19時間目 夏祭りデート
夏休みに入り、暇を持て余していた佐藤幸二。
ある日、家でのんびりしているとポストに何かが投函される音が。
ポストを見に行くと、それは夏祭りのお知らせだった。
彼は友達を誘ってお祭りに行くが、誘った男子たちが女子たちとペアで行ってしまって一人ぼっちに。
一人でお祭り巡りをしていると、彼は見たことない少女とぶつかってしまった。
少女は彼のことを知っている様子だったが、彼はピンときていなかった。
そんな彼に少女は学生証を見せてきた。
2037年8月6日
外からポストに何かを入れる音がした
俺は家から出てポストを確認した
中には数通のハガキが入っていた
パッと見た感じ、暑中見舞いのようだ
それとさらにもう1枚、チラシが入っていた
チラシを見てみると、それははるかぜ神社でのお祭りのお知らせだった
そういえば石川が明日、はるかぜ神社でお祭りがあるって言ってたな
でも正直なところ、今誘える奴がいないのだ
なにせ石川は家族で海外旅行、みゆきは桜女子に行ってて、牧野は長野にある別荘に行ってる
桜女子はこもれび市の北部に隣接する桜木市にあるのでみゆきならなんとか誘えるけど、石川や牧野は到底無理だ
俺はみゆきと他4人にメールをしてみた
その返事は意外と早く返ってきた
しかし、いつもならすぐに返事を返してくるみゆきからはなかなか返事が来ない
こりゃダメかもしれないな
そんなこと考えていた矢先、Skipeが鳴り出した
画面には上山の名前が出ていた
「おう、どしたん?」
「佐藤君、ちょっと聞きたいんだけど、最近みゆきちゃんと連絡取ってる?」
「それが俺も一向に返事が無くてな…」
「そっか…」
「上山も連絡取れてないの?」
「うん…かれこれ2週間…」
「マジか。俺も親父を通して聞いた程度だけど、7月の終わりから桜女子に行ってるみたいなんだよ」
「だとステージ関係かな…」
「あー、確かにありそう。でもそれでも2週間も連絡取れないことなんてある?」
「ブロッサム・ディーバって本当に忙しいとメールすら確認できないってこともあるみたいよ。期間も1ヶ月とかざらにあるから今回もそんな感じじゃないかな?」
「1ヶ月って、学校始まっちまうよ」
「佐藤君も連絡したの?」
「まあ…今日な」
「もしかして明日のはるかぜ神社のお祭りにデートのお誘いとか?」
「デートなら何人も呼ばねえよ…。メール、お前や飯島にも送ってるんだけど」
「え?両手に花でも狙ってる?」
「アホか。同じだけ男も呼んでるよ」
「なーんだ。ちなみに私はOKよ」
「じゃあ上山と飯島はOKってわけか」
「みらいちゃんもOKって来たの?」
「ああ。あと立花と田中が来る予定。他にも何人か呼んだんだけど無理だって言われた。あと返事無いのはみゆきだけだな」
「なるほどね」
俺はその後、上山と雑談をして通話を終えた
そして再びスマホを確認してみたが、メールは1通も来てなかった
俺は親父にメールで、みゆきについて親経由で一度確認してほしい旨を伝えた
その返信は思いの外早く返ってきた
どうやらみゆきの親も返事が無くて困っているらしい
そして今、みゆきのお父さんが桜女子に問い合わせ中のようだ
それから数分後、再び親父から連絡が来た
どうやらみゆきは2週間前の大雨でスマホが水没してしまって連絡が取れなかったらしい
そして今、みゆきのお父さんが桜女子に行ったようだ
俺は上山と飯島にそのことをメールすると、「(苦笑)」とだけ返ってきた
〜夕方〜
俺がベッドの上でゴロゴロしていると、メールが来た
ディスプレイにはみゆきの名前が出ていた
どうやらあれから携帯ショップに行って修理に出したようだ
修理自体はもっと早く出したかったみたいだけど、あまりにも忙しくて出せなかったみたいだ
そして、明日の祭りについてもOKと書かれていた
俺はそのことを上山と飯島に連絡した
「ただいまー」
「おかえり。早かったな」
「まあ今日は緊急手術とかも無かったからな」
「ふーん」
俺は残っていたカレーを温め、親父と一緒に食べた
〜翌日〜
俺は立花と田中と合流し、女子たちの到着を待った
集合時間10分前には上山も飯島も来たが、みゆきだけは集合時間になっても来なかった
「愛野さん、遅いな」
「みゆきちゃん、電車が遅れてるから遅れてくるみたい」
「ありゃりゃ…」
「先に回っててって連絡も来てるし、先に回ってよう」
「了解」
俺たちは神社の境内に入った
今年は例年よりも出店がたくさん出ていた
とはいえ、俺たちは高校生でバイトもしてないから資金はそんなに無いから全ては無理だ
すると田中がとんでもないことを提案してきた
「思ったんだけどさ、男女でペア組んで回らない?」
「賛成。じゃあ俺飯島さんと」
「はやっ!じゃあ俺は上山さん」
「おいちょっと待て。俺ぼっちなんだが」
そんなことお構いなしに立花は上山を、田中は飯島を連れて行ってしまい、俺は一人取り残されてしまった
「あいつらホント後で覚えとけよ…」
俺は一人で店を見て回った
正直一人で回っていても楽しいとは全然言えない
そんなことを考えてると、誰かとぶつかってしまった
「あ、すいません」
「いえ、こちらこそ…って、佐藤君?」
「へ?ど、どちら様?」
俺は声をかけてきた女の子を改めて見た
しかし、そこにいたのは見たこともない子だった
「少し変装しただけでそれって酷くない?」
そう言いながら彼女は何かを見せてきた
どうやら生徒手帳のようで、そこには桜女子学園の校章が描かれていた
しかし、見せてきたのが表側だったので名前とかは全く分からなかった
俺が困惑していると、彼女も逆側だと気付いたようで生徒手帳を裏返した
生徒手帳の裏側は学生証になっていた
俺はそこに書いてある名前に驚愕した
だって俺が知ってる彼女はこんな地味な見た目してないし、髪の長さだって全然違う
「いやそこまでガチで変装して要素消し切ってどうやってみゆきだと判断しろと?そもそも髪の長さも全然違…むぐっ!」
みゆきは俺の口を塞いで人気のないところに引っ張っていった
そして誰もいないのを確認したところで手を離してくれた
「ぷはっ。急に何だよ…」
「しー!私まだ隠れてるんだからあんな大勢のいる中で喋れるわけないでしょ」
「へ?まだ隠れてたの?」
「当たり前でしょ?まだアルトの歌姫襲った犯人だって捕まってないんだよ」
そういえばそうだ
ニュースでは今もアルトの歌姫を襲った犯人に関する情報提供の呼びかけがされている
そんな状況でソプラノの歌姫が表立って行動するのはリスクが高いだろう
「でも残念だなぁ…」
「何が?」
「そんなかわいい浴衣着てて上がそのビジュアルだからさ…」
「でも自分の身を守るためだから仕方ないよ…」
「まあね」
「そういえばみんなはどうしたの?」
「立花は上山と、田中は飯島とペアで回ってる。もはやダブルデート状態だよ…」
「なるほどね。立花君と詩織ちゃんのペアは何となく分かるかな…」
「なにゆえ?」
「立花君、詩織ちゃんが好きなんだけどどうすればいいかって私に相談してきてるもん」
「ふーん。田中と飯島は?」
「みらいちゃんは小学生の時に男子にかなり酷いフラれ方したから恋愛に軽いトラウマがあるからどうかな…」
「マジか…」
こういう話を聞いてると、意外とみゆきって男子と女子の、女子側への架け橋になってるような気がする
でもみゆきは好きな男子とかいるんだろうか
架け橋になるのは別にいいとは思うが、そのせいで自分の恋のチャンスを失ってたらかわいそうな気がする
まあ男子が苦手なみゆきが恋をするっていったらその男子のアプローチが上手いんだろうな
「どうかしたの?」
「みゆきって好きな男子とかいるの?」
「うーん…好きな子はいないんだけどちょっとだけ気になってる子はいるかな…」
「誰?」
「内緒。それより佐藤君、今一人なんでしょ?」
「え?まあ…」
「じゃあ私と回る?」
「いいの?」
「今更気にする仲じゃないでしょ?」
「まあ…そうだな」
俺たち二人で一緒にお祭りの屋台の方に戻った
するとさっきよりもお祭りは賑わいを見せていた
「おっ。佐藤じゃん。どうだ、楽しんでるか?」
「ぼっちにしたお前と立花はそれ言えた義理じゃねえからな。まあでも、俺は俺なりに…」
「そういやその隣の地味な子は?」
「みゆきちゃんでしょ?」
「へ?愛野さん?」
「歌姫のステージの前並みにガッツリ変装してるね」
「まあ…まだ例の事件、解決してないからね」
「あー…あれね」
「へ?」
「ほら、現役の歌姫が襲われた事件」
「あー、あれか」
「うん。だからできれば私の正体の話は大きな声でしないでほしいな…」
「あー、ごめんごめん」
「ちなみにいつくらいに合流したの?」
「お前らと別れてわりかしすぐ」
「マジか…。もう少し待てば愛野さんと回れたのか…」
「下心丸出しだなオイ」
「私じゃ不満なんだ…」
「いやいや、そんなことは無いよ」
「まあ…田中君と遊んでてもあんまり面白くなかったけどね…。正直言ってあんなレベルならみゆきちゃんと一緒にどころか他の女の子と回っても楽しいと思わせられないよ」
「ガーン」
「相変わらずみらいちゃんは評価厳しいね」
「まあ2-1の恋愛アドバイザーなんて呼ばれてるくらいだからデートは厳しく評価させてもらうよ。ほら田中君、行くよ」
「へ?」
「デート、女の子に楽しいと思ってもらうための最低限のノウハウ教えてあげるから」
「ちょっ、手引っ張るなよー」
田中は飯島に引っ張られ、奥の方に消えていった
「みらいちゃん、恋愛アドバイザーなんて二つ名あったんだ…」
「みゆき、知らなかったの?」
「うん…。みらいちゃんがデートの評価厳しいっていうのは知ってたんだけど…」
「なるほどな」
「あの様子だと田中君、涙目になるまでしごかれるかもね…」
「お、おう…」
そんな話をしていると、後ろから声をかけられた
「よう。楽しんでるか?」
「ぼっちにしたお前が言えた義理か」
「まあまあ。でもそのおかげで今、愛野さんと二人きりで回れてんだろ?」
「いやまあそうなんだけど…ってお前よくみゆきって分かったな」
「まあな。フフン」
「とか言ってるけど、私に佐藤君の隣の女の子、誰かなってさっき私に聞いてきて教えたから知ってるだけよ」
「ギクッ」
「おいコラ待てや」
「それにしてもみゆきちゃん、ホント変装に余念が無いよね」
「歌姫ってバレたらまずいからね」
「確かにね」
「詩織ちゃんは楽しんでる?」
「うーん…その辺りは今夜のオンライン女子会で話そ」
「分かった」
「えー、教えてくれてもいいじゃん」
「立花君、本人に評価直接聞かないと分からないようなら、女の子を落とすのはかなり難しいよ。そこは頑張って詩織ちゃんの様子から察さないと」
「うぐっ…。はい…」
「てか女子会なんてやってんだな」
「私と詩織ちゃんとみらいちゃんと早織の4人でね」
「牧野までいるのか…。こっわ…」
「それ、早織に言っておくね」
「いやマジで勘弁して下さい何でもしますから」
「もう…しょうがないなぁ…」
なんか女子の裏の顔を見たような気がした
でも俺にはこれ以上首を突っ込む度胸は無かった
「上山さん、次はあっち行ってみない?」
「いいよ。じゃあ佐藤君、みゆきちゃん、また後で」
「うん」
「おう」
立花と上山は奥の方へ行った
「あれ、楽しめてるのかな…」
「どっちだと思う?」
「分からん。そんなことより俺たちは俺たちで楽しもうぜ」
「うん」
俺はみゆきと一緒にいろんな屋台を見て回った
〜2時間後〜
「ふう…。みゆき、疲れてない?」
「大丈夫。ありがとう」
「そろそろ花火の時間だし、向こうの方に行こう」
「うん」
俺はみゆきと一緒に神社のお社の前まで来た
そこにはすでに何人かの人が集まっていた
俺たちが場所を確保すると、すぐに花火が打ち上げが始まった
意外と時間ギリギリだったようだ
「来年は俺たちも受験か…」
「そうだね」
「時間に余裕があったら、今日みたいに一緒にお祭り見て回れたらいいな」
「私と?」
「うん」
「ホントに素直だね」
「まあな」
俺たちは二人で夜空に上がる花火を見て楽しんだ
ちらっと横を見ると、みゆきは変装を解いていた
「変装解いて大丈夫なの?」
「あんまり良くないけど頭が暑くなってきたから…」
「そっか。やっぱみゆきはそっちの方がかわいいよ」
「もう…私にそんなお世辞言ってもご飯やお弁当のおかずが増える以外に何もないっていつも言ってるでしょ?」
「素直な感想言ってるだけだよ。それに浴衣だって似合ってて、その姿もすごくかわいいと思う」
「全くもう…」
そんなこと言いながらも俺はみゆきが照れてるのを見逃さなかった
まあ…あんまり褒めすぎてもうざがられるだけだからこれ以上は言わないけど
「そういえばみゆき、園芸部って合宿とかあるの?」
「流石に無いよ。合宿でやることなんて無いもん。夏休み期間中は基本的には交代で花壇のお世話をするくらいしか無いよ。あとは数日間だけ文化祭の話し合いをするくらいかな…」
「なるほどね。俺は明日から合宿で日曜日まで軽井沢だから何かあったらメールして。Skipeは繋がるか分からないから」
「分かった」
俺たちは花火大会が終わるまで二人で過ごした
そして花火大会が終わると、次々と露店が閉店していっていた
どうやらお祭りも終わりのようだ
俺たちは再び立花たちと合流した
一人だけぐったりしていたが、まあ気にしないでおこう
俺たちは神社を出たところで別れた
「みゆきはまた桜女子に戻るの?」
「うん。夏休みの間はあっちで過ごして、9月からはまたこもれび高校に登校するよ。じゃないと修学旅行のこともあるからね」
「それもそっか」
俺はみゆきを駅まで送り、帰宅した
皆さん、やっとマスク制限が緩和されましたね。まあ私は花粉症があるので外でもマスクは取れないんですけど…。コロナが始まって以来、夏祭りなんてもうずっと見てない気もしますけどこれから少しずつ再開されていくんですかね…。
皆さんは好きな人と夏祭り行ったことありますか?
え?私?中学時代と高校時代に女子から集団いじめくらって以来、同年代の女子が苦手になった私にそんな甘い思い出があるとでも?それに今の仕事だって周囲の女性って子育て終わった、またはもうすぐ終わる既婚女性しかいないから出会いもくそもねえわ!
青春を謳歌してる人は、私みたいにならないように人生を楽しんでくださいね。
さて、頭出しいきなりスマホぶっ壊してた人いましたけど、いつ災害が起こるか分からない今、スマホは肌身離さず持っていた方がいいと私は考えます。
通信手段ができないから意味が無い?いやいや、あなたが喋れなくてもスマホは音出せるでしょ?
例えばだけど、手先が動いてスマホの画面が見えるなら、スマホに入れた曲を流して、曲の途中で変えるってのを繰り返すんよ。そうすると自動再生と違って人が操作してるって気付いてもらえれば生存できる確率僅かでも上がるでしょ?もっとも、そんなことできる余裕なんてあるのかって問題もあるし、検証したこと無いから絶対助かるなんて言い切れないけど…。
まあそんな話はさておき、やっぱり普段返信がばか早い人から連絡無いってかなり不安になりますよね。私はLINEとか平気で2〜3週間ほったらかしにして毎回親に怒られて、性懲りも無くそれを繰り返しては怒られてるんですけどね。学習しろって?くだらんトーク交わしてばっかのタイムライン毎日見ようと思うか?
まあ今回やらかしたみゆきちゃんが親に怒られたかどうかはご想像にお任せします。
夏祭り部分では、変装したみゆきちゃんに幸二君は気付いてなかったんですけど、歌姫がターゲットになった事件が起きた以上、同じく歌姫であるみゆきちゃんもガラをかわさないといけないわけで、どうやってガラをかわさせるかってかなり悩んだんですよ。一番良いのは桜女子学園の寮に閉じ込めとくことなんでしょうけど、恋をしたいお年頃の女の子を閉じ込めとくのは流石になと思い、こういう形にしました。
最後の部分でみゆきちゃんが言った通り、翌年は3年ということもあり、まあ夏祭りに行く余裕があるかと言われると、医学部進学希望のみゆきちゃんはちょっとね…。だから3年生編の8月はたぶん31時間目とかそれくらいになるとは思うんですが、夏祭りを出すかはまだ考え中です。
次回からみゆきちゃんは再びこもれび高校に復帰します。まあ言うほど桜女子に行かせてないけど…。




