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荒くれ騎士の嘆き歌  作者: OWL
第四章 選帝侯の娘(1428~1429)
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第3話 コンスタンツィアとノエム

 徒歩で帰路につくコンスタンツィアとノエムだったが、ノエムはわざわざ遠い貴族街の方伯邸まで送ってくれた。その途中、先ほどの件を尋ねてくる。


「コニー様、ひょっとして何か魔術使って脅してました?」

「見ての通りよ?」


コンスタンツィアは肩の装飾品になっている魔術装具に視線を向けた。


「いえ、それ以外に、です。いつも引っ叩かれても全然堪えなかったあの子があんなに怯えてるのは見た事ありません」

「あら、勘がいいのね。少し幻覚を見せたけれどそれだけよ」

「え、じゃあみっつくらい同時に魔術を制御してたんですか?どうやって?」


護身用魔術装具二つと、幻覚で三つとノエムは判断した。


「いろいろと示唆を得てね、マナスを複写して仮想人格の上に魔術制御用の仮想脳を作るの」

「は、はあ?」


コンスタンツィアは独自に同時並行処理を可能とする魔術の制御技術を編み出していた。遭難中に得た古代エッセネ女公の遺跡にいた時に得た情報とイーデンディオスの教えを受けて考えついた方法だった。

もともとは速読用に使っていた魔術を応用したものである。


「杖がなくても出来ちゃうんですか?」

「指輪の大きさで十分よ」


コンスタンツィアの指には発動体たる魔石が光っていた。


「なんだかもうついていけませんねえ・・・。魔術評議会にでも入るおつもりですか?」

「うーん、研究職はいいかもしれないけれど、ちょっと評議会は嫌かしらね」


神代の魔術を復活させることに心血を注ぐより、世の中の役に立つ魔術の研究の方がいい。


「最近は魔術で出来る事はすぐに道具で出来ますけどね」


火を起こすのもライターが使われるようになってきているので、随分楽になった。


 コンスタンツィアは学院に通っている期間は実家の力を最大限に利用してその後は、適当に自立の道を探そうと漠然と考え始めている。


「そういえばコニー様ってばああいう下着が好みなんですね」

「え?あぁ・・・あんまり深く考えずに適当に流行のものを揃えて貰っただけよ」

「あれって裸人教の人達が作ったものなんですよ」

「なあに、それ?」


コンスタンツィアが巡礼中に流行り出した宗教で、より神に近い姿で日常を送るべきだと主張している全裸集団だった。さすがに内務省や市の警邏に取り締まられたので最低限の衣服は身につけている。しかし、過激な下着をどんどん作って世に送り出していた。


「下着に見えるけど手を加えて普段着にしてる人までいるくらいなんです」

「まだ春なのに・・・どうも露出度の高い人が増えたと思ったらそういうことなのね」


デザインに優れていたので裸人教ブランドの下着は世に受けているのだった。

自然体でいようという宗教で特に危険な団体ではなく内務省も注意するに留めている。


 ◇◆◇


 自宅に近づいた所でまたノエムが尋ねた。


「しばらく塞いでいたようでしたけど、もうよくなりました?」

「まあね。お気遣いありがとうノエム」

「ひょっとして仮想人格のおかげとか?」

「あらまあ・・・ほんとに勘のいい子ね。自己暗示みたいなものよ。『モロー・ダナランシュヴァラ』、悩みよさらばってね」


コンスタンツィアは合言葉をかけて思い悩む自分の人格をチェンジさせた。

本能や欲求を優先させる自分、熟慮して合理性を重視する自分、両者よりバランスを優先する自分などである。


「悩みを押し付けられる側が可哀そうですね」

「それも自分よ」


気休めだと苦笑する。


「じゃあ、あとはヴァニーちゃんですね。すっかり引き籠りになっちゃって。このままじゃ学院どうするんでしょう」


コンスタンツィアの友人グループはまとめて入学許可が降りているのでヴァネッサも今年入学するのに、全然顔を出してこない。ノエムが会いに行っても具合が悪いといわれてお見舞いも拒否されている。


「じゃあ、わたくしが会いに行ってみるわ」

「そうですね。コニー様なら召使達も通してくれるかも」

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2022/2/1
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