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あまいろパステル 〜紡がれる恋の1ページ〜  作者: 神御田
2年生

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お昼休み4 歌姫を護りし者たち

佐藤幸二は、愛野みゆきの立場を知ってほしいという桜女子学園の意向により、冬桜の会に招待された。

そして彼は冬桜の会のダンスパーティーでみゆきと踊ることとなった。しかし、二人で帰宅しようとしたところ、数人の男子に囲まれ襲撃を受けてしまった。

するとそこに数人の女の子たちが駆けつけてきて…

2037年11月20日

俺は今、桜女子学園に来ている

ここは男子禁制の乙女の園

たとえ生徒の家族であっても保護者会や式典等の決まった日以外は立ち入ることができない

でも今日、俺はみゆきの元担任の御子柴先生に招待されてここに来ている

今日は冬桜の会というものがあるらしい

冬桜の会というのは、桜女子学園の次期歌姫を決める場らしい

ここで後任が決まらなかった場合、現在の歌姫がまた1年間、歌姫を務めることになるみたいだ

ここ数年では、アルト担当は1~2年程度で変わっているらしいが、ソプラノ担当はみゆきが中等部1年の時になったっきりずっと交代が無く、今年も候補生がいないことからソプラノ担当の交代は無いらしい

今回俺が招かれたのは、みゆきがどんな立場にいるのかを知ってもらいたいというのが理由らしい

俺は受付を済ませて門をくぐった

その瞬間、一気に空気が変わったような気がした

俺はまるで貴族階級の世界に迷い込んでしまった庶民のような感覚に陥った

道行く女子生徒たちはみんな可憐で非常にお淑やかだった


「ごきげんよう。どちらに行かれたいのでしょうか?」


一人の女子生徒が俺に話しかけてきた

どうやら俺が迷子になってしまっていると思ったらしい

まあ、実際どう行けばいいか全然分からないのだが


「えっと…本日こちらの御子柴先生とお約束しておりまして、高等部の1階の会議室に来るようにいわれてるのですが…」


俺がそう言うと、その女子生徒は俺を会議室まで案内してくれた


「失礼します。お客様をお連れ致しました」

「失礼します」


俺が一礼して中に入ると、そこには初老の女性が座っていた

確かこの方が御子柴先生だったはずだ


「ようこそ、桜女子学園へ。佐藤さん」


御子柴先生はとても優しい声で出迎えてくれた


「突然呼びつけて申し訳ありませんね。まずはそちらに座ってくださいな」


俺は指示された椅子に腰かけた


「お手紙を差し上げた通り、本日あなたには冬桜の会を見ていただければと思います。冬桜の会についてはどの程度ご存知ですか?」

「はい。確か、次期歌姫を決める場と…」

「そうですね。ですがそれだけではないのですよ」

「え?」


御子柴先生の一言に俺は驚いた


「冬桜の会というのは確かに次期歌姫を決める場ですが、実は桜女子学園の生徒が生涯のパートナーを見つけるための場でもあるのですよ」

「生涯の…パートナー…」


それってつまり結婚相手を探すっていうことだよな?

まだ高校生なのにそんなこと考えてるのかよ…


「もちろん全員が全員ではありません。ただ、ほとんどの生徒がこの冬桜の会でパートナーを見つけています。そして、その時だけは多くの男子生徒が本校を訪れます。姉妹校である桜木学園はもちろんのこと、他にも水萌女学園の姉妹校である水城学園、そしてあなたと愛野さんが通うこもれび高校の人もね」


まじか

じゃあ今日の会場にもたくさんのお坊ちゃまたちが来ているということか

なんか急に緊張してきたぞ…


「ではそろそろ行きましょうか。もうすぐ始まる時間になりますからね」

「はい」


俺達は御子柴先生と一緒に会議室を出て講堂に行った

桜女子学園の講堂は、こもれび高校の講堂とは比べ物にならないくらい広かった

おそらく4000人くらいは余裕で入るのではないだろうか

すると、後ろからぞろぞろと女子生徒たちが入ってきた

しかも明らかに高校生にしては小さい子たちも集まっていた


「冬桜の会の中で歌姫を決める場には中等部と高等部の両方の生徒が集まります。そして承認の多数決が行われ、承認されて初めて歌姫となることができるのです」

「なるほど…。じゃあみゆき…愛野さんも?」

「ええ。彼女は4年前の冬桜の会で、満場一致で後任として承認されましたよ。誰一人として、彼女が歌姫になることに反対する者はいませんでした」


それはすごいな

上手いとは思ってたけどまさかそれほどまでとは思いもしなかった


「あら、始まるようですよ」


壇上に一人の女子生徒が上がってきた


「皆さま、ごきげんよう。これより、第49回冬桜の会を開催致します。私、本日司会を務めさせていただきます、高等部生徒会長、2年3組の市川静香と申します」


その言葉と共に拍手が起こった


「開会の言葉に続きまして、現歌姫による合唱を行いたいと思います」


そう言うと二人の女子生徒がゆっくりと歩きながらステージの中央に立った

片方はみゆき、そしてもう片方は秋田さんだ

二人はマイクの前に立つと息を整えて歌い始めた


『~♪』


綺麗な歌声だった

今まで何度も聞いてきたはずの曲だったが、今日はいつも以上に美しく聞こえた

きっとこれが本物の歌姫というものなんだろう

曲が終わり、再び大きな拍手が起こる


「ありがとうございました。続きまして、次期歌姫の承認を行いたいと思います。まず、ソプラノ担当ですが、今年は候補生がいないということですので、引き続き愛野みゆきさんに務めていただきます。それでは、アルト担当の候補生の皆様、壇上にお願い致します」


生徒会長さんがそう言うと、3人の女の子が壇上に上がった

そして、生徒会長さんが名前を呼び、一人一人歌をみゆきと合唱する形で披露した


「御子柴先生、こういった場合はどうなるんですか?」

「候補生3人と秋田さんのうち、誰が最も歌姫にふさわしいかを投票で決めることになります」

「なるほど…」


御子柴先生の話によると、桜女子の生徒には入学してからずっと良い曲だけを聴かせてきたので、彼女たちの耳は非常に肥えてるらしい

だから、その判断は的確らしい

3人が歌い終えると、投票が始まった

投票の方法は、歌姫に相応しいと思った子の名前が呼ばれた時に立ち上がるという方法だった

投票にはゲストである俺はもちろんのこと、先生たちも参加することはできず、全て桜女子学園の中等部と高等部の生徒たちだけで行われるようだ

そして投票の結果、秋田さんが続投ということになった

候補生の3人は歌のレベルこそ秋田さんに劣ることはなかったのに何がいけなかったのだろうか


「愛野さんの歌声はこれまでに歌声で人を選ぶことはありませんでした。ですが今回の3人の歌声は愛野さんの歌声と喧嘩してしまった。おそらくは彼女たちの性格でしょうね」


御子柴先生は俺の心を見透かしたかのようにそう言った


「歌い手の心というものは歌声にそのまま現れます。愛野さんの歌声は非常にピュアで透き通ったもので、どんなものでも受け入れてしまうのです。ですがそんな彼女の声が拒絶するということは、彼女たちの真心は、歌姫には相応しくないということになるでしょうね」


俺には全く分からなかったが、御子柴先生や桜女子の生徒たちの耳にはその違いがはっきりと分かるのだろう

そんなことを考えていると、女子生徒たちが講堂をあとにした


「あれ?もう終わりですか?」

「中等部の子たちはそうですね。高等部の子たちはダンスパーティーのためにドレスに着替えに行ったのですよ」

「ダンスパーティー?あー、彼女たちが生涯のパートナーを見つける場って言ってたやつですか?」

「その通りです。佐藤さん、あなたはこもれび高校の男子生徒さんですのでこのパーティーに参加することもできますよ」

「ちなみに誘えない子っているんですか?」

「いえ、誰でも誘えますよ。生徒会長さんも、歌姫様も」


俺はその一言を聞いて安心した


「では、私はこれで失礼しますよ」

「え?」

「私たち教師はこのパーティーを見守ることしかできません。自由な恋愛を邪魔するわけにはいきませんからね」


そう言うと、御子柴先生は講堂を後にした

それから30分後、ドレスを着た女子生徒たちが講堂に入ってきた

その少し後、桜木学園と水城学園の生徒たちが講堂に入ってきた

こもれび高校の生徒も来ていたが、桜木学園や水城学園の生徒の数に比べれば圧倒的に少なかった

そして出入りが落ち着くと、生徒会長さんからダンスパーティーの開幕の挨拶が行われた

それと共に男子たちがいろんな桜女子の生徒たちに声をかけていた

その反面、桜女子の生徒たちも男子生徒に声をかけ始めていた

みゆきの方を見ると、みゆきのところにもたくさんの男子生徒が集まっていた

しかし、みゆきはみんなの誘いを断り続けていた

あの様子だと俺が誘ってもたぶんダメだろう

でも俺は一か八かで声をかけることにした

俺がみゆきのところに行くと、みゆきは断りを入れつつもどこか寂しそうな表情をしていた

俺は男子生徒たちの間に割って入った


「僕と踊っていただけますか?みゆきさん」

「え?」


俺が誘うとみゆきはびっくりしていた


「どうかされましたか?」

「い、いえ、何でもありません…」


するとみゆきは手を差し出してきた


「私で良ければ謹んでお受け致します」


俺はみゆきの手を取り、一緒に真ん中の方へ行った

すると、周囲が一気にざわついた


「歌姫様が…踊るだと?」

「え?隣の、こもれび高校の生徒じゃない?」

「うそ…信じられない」

「どうしてあんな奴が…?」

「おい、誰かあいつのこと知ってるか?」

「知らないわ…」


周囲の反応はこんな感じだった

そして、音楽が流れ出した

俺たちはステップを踏み始めた


「私、去年もこのダンスパーティーには出ましたの」

「え?」

「でも、結局踊らなかったんです」

「なんで?」

「私を私として見てくださる方が誰一人としていらっしゃらなかったんです。皆さん揃って歌姫様、歌姫様って…」

「………」

「立場的に仕方ないのは理解をしておりますけど、やはり私を一人の女ではなく、歌姫としてしか見てない方と踊ることはできませんでした…。ですから佐藤さん、あなたが私のことを名前で呼んで下さった時、非常に嬉しかったのです」


そう言いながら、みゆきは俺の顔を見て笑みを浮かべた


「あの…よろしければ来年も私と踊っていただけますか?」

「もちろん、喜んで」


そして曲が終わり、再び大きな拍手が起こった


「ありがとうございます、佐藤さん」

「こちらこそ、ありがとうございました」


俺はみゆきと別れた

その後、再びみゆきの周りには男子生徒が集まり始めた

しかし、その後みゆきが他の男子と踊ることは無かった

そしてダンスパーティー終了後、俺はみゆきと待ち合わせ、駅に向かった

すると駅の入口で俺たちの前に桜木学園の男子たちが立ち塞がった


「お前、何様のつもりだよ」

「は?」

「庶民の分際で歌姫様に手を出そうとするなんて身の程知らずもいいとこだな」

「いや、別にそんなんじゃ…」

「うるせぇ!歌姫様はな、庶民なんかと関わる必要は無いんだよ!」

「そうだよなぁ、歌姫様」

「わ、私は…」


みゆきは完全に怯えていた

やばい。これはまた男性恐怖症が再発するパターンかもしれない

しかし、俺の懸念は大きく外れた


「私は、あなたたちのように人を傷つけようとする人は大嫌いです。そ、それに、私を私として見てくれない人と付き合うことはできません!」


みゆきは脚をガクガク震わせながらも自分の思いをはっきりと言った


「皆さん、私のことを歌姫としか見てくれていませんでした。ですがそんな中彼は、私を歌姫ではなく一人の女として見てくださいました。私はそれが嬉しかった。だから彼と踊ったんです」


みゆきの一言に、男子たちはわなわなと震え始めた

そして奴等はターゲットをみゆきに変えて襲いかかってきた


「きゃっ!」

「危ない!」


俺は咄嗟にみゆきを庇った

そして、俺は顔にモロに貰ってしまった


「くっ…。大丈夫か?」

「う、うん…。ちょっと掠ったけど…」

「気に入らないからって女の子に手を上げるなんて男の風上にも置けねえ奴等だな」

「知るかー!」


奴等は再び襲いかかってきた

するとそこに何人もの足音が聞こえてきた

俺たちが音のする方を見ると、桜女子の制服の上に鎧を纏った女の子たちがこちらに向かって走ってきた


「やべっ、歌姫護衛騎士団だ!逃げろ!」


奴等は一目散に逃げ出した

しかし、奴等はすぐに歌姫護衛騎士団と呼ばれていた子たちにあっさりと捕えられてしまった


「つ、強い…」


そんなことを思っていると、俺も一人の女の子に捕らえられた


「さあ、あなたも来なさい」

「ちょっ、俺は…」

「待って!」


突然みゆきが叫んだ

すると俺を捕まえた子はそのまま止まった


「彼は私があの人たちに襲い掛かられそうになったのを守ってくれたの。彼は何も悪くないの」

「こ、これは失礼致しました」


俺は即座に解放された

手首を見ると、しっかり手痕が残っていた

痛いとは思ってたけどこんなに強く握られてたとは思いもしなかった


「ですが姫、彼も此度の事には関わってる故、ただ解放するというわけにはいきません。ですので事情聴取だけはさせていただいてもよろしいでしょうか?」

「その程度なら…。ですが私の恩人ですので丁重にお願いします」

「はっ」


俺はみゆきと一緒に桜女子に連れて行かれた

ちなみに俺たちを襲った男子たちは、ロープで縛られて連行されていた

あれ、問題にならないのだろうか

そして俺たちは全員、会議室に連れて来られた

そこには鎧を纏った女の子たちがたくさんいた

そしてみゆきが入ってくると、彼女たちは片膝をついて頭を下げた


「副団長、姫を襲った者たちを捕らえました」

「ご苦労様」


俺たちを襲った男子たちは縛られたまま椅子に座らされた


「そっちの男は?」

「彼は姫が襲われそうになっているところを助けた者のようです」

「そうですか。それで、姫にお怪我は?」

「彼が庇ってくれたおかげでなんとか。ただ、この者たちが彼を殴った際に衝撃を受け止め切れずに彼の頭が姫の頬に少々当たってしまったとのことです」

「なるほど。まあそれなら仕方ありませんね」


そう言うと副団長と呼ばれていた子は、縛られてる奴等の方に向き直った


「さて、お前らは我らが姫を危険に晒したようだが、何か弁明はあるかな?」


副団長さんがそう言うと、奴等は色々と喚き出した

聞く限り、自分たちの正当性と原因がみゆきが一緒に踊らなかったことにあると言いたそうな感じだった

正直、聞いているだけでかなり胸糞悪かった

その時、副団長の横にいる女の子が床に鞭を叩きつけた

てかなんで鞭なんて持ってんだ?


「お前たちの主張は分かった。だがその行動に正当性などどこにも無い!お前たちは自己中心的な考えで姫と彼を恨み、今回のような蛮行に及んだだけだ!」


奴等は黙り込んでしまった

なんかこうして見てると、副団長が女王様に見えてくる

でも完全な女王様には見えない

それはおそらく、彼女たちからしたら歌姫様の方が上だからなのだろう


「此度のお前たちの蛮行は見過ごすことはできない。このことは学園を通して桜木学園の方に通達してもらう。そして、お前たちは姫はもちろん、桜女子学園の生徒に近づくことを禁止する。これを破るようなことがあれば、次は容赦しないからな」


副団長さんは声のトーンを下げてそう言った

正直、すごく怖かった

そして奴等はロープを解かれ、女の子たちに囲まれながら桜女子を追い出されていった

窓の外を見ると、奴等は一目散に逃げて行った

次の瞬間、副団長さんがこちらに向き直った


「あなた、こもれび高校の生徒ですね?」

「は、はい」

「私、歌姫護衛騎士団の副団長をしております『大槻真紀』と申します。このたびは姫を護っていただきありがとうございました」

「い、いえ、俺は別に…」

「本来であれば団長から御礼を申し上げるところですが、不在にしております故、私から代わりに御礼申し上げます」

「な、なるほど…」

「お名前を伺ってもよろしいですか?」

「はい。佐藤幸二と言います。そういえば、団長さんはなぜ不在に?」

「それについては今はお答えできません。団長の命令ですので」

「なるほど…」


おそらく、何かしら話せない深い事情があるのだろう

深追いはしないほうが良いかもしれない


「佐藤さんはどちらにお住まいですか?」

「はるかぜ市に…」

「でしたら本日はうちの寮に泊まっていって下さい。今から帰っても、こもれび高校からのはるかぜ線の終電には間に合いませんし」

「え?」


俺は時計を見た

時計は22時10分を指していた

こんな時間だとどう足掻いてもこもれび高校からの終電には間に合わない


「お気持ちはありがたいですけど、俺、男ですよ」

「もちろん存じております。ですがこの辺りは桜木市の条例でホテル等もありませんし、本日はうちに泊まっていただくのが一番かと思います」

「な、なるほど…。でもみんなびっくりしませんか?女子寮に男がいたら」

「それに関しては問題ございません。私と姫が一緒にいれば、私たちのお客様だと皆認識してくれるでしょう」

「そ、そういうものなんですか…。そういうことでしたらお願いします」

「分かりました。あれ?姫は?」

「今し方、お花を摘みに行かれました」

「お部屋の手配は?」

「はい。菜穂子さんから空き部屋を用意したと連絡がありました」

「では私は姫が戻り次第、お二人と寮に向かう。みんなは先に行っててくれ」

「はっ」


他の子たちは一斉に会議室を出て、会議室内には俺と副団長さんだけが取り残された


「ところで、なんで歌姫護衛騎士団のみんなは歌姫様を姫って呼んでるんですか?」

「強いて言うのであれば、指示を端的に伝えるためです。一言一言が長ければ指示が伝わるまでに時間がかかってしまいます。ですが短い単語を使うことで、より簡潔に伝わりやすくなります」

「なるほど。要は効率に焦点を置いた結果ってわけですね」

「端的に言えばそうですね」


そんな話をしていると、みゆきが会議室に戻ってきた

俺たちは寮に向かった


「そういえば佐藤さんは姫とはどのようなご関係で?」

「幼なじみです。親が彼女の親と親友でして、家も隣同士なんですよ」

「ちなみに佐藤さんは姫を一人の女性としてはどのように思っていますか?」

「さ、流石に本人の前で言うのは恥ずかしいというかなんというか…」

「なるほどなるほど…」


副団長さんは何かを察したような様子だった

もしかしたら俺がみゆきのことを好きだってバレたか?

でもみゆきの前でそれを聞く度胸は俺には無かった


「着きましたよ」


副団長さんはそう言って、目の前の建物を指差した


「ここが我が桜女子学園の女子寮です」


副団長さんはそう言いながら門に何かをかざした


「何してるんですか?」

「桜女子学園は、教室やお手洗い等の全ての施設が施錠されておりまして、利用する際には学生証をかざさなければならないのです」

「トイレも!?それ漏らす子とかいないんですか?」

「初等部と中等部は、毎年1学期にはそのような者もそれなりに出てくるのですが、2学期にもなれば余程体調が悪いとかでなければおりません」

「確か真紀さんも2回くらいお漏らししちゃってたよね」

「ひ、姫、その話は…!」


副団長さんはかなり慌てていた

どうやら本当のことのようだ

まあでも、その生活に慣れてなきゃ必然的にそういう失敗をしてしまう子も出てくるのだろう


「ちなみにみゆきは何回やらかしたの?」

「佐藤さん、姫にその口の利き方するとうちの団員に…」

「私、彼にはこういう話し方をするように求めていますので全く問題ありませんよ」

「それは分かりましたが、まだお触れを出しておりませんので…」

「あー…」

「お触れ?」

「姫は当学園では非常に神聖な立場のお方。その方に無礼な振る舞いは誰であろうと許されないのです。ですが例外として、姫がそのような振る舞いを認めた者のみはそれを許されるのです。それを生徒たちに通知するのがお触れです。本来は団長が出すのですが、今は私が出しております」

「団長さんの権限って色々あるんですね」


俺は二人に連れられて寮の中へと入った

一瞬女の子たちがざわついたが、副団長さんとみゆきに連れられてる様子を見て理解した様子だった

俺は3階の部屋に通された


「今夜はこちらをお使い下さい。入ってすぐ左に2つの扉がありまして、右手がお風呂、左手がお手洗いとなっております」

「お風呂…」

「どうかなさいましたか?」

「い、いえ…」


俺は女の子が使っているお風呂に入るのか…

正直かなり緊張する


「今は空き部屋ですのでご自由にお使い下さい。お食事はどうされますか?」

「まあもう遅いし、今夜はいいよ」

「そうですか。それでは何かあればお呼びください」

「うん。ありがとう」


副団長さんは一礼をして部屋から出て行った

俺はベッドに腰掛けた


「ふぅ…」


まさかこんな形で女子校の寮に来ることになるなんて思いもしなかった

部屋を見渡すと、入口の方にキッチンらしき場所があった

そういえば風呂、トイレ、キッチンありでさらに洗濯機、電子レンジ、冷蔵庫等の家電一式完全完備で、寮生活というよりアパート暮らしに近いってみゆきが言ってたっけ

とりあえず俺はシャワーを浴びることにした

服を脱いでお風呂に入ってみると、中はポカポカしていた

どうやら暖房が入っているようだ

それにお湯も張ってあったのでゆっくり浸かれそうだった

シャワーを浴び始めてすぐ、誰かがドアをノックしてきた


「佐藤君、私だけど」

「ん?みゆきか。どうしたの?」

「明日なんだけど、出発10時でいい?」

「微妙に遅めなんだな」

「うん。それとももう少し遅い方がいい?」

「いや、そこはみゆきに任せるよ。どちらにせよ俺一人で寮内を動くのはやばいだろ」

「確かにね。じゃあ私の準備が全部終わるまで待ってて」

「おう」


俺が返事をすると、ドアを開け閉めする音が聞こえた

たぶんみゆきが部屋を出たのだろう

俺は体を洗い、湯船にゆっくりと浸かって風呂を出てベッドの上に座った

ベッドからは微かに女の子の匂いがした

直後、部屋に誰かが入ってきた


「あれ?佐藤君?」

「飯島?なんでここに?」

「用事があって近くに来てたんだけど終電逃しちゃってね…。幸い私も桜女子に籍置いてるからこうやって泊まることもできるの」

「便利なんだな」

「まあ私がこっちにも籍があるのには理由があるんだけどね。それよりもなんで佐藤君が桜女子の寮の、それも私の部屋にいるの?」

「え?歌姫護衛騎士団の副団長さんとみゆきに連れて来られて寮母さんにここに泊まるよう言われたから…」


どうやらベッドから微かにする女の子の匂いは飯島の匂いだったようだ


「じゃあ俺は上の段使えばいい?」

「まあもう仕方ないからそれで…」

「佐藤さん、少々お話が…って団長!?」


俺たちが話していると、そこに副団長さんが入ってきて、飯島を見てびっくりしていた


「ごきげんよう、大槻さん」

「ごきげんよう。いつこちらに?」

「ついさっきよ」

「あの…団長って…」

「私のこと」

「ええ!?」


俺は驚いて声を上げてしまった

話によると、不在にしている歌姫護衛騎士団の団長というのは飯島のことらしい

確かにこいつは普段こもれび高校にいるので桜女子は不在にしている

まさかこんなすぐそばにいるとは思いもしなかった


「まさか姫だけでなく団長の知り合いでもあったなんて…」

「そりゃずっとみゆきちゃんのそばにいるんだから当たり前じゃん」

「い、言われてみれば確かに…」


副団長さんは飯島の指摘にあっさり納得していた

この副団長さん、ちょっと抜けてるとこがあるみたいだ


「でもさ、なんで飯島は…」

「貴様、我等が団長に何て口を…!」

「おやめなさい。彼がこのように私に接することは私が容認しています」

「これは失礼致しました!」

「ごめんね、佐藤君。彼女、歌姫様や団への忠誠心の高さゆえにすぐ突っ走るところがあるの」

「そ、そうみたいだな」

「それで、私が何?」

「いや、なんでこもれび高校に通ってるのかなって。だって団長が不在はまずいだろ」

「そりゃ護衛任務のためだよ」

「へ?」

「みゆきちゃん、つまり歌姫様の護衛」

「あー…」


そういえば副団長さんが言ってたな。歌姫護衛騎士団は常に歌姫様のそばにいるって

つまり飯島はみゆきが歌姫様の地位のままこもれび高校に来ちゃったから、護衛のためについてきたというわけか

ただそれにしても1つ疑問が残った


「でもさ、なんで団長の飯島がわざわざ?他の子でも良かったんじゃないの?」


そう。俺が引っかかったのはそこだ

歌姫護衛騎士団のメンバーはさっき会議室にいただけでも30人は余裕でいる

なのにわざわざ団長がみゆきについてきた理由がよく分からない


「他の団員も7人こもれび高校に入学してるよ。まあみんな文系クラスだけど…」

「つまり団員が8人もうちにいるの?」

「うん。でも歌姫様の周りに誰もいないのはまずいから、同じ理系進路の私がみゆきちゃんのそばについてるの。まあみゆきちゃんの成績、びっくりするほど高いから同じクラスを維持するのは並大抵の努力じゃ到底無理だけどね」

「お、おう…」


飯島は今、俺に次いで学年3位だ

こもれび高校は最難関の高校というだけあって頭の良い奴がゴロゴロいる

そんな中でトップ10なんて並大抵の努力で取れるようなものじゃない

ましてやトップ3ともなると、努力のレベルだって他とは比べ物にならない

それに飯島は去年の1学期の期末試験では学年6位だった

そこから3位まで上り詰めたのだからその努力は生半可なものじゃないだろう


「佐藤君、1個お願いしたいことがあるんだけどいいかな?」

「何?」

「みゆきちゃんや他のこもれび生には私が歌姫護衛騎士団の人間だってことは伏せておいてもらえるかな?護衛をするって意味では身分を隠してた方がやりやすいから」

「分かった」


俺は素直に承諾した


「それで団長、報告の方は…」

「明日でいいかしら?今日はもう眠いので」

「はっ」


副団長さんは部屋を出て行った

部屋の中には俺と飯島の二人きりになってしまった


「さて、私たちも寝よっか」

「だな」


飯島は部屋の電気を消し、ベッドの下の段の布団に入った

俺はその上の段の布団に入った

しばらく沈黙が続いた後、飯島が俺に声をかけてきた


「ねえ佐藤君、今でもみゆきちゃんのこと、好き?」

「へ?何だよ藪から棒に」

「みゆきちゃんを守る身としてはそういうことは把握しておきたいの」

「まあ…好きだよ」

「その『好き』は幼なじみとか友達とかとして?それとも一人の女の子として?」

「根掘り葉掘り聞いてくるなぁ…。後者だよ」

「じゃあさ、もしみゆきちゃんが佐藤君のことを好きって言ってきたら、みゆきちゃんを彼女として守っていくって誓える?」

「お前はみゆきの母親かよ…。もちろん誓うさ」

「そっか。じゃあ明日、私に付き合ってくれる?」

「なぜ?」

「佐藤君に色々教えたいことがあるの」

「?」


飯島は一体何がしたいのだろうか

俺がそれを聞こうとした時、下から寝息が聞こえてきた

どうやら飯島は既に眠っているようだ


「まあいいか…」


俺はそう呟いて目を閉じた

翌朝、目が覚めると飯島がキッチンで朝食を作っていた


「おはよう、佐藤君」

「ああ、おはよう…」

「朝ごはんもうすぐできるから待ってて」

「ああ」


俺は待ってる間にみゆきに連絡した

みゆきからはすぐに「OK」と連絡が来た

しばらくして、飯島が料理を持ってやって来た

俺は飯島と一緒に朝食を食べた

朝食が終わると、飯島はいきなり服を脱ぎ始めた


「ちょちょ飯島、俺いるってば」

「大丈夫だよ。別に下着姿になるわけじゃないから。でもあんまり見ないでほしいかな」

「はいはい」


俺は飯島が着替えてるそばで部屋を出る準備を始めた

と言っても俺は特に何も持って来てないので、すぐに終わった

俺が準備を終えて5分くらいすると、飯島も着替えを終えた

着ていたのはこもれび高校の制服ではなく、桜女子の制服だった

どうやら今から学園に連れて行かれるようだ

俺は飯島と一緒に桜女子学園に行った

歌姫護衛騎士団の客ということで俺が一人で来た時よりはスムーズに受付が済んだ

そして俺は校舎の裏にある大きな建物に連れて行かれた


「ようこそ。歌姫護衛騎士団本部へ」

「えっと…俺はここで何を教わるんだ?」

「佐藤君には明日から毎日、歌姫護衛騎士団の修練に参加してもらうから」

「はい?」

「佐藤君、昨日私に言ったよね?みゆきちゃんを守る覚悟があるって」


あの質問はそういうことだったのか

確かに覚悟はあるけどまさかそれで歌姫護衛騎士団の修練に参加することになるとは思いもしなかった

その後、俺は修練について色々説明を受けた後、みゆきと合流して三人で一緒に帰った。

この話、実は桜と乙女と歌姫の声の話の展開を考えていた時にふと思いついたものなんです。ただ、本編にするほどの内容じゃないなと思ったのでお昼休みにしました。だってお姫様が出るならやっぱ騎士も欲しいよねとかいう安易な考えでできたやつですから…。

その辺り、皆さんはどう思いますか?やはりお姫様と騎士はセット?それともどっちか片方だけ?それとも第3の選択肢?良ければコメントで教えて下さい。

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