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荒くれ騎士の嘆き歌  作者: OWL
第六章 死灰復燃~前編~(1431年)
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番外編 ヴァネッサのひとりごと

 帝国騎士ルーファス様達がドアをノックしていましたが、お姉様が離して下さらなかったので応対に出れませんでした。

業を煮やして三人が入ってきた時、私があられもない姿だったので彼らは紳士的に目を逸らし、或いは慌てて背中を向け、もう一人は呆気に取られて呆然としていました。

その隙にルーファス様は恋矢に貫かれ、即座にガノス様を斬首して剣を翻し、フェルグス様は慌てて距離を取ろうとしたたものの後ろの壁に阻まれた一瞬で心臓に剣を押し込まれて亡くなってしまいました。


ヴィターシャさんからルーファス様は毎年買収や、裏工作で闘技大会や馬上槍大会で優勝していると聞いた事がありましたが、魔剣は相当な業物であるのは確かなようです。


 こんなことをして良かったのでしょうか。

本人の意にそぐわない事をさせてしまいました。


 以前、シャフナザロフとかいう男の日記、研究記録から死霊魔術とやらについていくつか理論を立ててみましたが、実際に人体実験をするわけにはいかずお姉様も実践してみたことはなかった筈です。

しかし、庭で倒れていた死体は次々と起き上がり仲間達に襲い掛かりました。

私でない以上、お姉様がやった事で間違いはないでしょう。


禁術に指定されている死霊魔術を使えば、評議会からどんなおしかりを受けるか分かりません。しかし、この部門は廃止されている為、定義がありません。

ゆえに、死体を操ったからといって存在しない魔術は使用された事になりません。

詰問されたらどうにかして言い逃れようと思っていましたが、特に追及はありませんでした。


正気に返ったルーファス様は記者達の質問に対し、同僚達が方伯家を襲っていた為、止めさせる為にかけつけたが彼らは説得に応じなかったのでやむなく倒したと答えました。

これで彼もエドヴァルド君達と同様に救援に加わった有志の英雄として讃えられました。取材の時点では既に操られていなかった為、これは彼の虚栄心、自己弁護、現実逃避でしょう。

他に都合よく自分の立場を守る言い分が思い浮かばなかったのでしょうね。


 生き残る為に全力を尽くさなければそれは自殺と同じ。

必死に己の身を守っただけなのですから、咎められる事はしていない筈です。

侵入してきた兵士達はひょっとしたら何も危害を加えずに言葉通りただ議会へ連れていくだけだったかもしれません。従っていれば誰も死なずに済んだかもしれません。

でも、もし怒れるラキシタ兵が騎士達が屋敷を出てからお姉様を襲ってきたら?

その時、私には何も出来ません。


万が一の事を考えれば、立て籠もるしかありませんでした。


 でも、やはりこんな事をして良かったのでしょうか。

私がお姉様にそう訊ねたら、止めてくれたでしょうか。


現場にいて状況を察しているのは私だけ。

お姉様の秘密を知っているのは私だけ。

私がお姉様に死者の冒涜は止めて下さいと言っても、他に身を守る手段はありませんでした。魔術師に出来る事はたかが知れています。

用意してある魔術を越える物量で来られれば、雑兵でも私達を殺せたでしょう。


私には何も出来ない。

ただ見守るだけ。


エドヴァルド君はアドリピシア様の遺体が辱められているのが許せず、帝国において貴族からさえ怖れられている監察騎士を殴りつけました。

そんな事をすれば故郷がどうなるか考えていなかった筈がありません。

それでも彼女の尊厳を守ろうとした。


もし彼が、お姉様が、私達が死者を冒涜する行為をしていたと知ればどうするでしょうか。


軽蔑するでしょうか。

離れていくでしょうか。


答えは出ません。

私はただ見守るだけ。

もしお姉様がこの罪により地獄に落ちるのなら、共に落ちるだけ。


今回は珍しくキャラクターの独白めいたものを入れてみました。

あまりキャラの心情に注力していない本作品ですが、番外編としてたまにはいいかな、と。

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2022/2/1
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