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あまいろパステル 〜紡がれる恋の1ページ〜  作者: 神御田
2年生

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お昼休み5 本心

※この話は、24時間目の続きです。

佐藤幸二がフラれたという話を聞かされた飯島みらい。彼をフった愛野みゆきは彼のことが好きだったはずだと思っていたみらいは桜女子学園に向かったみゆきを追いかける。

2037年12月24日


「それで、みゆきちゃんは?」

「一人で駅に行っちゃったよ。『また年明けにね』って言って」

「じゃあ桜女子に戻ったのか…。そしたらみゆきちゃんの方は私に任せて」

「何をか知らんけど頼む」

「うん。じゃあまた年明けに」


そう言って私は佐藤君たちと別れて桜女子学園へと向かった

佐藤君とみゆきちゃんは家が隣同士だから、帰宅してるなら年明けまで会わないということは考えづらい

そうなると消去法でみゆきちゃんは桜女子に行ったとしか思えない

ホームに降りて電光掲示板を見ると、次の電車が桜女子の方面へ向かう最後の電車だった

ただ、快速電車なので途中で乗り換えは必要だ

私は到着した快速に乗り、桜女子学園前駅の1つ手前の駅で下車した

しかし、各駅停車への接続は無く、しかも電光掲示板には私が今乗ってきた電車しか表示していなかった

つまり、今から桜女子に行くならここから歩いて行くしかないということだ

しかし、ここから桜女子までは徒歩で2時間はかかる

常人ならほぼ確実に日を改めると言うだろう

でも私には歌姫護衛騎士団の訓練で鍛えた脚力がある

私は駅を出た

すると少し歩いたところで前に人影が見えた

しかもその人は前屈みになっている様子だった

私がその人に駆け寄ってみると、なんとみゆきちゃんだった

どうやらみゆきちゃんはトイレを我慢しているそうだ

私が駅で行かなかった理由を聞くと、どうやら駅のトイレは工事のため封鎖されていたそうだ

私はみゆきちゃんを近くの茂みまで連れて行き、茂みから少し離れたところまで移動した

本当なら歌姫様とこんなに離れるのは御法度だけど、この辺はものすごく治安が良いからこんなことができるのだ

少しすると、みゆきちゃんが茂みから出てきた

私たちは桜女子に向けて歩き始めた

道中、私はみゆきちゃんに佐藤君をフった理由を聞いてみた

するとみゆきちゃんは自分の心の内を話してくれた

どうやら私の予想通り、みゆきちゃんは佐藤君のことが好きなようだ

しかし、みゆきちゃんは自分自身に全く自信が無く、こんな自分なんかよりももっと素敵な女の子はたくさんいるから、自分自身に固執してその出会いを無駄にしてほしくないという想いからフったらしい

私はみゆきちゃんに思いっきり平手打ちをした

昔からみゆきちゃんは自分よりも他者の幸せを願うことが多く、そのため事あるごとに自分を卑下し、他の子を持ち上げていた

いつもなら許すことはできたけど、今回ばかりは佐藤君の幸せを願うためとはいえ、結果的に佐藤君の心も傷つけている

もちろん歌姫様に平手打ちなんてしたことが知られれば私は護衛の任を解かれるどころか、歌姫様を傷つけたということで牢獄送りになる可能性が非常に高い

ただ、今回ばかりは手を出さずにはいられなかった

みゆきちゃんは驚いた様子で頬を押さえながら私の方を見ていた

おそらく、なんで私がこんなことをしたのか分かっていないのだろう


「佐藤君は小学生の時からずっとみゆきちゃんだけを好きでいてくれてたんだよ。きっと他にも素敵な女の子はいたはずなのに、それでもみゆきちゃんだけをみてくれていたんだよ。なのにみゆきちゃんはそんな理由で佐藤君を突き放して傷つけたんだよ。いくらなんでも自分勝手過ぎるよ」


私がそう言うと、みゆきちゃんは少し黙った後に自分の心の内を明かしてくれた

どうやらみゆきちゃんは、これで本当に恋人同士になって自分のことをさらに知られた時に失望されるのが凄く怖いらしい


「実際に付き合うまで分からないことってあるでしょ?特に私の場合、身体的理由による制約が結構あるから、実際に付き合ってみたらっていうのが結構あると思うの。そうなると、私だけじゃなくて付き合う相手にもつらい思いをさせちゃうでしょ?だから今は誰かと付き合うの自体が怖いの…。特に佐藤君の場合は幼なじみっていうのもあるから、余計に私なんかに固執してつらい思いをしてほしくないって気持ちがあるの」

「みゆきちゃん…」


私はそれ以上何も言えなかった

自分勝手な理由でフったと思っていたからこそあんなことをしたけど、実際はみゆきちゃんが佐藤君をフったのは、みゆきちゃんの優しさ故のものだったのだ

つまり私は早とちりでみゆきちゃんに平手打ちをしてしまったということだ

ただ、みゆきちゃんも私がどういう思いで彼女に平手打ちをしたのか理解していたようで、私を咎めることはしなかった

それどころか、私が謝ろうとした瞬間、私の行為を許すとまで言ってきた

私にもいろんな友達がいるけど、ここまで優しい子はみゆきちゃんくらいしかいないだろう

私はみゆきちゃんを天使だと思っていたけど、むしろ女神様という言葉の方が合っているのではないかと思ってしまった

とはいえ、私がやったことは消えたりはしない

私はみゆきちゃんに誠心誠意謝罪した

それからしばらく雑談をしながら歩いていくと、桜女子学園の塀が見えてきた

そしてその先にある桜女子学園前駅のところの広場のツリーの下には何人もの桜女子の生徒たちが集まっていた

私はみゆきちゃんと一緒にツリーの下に行った


「あ、団長。それに歌姫様まで」


歌姫護衛騎士団の団員の一人が私たちに気付いてそう言うと、桜女子の生徒たちは一斉に私たちの方に寄ってきた


「皆さん、歌姫様は今はプライベートのお時間ですよ」


私がそう言うと、みんなは散り散りになった

ツリーの下に来ると、みゆきちゃんが小さな声で歌い始めた

少し聴いていると、急に歌声が震え出してきた

ちらっと様子を見ると、彼女の目から涙が溢れていた

そして、途中まで歌ったところで泣き出してしまった

みゆきちゃんが佐藤君をフったのは佐藤を思ってのことであることを考えると、自分からフってるとはいえ、彼女は失恋したことになる


(好きな人を思うがための失恋か…。どれだけつらいものかは分からないけど、きっと私が考える以上につらいんだろうな…)


私は泣いているみゆきちゃんを抱きしめながらそう思った

すると、その様子を見た学園生たちが集まってきた


「みらいさん、何があったんですか?」

「まあ…一言で言えば失恋かな…」

「………」


私がそう言うと、みんなは戸惑いだした

みゆきちゃんが桜女子の中等部を卒業した後、こもれび高校に行ったことを知ってる子はみゆきちゃんと相部屋だった私を含む3人だけだけど、共学の高校に進学したということはみんなが知っている

ただ、桜女子に通っている子たちのほとんどは箱入りのお嬢様たちばかりで、彼女たちは同年代の男子との接点がほぼ無く、それゆえに恋というものを知らない

だからこそ今、失恋して泣いているみゆきちゃんに掛ける言葉が見つからずに困惑してしまっているのだろう

中には『その人は歌姫様をフった不届き者だ』と言う子までいる始末だった

これが恋を知らずに育った箱入りのお嬢様たちなのか…

私はみゆきちゃんが泣き止むまで抱きしめて頭を撫でてあげ、泣き止んだところで一緒に寮に行った

寮の部屋では瑞希さんが一人で寂しく過ごしていた


「あら、ごきげんよう、みらいさん、みゆきさん…って、みゆきさん、どうしたの?目、凄いことになってるけど」


私は事の経緯を話した


「なるほど…。幼なじみの男の子の幸せを願って身を引いたけど、後になってそれがつらくて泣いてしまったと…」

「まあ端的に言えばそうだね。自己犠牲精神が過ぎると言うべきなのかなんなのかって感じだけど、そういうところも含めてみゆきちゃんらしいといえばらしいんだけどね」


私はそう言いながら自分の荷物を机に置き、上着を脱いだ


「ただ佐藤君…あ、その幼なじみなんだけど、彼、みゆきちゃんを諦める気は毛頭無さそうなんだけどね。また機を見て告白する気でいるらしいし」

「それだけ本気なんですね」

「まあ良く言えば一途、悪く言えば執着しすぎなんだけどね」

「どんな人なんですか?」

「ほら、この前の冬桜の会でみゆきちゃんと踊ったこもれび生がいたでしょ?彼が佐藤君だよ」

「あー、なるほど」


それから私と瑞希さんはしばらくの間、佐藤君のことで盛り上がってしまい、見回りに来た御子柴先生にお説教されてしまった

言葉の奥に隠された本心って分からないこと多いですよね。私もかれこれ6年半もとある場所の窓口で働いてて、来た人の言葉の奥に隠れてしまっている本心を聞き出せずトラブルになりかけることがちょくちょくあるんですよね…。まあ、人間と話すって本当に難しいですね。特に恋愛関連のことになると余計に本心が分かりにくいことが多い気がします。

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