16時間目 素直になれなかった二人
2037年5月23日
私と早織はショッピングセンターに来ていた
しかし、待ち合わせの時からずっと心ここにあらずという感じで、私が話しかけてもなかなか気付かない
「早織?」
「………」
「さーおーり!」
「えっ!?な、何?」
「早織のお料理、来たよ」
「あぁ…ごめん…」
早織は何も言わずに食事を始めた
ずっとこんな調子だと見てる方も凄く心配になってくる
「ねえみゆき、ちょっと話聞いてもらえる?」
「え?どうしたの?」
「最近、あたし、なんか変なんだよね…」
「変?」
「実は…」
早織は私に状況を話してくれた
どうやら以前、早織は電車が来るちょっと前に誰かに線路に向かって突き飛ばされたらしい
その時、周りが誰も助けようとする気配が無い中、咄嗟に石川君が線路に飛び込んできて早織をホーム下まで運んでくれて難を逃れられたらしい
それ以来、石川君と会うたびに胸がドキドキし、一緒にいない時も石川君のことが気になって仕方ないみたい
私は頼んだいちごミルクを飲みながら少し考えてみた
「ねえ早織、他の女子が石川君と話してるのを見ててどう思ってる?」
「うーん…何というか…なぜか嫉妬してるような感じがするかな…」
「ちなみに私と石川君が話してるのを見てる時は?」
「同じ」
私は再びいちごミルクを飲んで考え始めた
話を聞く限りでは吊り橋効果のようなもので石川君を好きになっているのだと思う
ただ、もしこれが一時的な感情でしかないのであれば安易に恋をしていることを話すべきではない気がする
「やっぱりみゆきでも分からないかぁ…。もうかれこれ4ヶ月はこんな感じなのよね…。友達に嫉妬するの何かちょっと嫌だし、何より大親友のみゆきにも嫉妬しちゃうのは心苦しいんだよね…」
どうやら私の考え過ぎだったみたい
早織、本気で石川君に恋してるみたい
私はコップを持ったまま話し始めた
「早織、それはね、恋をしてるってことだよ」
「恋?誰に?」
「石川君に」
「誰が?」
「早織が」
「あたしが石川に恋してる…?」
「つまり4ヶ月前から、早織は石川君のことが好きってこと」
早織はいまいちピンときていない様子だった
たぶん早織は、自分が石川君のことを好きになるなんてあり得ないと心のどこかで思っているのかもしれない
私はそうなったと思われる経緯を話した
「吊り橋効果かぁ…。小説の中だけの話かとずっと思ってたけどまさか自分がそれで恋をするなんてね…」
「恋のきっかけって色々あるからね。あとたぶんなんだけど、早織、独占欲強いでしょ」
「どういうこと?」
「石川君のこと一人占めしたいって思ってる?」
「うーん…いまいちピンと来ないけど、あんまり他の女子と仲良くしてほしくないって気持ちはあるかも…」
「やっぱり独占欲強そうだね…。早織、一応先に言っておくね。私、石川君は幼なじみではあるけど恋愛感情は無いからね」
「はあ…」
早織はポカンとする反面、どこか安堵する様子を見せた
やっぱりかなり独占欲が強そうな感じがする
「あれ?石川君?」
「ん?おっ、愛野と牧野じゃん。二人で外出?」
「うん。あ、ここ座っていいよ」
「お、おう」
石川君は早織の横に座った
「そういやさ、二人は何の買い物で来てたん?」
「え?」
「それともぶらっと立ち寄った感じ?」
「う、うん…」
「おっ、それ美味そうだな」
「え?あ、これ?結構美味しいわよ。ちょっと待って」
早織は無意識にパンケーキを切り分け、フォークで石川君の口のところまで運んだ
「えっと…牧野?」
「え?」
直後、早織はハッとなった
どうやら無意識のうちに石川君にあーんをしようとしてたっぽい
「危なかったー…。こんなとこ知り合いに見られたらどんな顔して会えばいいのか分からなくなるとこだったわ…」
「それだったらむしろ黙ってた方が面白かったかもな」
「私もびっくりしたよ。あまりにも自然にあーんしようとしてたから…」
「うぅ…」
早織はそのまま俯いてしまった
どうやら相当恥ずかしかったみたい
「てか牧野さ、以前から気になってたんだが」
「え?」
「お前、もしかして俺のこと嫌い?」
「え?なんで?」
「いや、だって最近めっちゃ俺のこと避けてるし、2月と3月だって教室にいる時もめちゃくちゃ俺のこと睨んできてたじゃん」
「それは…」
早織は昔から男子に対して素直に向き合うのが苦手で、どうしても本音を言うことができない
だからこそ私や他の女子が代弁者になっていたけど、今回ばかりは内容が内容なだけに代弁者になるつもりはない
私はいちごミルクを飲みながら二人の様子を見つめていた
「…きなのよ…」
「え?」
「ぐぬぬ…!あんたのことが好きなのよ!悪い!?」
早織は恥ずかしそうにしながらも石川君のことを睨んで叫んだ
どう見てもやけくそになってるようにしか見えないけど、自分の気持ちを伝えられただけ進歩ではあると思う
一方石川君はポカンとした表情になっていた
「えっと…愛野、説明頼む」
「私!?」
石川君の突然の指名に私は困惑してしまった
こんな話、私がするべきではないと思うんだけど…
「みゆき、もうこれ以上は恥ずかしくて無理。代わりに話して…」
早織は完全に顔を覆って下を向いてしまった
これはたぶんどう頑張っても話せなさそうだった
私は石川君に早織から聞いた話をかいつまんで話した
「なるほどな…。つまり牧野が俺を睨んでたのは俺が愛野や他の女子たちと仲良くしてて嫉妬してたってわけか…」
石川君はそのまま早織のそばに寄り、抱きしめた
私は思わず顔を覆ってしまった
しかし、やはり好奇心には勝てず、指の隙間から二人の様子を見ていた
「………。牧野…いや、早織」
「………!」
「実は俺も早織のこと、好きだったんだ。半年前からずっと」
「え?」
石川君の口から衝撃的な一言が飛んできた
高校に入って以来、私は二人が言い争っているのは見たことあったけど、仲良くしてるとこは見たことがない
それに半年前で何かあったとしたら文化祭の前後くらいだと思うけど二人に何があったんだろう…
そして二人して本当に素直になれてなかったんだなと思った
「早織、俺の彼女になってくれ」
「………」
直後、早織が泣き出した
どうやら相当嬉しかったみたい
「…ったく泣くなよ。美人顔が台無しだぜ?」
「だって…だって…」
「良かったね、二人とも」
「正直、打ち明けるのが怖かったんだよな。佐藤には前々から相談はしてたんだけどな」
そう言うと石川君は半年前のことを話し始めた
石川君のお話によると、文化祭の練習の時、舞台セットが早織の上に倒れ込んできて、そのまま石川君を巻き込んでしまったらしい
その時、事故とはいえ早織とキスしてしまったみたいで、その時から早織のことを意識していたらしい
その事故そのものはちょっとした騒ぎになったから知ってたけどまさかそんなことになっているとは思いもしなかった
私はそのまま席を立った
「愛野、どこ行くの?」
「私は一人で帰るよ。二人の恋路を邪魔するつもりは無いから」
私はそのまま荷物を持って家に帰った
その日の夜、私は佐藤君にSkipeで今日の出来事を話した
「ふーん。てっきりお互いに嫌いで喧嘩してるのかと思ったらそんなことになってたのか…」
「二人とも意地っ張りだからお互いに自分の気持ちを打ち明けることができなかったんだろうね」
「じゃあみゆきは二人の恋のキューピットだな」
「そうかもね」
その時、Skipeの着信音が鳴った
かけてきてたのは石川君と早織だった
私は二人を通話に加えた
「よう、お二人さん。みゆきから話は聞いたぜ」
「はえーな…。まあ、そういうこった」
「佐藤とみゆきも早くくっついちゃったら?」
「はあ!?ななな何を!?」
「?」
「あー…早織、これは厄介かもしれないぜ」
「なんで?」
「愛野、たぶん佐藤に恋愛感情無いぜ」
「あらま…」
確かに一時期ちょっと佐藤君のことが気になった時期はあった
でもそれもたった数週間程度の話だった
私が早織の一時的な感情であるかが気になった点はこれだった
私自身が一時的な感情というものを経験していたから安易に言えなかったのだ
「これは前途多難ね」
「だな」
私たちはその後、しばらく雑談をして通話を終えた
その直後、部屋のドアがノックされた
「みゆき、お風呂入っちゃいなさい」
「うん…。ねえお母さん、今日一緒に入ってもいい?」
「え?別にいいけどどうしたの?」
「ちょっとね」
「?」
私はお母さんと一緒にお風呂に入った
「ねえお母さん。どうしてお父さんのこと好きになったの?」
「そうね…。あれは確か…」
〜回想〜
※ここでは、主人公4人の親を主体にするため表記が変わります
2011年3月11日
「愛野、お前春休みの課題、テーマ決まった?」
「いいや、まだ悩み中」
「課題フリーって結構悩むよなぁ…」
「しかも英語ともなるとね…」
その時、地面が揺れ始めた
「ん?地震か?」
「みたいだ…うわっ!」
次の瞬間、一気に強い揺れに襲われた
「やばい、逃げるぞ!」
私たちは急いで逃げようとしたけど、私はそこで転んでしまった
その直後、私の上に本棚が倒れてこようとしていた
「………!綾香、危ない!」
「え?きゃああああ!」
本棚はそのまま私の方に倒れ込んできた
でも、私の上には何も落ちてこなかった
目を開けると、涼介君が私に覆い被さって守ってくれていた
「ぐっ…」
「涼介君、なんで…」
「なんでも何も、女子が怪我しそうなの黙って見てるなんて俺にはできねえよ」
私はその一言にときめいてしまった
〜回想終了〜
「えぇ…お父さん、凄くかっこいい…」
「もしかしたらあれは一時の気の迷いだったのかもしれないけどね。でもその後も涼介君は私が危機に晒された時にはいつも体を張って助けてくれたのよ」
「お父さん、実はすでにお母さんのこと好きだったんじゃ…」
「ううん、涼介君のその優しさは私だけじゃなくて他の女子たちにも向けられてたわ」
「じゃあ本当に女の子たちが怪我するのを見てるなんてできなかったってこと?」
「小さい頃から親父たちに『女の子には優しく、そして危険が迫ったなら体を張って守ってやれ』って言われてきてたからな」
私がお母さんに疑問を投げかけた直後、お風呂の外からお父さんの声が聞こえてきた
「タオルここに置いとくぞ」
「はーい」
それからすぐに脱衣所からお父さんの気配は無くなった
「たぶん、今だってあの考えは変わらないはずよ」
「もし私が男の子だったら守ってもらえなかったのかな…」
「それは無いわよ。だって涼介君、私が結婚の挨拶に行った時に『いざという時に自らが盾となって家族を守る覚悟はあるのか?』っていう問いに『この身に代えても男として妻子を守ってみせる』って豪語してたからね」
「そうなんだ…」
「みゆきも、そんな男の子と出会えるといいわね。まあその前に男の子への免疫をつけないとね」
「………」
私は何も言えなかった
きっかけが何だとしても、いつまでも男が苦手なんて言ってられない
とはいったものの、どうすればいいか私には全く分からなかった
その時、お母さんが頭からいきなり洗面器いっぱいのお湯をかけてきた
「急に何!?」
「ただ悩んでても仕方ないわよ。こればかりは男の子と接して慣れていくしかないんだから」
「うーん…わぷっ!!」
私が悩み始めると、お母さんはまた頭から洗面器いっぱいのお湯をかけてきた
「難しく考えないの。いくら考えたって答えなんて存在しないんだから」
「うん…」
「でも不貞行為は許さないからね。肌を晒していいのは…」
「『一生添い遂げると決めた人だけ』でしょ?」
「分かってるならよろしい」
「私、先に出るね」
「うん」
私はお風呂を出た
そこにはお父さんがいた
「覗き?」
「アホか。洗濯してたんだよ」
「言ってくれればやったのに…」
「いや、下着はさすがに…」
「何を今更…。いつも洗ってるんだから気にしないよ…」
「洗ってたのみゆきだったのか…。てっきり綾香がやってくれたのかと思ってたよ…」
「まあ…下着については洗い方が違うから私やお母さんのとは分けて洗ってるけどね」
「一緒に洗いたくないとかじゃないんかい」
「お父さん、たまに変なこと言うよね」
「綾香、俺ちょっと頭痛くなってきた…」
「あはは…。まあでも、娘に嫌われてないって思えば喜ばしいことなんじゃないかな?」
「いや、そうなんだけどさ…」
「とりあえず私は髪乾かして寝るね」
「ああ、おやすみ」
私は体を拭いて服を着て脱衣所を出た
そして、部屋に戻って髪を乾かしてそのまま眠りに就いた
ついに正一君と早織ちゃん、ゴールインしましたね。
最初、正一君と早織ちゃんも卒業式の日まで告白引っ張ること考えたんですけど、引っ張ったら引っ張ったでお前が言うな展開だらけになりそうな予感がしたから引っ張らないことにしたとかいうメタ事情はあったりしますが…。
元々双方ツンツンした性格の者同士で、デレても素直になれないのが特徴のキャラではあるんですけどやはり好きという気持ちも自分の中で大きくなればなるほど抑えられないっていうのは現実でも同じだと思います。
皆さんは高校時代はどんな恋をしていましたか?
特にゴールインした人とかいたらぜひ教えて下さい。




