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荒くれ騎士の嘆き歌  作者: OWL
第六章 死灰復燃~後編~(1431年)
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第24話 異変②

「なあなあイリー。ちょっと相談があるんだが」

「またあ?」


エドヴァルドはノックして半身だけ入ってから入室の許可を求めた。


「うん、またなんだ。すまん。ちょっといいか?」

「どうぞ」


仕方ないなあと入室を許した。


「で、今度は何?」

「お前さ。今幸せか?」

「今、そういう事聞く?情勢わかってる?」

「わーってるって。でも別にうちらに関係ないだろ」


アルビッツィ家は勝ち馬に乗ったようだし、さして表立った活動はしていないし、市民からも好かれておりレクサンデリと親しいイルハンにも心配は無い。


「で、相談って何なの?ボクをダシに使わなくてもいいでしょ」

「いやさ、参考にしたくてな。お前はレクサンデリがこのままキャットと結婚してもいいのか?」

「そんなの仕方ないじゃん。ボクは『王子』だし、子供は産めないし。ああ、で、今は幸せかって?」

「そうそう。今が幸せだったら先の事はどうでもいいのかって」

「一生得られるかどうかわからない幸せが今は得られているんだから何ものにも変えられないよ。ボクの場合今より大きな幸せは得られようがないけどエディの場合、今よりも大きな幸せが得られる可能性はあるからね。我慢すべきか進展させるべきか悩んでるんだ?」

「さすがだな。まあそういうことだ」


イーヴァルも誰かに話すような性格でも無いので別に噂は広がっていないが、居場所を譲ったイルハンは二人の関係が進んだ事を悟っている。


「結婚するとして法務省と紋章院で受理して貰えればいいんだっけ。でも、今の情勢だとすぐには無理だろうねえ」

「当分は伏しておくしかないんだろうけど、出来れば世間に祝福はされたいなあ。彼女に相応しい扱いがあって欲しいし」

「まあ、子供が出来れば結局認めるしかないんじゃないかな。そういうお国柄みたいだし」


順当に出世するにもかなり時間がかかるので急ぐなら既成事実を積み上げ続けて、人々に祝福されるよう日々努力するしかない。


「出来るだけ品行方正に過ごすしかないか」

「そうそう頑張ってね。この国の美徳に合わせて」

「ど、努力しよう」


これまでと違って少しは人前でも親密そうにしてる姿を露出していく事にした。


「エディも変わったねえ。前は男女が人前で手を繋ぐだけでふしだらだ!とか怒ってたのに」

「言うなって」


出歩いても大丈夫そうになったらコンスタンツィアの所に行って今後の事を相談しようと思っていたのだが、男子寮にヴァネッサが訪れてエドヴァルドに面会を求めて来た。


 ◇◆◇


「お姉様が行方不明なんです!」

「どういうことです?」


ヴァネッサがいつものようにコンスタンツィアの屋敷を訪れた所、顔見知りの使用人は全員解雇されており、入館を許して貰えなかった。

いくら粘っても駄目で馴染みの聖堂騎士に会っても何も教えて貰えなかったという。


「じゃ、僕が忍び込んでみましょう」


正面から乗り込んでも駄目なら忍び込んで安否を確認したほうが良いと判断した。

ヴァネッサはお嬢さんなのでさすがにそんな真似は出来ずエドヴァルドが最適だった。


 戒厳令が出されており新聞はトゥレラ家によるシクタレス暗殺未遂を報じた後に発行停止、夜間は外出禁止である。街中に人影はあまり多くない。

さすがに帝都なので物流は維持されておりこんな状況でも人出はある。

トゥレラ家の関係者が次々と捕らえられているようだが、一般市民に特に危害を与えられる事もなくおっかなびっくりながらも市民生活は営まれていた。


屋敷に到着するとさっそくエドヴァルドは周囲を囲む壁を乗り越えて庭に下り立ったが、警報装置が鳴って聖堂騎士達が駆け付けて来た。


「あれ?俺は動作対象外の筈なのに」

「困りますよ、エドヴァルド殿。こんな真似をされては」


聖堂騎士エイヴェルにこってり絞られた。


「あの、コンスタンツィアさんにお会いしたくてやってきたんですが、ヴァネッサさんも面会を拒否されたと聞いて心配になってしまい、申し訳ありません」

「気持ちはわかりますがこんな情勢です。外部の人間とは一切お会いできません」

「俺やヴァネッサさんも『外部』扱いですか?」


コンスタンツィアの窮地を救った事はエイヴェルも知っている筈だと抗議する。


「申し訳ないが、ご当主が派遣された家臣からの命令であり我々は口を挟めません」


家庭内の問題となると踏み込めば迷惑になる。


「彼女は無事ですか?」

「問題ありません」


せめて安否確認だけでもと尋ねたが「大丈夫です。お帰り下さい」と聖堂騎士に保証されるとこれ以上はどうしようもない。全員張り倒して彼女の部屋に押し入ったらただの犯罪者になり、二人の将来は絶望的になる。


これが他人、外国人に過ぎないエドヴァルドの限界だった。


「いつになったらお会い出来ますか?」

「ご当主次第でしょう。我々に聞かれても困るのですよ。もともとそう簡単に会えるような身分の方ではないのです。弁えなさい」


 ◇◆◇


「済みません・・・追い返されました」

「・・・仕方ないです。いつものように暴れなくて良かったです」

「人を何だと思ってるんですか」


すぐに手は出るが、相手が理不尽な振る舞いをしている時だけだ。


「あの、頼みにされておいて申し訳ないんですが、ここは方伯家の内部から探った方がいいのでは?」

「そうですね。そうします」


といってもヴァネッサが知り得る限り方伯家の家臣団は皆、帰国している。彼女の友人達の父も皆同じで詳しい状況を知る者はいなかった。


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2022/2/1
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