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荒くれ騎士の嘆き歌  作者: OWL
第六章 死灰復燃~前編~(1431年)
314/372

番外編 昏い昏い地の底で

 真っ暗な洞窟の底に美しい花畑があった。

そこに佇む少女が遥か上から降り注ぐ光を見つめてそっと呟いた。


「接続が断たれましたか」

「雷気には生命を生む力がある。そなたの力とは反発するものじゃ」

「ご丁寧にどうも」


彼女の前には蜘蛛の下半身に女性の上半身、そして鳥のような翼が生えた怪物がいる。


「妾と戦ってる間に手助けか?随分余裕そうじゃのう」

「どうせ今回も殺す気は無いのでしょう?何故私を傀儡にしないの?」

「そんな勿体ない事はせん。そなたの瞳の美しい輝きが失われるのが惜しい。そして蹂躙する楽しみもなくなる」

「悪趣味な化け物」


気がつけば蜘蛛の糸に絡めとられ化け物の前で宙づりにされている。

逆さにされ、服を剥ぎ取られ、また蹂躙の時間が始まった。


「このムイセリオンで輝きを放ち続けるのはそなたとこの花園だけ。そしてそなたは何度蹂躙してもまた咲き誇る。好きなだけ散らせ、摘み取っても構わぬ玩具が降りてくるとは有難いのう。ほほほ」


孤独に震えていた化け物はある日、花畑に飛び込んできた少女を返り討ちにして歓迎した。何度、弄んでも彼女は挑み続けてきてその度にこうして遊んでいる。


「・・・貴女、エーゲリーエと男を取り合ったと伝えられていたけど嘘ね。貴女がエーゲリーエを奪おうとして拒絶されたんだわ」


繭の中に閉じ込められ、さんざん嬲られて嫌そうにしながらも彼女の口調に変化は無かった。


「どうしてそう思うのじゃ?」


興奮した化け物の吐き出す糸には粘液が絡みつき、彼女を汚し続けた。


「愛しさ余って憎さ百倍と言ったところかしら。・・・んっぷ、苦しいわ」


糸の繭に閉じ込められ、興奮した化け物から過剰に分泌された粘液の中で再死しそうになった彼女はこれ以上は止めろと伝えた。


「ほほ、陳腐よの」

「愛憎のもつれなんて何百年、何千年経とうと変わらないもの」

「ほう、だからそなたは妾を拒絶せんのか?」

「天上で踏ん反り返っている連中よりは貴女の方がマシなだけ。いずれ貴女も消滅させてやるわ」

「ほほほ、妾の力は日毎高まりつつある。差は開く一方じゃぞ」

「それでいいのよ。完全に消滅させる為にはね」

「そんな日は永遠に来ん」

「いいえ、永遠なんて無いわ。哀れな亡者の女王よ」


彼女は何千年も地の底に閉じ込められた化け物の欲望のはけ口に使われながらも、相手を憐み、なすがままとなっていた。


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2022/2/1
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