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あまいろパステル 〜紡がれる恋の1ページ〜  作者: 神御田
1年生

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6時間目 夏休みの宿題

2036年8月11日

俺は石川と一緒にこもれび図書館に来た

実は昨日、俺の部屋のエアコンが壊れてしまい、とても勉強できる環境ではなくなったため、たまたま暇だった石川を誘って来たのだ


「でさ、なんでみゆきと牧野も一緒なんだ?」

「お前がかけてきたの、こいつらと一緒にいた時なんだよ。で、図書館で一緒にやるならってことで…」

「何だかなぁ…。まあいいけど」


俺たちは奥の方の机を確保し、持って来た宿題を広げた

こもれび高校の夏休みの宿題はわりかし少ない

その代わり、良問揃いで見た目以上にのボリュームがある

例えば今やってる数学であれば、普通なら誘導が書かれていてもおかしくないであろう問題すらもそういうのは一切書かれておらず、全て自分で論理を組み立てていって答えを導かなければならない

しかもそれぞれに割り振られた問題が違うので、間に合わないからといって丸写しなんてしたところで何の意味も無い

ちらっと向かいに座っている石川と牧野を見ると、二人ともわりと悩んでいた

特に牧野はそもそもスタートから全然分かっていない様子だった


「牧野は全然ダメで石川も意外と進みが悪いわけか……」

「うるせえ。そう言うお前はどうなんだよ」

「俺?もうできてるけど?」

「マジかよ…。佐藤って数学得意だったっけか?」

「まあ理系科目の中では一番得意だな。ちなみにみゆきはどんな感じかな?」


俺はみゆきのノートを覗き込んでみた

みゆきのノートは真っ白だった


「もしかしてみゆきもかなり苦戦してるんじゃ…」

「私のはノート2ページで済まなくて…」


みゆきはそう言うと、ノートを1ページ前に戻した

そこにはびっちりと計算やらなんやらが書かれていた

見た感じ、右側のページは計算用紙代わりにし、左側のページにそれを全てまとめている感じだった


「もうちょっとスマートにやる方法はある気はするんだけどまだそれが見えて来なくて…」

「でもあるなら小林先生なら教えてくれそうな気もするけどな…」


小林先生は授業で教えられることは惜しみなく全部教えてくれる

そんな小林先生が今みゆきがやってる以上のスマートな解答を知りながら教えないなんてことをするとは到底思えない

いや、あるけど小林先生が知らないという可能性も否定はできない

仮にそうなら小林先生が出し惜しみをしているというわけではなくなる

ただ、それで大学入試で不利に働いてるならそれは小林先生の怠慢という話になるのがこもれび高校の考え方だ

だからおそらく他に解法は無いのかもしれない

そんなことをみんなで考えていると、小林先生が俺たちのところに来た

どうやら先生もこの図書館に来ていたらしい

俺たちは今話していたことを先生に話した


「なるほどね。結論から言えばあるわ。でもまだ教えていないの」

「え?」

「みんなが知ってる解法はあくまでも定義から導かれる、いわば基礎的なやり方。でも実際はあるものを利用して解けばスマートに解けるのよ」

「じゃあなんでそっちを教えてくれないんですか?」

「公式や定理なんかは全て定義から導かれるもの。仮にあなたたちが数学をやる上で、よりシンプルに解くための法則なんかを見つけたとしても、大学入試でそれを使うならそのことを証明してから使わないと不正解になったり、良くても減点になったりするの。だからそうなった時にあなたたちが困らないように、私はあえて定義から導くやり方しか教えてないの。そしてみんなの基礎が十分身についたと言えるようになって初めてそのやり方を教えるのよ」


確かに先生の言う通り、仮に法則が見つかったとしても、それを証明できなければ他の人からすれば論理が飛躍し、破綻しているようにしか見えない

でも定義を知っていればそこから法則を証明することができる

どうやら先生は俺たちが考えてた以上に生徒のことを考えて教えてくれていたようだ


「もちろんあなたたちが、私が教えていない公式や定理を見つけて解いたからってバツにすることはしないけど、自分が見つけたオリジナルのやり方を証明なしに解いたら流石にバツにするからね」

「はーい…」


小林先生はそのまま帰ってしまった


「あるにはあるのか…。じゃあ逆に教科書とかこの図書館の本とか見れば載ってたりするんかな…」

「可能性はあるんじゃない?みんなで探してみる?」

「そうだな。じゃあみゆきと牧野は教科書確認して。俺と石川で本見てくるから」

「はーい」


俺たちはみゆきと牧野の問題をメモして席を立ち、数学の書籍が置かれているコーナーに行った

類似した問題の解説をしている本は案外あっさり見つかった

俺たちは本を持って二人のところに戻った

二人は二人で教科書からヒントを得ていたようだった


「なんか…すっごくバカバカしく思えるな…」

「確かに…」


俺たちは再び宿題に向き合った

ただ、さっきと違ってヒントを得られたことでスムーズに終わらせることができた

気付くと時計は12時を指していた


「1問だけのわりにかなり時間かかってたんだな…」

「あたしお腹空いたー」

「俺も。佐藤と愛野はどうする?」

「私は残ってるよ。一斉に行って席が埋まっちゃったら困るでしょ?」

「あー、確かに」

「俺も残ってるよ。みゆき一人で自席含めて4席も押さえるのは難しいだろうし」

「というのは建前で、本音はみゆきと一緒にいたいだけなんじゃないの?」

「次の課題に着手し始めちまったからキリのいいとこまでは進めたいんだよ」

「そういうことか。とりあえず頑張れ」


そう言って石川は牧野と一緒に図書館を出ていった

牧野に言われたこともあながち間違いではない

とはいえ、一緒にいたいのがメインというわけではない

そうでなければわざわざみゆきの斜め向かいなんてそんなとこに座ったりはしない

実は先週の夏休み登校日、俺が遅刻して教室で水着に着替えてたところ、それよりも遅刻してきたみゆきに見られてしまったのだ

しかも慌てていたのと誰もいないからとタオルも巻いていなかったので全部見られてしまったのだ

その話自体はそんなことも考慮せず着替えていた俺が悪いということで決着しているが、それ以来お互いに少し気まずく、ちょっと距離を置いているのだ

ちなみに石川と牧野はそのことを知らない

もし知られたりしたら弄られるのは間違いないだろう

すごくどうでもいいことだが、幼稚園生から小学校低学年くらいの間はこういうことがあるともう一方も見せるというふうにしていた

実はみゆきが女子だと知ったのもその見せ合いっこがきっかけだったりする

昔のみゆきは女子のグループにいることなんてほとんど無く、男子のグループで一緒にやんちゃしていたこともあってみんな女子とは思っていなかった

みゆきもその時はまさか自分が男子だと思われていたなんて微塵も思っていなかったらしい

まあ、今はこんな男子がいてたまるかと思うくらいに女の子っぽいけどな


「さっきから私のこと見てどうしたの?」

「いや、ちょっと昔を思い出してな」

「昔?」


俺はみゆきの横に移動した


「ほら、先週俺のうっかりで着替え見られちまったじゃん?昔はああいうことがあったらもう一方も見せてお互い様ってバカみたいなことやってたなって思ってさ」

「そうだね。しかも佐藤君、それやるまでずっと私のことを男子だと思ってたよね」

「あん時はマジで誤認してたんだよ。だって見た目結構男子っぽかったし、ずっと男子のグループにいたじゃんか」

「そうだね。それでしかも私が女子トイレ入るたびにみんなで入ったことからかってきてね。それでみんな、私が女子と知るなり一気によそよそしくなったもんね」

「しゃあねえだろ。あの頃は男女で対立してたじゃんかよ。下手に女子とつるんでたら裏切り者って言われてたんだし。まあ女子のグループもみゆきを女子と認識してなかったのを知ってからは案外気が楽だったけど」

「私は昔からああいういざこざは好きじゃなかったからね。だから興味無くて知らなかったっていうのはある」

「それと俺の場合は女子とは知らずに脱げって言って脱がせた罪悪感も結構あった」

「まあそれで脱いだ私もどうかと思うけどね。今は言われても脱がないからね」

「いや、俺だって脱げなんて言わねえよ」


それから俺たちは石川と牧野が戻るまで小声で思い出話に花を咲かせてしまい、全然宿題が進まなかった

その後、俺はみゆきと一緒に図書館を出て近くのファミレスに入った


「珍しいね。佐藤君が私と一緒の時にファミレス選ぶなんて」

「いつもみたく高いとこが良かった?」

「ううん、むしろこっちの方が落ち着く。いつも行くようなところだとちょっと居心地がね…。桜女子の食堂に近い雰囲気があるからどうしても反射的にお嬢様モードになっちゃうんだよね…」

「あー、なるほどね。そこ全然考えてなかった…」

「逆にどうしてああいうところを選んでたの?」

「2つ理由があって、1つは俺の男としてのプライドだな。俺たちはデートって思ってなくても外野から見ればどう見てもデートなわけだから、わりかし周囲の目線が気になってたんだよ」

「なるほどね。もう1つは?」

「もう1つはみゆきは桜女子出身だからああいうとこじゃないとダメかなっていう誤認識。まあ後者はみゆきに聞けば分かった話ではあるんだけどな…。今更ながら自分がアホに思えてきた」

「もう…私だって別にお金持ちの家のお嬢様ってわけじゃないんだから…」


みゆきは明らかに苦笑いしていた

改めて自分のアホさ加減が恥ずかしくなってきた


「他にも何か俺と出掛けてて居心地悪かったりとか気まずいとかそういうのある?」

「うーん…強いて言うならもうちょっと配慮ができるといいと思うよ」

「というと?」

「ずっと歩きっぱなしだと疲れるし、あと佐藤君、歩くペース意外と速いから追いつこうと頑張らないといけない分、余計に疲れるんだよね…。こんなだと彼女できた時に嫌われるよ」

「その節は大変申し訳ありませんでした…。ところでさ、デートする場合って女子ってこういうタイミングでトイレ行くとかあるの?」

「佐藤君、デリカシーって言葉知ってる?」

「いや、そうじゃなくて一般論的な話で」

「うーん…そこまでは知らないかな…。それってお手洗いについてどれくらいその子が恥ずかしいと感じてるかによるからね…。中には行きたいこと自体知られたくないって子だっているからね。そういう子だと例えば相手がお買い物に行ってる時にささっと済ませたり、あとはお買い物を装って行ってお買い物して誤魔化したりとか色々やり方はあるからね」

「一概には言えないわけか…。そういう場合ってあんまトイレ行きたくないかとか聞かない方がいいの?」

「さあ?」

「それも一概には言えないってわけか…」

「そもそも気配りに一般論を求めてる間は彼女作るのは難しいんじゃないかな?それって言ってしまえば一般論っていうマニュアルに沿って気配りしかできなくて、それに当てはまらない子が出てきたらどうにもできませんって宣言してるようなものだからね」

「うぐっ…ド正論…。てかみゆき、我慢してないでトイレ行ってきたら?」

「え?」

「だってさっきからやけにそわそわしてないか?」

「あー、ごめん。ちょっと寒いだけ」

「何だかなぁ…。上着とかあれば貸せたけど生憎持ってねえからなぁ…」

「例えばだけど、こういう時なら席を代わるとかそういう配慮の仕方はあるよね」

「そんなことは百も承知。でも俺のとこ、冷房ダイレクトに当たるから代わろうとか口が裂けても言えないんだよ」

「なるほどね」


そんなことを話してると、注文した料理がやって来た


「みゆき…というか女子ってわりかし少食だよね」

「まあ…男子から見たらそう見えるんだろうね」

「やっぱり体重気になるからっていうのが理由?」

「大体の子はそうだね。まあ…それでも甘い物の前にはその意識も無力な子が多いけどね」

「あー、言われてみれば確かに」


俺はみゆきの体をじっと見てみた

マナー的に良くないのは分かっているけどどうしても気になる点が1個あった


「な、何?さっきから私の体見て…」

「いや、みゆきって胸さえあれば体つきは男子の理想体型なんじゃないかなって思って」

「佐藤君ってやっぱりデリカシー無いよね」

「いや、幼なじみじゃなかったらこんなこと言わねえよ」

「幼なじみでも普通、女子相手にそんなこと言わないの!」

「たださ、みゆきの場合は逆に小さい方が良いんじゃないかな?だって家事完璧で頭良くてそのかわいさ、ただでさえ男子にモテる要素揃えてるのにさらにバストも理想的となれば女子から妬まれたりして面倒じゃね?」

「それは否定しないけど、意外とコンプレックスなんだからね?」

「みゆきは男子にモテたいって思ってるの?」

「そこはどうでもいいかなって思ってる」

「なるほどな」


その後もいろんな話をしながら食べていると、気付いた時には図書館を出て1時間が経過していた

いくら石川たちがキープしてくれてるとはいえ、あまり待たせ過ぎるのもマズい

俺たちは少し急ぎめで食事を済ませ、急いで図書館に戻った


「お前らおせーよ…」

「悪い悪い」


俺たちは宿題を再開した

ただ、15時くらいからみゆきはずっとそわそわしていた


「さっきから何してるの?」

「え?あ、気にしないで」

「いや気になるんだよ。視界の端でずっとそんなふうにしてたら」

「見ないで」

「唐突な無茶振り!?」


俺はなるべくみゆきを視界に入れないように努力した

ただ、どんなに頑張っても視界に入ることはある

それから1時間もすると、ついにみゆきはそわそわしながら左手を降ろしていた

これ、もしやトイレ我慢してるのか?

そういえば今日会ってからみゆきがトイレに行くところを見ていない

でもなんで行かないのだろうか

すると牧野がみゆきに声を掛けた


「みゆき、トイレ行ってきなよ。明らかに我慢してるよね」

「うん…。でも事情があって行けないの…」

「事情?」


するとみゆきは事情を話してくれた

どうやら弟の遼太君が理科のグループ自由研究で周囲の人の水分摂取量とおしっこの回数や量の相関を調べているらしく、夏休みの間、毎回測定しているようだ

しかも学校からはなんと、不正防止のため自由研究の内容がグループ間で被った場合は大幅に減点すると言われてるらしい

それ故に誰とも被らないであろうテーマとしてそんなことをすることにしたらしい

まあ確かにそんなとんでもないことをテーマにしたい奴なんていないだろうからある意味最強だろう

もちろん最初は嫌だと言ったらしいが、減点の度合いが進級に響くレベルと言われ、最終的に断りきれなかったようだ


「でもさ、そんなの調べて何を考察する気なんだろうね」

「同年代での男女の差や同性間での年齢による差を考察する気みたいだよ」

「まあそのくらいしかテーマにできそうな話は無いか…」

「じゃあそろそろ帰りましょう。みゆきも我慢しきれないと思うし、何よりもうすぐ閉館時間だし」


牧野の言う通り、すでに閉館まで1時間もない

それに対して残ってる宿題のボリュームを考えると到底終わらない

俺たちは片付けをして帰宅した

その夜、俺たちはSkipeで通話した

あれからみゆきはギリギリ漏らさずに済んだらしい

見てた俺らもかなりハラハラしてたからそれを聞いてちょっとだけ安心した


「で、まだ自由研究付き合うの?」

「うん…。最低でも1ヶ月分はデータが欲しいみたい」

「あと何日?」

「10日」

「へ?」

「これでも夏休み初日から検証開始してるからね…」

「マジか。てっきり8月いっぱいかと思った」

「そうするとデータが揃うの9月1日になっちゃうよ…」

「言われてみれば確かに」

「それはそうと、早速再開しよう」

「そうだな」


俺たちはSkipe越しに教え合いながら宿題をやり、日付が変わるほんの少し前に全てやり終えた

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