ホームルーム 桜の木の下で
恋、それは誰もが一度は夢見るもの
だが、今はそれも手の届かないものとなりつつある
それでも人々は恋を夢見る
2036年4月7日
俺の名前は「佐藤 幸二」。ここ、こもれび高校の新入生だ
昔から絵が好きで、絵画コンクールで賞を取ったこともある
だからか、誰しもが芸術系の高校へ進学すると思っており、事実、芸術に特化した数校から推薦入試のお知らせも届いていた
だが、俺は全ての学校の推薦を断り、この高校に入学した
なんでそんなに勿体無いことをしたかって?
それは…あえて言わないでおこう
だって、笑われるかもしれないからな
「まさか別々のクラスになるなんてな…」
「まあしゃあねえだろ。つか、愛野と牧野もここに進学したなんて思わなかったな」
「お前は牧野と同じクラスだっけ?」
「ああ。特に愛野は確か中学は桜女子だったよな?内部進学すれば楽だっただろうに…」
「んなのは俺らが決めることじゃねえだろ」
「それな」
こいつは幼なじみの「石川 正一」
化学が好きで将来もそっち方面の有名大学に進学したいという思いからここに入ったらしい
そんな話をしながら渡り廊下に差し掛かった時
「あれ?あの子、中庭で何してんだ?」
「さあ…。ちょっと声かけてみるか」
俺たちは中庭に行った
「Hey、カノジョ!俺らと遊ばない?」
「ナンパか!」
これはこいつの軽いジョークだ
幼なじみなら誰でも知ってる
「くすっ。相変わらずだね。石川君も佐藤君も」
目の前の女の子に名前を呼ばれ、俺たちは困惑してしまった
「なんで俺たちの名前知ってんだろう…」
「さあ…。『相変わらず』って言ったってことはどっかで会ったことある子だよな…」
だが、俺はこんなにもかわいい女の子に見覚えはない
そう考えていたその時、女の子は続けて
「『俺らは絶対お前のことは忘れない』」
「へ?」
「『たとえみんなが仲間外れにしたとしても俺はお前の味方だからな』」
その言葉は、忘れもしない、俺が大好きな幼なじみの女の子に言った言葉だ
「まさか…愛野?」
「は?」
石川は驚きを隠せずにいた
「………私のこと、忘れてたの?」
「いや、そうじゃなくて…え?」
この子は「愛野 みゆき」
俺の幼なじみであり、小学校の時から好きだった女の子だ
俺たちが一目見て彼女を思い出せなかったのには理由がある
俺たちの記憶の中の彼女はすごくボーイッシュな見た目で、女の子と言うには見た目がかけ離れていたからだ
だが、目の前にいる彼女は、当時の面影も感じさせないどころか、世界中探してもこんな男はいないと断言してもいいのではないかと思うほどかわいい女の子だった
「随分見た目変わったな」
石川は見た目の変化に驚く俺を脇にさらに言葉を続けた
「昔のお前ってさ、知らない奴が見たら男なんじゃないかって思うレベルだったからな…」
「うん…。だから分からなかった…」
俺はこう言うしかなかった
「たぶん、桜女子での日々の影響かもしれないね」
愛野は苦笑いしながらそう言った
桜女子とは、こもれび市の北にある桜木市の桜木学園都市の中にあるお嬢様学園「私立桜女子学園」のことだ
小学生時代のいじめから男性恐怖症になってしまった愛野は、俺たちが通っていた「虹ヶ丘小学校」から桜女子へ進学した
当時から学力が高かったため、入試は難なく合格したらしい
あの学校は「お淑やかなお嬢様」を育成することを理念としており、愛野の変化もその育成理念に染まった結果だと言えるのかもしれない
「最初は佐藤君たちの言う通りな感じだったんだけど、それについてはかなり先生に注意されて、それからみんなから教わり、影響を受けながら過ごしてきたからね…」
「そっか…。ところで、どうしてここに?」
「この桜の木を見にきたの」
「へ?」
「この桜の木、もう25年近く花を咲かせないんだって。だから樹齢100年を迎える5年後には切り倒されちゃうらしいの…」
「そっか…」
俺たちはその桜の木を見上げた
校庭の桜は満開だというのにこの桜の木は花も葉もついていない
なんだか寂しいもんだな…
キーンコーンカーンコーン…
「あ、やべ。急がないと」
「ああ」
俺たちは教室まで急いだ
教室に着くとすぐにホームルームが始まり、生徒手帳と学生証が交付され、学校内での過ごし方や直近の行事等の説明と自己紹介が行われた
ちなみに俺は自己紹介で緊張してしまい、かなりカミカミになり、「カミカミマン」と呼ばれてしまった
今回は導入ということでかなり短いものになっていますが、次回からはこれより長くなります。
あと、この話は第1話、第2話ではなく1時間目、2時間目という形になります
何話構成になるかはまだまだ分かりませんが…




