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荒くれ騎士の嘆き歌  作者: OWL
第六章 死灰復燃~後編~(1431年)
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第13話 魔獣退治②

 エドヴァルド達は賞金稼ぎも兼ねて魔獣討伐の打ち合わせをする事にした。

場所は学外の喫茶店、賞金を山分けするのに人が増えると面倒なので放課後の学外を選んだ。


ジェレミーとロイスとはメリーコンド区のバーで待ち合わせをているのだが、まだ来ていなかった。待っている間、軽食と珈琲を頼みそれを一人で食していると向かいの席にずいぶんとけばけばしい女が勝手に座った。


「こんばんわ、エドヴァルド君。夜間外出は禁止じゃなかった?悪い子ね」

「誰?なんで俺の名前を知ってる?」

「君、有名人よ?去年のフィリップ王子と決闘に勝利したんですってね。コンスタンツィアさんの救出に駆け付けた事とかも新聞に載ってたけど将来は近衛騎士間違いなしって話じゃない」

「俺は近衛騎士にはなるつもりはないんだ。契約内容を守るだけで済む帝国騎士の方がいい。誰かの下につくのは御免だ」

「ひゅう、かっこいいわね。ねえ、良かったら私と上の部屋で一緒に将来について語らない?ここじゃ煩いわ」


知り合いにはこんな女性はいない。

やたらと胸元が開いて強調した服を来ているし、だいぶ涼しい季節なのに上着は来ているがおへそも出てるし、太ももも丸出し。どうみても娼婦だ、彼の常識では。


「悪いけど貧乏だから部屋を取る金はない」

「は?」

「他の男を漁ってくれ」


ソラに紹介して貰ったバーの上の部屋は、店内で営業している娼婦達のご休憩用の部屋らしいのでその関係かと思った。


「私を娼婦と勘違いしてるの?失礼ね。お金を取ったりなんかしない」

「ああ、自由恋愛の求道者か。帝国人はタダでもそういうことするらしいが、俺は御免だ」

「誰でも誘う訳じゃないわ」

「俺もそうだ。誰でもいいわけじゃない」


エドヴァルドを誘った女はいたくプライドが傷つけられたようで怒り、口をぱくぱくさせて次の言葉を探したがすぐにはでてこなかった。

そこに男達がやってきて二人を囲む。


「どうしたオリヴィア」

「ミハイル!こいつ、私を売春婦扱いしたのよ!」

「酷いな。学院の女神に対して。おい、お前表に出ろ」

「勘違いだ。面倒を起こすな」


エドヴァルドはしっしと追い払おうとしたが、男達、そして首領格のミハイルは引き下がらない。


「おい、店に迷惑かけたいのか?ここはガンビーノの直営店だぞ。面倒を避けたきゃ表に出ろ」


どうも相手は引き下がる気はなさそうだ。オリヴィアもミハイルも学院関係者という事は貴族だろうし、どうしても面倒な事になりそうだった。


 ◇◆◇


「で?」


表に出た後、次はどうする?とエドヴァルドはミハイル達にジェスチャーで問う。


「余裕だな、エドヴァルド。腕に自信があるらしいが、こっちは五人だぞ」

「何人いようと同じだ。お前達は俺に触れることも出来ない」


エドヴァルドは軽くステップして体を温めながら口にする。

油断しているわけではないが、身のこなしである程度の強さはわかる。

魔力が大きくとも使いこなせなければ無いも同然。


「調子に乗っているな。お前、コンスタンツィア殿と仲がいいらしいが、従属国の貧乏貴族が彼女を娶れるなどという妄想を抱いているんじゃないだろうな?」

「は?何で彼女の話が出てくる」

「俺が彼女の婚約者ミハイル・パーヴェルだ」

「知らん。彼女とは毎日のように会っているがお前の名前など聞いた事も無い」


彼女に婚約者がいるなどという話は聞いた事が無い。


「何だと?俺も方伯家ゆかりの人間だぞ」

「・・・妄想を抱いてるのはお前みたいだな」


挑発すると相手が次に突っかかって来る微弱な気配を感じた。

動作から動きを読み、殴りかかってきた腕を左手で払いカウンター気味に右の掌底を喉に食らして悶絶させる。


「弱い、なんで弱いのに突っかかって来るんだ?お前、今まで家の名前を出せば突っ立って殴られてくれるカカシ野郎しか相手にしたこと無いのか?」


四つん這いになって突っ伏してる相手を見下す。

ミハイルは咳き込みながらなんとか言葉を絞り出す。


「お、お前方伯家に逆らって帝国で生きていけると思っているのか?」

「脅しか、下らない。俺は家が無くても国が無くとも山でも野原でも戦場でも何処でも生きていける。お坊ちゃんは三日で飢え死にしそうだが」


ミハイルは部下にやれと命令したが、すぐに二人が倒された。


「くそっ、お前。これが目に入らないか!?撃ち殺すぞ」


追い詰められたミハイルはとうとう拳銃を抜いてエドヴァルドに突きつけた。

さすがにそれはちょっと不味い。

実際に食らった事がないので生身で耐えきれるかどうかもわからないし、どこに当たるかも予想がつかない。命中精度が低い拳銃なので向こうが狙っている所にむかっていくとは限らず、避けにくいのだ。


相手が殺す気ならこっちもやるしかないが、ちょっと困った。

本当に方伯家の関係者だったらどうしようか。

珍しく逡巡してしまったエドヴァルドはしばらく致命的な隙があったが、相手もさすがに撃ちはしなかった。


 この均衡を崩したのは第三者だった。


「よう、エドヴァルド。いい夜だな。面倒ごとか?」

「ソラか。ぞろぞろ引き連れてきてどうした」


ソラは恰幅の良い男ら10名くらいと集団で店の裏手にやってきていた。


「今日はガンビーノに仕事の話があると言われてきたんだよ。で、そっちは?」

「ソラに教えて貰ったそのガンビーノの店で友人と待ち合わせしてたんだが、こいつらに絡まれた」


エドヴァルドは顎でミハイルらを指した。

大男たちはミハイルらを囲んでおり、ミハイルも怖気づいて銃を下ろしている。


「おいおい、どうしたガンビーノ。俺のダチがお前の店でチンピラに絡まれてるぞ」


ソラの隣に立っていた年配の男がガンビーノだったらしく、ソラの言葉に舌打ちし部下に命じてミハイルらを殴り何処かへ連れて行った。一人残った男がオリヴィアを掴まえた。


「この女はどうします?」


オリヴィアは怯えており、エドヴァルドはさすがに彼女までやばそうな連中に引き渡すのはよくないと考えた。ソラも一応エドヴァルドに意思を確認する。


「どうする?エドヴァルド」

「関係ない。放っておいていい」

「だとさ」


オリヴィアがミハイルをけしかけたのだが、ミハイルには自分の都合でエドヴァルドに喧嘩を売る事情もあったようだ。エドヴァルドはいったん関係ないとみなした。


「ありがと、エドヴァルド君」


解放されたオリヴィアはエドヴァルドの頬にキスをして足早に立ち去った。

彼女が立ち去ってからエドヴァルドはようやく校内の人気投票で女性にあんな人がいたのを思い出した。追い払おうと思って娼婦扱いしてしまったが、さすがに侮辱が酷いと反省して後日お詫びを言いに行った。

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2022/2/1
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