番外編 蠢くものたち③
「いやはや、皇帝が生きていたとはね。何があったんだい?」
「さあ、儂は知らぬ。ヘルミアの気紛れじゃろう」
「今後も協力していきたいのなら情報は提供してくれないと困るね。絶好のタイミングで皇帝を解放してくれたものだ。君が大精霊に口を利いてくれたんだろう?」
「ふん。なら尋ねるが、アルバートの件はそちらが手を回したのか?」
「無論だ。トゥレラ家を失うのは予定外だったけどね。皇帝が生きていたのなら却ってよかった」
「復讐に燃えた皇帝はラキシタ家やアルビッツィ家の一族を皆殺しにするじゃろうな」
「まあ、公爵夫人は生きてるんだけどね」
「なに?」
「ギィエロが保護したってさ。聞いてないかい?」
「知らんのう。皇帝に教えてやらんのか?」
「僕の知った事じゃないよ。アルバートがクロウリー協会から聞いた話だとなんか彼らもラキシタ家の一族を滅ぼしたい理由があるらしい。それまで皇帝には秘密だってさ」
「ふうむ。あれかのう・・・」
「心当たりが?」
「コンスタンツィアを敵に回して連中がリグリアの怒りを買ったからじゃろ」
「厄介な魔女だね。出来れば君にはリグリアと渡りをつけてほしい。僕らには未知の力と知識を持っていて不確定要素が強すぎる」
「よかろ。それにしても短い天下じゃったな」
「ラキシタ家には退場して貰わないとね。この時代に全土統一に成功した専制君主の誕生だなんて冗談じゃない」
「これでまた各皇家が潰し合う時代に戻ると喜んでおるのかもしれんが経済はガドエレ家一強となるぞ」
「国外事業にシフトしているから出来れば手を組みたいところだね。ま、これで当分はのんびりできるよ。ああ、でも議長やコンスタンツィアさんは邪魔だな」
「議長が?西方人の貴様らとは話が合うのではないのか?」
「そしたら君の同胞は手に入れる土地が無くなるよ?」
「ふむ・・・、確かに邪魔じゃな。だがコンスタンツィアがなんだというのじゃ」
「バンスタインあたりと結婚されては困る。僕との結婚を受け入れてくれれば良かったのにねえ」
「あ奴はミハイルの所に嫁がされるそうじゃぞ。皇家と結びついてしまわなければ放置して構わんじゃろ」
「だが、将来離婚して次の皇妃になる可能性はある」
「・・・・・・」
「止めないんだ?友人なんだろ?」
紳士の問いかけには応えず、小さな蝙蝠が夜空に飛んで行った。




