3時間目 水泳
2036年5月23日
「はぁ…」
愛野と一緒に帰っている途中、俺は大きなため息をついた
「どうしたの?」
「それがさ、今日の4時間目…」
〜回想〜
〜4時間目【体育】〜
「来週から水泳の授業が始まるからしっかり準備しておけよ。あと、女子も一緒だが、そっちばっか見てた奴は減点だからな」
〜回想終了〜
「…とか言われてな…。女子の水着姿見ちゃうのは男の性みたいなものなのによ…」
「うーん…私にはよく分からないけどそういうものなんだね…」
「そういえば愛野は泳げるんだっけ?」
「まだダメ。だからまた今年も診断書取らないといけないんだよね…」
愛野は激しい運動が禁止されている
水泳の授業でやる内容は全て激しい運動に分類されるため、愛野にはできない
できることといったら、手で水を掻いて歩く程度だ
だから小学校の時も診断書を提出して見学していた
どうやら桜女子に通っていた時もそうだったらしい
つまり、愛野の水着姿を見ることはかなわないのだ
「まあ…私が水着を着ても視線は集まらないと思うけどね…」
「いや、集まるんじゃないかな…」
俺は愛野の胸を見てこう言った
愛野の胸は服の上からは全く膨らみが見られない
しかもこれは制服だからというのも全く関係がない
実は愛野の胸はかなり小さいのだ
詳しい人の目測だと、ギリギリAAカップに届くか届かないかという感じらしい
「どういう意味?」
「まあ…単刀直入に言うと、『高校の水泳の授業にうっかり紛れ込んだロリ』かな…」
「私、怒っていいんだよね?」
「ごめんなさい…」
やっぱり未だにコンプレックスらしい
ここで俺は昨日テレビでやってた話を思い出した
「そういえば、女の子の胸って生理が来る1年前から大きくなるって昨日テレビで聞いたんだけどさ、愛野ってこれから?」
「………」
「わわっ!ごめんごめん!」
愛野を見て、俺は咄嗟に謝った
どう見てもめちゃくちゃ怒っている
「次は容赦しないからね」
「は、はい…」
そんな会話をしているうちに、急行電車が来た
今日は俺も急行で帰ることにした
俺たちは来た急行に乗り、帰宅した
その夜、俺は風呂上がりに中学の水着を試着してみた
こもれび高校には学校指定の水着がないため、自分で好きな水着が着れる
ただし、派手な物は禁止されている
そのためか、男子も女子も中学時代の水着を着る人が多いらしい
サイズは問題なかった
俺はこれを水泳バッグに詰めた
その時、電話が鳴った
Skipeのグループ電話だった
SkipeはMindows OSを開発しているWicrosoftが作った通話やチャットができるソフトだ
俺は電話に出た
発信したのは愛野だったらしい
どうやら制限付きではあるが水泳が許可されたらしい
しかし、最後に泳いだのが小学2年生の時だったこともあって水着が無く、明日買いに行くらしい
そこで俺たちを誘ったようだ
牧野は行く気満々だったが、石川の反応は少し微妙だった
話を聞くと、女子の水着姿を見る以上、感想を言う必要があると思っているらしい
もちろん愛野はそんなことしなくてもいいとは言ってくれた
しかし、石川の考えが変わることは無さそうだ
「じゃあ校外研修であんたがやらかしたこと、ここで言っちゃおうかなー」
牧野がこう言うと、石川は相当慌て、愛野は牧野を止めようとした
どうやら相当なことらしく、石川は観念したのか一緒に行くと言い出した
もちろん愛野は「無理はしなくていいよ」とは言ったが、石川は「気が変わった」の一点張りで通そうとした
その後、翌日の予定等を話し合い、通話を終えた
俺はそのままベッドに入ったが、石川が言っていた水着の感想の話が気になって眠れなかった
翌朝、俺は朝食を済ませ、予定より10分早く待ち合わせ場所に行った
そこにはすでに愛野と石川がいた
二人もどうやら色々気にし過ぎてあまり眠れなかったらしい
10分後、牧野はギリギリでやって来た
どうやらメイクに時間がかかったらしい
しかし、石川の話によると、石川は約束の20分前に着いたらしいが、愛野はそれより先に来ていたらしい
牧野は、同じ女子である愛野がもっと早くに来ていた事実を知り、言い訳ができないと悟ったのか、平謝りしてきた
俺たちはバスでショッピングモールに向かった
ショッピングモールは人で溢れていた
俺たちはまっすぐ水着売り場に来た
夏休みが遠いためか、水着売り場はそんなに人はいなかった
石川は男性用の水着コーナーに行った
その後、牧野は売り場の奥の方へと消えていった
それに対して愛野は手前側のコーナーで水着を見ていた
「スク水タイプか…」
愛野が見ていたのはスクール水着で見るようなワンピースタイプのものだった
最近では愛野くらいのバストでも着れるセパレートタイプのものもあるが、愛野はそれには目も暮れなかった
その時、牧野が1着の水着を持ってきた
「ねえ、みゆき。これどう…ってなんでワンピース型のなんか見てるの?」
「ねえ早織、どっちがいいと思う?」
「いやワンピース型決定なの?」
「うん…」
「なんで?奥にもっといいのもあるのに…」
「これなら手術の跡が隠せるから…」
「あー…」
そう。愛野は小学校2年生の時の大事故で負った大怪我によって手術を受け、その後もその関連の手術を数回受けている
つまり、見たことはないが服の下は手術の跡がたくさんあるということだ
そんな体を見られるのは男だって嫌だ
まして愛野は女子だ
余計に見られたくはないだろう
「ごめんね。みゆき」
「私こそごめん。でも気持ちだけは受け取っておくね」
「ありがとう…」
牧野は愛野が選んだ水着を見て悩み始めた
デザイン的には非常にシンプルである
それ故に迷ってしまっているようだ
「あのさ、試着してみたら?」
「でも水着って試着していいものなのかな…」
「あー…」
店員「そちらは試着用ですので問題ありませんよ」
よく見ると「試着用」と書いてあった
しかし、試着用ということは不特定多数の人が着ている可能性が高い
そう考えていた矢先、店員さんが声をかけてきた
「お客様が試着後は新しい試着用のものに交換して洗濯しておりますのでご安心下さい」
「あ、そうなんですね。ありがとうございます」
「じゃあ着比べてみようか」
俺たちは試着用を持って試着室のところに行った
そして牧野は愛野に水着を渡し、試着室に押し込んだ
「強引すぎるだろ」
「だってあそこまでしないといつまでも着ないわよ」
「確かに…」
俺たちはしばらく他愛ない話をしながら着替えを待った
5分後
「なあ牧野」
「何?」
「遅すぎやしないか?もう5分経つぞ」
「うーん…。でもさすがに覗くわけにもいかないからね…。さすがに同性だとしても手術の跡は見られたくないだろうし…」
言われてみればそうだ
そうすると大人しく待ってるしかない
しかし、布が擦れるような音は全くしない
着替えが終わっているのか、あるいは着るのを躊躇っているのか
しかし、牧野でさえ覗けない以上、愛野が出てくるまで待っているしかない
俺たちは大人しく待つしかなかった
さらに5分後、やっとカーテンが開いた
どうやら服を脱ぐ際に傷に擦れて痛かったらしい
「えっと…」
「あー…これはー…」
「ああ…」
俺たちは言葉を失った
ある意味似合い過ぎていたからだ
愛野は身長が低く、さらに胸もほとんどない
そのためか、見た目は女子小学生のようだった
「うん、よく似合ってるよ…」
「うん…。私が選んだのより圧倒的に…」
「あぅ…」
勢いよく試着室のカーテンが閉められた
10分後、服を着た愛野が試着室から出てきた
その時、石川が戻ってきた
「お待たせ。いやー、めっちゃ色々あって迷っちまったよ」
「そうか」
「ん?どうした?」
「別に何でも…」
「はあ…」
俺たちは少し気まずい空気の中、帰宅した
2036年5月26日
〜3時間目【数学1】〜
「…………………」
「(愛野の水着姿、あれは衝撃的過ぎたな…)」
「ではこの問題を…佐藤君、解いてみて下さい」
「(あの姿、この後また見ることになるんだよな…)」
「佐藤君!」
「あ、はい」
「授業中は集中しなさい。この問題を解いて下さい」
どうやら俺は指名されたのに気付かずにいたらしい
俺は前に出て難なく問題を解いた
「一応聞いてはいたのね」
「すいません…少しだけ別のことに意識が飛んでしまっていたみたいで…」
俺がそう言うと、クラスのみんなが笑い出した
その時、チャイムが鳴り、授業が終了した
俺は更衣室に行き、水着に着替えてプールに行った
ここのプールは屋内で温水だが、水泳の授業は夏の期間にしかなく、それ以外は水泳部しか泳いでいない
〜4時間目【体育】〜
点呼を終えてシャワーを浴びた後、俺たちはプールに入った
水はぬるま湯といった感じだった
今日は女子が一緒のためプールの半分しか使えない
今日は慣れるという意味で自由時間となった
俺は先生の目を盗んで愛野を探した
しかし、水着を着た女子の集団にはいなかった
俺がプールサイドに目をやると、愛野は体育着で座っていた
水着を忘れたのだろうか
しかし、あの愛野に限ってこんな初歩ミスをするだろうか
第一、愛野は魔法が使えるので忘れてもそれで出せば良い
つまり、愛野が見学しているのはもっと別の理由なのだろう
それに少し体調も悪そうだ
俺は昼休みに愛野に声を掛けることにした
〜昼休み〜
「愛野」
「どうしたの?」
「昼、一緒にどう?」
「いいよ」
俺たちは一度教室に戻り、準備をして中庭に行った
「佐藤君」
「ん?」
「幼なじみとはいっても女子と一緒にご飯食べてて噂とかされたりしない?」
「まあ今日くらいはいいさ」
なんて言ったが、実は何も考えていなかった
確かに後で男子たちに噂されて尋問に遭うのは少し考えれば容易に想像できる
ただ、もう今更だった
俺は水泳の授業で見学していた理由を聞いてみた
しかし、愛野はかなりはぐらかしていた
何か隠したい事情でもあるのだろうか
俺は少し強気になって聞いてみた
そうすると、愛野は理由を話してくれた
どうやら昨日、家に帰って3時間くらいした頃に初潮があったらしい
俺はこの話を聞いてびっくりした
女子の初潮はだいたい小学校高学年から中学1年までの間に起こりやすい
個人差もあるが、高校生になるまで初潮が起きてないというのはかなり稀らしい
そして、ある文献によると女子の胸の大きさは初潮の1年くらい前から少しずつ大きくなるらしい
つまり愛野がほとんどぺったんこだったのは初潮が遅かったからだったようだ
それだけなら良かったが、どうやらそれを聞いた祖母が大量の赤飯を炊いて食べさせたことから今朝から気分が優れなかったらしい
とはいえ、仮に元気だったとしても生理中は水泳はできないので同じだ
俺は掛ける言葉が見つからなかった
ただ、愛野は制服の上着を着ているにもかかわらず時折寒そうにしていた
俺は制服の上着を貸した
「戻ろうか」
「うん…」
俺は愛野の様子を見ながら教室まで一緒に行った
その夜、Skipeが鳴った
石川と牧野からだった
用件は、泳いでた愛野の様子についてだった
俺は答えをはぐらかしつつ、牧野に事情を個別チャットで教えた
「あー…なるほどね…」
「ん?どういうこと?」
「あんたは気にしなくていい」
「えー、ずるいよ…」
「諦めるかアイアンクローか」
「………諦めます…」
実は牧野のアイアンクローはめちゃくちゃ痛い
2回は食らいたくない
「それにしても今日のプール、微妙だったな…」
「なんで?」
「プールといえば…」
それから俺たちは石川からプールとは何たるかを長々と説明され、その日の会話を終えた
この1週間後、プールで愛野の水着姿を見ることができたのだが、それはまた別のお話
今回は水着を登場させてみました
皆さんはこれを見てどんな水着をイメージしました?
イメージした水着がどんなものかぜひ教えて下さい
そして、今回は運動ポンコツのみゆきちゃんがなぜポンコツなのかが出てきました
まあ普通じゃあり得ないんですけどね…




