういう繊細な手段は苦手なんだ」

「でしょうね。ラッソ達が居てくれれば良かったんですが、贅沢は言えません。出来るだけ装備を貸してあげますからこの先のことは自力で頑張ってください」


ヴィターシャはエドヴァルドにナクレスの設計図、消音ブーツや、暗視鏡、竜騎士が使う噴射装置、鍵縄などを渡した。

ノエムはなんじゃこりゃとつまみあげエドヴァルドに尋ねた。


「使い方わかります?」

「覚えますよ、これから」


ノエムは不安になってさらに尋ねた。


「・・・変装の魔術とか使えたりしないです?」

「僕には無理です」

「コンスタンツィア様なら周囲に暗示をかけて平然と敵地に乗りこめたりしたんですけどね」


ヴィターシャは遭難していた頃、デリアンという同盟市民連合の都市に乗り込んだ事を思い出した。コンスタンツィアは自分だけでなく三人分の姿を偽装させていた。

少女時代と違って今ならあれがどんなに異常な技だったかよくわかる。


「普通に変装して乗り込むなり、地下から忍び込むなり自分の能力にあった方法でうまくやってください」


エドヴァルドは早速ヴェーナ市に戻り、地下の水道施設から侵入を試したがそこにも警備は居た。周辺の建物を観察し、屋上にも登ってみたが、そこからナクレスの屋上まで飛び移るのはエドヴァルドでもやや厳しい。噴射装置を使えばいけるかもしれないが、テストしてる暇がない。

設計図も貰ったが、地震対策の補強工事で改修されたり、拡張工事も行われていたのであまり役には立たなかった。


披露宴は夜。

警備はますます厳しくなり近づけなくなった。


もう時間が無い。

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2022/2/1
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