22時間目 声を取り戻した歌姫
※この話は21時間目の後編です
2037年10月10日
第3回公演の後、俺は石川、みゆき、飯島の3人と一緒に食堂に来た
みゆきも今だけはこもれび高校の制服に着替え、今はすっかりこもれび生モードだった
「やっぱ桜女子学園も水萌女学園もお嬢様揃いだな。桜女子の子たちはみゆきが出た時は騒がしかったけど、他はすっごい静かだったじゃん」
「まあ桜女子も水萌も大半は生粋のお嬢様たちだし、外部生も1年の最初から徹底的に作法を叩き込まれるしね」
「担当の御子柴先生、かなり厳しい人だったもんね」
「そうそう。授業中は常に正座だし、礼に欠くことをするとすぐ叱られたもんね」
「みらいちゃん、正座崩して先生に叱られたことあったもんね」
「あれは痺れたから少し楽な座り方に変えようとしたら足攣ったんだってば…」
「そう言うみゆきも叱られたんじゃないの?」
「ううん、みゆきちゃんは全く。授業中はずっと綺麗な正座してたし、言葉遣いだってすぐに習得してたから。叱られたのはたぶん作法に縛られ過ぎて融通が効かなかったことだけだよね?郷に入れば郷に従えって」
「へー、なんか意外だな」
「あの時はもう歌姫になった後だったから醜態は晒せないって気持ちでいっぱいいっぱいだったから…」
「まあ昔のみゆきは一つのことに意識が行くと周りが見えなくなること、よくあったもんな」
「あぅ…」
普段はド正論で攻めてくるみゆきにも弱点はある
それは長いこと友達付き合いしてきた奴にしか分からない
そのくらいみゆきには隙が無いのだ
正直なところ、口でみゆきに勝てる奴は俺たち幼なじみくらいしかいない
「そういやみゆき、午後は秋田さんにステージ出てもらうんだろ?歌えるようになったの?」
「ううん」
「えっ…」
「いやいやいやいや、どうすんだよ」
「一言で言うなら…荒療治?」
「んな無茶な…。考えあるとか言ってたのは嘘か?」
「いや、たぶん考え自体が初めから荒療治だったとかなんじゃ…」
「みらいちゃん、半分正解」
「半分?」
みゆきは事情を話してくれた
どうやら秋田さんはみゆきと二人きりで、かつみゆきが歌っている時であれば歌えているらしい
ただ、ひとたびみゆきが歌うのをやめると、すぐに声が出なくなるようだ
つまり、秋田さんは歌うことが怖いというよりは、人前歌うことと一人で歌うことが怖いようだ
一人で歌えないのはともかく、人前で歌えないのは立場上致命的だろう
みゆきは当初から、レッスン中になんとか歌えるようになることを目標とし、ダメなら荒療治に走るという予定だったそうだ
しかも荒療治については桜女子から許可を得てるらしい
何とも用意周到な奴だ
「まあ愛野の方針は分かったんだけど何する気だ?」
「そろそろ来ると思うんだけど…」
「?」
すると俺たちのところに桜女子の制服を着た1人の女の子と私服の女性がたくさん現れた
「みゆきさん、お連れしましたよ」
「ありがとうございます」
「え?知り合い?」
「皆さん、元歌姫の方なの」
「はい!?」
「後輩の歌姫のためとなりゃ、集まらないわけにはいかないでしょ」
どうやら皆さん、秋田さんのためにみゆきの呼びかけで集まってくれたらしい
みゆきが今話していたのが、いつも話していた先輩歌姫の「松本花鈴」さんと「篠田晶」さんらしい
しかも格好を見る限り、松本さんに至ってはつむぎの歌劇団の一員
そんな人を呼べるとか凄すぎるだろ
そして唯一、桜女子の制服を着た女の子が、秋田さんの前の歌姫の「木村ゆみな」ちゃんらしい
「でもこんなに呼んでどうするの?」
「佐藤君、スケジュール表に違和感なかった?」
「え?そういや今日だけ午前にしかステージが無かったような…」
「実は元歌姫の皆さんと私と凛ちゃんで、今回ちょっとしたステージやるために空けたの。もちろん学校からも桜女子からもしっかり許可得てるよ」
「はあ!?」
いやいやちょっと待て
出演者が全員歌姫と元歌姫とか豪華どころの騒ぎじゃねえだろ
これ一体どんなステージになるっていうんだ?
「あ、もちろんやるのは白銀の騎士と王国の歌姫じゃないから安心して。このメンバーでそれやるには人数多いし、クラスのみんなのプレッシャーになっちゃうから」
「お、おう…」
まさか謎のスケジュールの背後にこんなとんでもないステージが計画されていたとは思いもしなかった
そして今日午前中だけだったのもアリア王女役が不在だったからのようだ
俺たちはみゆきのプランに唖然とするしかなかった
その時、校内放送が流れた
--ご案内致します。午後1時30分より、体育館にて桜女子学園の歌姫の皆様による特別ステージが行われます。ご覧になりたい方は体育館にお集まり下さい。なお、視聴覚室および講堂においても、ステージの様子を中継致しますので併せてご利用下さい。繰り返しご案内致します。午後1時30分より…
どうやらマジでやるようだ
てかなんで桜女子の文化祭じゃなくてこもれび高校の文化祭を選択したんだろうか
俺が理由をみゆきに聞くと、「桜女子の文化祭までにというリミットがあるから」ということらしい
元歌姫の皆さんは先生の案内で体育館に移動した
そして俺たちは教室に戻った
その後みゆきは再び桜女子の制服に着替え、ドレスを持って秋田さんと一緒に体育館に行った
もちろん場所は分からないということになっているので飯島が案内役として一緒に行った
------Miyuki's View------
舞台袖に行くと、お姉様方が準備をしていた
「あの、みゆきさん。もしかして私に白銀の騎士と王国の歌姫と関係ない歌をたくさん練習させてたのってこのために…」
「うん」
「でも私…」
「私だって怖いよ」
「え?」
「私、桜女子に入った頃は今よりも遥かに臆病で、歌姫候補生のステージ慣れのために花鈴様たちとステージに立つ時だって、初めは直前に逃げ出したこともあるの。今はそこまでではないけど、ステージが怖いって思ってるのは今でも同じ。怖くて、今でも逃げ出したいって思ってる。でも、そんな私の歌を楽しみにしてくれる人たちがいる。それなら私もその人たちの思いに応えてあげないとって思えるから、私は今も歌姫を続けていられるし、ステージに立ててるの」
「みゆきさん…」
「そうだね。確かみゆきちゃん、初めてのステージの時はものすごい怖がってトイレから出てこなかったくらいだもんね」
「みゆきさんがそんなことを…」
「その節は本当にご迷惑をお掛けしました…」
「あの時は推薦する人を間違えたかなって思いましたけど、みゆきさんはステージを重ねるごとに成長し、恐怖を乗り越え、私以上の活躍を見せてくれて…。今では私の後任がみゆきさんで本当に良かったと思っていますわ」
「花鈴様…」
「だから…ね。凛ちゃんも頑張ろう」
「凛様なら大丈夫です」
「は、はい…」
------Koji's View------
俺たちは体育館に来た
しかも早く来れたおかげで先頭の真ん中の位置を確保できた
その後もたくさんの人が体育館に訪れ、体育館は満席となった
時間になると体育館が真っ暗になった
そしてステージ再び明るくなると、たくさんの女性たちが3列に並び、その先頭の真ん中にはみゆきと秋田さんが立っていた
しかも全員、みゆきたちと同じようにドレスを着ていた
そしてみゆきと秋田さんだけはティアラを着けていた
あれが歌姫のティアラってやつだろうか
そんなことを思っていると、いきなりピアノの伴奏が流れ出した
------Rin's View------
演奏が始まった
私は歌い出そうとしたが、やはり声は出なかった
やっぱり私はもう歌えないんだ…
そう思っていたら、横で歌っているみゆきさんが私の手を握ってきた
その手は少し震えていた
さっき言ってた「ステージが怖い」というのはどうやら本当のようだ
でも私はその反面、みゆきさんの手の温もりに心が救われた
私は一人じゃない
私にバトンを渡してくれたゆみなちゃん
落ちこぼれていた私に歌い方を教えてくれた晶様
私を助けたいという思いで集まってくださったOGの方々
そして何より、こんなことになった私を見離さずに支えてくれたみゆきさん
そんなたくさんの人の支えがあって私は今、歌姫でいられている
だったら私は皆さんに恩を返すため、精一杯歌うべき…
ううん、私は…歌いたい!
「♪〜」
………!
声が…出た!
どう頑張っても出せなかったのに今では前みたいに歌えている
私は嬉しさでいっぱいになった
その時、みゆきさんが私に目配せしてきた
私は一人じゃない。もう怖くない
私はありったけの想いを込めて歌った
------Miyuki's View------
演奏が始まった
この曲は私が歌姫候補生だった頃、花鈴様たちと一緒に歌った曲
難易度はそんなに高くないから、凛ちゃんの声を取り戻すために歌わせる曲としては難しくないと思って選択した
私は横目で凛ちゃんを見た
凛ちゃんは相変わらず歌うことができていなかった
その時、私は凛ちゃんの手がすごく震えていることに気付いた
たぶんステージへの恐怖心がかなり強く出ているのだろう
私は凛ちゃんの手を握り、歌い続けた
いつもは胸の前で手を組んで歌うけど、今日はそれはしてなかった
それから少し歌が進んだ後だった
「♪〜」
「♪〜(………!)」
なんと凛ちゃんが歌い出した
荒療治が功を奏したのかは分からない
でも凛ちゃんはすごく嬉しそうだった
私が軽く目配せすると、凛ちゃんはそれに気付いたみたいだった
凛ちゃんは自分の想いをたくさん込めて歌っている
しかも完全に私が置いてけぼりになるほどだった
本当なら主旋律を置いてけぼりにするのはまずいけど、凛ちゃんは今、それだけの想いを伝えたいということだろう
これは私も負けてられない
私は凛ちゃんに負けないように自分の気持ちをしっかり込めて歌った
------Koji's View------
演奏が始まったと同時にみゆきたちが歌い出す
しかし、秋田さんは様子が変だった
もしかしたら声がまだ出ないんじゃないだろうか
すると突然、みゆきが秋田さんの手を握った
何の意図があるのかは分からないけど、みゆきはそのまま歌い続けていた
それから少しすると、秋田さんが歌い出した
もしかしたらみゆきが手を握ったことで何か心情に変化があったのかもしれない
次の瞬間、秋田さんの歌声が変わった
それはまるで自分の今の想いをありったけ乗せているかのようで、主旋律を歌うみゆきが完全に置いてけぼりになってしまっていた
でもそこはやはり歌姫様というべきか、みゆきはすぐに立て直してしまった
想いの強さはお互い同じのようだ
「良かったな。秋田さん、また歌えるようになって」
「ああ。みゆきのそばに置くことに意味があるってこういうことだったのかもな」
「は?」
「この前桜女子に依頼に行った時、帰る時に御子柴先生が教えてくれたんだ」
〜回想〜
「あの、御子柴先生。どうしてうちに秋田さんを?歌姫様が襲われた事件、組織的な事件の可能性が騒がれてるのに愛野さんの近くに置いてしまえば二人して襲われる可能性もあるのに…」
「そうですね。確かに二人を同じ場所に置いてしまうのは危険です。でもそちらにも団員がいるみたいですからそこはあまり気にしなくても大丈夫です」
「団員?」
「ああ、それはこちらのお話ですのでお気になさらず。それで凛さんがこもれび高校に行った理由ですが、それはみゆきさんと一緒に置くためです」
「そこに関しては担任よりお話は伺っております。ですが彼女と一緒に置くことにどのような意味があるのかが皆目見当がつかなくて…」
「そうですね…。言うなれば、みゆきさんは歌に対する強い愛を持っているけど、臆病だから。そして彼女がみゆきさんを信頼しているから…といったところですかね」
「?」
「まあ、みゆきさんが昨日連絡してきた内容からして、その答えはこもれび高校さんの文化祭の時に分かるでしょう」
「はあ…」
〜回想終了〜
「最初は意味が分からなかったけど、たぶんこういうことなんだと思う。みゆきと秋田さんには歌に対する強い愛がある。その一方でみゆきは超がつくほど臆病。そんなみゆきが歌ってる姿が秋田さんに勇気を与えてくれることを期待してたんじゃないかな?あるいは秋田さんが負けず嫌いなら、みゆきに負けてられないと思って気合いと根性で歌ってるかだな」
「理由は何にしても、愛野に感化されてまた歌えるようになることを期待したってわけか…」
「ここんとこみゆきが歌ってるのはうちの校内だけだから、みゆきが歌う場にってなるとどうしてもうちに来ないと無理だった。だから秋田さんを交換交流生としてうちに送り出したんだろうな」
「愛野が校内でしか歌ってないのは何か理由が?」
「襲撃事件以来、桜女子が歌姫様への依頼を突っぱねてるからな。でもみゆきはこもれび高校のイチ生徒として行事で歌う分には何も咎められないし、授業で歌わせるのだって単にこもれび高校の生徒に歌わせてるだけだから問題にならないんだよ。だから結果的にみゆきが歌えるのはこもれび高校の中だけになるんだよ」
「なるほどな」
「まあこのステージは桜女子の歌姫として出る関係でかなり手続きめんどかったらしいぜ。依頼自体お断りな事情が事情なだけにな。これは噂だけど、桜女子がOK出したのだって、こもれび高校、桜女子学園、水萌女学園の3校の関係者しか入れない今日だけだったみたいだぜ」
「マジか…」
この話をみゆきに聞かされた時は俺もびっくりした
実は牧野たちも秋田さんに依頼を出そうとしたらしいが、襲撃事件を理由に断られたそうで、結局みゆきだけに依頼することになったらしい
でもみゆきが歌姫として歌う曲のほとんどは、ソプラノとアルトのハーモニーが売りだったり、ソプラノとアルトで主旋律の入れ替わりが発生するものだったりする
そうなれば必然的にアルトパートを歌う人が必要になってしまう
そのため、牧野はクラスの歌が上手い女子を集めてみゆきと一緒に歌わせたらしい
しかし、桜女子で厳しいレッスンを受けて歌姫になったみゆきの歌唱力は圧倒的で、どうしてもアルトが劣りすぎてしまうことから最初はみゆきに妥協するよう頼んだらしいが、それは歌姫として歌う上での禁則事項ということで突っぱねられたらしい
その結果、当初予定していた曲目を完全に一新するハメになったと聞いている
まあ、その結果どうなったかは後で行ってみれば分かることだろう
さらにみゆきたちは来月の合唱祭でこもれび生が歌う予定の曲全てを披露してくれた
俺たちはその歌唱力に圧倒されてしまった
ただ、牧野が言ってた歌唱力の話についてはこれを聴いてよく分かった
こりゃ並大抵の歌い手じゃ歌唱力の差が露骨に現れてしまう
やはり歌姫の相方は歌姫じゃないといけないのだろう
全ての曲を歌い終えると、会場からは大きな歓声と拍手が飛び交った
そしてみゆきたちが「ごきげんよう」と挨拶をすると、幕が閉じられた
体育館に来ていた人たちは興奮冷め止まぬまま体育館をあとにし、最後は俺と石川、そして飯島だけが残った
少しすると、みゆきたちがステージの出入口のところから出てきた
すると小林先生たちが体育館に来て先輩歌姫の皆さんを案内して行き、みゆきと秋田さんだけが残った
俺たちは二人と一緒に教室に行った
時間を見ると、1回くらいならできそうな時間だった
でも今の来場者の興奮状況だと、やったところでみんなまともに見てくれないような気もする
すると立花が声をかけてきた
「佐藤、どうする?あと1回ならできると思うぜ」
「いや、やらない。さっきのステージの余韻が残った状態でやってもまともに見てもらえるとは思えんからな」
「確かに」
「それにバックアップのお姫様がこの状態じゃあな…」
俺はみゆきたちの方を向いた
みゆきたちは疲れきってしまって眠ってしまっていた
そういえば歌姫としてステージに立つのはかなり精神的にも疲れるって言ってたっけ
特にみゆきは朝から3ステージもやってからあのステージをやっていたので疲労がピークに達したのだろう
「お疲れ様、みゆき」
俺は上着を脱いでみゆきにかけてあげた
クラスのみんなもみゆきの様子を見て静かに喋り、動いた
「それにしても愛野さん、寝顔もかわいいな」
「こーら、女子の寝顔を覗くのはマナー違反だよ」
飯島は俺とみゆき、秋田さんがいる区画をカーテンで覆ってしまった
そして飯島も自分の上着を脱いで秋田さんにかけてあげた
「もしかしてみゆきちゃんの寝込みを襲う気?」
「どうしてそうなる…」
「だって女の子が寝てるところにいるってそういうことじゃないの?」
「そんな気さらさら無い」
「ホント佐藤君って真面目だよね。こんな食べやすい据え膳にすら手をつけないんだから」
「お前の中での俺の評価どうなってんだよ…。いくら好きとはいえ、本人が嫌がることをするのは違うだろ」
「いやまあそうなんだけど…」
俺は飯島に壁ドンをして顎をくいっと持ち上げてやった
「ちょっ、佐藤君?」
「好きでもない相手にこんなことされてどうだよ」
「そりゃ嫌だけど…でも一瞬ときめいた」
「………」
俺は飯島の胸に手を近付けていった
すると飯島は俺の腕を掴み、思いっきり投げた
「いって!」
「私の胸触ろうなんて100年早いよ」
「いてて…。とにかく飯島だって胸触られるのは嫌だったってことだろ?要するにそういうことだよ。てか飯島、お前めっちゃ強いな…」
「まあこれくらい強くなきゃね。じゃないと…」
「じゃないと?」
「ううん、何でもない」
「?」
飯島は何かを隠してる様子だった
ただ、その直前に一瞬みゆきを見ていたのを俺は見逃さなかった
もしかしてみゆきと何か関連性があるんだろうか
「うーん…」
「あ、秋田さん、おはよう」
「おはようございます…」
秋田さんはちょっと寝ぼけ気味に返事をしてきた
起きがけだから仕方ないのだろうが、こんなとこ他の男子が見たら幻滅するかもしれないな
「みゆきはまだ寝てるな…」
「かなり緊張してたんだと思うよ。長いことステージに立ててなかったから余計にね」
「なるほど…」
しかし、結局みゆきは放課後になっても起きることはなかった
俺は飯島と秋田さんに俺とみゆきの荷物を持ってもらい、みゆきをおぶって帰宅した
ただ、みゆきは家に着いても起きなかった
俺は秋田さんを家に招き、みゆきをおぶったまま家に入り、俺のベッドに寝かせてあげることにした
ただ、そのまま寝かせてしまうと制服がシワになってしまうので、飯島にみゆきの上着とスカートを脱がせて寝かせてもらった
〜夜〜
「飯島、帰らないのか?」
「今帰ったらみゆきちゃんを下着姿にしたのが佐藤君って疑われるよ?」
「いや、そこは最悪秋田さんってことにしたら…」
「凛ちゃんにみゆきちゃんを支えながら寝かせるだけのチカラは無いのはみゆきちゃんは分かってるから疑い晴れないよ。それに脱がせた人ならみゆきちゃんのブラとパンツの色を知ってるわけだから、凛ちゃんが答えられなきゃ消去法で佐藤君ってことになるよ」
「何だよその詰みゲーは…」
「だから私がいた方がいいでしょ?」
「まあ…確かに…」
そんな話をしていると、階段を降りてくる音が聞こえてきた
そして、みゆきがダイニングに入ってきた
「目、覚めた?」
「なんで私、佐藤君の家に?」
「みゆきが起きる気配が全くなかったから学校からおぶってきたんだよ。で、着いても起きる気配が全くなかったからうちで寝かせるしかなかったんだよ」
「私の制服を脱がせたのは…」
「あ、それは私。佐藤君はベッドに横にしてからすぐ部屋出て、その後に私が脱がせたから佐藤君は見てないよ」
「本当に?」
「当たり前じゃん」
「二人ともありがとう」
「あんま無理すんなよ」
「うん…」
「みゆきちゃん、今日みゆきちゃんの家に泊まっていい?今から行っても桜木線の終電間に合わないから」
「いいよ」
「気をつけて帰れよ。まあ隣だし、飯島がいれば大丈夫だろうがな」
「?」
みゆきたちは家を出てみゆきの家に行った
その後、俺はSkipeを立ち上げ、上山を呼び出した
「珍しいね。佐藤君が私を呼び出すなんて」
「桜女子出身の上山なら何か知ってんじゃないかって思ってな」
「何を?」
俺は、飯島の強さとみゆきとの関係性について聞いてみた
ただ、上山もそこについての関係性は全く知らないようだった
その後、俺は上山と雑談をして通話を終え、風呂に入って眠りに就いた
〜翌日〜
俺はみゆきたちと一緒に登校した
ただ、男1に女3だったので、周囲の野郎共の視線がかなり痛かった
俺はほとんど無言のまま登校した
教室に着くと、男子たちが俺に迫ってきた
「佐藤、昨日愛野さんをお持ち帰りしただろ」
「は?何の話だよ」
「目撃者もいるんだよ。しかも秋田さんと飯島さんまでお持ち帰りしやがって!」
「いやお前ら何か勘違いしてるって!」
俺は男子たちにめちゃくちゃ迫られた
「皆さん、違います。佐藤さんは家で休ませてくれたんです」
「うん。秋田さん、今みゆきちゃんの家に居候させてもらってるんだけど、昨日はみゆきちゃんが起きなかったから休ませてもらったの」
飯島と秋田さんがそう言うと、男子たちは離れていった
「ホントにあいつらバカなんだから…」
「ま、まあみんな思春期の男の子だし仕方ないよ」
「愛野さんって本当に優しいよね…」
「いや、むしろ桜井の男子を見る目が厳しいだけな気もするけど…」
俺たちはステージの準備をした
今日は一日秋田さんがアリア王女の役をやることになってい
ちなみにみゆきは今日はサポートをやっているため、今日はこもれび高校の制服を着ている
そのためステージ袖から出ても騒ぎになることは無かった
でもなんでこもれび高校の制服着てる間は騒がれないのだろうか
たぶん理由があるんだと思うけど、深追いはしない方がいいかもしれない
それから少しして公演が始まった
俺はみゆきと一緒に舞台袖から様子を見ている
秋田さんは完璧に役をこなし、歌もしっかり歌えていた
「アルトの歌姫様、完全復活だな」
「うん…」
「ん?」
みゆきの様子が変だった
何か引っ掛かるところでもあるのだろうか
「どうした?」
「今回の凛ちゃんを見てて、もし私が同じことになったら、私はどういう選択をするのかなってね…」
「みゆき…」
「そうなる前に、みんなの中で素晴らしい歌声の歌姫ってイメージのまま引退することができるといいな…」
みゆきはみんなから「伝説の歌姫」なんて言われている
だからこそ、幕引きまで自分のできることをしっかりやっていきたいという強い気持ちがあるのかもしれない
「俺は、みゆきなら大丈夫だと思ってるよ」
「え?」
「パートナーの歌姫様や先代の歌姫様もそうだけど、みゆきには俺たちこもれび高校のクラスメイトみんながついてるんだから。だからお前は、自分を信じて、最後まで歌い続ければいいんだよ」
「うん…」
そんな話をしていると、舞台はかなり進んでいた
今のところ何らトラブルは起きてなかった
たぶん、秋田さんはもう大丈夫だろう
俺は裏方として舞台をサポートした
そして、公演は拍手大喝采で終わりを迎えた
さらに午後の公演は、公演前半はみゆき、後半は秋田さんと二人の歌姫様が1公演に出演し、さらに盛り上がった
そして、文化祭は幕を閉じた
「みんな、やったぞ!俺たちが学年優勝と校内優勝取ったぞ!」
「おおー!」
その後、ホームルームが行われ、終了後、俺たちは打ち上げに行った
ただ、みゆきと秋田さんは桜女子に行かなければならず、参加することはできなかった
今回は字数がとんでもないことになり、21時間目と22時間目に跨って投稿することになりました。
なろうの字数制限的には1話にまとめることもできたんですが、前半と後半で中身に差があるので統一したタイトルをつけられず、2話に分けさせていただきました。
さて、前の話で…20時間目のことなんですが、みゆきちゃんのパートナーの歌姫様が巻き込まれて歌えなくなったというふうに切り出したんですが、正直いつ取り戻させるかかなり悩んだんですよ。なにせ11月には桜女子学園では冬桜の会という新しい歌姫様を決める舞台がありますので。そして、短すぎず長すぎずで考えてた時に思いついたのが文化祭でした。まあ、こもれび高校の文化祭はわりかし自由性重視だからこそできる芸当と言ってしまえばそれまでなんですけどね。これが桜女子の文化祭だと厳格なお嬢様学園という設定が邪魔してこれまたやりにくいんですよ。
皆さんの高校時代の文化祭はどんな感じでしたか?
もし良ければどんなことをやったか教えて下さい。




