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荒くれ騎士の嘆き歌  作者: OWL
第五章 蛍火乱飛~後編~(1430年)
233/372

メルセデスの書

 死とは永遠の眠りである。

誰が言ったのかは不明だが、古代からそう語り継がれている。

最初に言った者は私のように実際に観測したのだろう。


信奉者の一人を送り込み、死を間近にした実験体に潜らせた所ある者は死後もその場に留まり続け、ある者は実験体と強制的に分離させられた。

肉体の生命活動は停止しても実験体の意識は眠り続けたまま変わらなかった。

強制的に分離させられた幽体は天へと昇っていき、留まり続けた幽体は時間が経つと地の底へと落ちていく。稀に留まり続ける者、返って来る者はいるが全体から見れば少数だ。


 地獄には七つの門があり、二人の女神が囚われている。

一人はアイラカーラ、もう一人はアイラクーンディア。

憎悪、怒り、嫉妬、怨恨、負の感情を煮詰めたような厄介なものを司る女神達。

一柱の男神を巡って森の女神と争い毒を盛って神々の大乱を引き起こした罰として地獄に囚われ続けている。

七つの門のうち一つだけは開いていて亡者はそこから地上と行き来する。

神々の時代の終りに現れた神喰らいの獣は亡者を率い、あらゆる神々の抵抗を退けたというが、実は地獄の女神達が報復すべく送り込んだ神殺しの生物兵器なのかもしれない。


地獄門を作ったのは太陽神モレス、月の女神アナヴィスィーケ、大地母神ノリッティンジェンシェーレ、水の女神ドゥローレメ、暴風神ガーウディーム、火神オーティウム、金剛伸イラートゥス。開いているといわれる門でも神は通れず亡者だけを通すようだ。

亡者達の精神はほぼ恐怖で破壊されているが、門を通れずに苛立つアイラクーンディアの意識が強力に残っている。彼女にとって唯一の慰めはダナランシュヴァラ神が作ってくれた花園だけ。


 霊核、幽体などと言われるマナスは天界でマナに還元され再び地上に戻って生命に宿る。天に拒否された汚れた魂は地上に残り、マナを汚染させる。

拒否された魂の大半は地獄へ落ち、地獄の釜で煮られ浄化されて再び天界に向かう事になる。古代の神学者が提唱していた三界を巡るマナの循環理論は既に忘れ去られていたが、私は観測によってこの理論を再び掘り起こした。

しかし、神々が地上を捨て天界に去り、下界への直接介入を禁じられているこの時代に地獄の女神達が粛々と主神達の命令に従うだろうか。


 三界は一体の原初の巨人から生まれたという。

地上も天界も神々も人も獣も全ての源は巨人ウートゥから誕生した。


つまり三界に満ちるマナの絶対量は決まっている。

天の神々が傲慢にもマナを選り好みすればするほど、地上の人々が繁栄すればするほど人々のマナは希薄化する。

そして地獄に留まるマナが増えれば増えるほど、第一世界のマナは枯渇しいずれ神々は死に絶える。いくら観測してもアイラカーラの意識が伝わってこないのは解せないが、アイラクーンディアの計画はこうだ。


三界を行き来するマナの循環を止め、神々を殺し尽くし、己こそが完全な唯一絶対の神となる。

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2022/2/1
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