第26話 愛の告白②
コンスタンツィアに寝返ったらしい魔導騎士が同僚二名の遺体を外へとずるずる引きずっていった。それを見送り、コンスタンツィアは集まってきたエドヴァルドやシュテファンらに声をかけた。
「皆さん、わざわざ来てくれて有難う。外の様子も落ち着いているみたいですからどうぞゆっくりしていらして」
敷地外では同士討ちだの近隣住民の投石だのが行われているが敷地内はこれまでと打って変わりすっかり静かになっている。
「なんだ折角来たのに。もう終わりか」
「ソラ王子ね?有難うございます。あなた方がここにいらっしゃるという事が重要なのですからこれ以上は戦いを避けてください」
彼らに犠牲者が出るとコンスタンツィアも後々の処理が厄介だ。
「ところでエド、誰なのその娘?」
コンスタンツィアはやたらエドヴァルドに引っ付いている娘が気になった。
「あー、彼女は故郷から仕える為に来た娘で・・・」
「ゴ主人サマノ側女、ダーナデス」
彼女はエドヴァルドの腕にこれ見よがしにさらに体を押し付けた。
「へえ・・・側女。いい御身分ね、エドヴァルド君?」
いつになくコンスタンツィアの目が厳しい。睨まれているだけで魂が凍りつきそうだ。
「ち、ちがっ!侍女です、侍女!」
「ソウ、イ女。ゴ主人サマを慰メニ来タ」
「侍女だろ!?」
エドヴァルドは悲鳴のような声を上げる。
「間違エタ。侍女ネ」
こいつ・・・わざとやってやがる、エドヴァルドはコンスタンツィアに嫌われる恐怖で全身の毛穴が開き、背中に冷や汗をかく。
「わたくしの事大好き!お嫁さんに来てください!とか言っておいて・・・こんなに可愛い子を抱えていたなんて裏切られた気分だわ」
あれ?なんで知ってるんだ?とエドヴァルドは恐怖しつつも疑問を感じた。あれは夢では無かった?
「おお、やるなあ。年の差にもめげずに告白したのか」
ソラやシュテファンたちは感心する。
「待って、待ってください!違うんです。心の中全部読まれてもいいから弁解させてください!神に誓って不実な事は何もしていません。エイラシーオに永遠に貴女以外の女性が目に入らない呪いをかけられてもいい!生涯、貴女以外の人を愛しません!!」
エドヴァルドは跪かんばかりの勢いでコンスタンツィアに話を聞いてくれるよう懇願した。
「んまっ!」「ぬう、エドヴァルド殿には既に心に決めた人がおられたか」
ヴァネッサやシュリは驚きつつも熱愛の言葉に色めき立つ。
「ほんとに?何もかも覗いちゃうわよ?」
「どうぞ」
エドヴァルドはコンスタンツィアに額を突き出した。
以前の要領で心の中を読んで欲しい、と。
『エイダーナの娘達』の件、遭難中の出来事は人前であまり喋りたい事でも無くエドヴァルドとしても一応気を使ったつもりである。年頃の男として魅力的な女性に目を惹かれつつもコンスタンツィアに対する愛情は真摯なもので先ほどの言葉に嘘は無かった。
様々な面での自分の実力不足、年の差を考慮してまだ早いと思いつつも告白に至った背景、エドヴァルドは年頃の男の欲望を知られるのも承知で心の内を全てさらけだした。
コンスタンツィアは額を合わせ、心を読み、それから額を離した。
それから衆人環視の前で少し屈んで口付けをしてやった。
「有難うエド。わたくしの騎士さま」
「わ・・・わ・・・」
「とても嬉しいわ。御免なさいね。わかってあげられなくて」
まさか受け入れて貰えると思わなかったエドヴァルドはパニックになって言葉も出ない。そんなエドヴァルドにコンスタンツィアはもう一度深く口付けした。




