2時間目 校外研修
事前情報
今回名前が登場するモブは
・立花 宏人
・松本 辰典
・山崎 充
・桜井 美緒
・小林 美奈子
の5人です。いきなり名前出てきますが、モブに限ってこれがこの小説のスタイルなので許してください。これからもそうします
ちなみ桜井さんはゲーム版のあまいろパステルのあまいろガールズでもあります
2036年4月21日
〜1・2時間目【ロングホームルーム】〜
「今日は、5月7日から10日までの校外研修についての説明をして、これに関してのことを色々決めていくからしっかり話を聞くこと」
そう言って先生はプリントを配布し、説明を始めた
先生の説明をかいつまんで話すとこうだ
1年生は毎年ゴールデンウィーク明けすぐに校外研修という名目の3泊4日のオリエンテーションがあるらしい
そして、決めなくてはいけないのは
○行動班(1班6人)
○ルームメイト(1部屋4人)
○各種当番
の3つらしい
やることそのものはそこまで難しくはなさそうだが、当番の責任は重そうだ
部屋は当然男女別々だが、こんな入学してすぐにこんなイベントがあっても誰と同室になるかなんて簡単に決められるものではない
俺もこのクラスで馴染みがあるのは愛野しかいない
しかし、愛野は女子だ
同じ行動班にはなれてもルームメイトにはなれない
どうやって決めるのかと思っていたら、先生が口を開いた
「行動班とルームメイトはくじ引きで決める。各種役割分担についてもくじに書かれたものに従うこととする」
お互いを知り合っていない者同士だと決めかねてしまうことは決め方が予め決められているらしい
俺たちは順番にくじを引いた
「じゃあまずは行動班で集まってくれ」
俺のくじには3班班長と書いてあった
俺は3班のところに行った
「あの…俺、3班の班長になりました、佐藤といいます」
3班のみんなの視線が集まる
運が良いのか悪いのか、3班は男4人(佐藤、立花、松本、山崎)、女2人(愛野、桜井)となった
しかし、俺を除く男3人は見た目がかなり体育会系だった
俺が緊張していると、「大丈夫?」と聞き馴染みのある声で言われた
声のした方を見ると、そこには愛野がいた
愛野のくじを見ると、「3班保健委員」と書いてあった
どうやら俺は愛野がいたことに気付いていなかったみたいだ
俺は少しホッとした
そこからの顔合わせはわりとスムーズに進んだ
やばそうだと思っていた男子たちも本当はかなりの弱腰だった
俺たちは班でやることの話し合いを始めた
最初、体を動かすことばかりがたくさん提案された
しかし、俺はそれを否定し続けていた
愛野の体のことを知っているからだ
愛野はまだ激しい運動ができないのだ
やってしまうと場合によっては死に至ってしまう
俺は愛野以外から「否定ばっかりする嫌な奴」というイメージを持たれてしまった
しかし、俺は本当のことを言えなかった
愛野がいじめの対象になってほしくなかったからだ
「私のことを思ってくれたんでしょ?」
心配とは裏腹に、愛野はそう切り出してきた
他のメンバーが「どういうこと?」と聞いてくると、愛野は自分の体のことを話し始めた
「おそらく佐藤君は私がいじめられるのが嫌で、だったら自分が犠牲になろうって思って言わなかったんじゃないかな…」
「う…うん…」
思ってたことを言い当てられ、俺は恥ずかしくなった
するとみんなは笑い出した
「何だよ。だったら先に言えよな」
「そうよ。そんなことでいじめたりなんてしないわよ。小学生じゃあるまいし」
山崎と桜井さんの言葉にみんなが頷く
単に俺が無用な心配をしていただけだったみたいだ
俺たちは愛野の行動制限を考慮しつつ、再度班行動でやることを話し合った
その後、先生の合図でルームメイトとの顔合わせをすることになった
愛野は桜井さんと同じ班のようで少し安心した
「安心して。もし他のルームメイトに愛野さんがいじめられそうになったら私が助けるから」
桜井さんはそう言って俺たちと離れた
たまたまなのか、俺のルームメイトは行動班の男子たちだった
俺たちはくじを見せ合った
室長は立花で、俺は保健委員だった
顔合わせの際、二人がいないことから俺たちの会話は気付くと愛野か桜井さんのどっちがいいかという話になっていた
顔合わせは、2時間目の終了を告げるチャイムと共にお開きとなった
〜休憩時間〜
俺は石川のクラスに行った
石川から話を聞くと、石川の行動班は俺たちとは真逆で男女比2:4らしい
しかも班長が牧野らしく、ふざけるのも許されない結構きっちりとしたミーティングになったらしい
俺は石川たちと同じクラスではなくて良かったと思ってしまった
石川が教室に戻った後、俺はトイレに行ってから教室に戻った
2036年5月7日
俺は大荷物を手に、駅で列車を待った
ーーーまもなく10番線に、当駅折り返しの、特急はるかぜ4号 こもれび高校行きが到着致します。白線の内側でお待ち下さい
はるかぜ号は定刻より遅れて入ってきた
そのため、車内清掃もそこそこにすぐに乗車開始となった
俺はいつもの席に座り、こもれび高校まで乗って行った
こもれび高校駅到着後、俺は集合場所のホームへと向かった
これから俺たちが向かうのは、静岡県のリゾートホテルらしい
移動はここから貸し切り列車でホテルに一番近い駅まで行き、そこからバスでの移動らしい
ホームに着くと、そこには愛野がいた
実は、愛野が乗っている各駅停車のほうが到着が5分くらい早いのだ
俺は愛野と合流し、集合時間までお喋りした
ーーーまもなく3番線に、団体列車が到着致します。白線の内側でお待ち下さい
目の前にはこもれび線の特急である特急こもれび号と同じ車両が入ってきた
行先表示パネルには「こもれび高校1年生御一行様」と表示されていた
こんな表示ができるのかと俺はびっくりした
全員が乗り込み、時間になると、列車はこもれび高校駅を出発した
列車は秋葉原駅で進行方向を変え東京駅まで戻ると、東海道線に入っていった
やがて列車は最寄駅に到着し、俺たちはバスに乗り換えた
全員が乗り込むと、バスはホテルに向けて走り出した
道中、俺は計画書を読んでいた
その結果、ホテルに着いた頃には車酔いを起こしてしまい、班員に助けられる羽目になった
目が覚めると、そこには愛野の顔があった
「あれ?ここは…」
「大丈夫?」
「あ…うん…」
体を起こすと、そこはホテルの部屋だった
「悪かったな…。てか俺、もしかして女子部屋にいる?」
「ううん。私が佐藤君のお部屋にいるの」
「そっかー…焦ったー…」
「?」
「いや、もしここが女子部屋だったら下手すりゃ俺、変態扱いされるじゃん」
「女子の荷物を漁ってたらね」
「ははっ。確かにな。てか愛野は平気なの?」
「何が?」
「だってほら、今、俺たち密室に二人きりだからさ。身の危険とか感じないのかなって」
見渡すと、部屋には俺たちしかいない上に入口のドアは閉められていた
女の子を襲うには好条件な環境が揃っている
「知らない男の子だったらね。佐藤君は知らない子じゃないし、何よりそんなことしないでしょ?」
「まあね」
どうやら俺は、思った以上に愛野に信用されているみたいだ
つまり、この信用を裏切るようなことがあれば、俺は幼なじみでいられなくなるだけでは済まないだろう
おそらく、こもれび高校にも通えなくなるだろう
「俺はそういうことは、愛し合ってる二人がすることだって思ってる」
「私も。それに仮に襲われたとしてもその先のドアは開いてるから私が叫べば外まで筒抜けだよ」
「そんなことになったら笑えねえな。あははは」
「ふふふっ」
「さて、みんなのところに行くか」
「うん」
俺たちは食堂に向かった
食堂にはすでにみんなが集まり、昼ご飯を食べていた
「おーい、佐藤ー。こっちこっち」
「愛野さんもー」
山崎と桜井さんが手を振ってきた
俺たちは班員のところに行った
「…ったく班長がバスの中で計画書読んでて車酔いとかアホにも程があるだろ」
「悪い悪い」
「でもそれ以上に愛野さんが率先して佐藤の介抱するって言い出すなんて思いもしなかったよ」
「そうそう。普通なら身の危険感じて、そんなことしないのにまさか膝枕までするとは思わなかった」
「で、ぶっちゃけどうだった?」
「何が?」
「そりゃ、愛野さんの膝枕だよ。柔らかかったとかそういう感想あるだろ」
「うーん…普通?」
「何だそりゃ」
「いや、特別何か違うって感じはしなかったなって…。強いて言えば、お袋に膝枕されてた時と同じ感じだったかな…」
こんなことを言っているが、実はこれは嘘だ
本音は
好きな女の子の膝枕とか最高でしかない!
の一言だ
もっとしてほしいとも思っていた
しかし、こんなことを言ってしまえば場の空気はたちまち凍り付いてしまう
それに愛野とも気まずくなってしまう
だからあえてなるべく自然な感じで嘘を吐いた
ただ、それを見て桜井さんはニヤニヤしていた
「でもこれだけ長いこと二人きりだったなら…」
「ん?」
「ねえ愛野さん。ぶっちゃけどうだったの?」
「?」
「佐藤に押し倒されて、あんなことやこんなことされてたんじゃないの?」
「ぶほっ!!ごほごほ…」
「うわっ!汚ねえな…。だけどその反応はもしかして…」
「何もなかったよ」
俺が慌てているのをよそに、愛野はそう答えた
こんな下世話な話にも動じないということは、おそらく愛野は男を全く知らないのだろう
それどころかエッチな話題については完全に無知なんだろう
まあ、俺が動揺しやすいだけなのかもしれないけど
俺たちはそれから質問攻めに遭ったが、本当に何もなかったのでそこからは慌てることもなかった
食事終了後、俺たちはその場で先生から生活についての説明が再びされた
なぜ再び説明されたか不思議だったが、その答えはすぐに分かった
どうやらこの校外研修中に規則を破って女子の部屋に行った男子生徒がいたらしい
しかもその男子生徒は、その部屋にいた恋人の女子生徒と夜の営みを密かに行ったらしく、期末試験終了後に妊娠が発覚したらしい
このことは保護者の間で非常に問題になり、当該男子生徒と女子生徒は退学処分となったようだ
そのため、再発防止のために
1. 男子のフロアと女子のフロアの境界となる階段を教師が交代で見張る
2. 教師のフロアより下である、男子生徒のエレベーターの使用は一切禁止
3. 自由時間に男子生徒と女子生徒が会って話す場合はホールで話す
4. 部屋のドアの教師以外による解錠・施錠の禁止
5. 許可なくホールより先に行ってはいけない
等の規則が定められたようだ
説明後、俺はさっき愛野に介抱されていたことを先生に話すと
「だからずっとドアの外で4人がかりで監視してたんだ」
とのことだった
つまり仮に俺が欲望に身を任せて愛野を襲うようなことがあったら、即座に拘束されていたようだ
俺は自分の部屋に行った
その夜、俺は愛野にホールに呼び出された
俺がホールに向かうと、愛野は女性の先生と一緒に出入口のところにいた
数学科の小林先生だ
どうやら外に行くそうだ
三人で外に出ると先生が口を開いた
「ズバリ聞くけど、二人って付き合ってるの?」
「は?どういうことですか?」
「愛野さん、佐藤君の介抱を積極的にやってたけど、それって二人が付き合ってるからでしょ?」
「いや、付き合ってはいないです。ただの幼なじみです」
「そう…。早とちりだったみたいね」
小林先生はしゅんとしてしまった
「あの…そもそもなんでそんなことを?」
「個人的な興味よ」
愛野の質問に、小林先生は思いっきりそう言い切った
愛野は完全に困惑してしまった
「そんなことで生徒呼び出してプライベートに踏み込むって教師としてどうなんですか?」
「いい?二人とも」
「は、はい」
「青春は一度きり。失われた時間は戻らないのよ。だから…」
「今の時間を大切にしなさいってことですか?」
「そう。流石は愛野さん。察しがいいわね」
「あの…それと今回の件ってどんな関係が…」
「実は私、佐藤君と愛野さんのそれぞれのお父さんとお母さんと同じ、こもれび高校の第4期生なの」
「ええっ!?」
「当時の愛野君と佐藤君は学年主席を争っててね、恋どころか部活にすら目も暮れずに勉強ばっかりで、2年生になると二人がずっと同率1位だったのよ」
「すげーなうちの親父…」
俺の親父は俺が高校に入る前に自分の成績を話してくれた
しかし、こもれび高校で首席なんて到底取ることなんてできないと思っていた
だから俺は親父の話は嘘だと思っていた
しかし、先生によると愛野の親父であり、世界的に有名と言われる小児外科医「愛野涼介」は全科目満点でかつ教師より説明が上手いことからこもれび高校の教師が何人も泣かされたという話らしい
そして俺の親父であり、同じく世界的に有名と言われる眼科医「佐藤明宏」も2年生からではあるが全科目満点の常連であったらしい
「私もあの二人と争ってたけど、どうしても僅かに手が届かなかったの。そして次第に二人にさらに敵対意識を燃やしていって、気付いたら3年生の2学期の終わり。私の高校生活は勉強だけで終わってしまったわ」
「はあ…」
「愛野さんと牧野さん、トップ争いしてるでしょ?」
「いえ、別に私、そんなつもりは…」
「そう?まあそれは置いといて、問題は佐藤君よ」
「へ?俺?」
「そう。あなたの立ち位置、昔、愛野君と佐藤君と争ってた私と同じような立ち位置だからちょっと心配でね…。だからもし二人が恋人同士なら、今なら見ないからここで存分にいちゃついていいって言おうと思ったのよ」
「いや、それ教師としてどうなんですか…」
「先生が規則破っていたら…あ」
「気付いた?」
「いわゆる法の抜け穴というものですね…」
「そうよ。でも二人のことは私の早とちりだったみたいだから別にいいわ」
「じゃあもういいですか?」
「ええ。呼び出しちゃったりしてごめんなさいね。でも佐藤君、青春についてだけは私を反面教師に過ごしてね」
「あ、ありがとうございます…」
俺たちはホテルに戻った
部屋に戻ると、担任が来ていた
「佐藤、今までどこに行ってたんだ」
「すいません。小林先生に呼ばれてて…」
「そうか。じゃあこれで点呼終了だ。今からトイレ以外で外に出ることは一切許さんからな」
そう言うと、先生は部屋を施錠して行った
それからというと、俺は愛野や小林先生をどう思っているかの質問攻めに遭ってしまった
翌朝、俺は先生が来る前に目を覚ました
時計を見ると、5:30だった
起床時刻より1時間半早い
でも二度寝する余裕は無い
俺はみんなが目を覚まさないように朝の身支度をした
スマホを見ると、愛野からメールが来ていた
今日の班行動についての質問だった
どうやら確認漏れがあったらしい
俺は計画書を見てメールを返した
6:30になるとみんなが目を覚ました
みんなが身支度をしていると、やがて7:00になり、外から先生の声が聞こえてきた
俺たちは一足先にホールに出てきた
一番乗りかと思ったが、先に愛野と牧野と桜井が来ていた
愛野はともかく、牧野がこんなに早く来ていたのには驚いた
話を聞くと、牧野は早く起きて予習をするのが日課らしい
そりゃ早いわけだ
俺たちは一緒に食堂に向かった
それから30分後には席の9割が埋まっていた
俺たちは班行動についての話し合いをして時間を潰した
俺たちの班行動は、愛野の体のことを考慮して基本的に運動の類はない
そして、走らなくても良いように時間にもかなり余裕を持たせている
さらに、計画自体もかなり念入りに組まれており、隙はない
俺は3班のところに行った
ただ、俺は班員に遅刻について軽く責められてしまった
腕時計を見ると、電池が切れて完全に止まっていた
しかし、俺たちは元々かなりゆとりあるプランを組んでいたおかげか、走る必要もなくその日の行程をきっちり終えることができた
そしてその夜、俺たちはお風呂を上がった後、先生から許可を貰って食堂に集まった
立花と松本は、体験について詳細な記録を残していてくれた
さらに桜井と山崎は俺が撮らなかった写真を何枚も撮っており、報告書を書く上では十分な量となった
そして愛野はその鋭い観察力と考察力等を活かして的確なアドバイスをしたり、さらに先生から突っ込まれそうな話の答えを資料から見つけ出したりしてくれた
「あれ?俺、要らない奴?」
そう。みんなの活躍と比較すると、俺はあまり役に立ってないように見えてしまったのだ
「何言ってるのよ」
「そうだよ。佐藤君がいなかったら大幅に遅れてたのに予定通りに行程を終えられる計画なんて立てられなかったと思うよ」
桜井と愛野は口々にそう言った
「それに今日は朝に通り雨があったからぬかるんで当初予定してた道を通れなかったけど、お前の知識のおかげでスムーズに迂回もできたじゃんか」
「俺たち、お前がリーダーで良かったって本気で思ってるぜ」
「だから今度は俺らがお前に恩を返す番だ」
二人に続いて山崎たちもそう言ってくれた
こんなにいい奴等が班員だったのかと思うと、俺は恥ずかしい反面、嬉しかった
そして、俺も作業しつつ、自分たちでも驚くくらい本格的とも言える報告書が完成した
俺は報告書のデータをクラウドに上げ、班員全員で共有させた
その後、俺はデータをUSBに入れて報告書を出力し、出力した
そして俺たちの班は校外研修の全行程をこなしきり、報告書もきっちりと書き上げた
しかし、校外研修終了後、事件は起きた
2036年5月13日
〜1-4時間目【校外研修報告会】〜
3組の4班の報告が始まった
しかし、俺たちはその報告に違和感を覚えた
なぜなら、行程が全て同じだったからだ
しかも報告内容も俺たちがまとめた報告書を読み上げているような印象だった
もちろん本当に同じ行程で同じことをしていれば報告書が似ることはある
しかし、そんなレベルではなかった
ここで切り出したのは小林先生だった
「質問です。ここにあなたたちが事前に提出した報告書をもとに作成した行程表と、1組の3班が事前に提出した報告書をもとに作成した行程表があるのですが、この二つが完全にマッチしています。これについて説明して下さい」
会場がざわめき始めた
先生たちも不審がっていました
どうやら約束等の都合で行程表が被るということはまずあり得ないようだ
おそらく奴等は何らかの手段で俺たちの報告書を盗んでそれを発表したのだろう
しかし、現時点では証拠が無く、追及できない
もちろん奴等はたまたまだと言い張った
そう言われてしまうと先生も証拠もなく、問い詰められないようだ
しかしその時だった
山崎がステージに上がり、こう言った
「ちょっとその報告書のファイル、確認させてもらってもいいですか?」
「スクリーンに出しているではないですか」
「いやいや、見たいのは中身じゃなくてファイルのプロパティだよ」
俺には山崎が何を確認したいか分からなかった
もちろん3組の生徒も意味が分からないからという理由で拒否してきた
そこから二人の口論が始まり、先生たちが止めに入ろうとしたところで、愛野がマイクを手にして立ち上がった
「で、では、その体験に行った場所のオーナーさんの奥さんの名前を教えてください」
会場のみんなの視線が愛野に向いた
当たり前だ。報告とは全く関係ない話題を振った愛野をおかしい奴と思わない奴はいないだろう
それにオーナーならまだしも、オーナーの奥さんの名前なんて普通分からない
しかし、愛野は動じなかった
「あなたたちも体験に行ったなら、オーナーさんとその奥さんが名刺をくれたはずです。名刺を見てもいいので答えて下さい」
愛野がそう言うと、3組の4班の生徒たちは固まり、会場のみんなも納得した様子だった
俺たちもこの一言でそのことを思い出した
確かに二人から名刺を渡されていた
報告会では収集した物は全て手元に持っている必要があるくらいには質問がえげつないことで有名なので、そういう些細な物も持ってないと困ってしまう
「お、覚えてるわけないじゃないですか。そして名刺なんて今持ってないので分かりません」
「どうして持っていないんですか?聞かれることを想定していなかったんですか?」
「いや、そんなこと聞かれないと思って…」
「過去には質問してきたこともあったみたいですけど?」
「ぐっ…。そ、そもそもあなたたちも行程が同じだったみたいですよね?だったら答えられるんでしょうね?」
1組3班全員「はい」
「ほら、あんたたちも答えられ…え?」
「答えられますよ。私たちは全員、仮に名刺が無かったとしても」
そう。愛野は最後の夜…
「ねえ、オーナーさんとその奥さんの名前ってちゃんと覚えてる?」
「は?なんで?」
「そんなこと関係ないんじゃ…」
「昔、報告書の窃盗事件があったみたいで、その時にその報告書を先に発表されて、後から発表した班が聞かれたらしいよ。発表順がランダムだし、どっちが盗んだかなんて分からないから、盗んだ方が分からない質問をして、答えられなかった方が盗んだ側って感じに」
「確かに盗んだ側は行ってないんだから分からないな」
「よし、俺たちはきっちり答えられるようにしておこう」
「ああ」
「そうね」
「よし、そうと決まれば関係者の名前や細かい出来事全部覚えよう」
「おー!」
最初はそんなことする奴なんていないから覚える必要ないだろと思っていた
しかし、まさか本当に自分たちを助けてくれるとは思わなかった
3組の4班のメンバーはおろおろし始めた
その間に山崎はファイルのプロパティをスクリーンに表示させた
「俺はファイルを盗まれてもすぐに分かるよう、俺の名前でではありますが、報告書のPDF全てにデジタル署名しておきました。そしてこのファイルには俺のデジタル署名がついています。これはあなたたちが俺たちの報告書データを何らかの方法で入手した明確な証拠です」
これには全員が驚いた
山崎は報告書データにいつの間にか電子署名をしていたらしい
そんな中、校長が口を開いた
「これは、どちらが報告書を盗んだのかは明白ですね。あなたたちがしたことは人として恥ずべきことです。分かりますね?」
「………」
「君たちの処分については職員会議で決定され、担任から直接あなたたちとその親御さんに伝えられますので覚悟していて下さい」
3組の4班の生徒たちは壇上から降りた
その後、俺たちの発表の番が来た
もちろんさっき愛野がした質問をそのまま他のクラスの生徒にされたが、俺たちは堂々と答えてみせた
そして、その後も順調に報告会は進んだ
そして俺たちの報告は、最優秀賞を受賞した
「いやー、一時はどうなるかと本当に焦ったよ」
「でも、これも愛野と山崎のお手柄だな」
「もし愛野さんがあの時覚えようって言わなかったらねー」
「それに、山崎がもし電子署名してなかったら言い逃れする隙を与えてたんだもんな」
「そんな…私は別に…」
「いやいや、一番のお手柄は愛野さんだよ。俺のなんてもっと言い逃れされかねなかったんだぜ。例えば『俺たちを陥れるために』なんて言われたら証拠なんて無いんだからよ。だから、やっぱり愛野さんが一番の功労者だよ」
「うぅ…」
俺たちは放課後、近くのファミレスでささやかな打ち上げをやった
後日談にはなるが、俺たちの報告書を盗んだ3組の4班の奴等は、停学1ヶ月の処分になったが、周りからの厳しい視線に耐えられず、自主退学したようだ
今回は私が高校1年生の時に本当に行った校外研修を題材にしてみました。まあ実際は単なるレク旅行みたいなものだったので報告書やら報告会やらは無かったんですけどね。それに移動も学校からバスだったし…
内容そうしても良かったんですけど、私自身かなり記憶があやふやなので正確に書ける自信が無かったので、こんな形もありかなということで書いてみました。ちなみに校外研修で私が一番びっくりだったのが就寝前の点呼の時はベッド上に正座というルールで、実は修学旅行でもそうでした。短時間とはいえ、あれはなんか罰でも受けてるみたいで嫌だったなー…
最後は他のグループに報告書を盗まれてそれを堂々と発表するという、人としてあるまじき行為を入れました。ただ、どんな形であれ悪事というのは必ず明るみに出るものですので、これを読んだ皆さんは悪いことをしようなんて考えず、まともに生きて下さい
ちなみにホテルは静岡県掛川市の「つま恋リゾート 彩の郷」でした。結構いい所だったので皆さんも一度は行ってみてください
最寄駅は掛川駅って書いてあったけどGoogle Mapで見たら思いの外離れてはいたけど(笑)




