12時間目 誕生日とチョコレート
普段は佐藤幸二君の視点で書いているんですが、今回は愛野みゆきちゃんの視点で書いてみました
女の子視点になるってこともあって普段書いてる時と地の文のスタイルが変わっています
2037年2月10日
〜昼休み〜
男子たちの会話が聞こえてくる
どうやらみんな、私からチョコを貰いたいみたいだ
チョコの準備なんて小学生の時以来だ
それにそのチョコだってお誕生日プレゼントのお返しとして準備しただけで、バレンタインのチョコという意識は全く無かった
どうするか考えていると、詩織ちゃんが声をかけてきた
「みゆきちゃん、何考えてるの?」
「実は…」
私は詩織ちゃんに男子の会話について話した
「つまりみゆきちゃんは佐藤君にチョコをあげたことはあるけどそれはお礼であって、バレンタインのチョコとして誰かにあげたことはないってこと?」
「うん…。だからどういうのをあげるのがいいのか分からなくて…。それに小学生の時と今とだと男子の受け取り方も全然違うと思うし…」
「あー、今の年頃の男子だとねー」
あげるにしても基本的には義理にはなるからそこまで悩む必要は無いのかもしれない
だからといって適当なのも良いとは言えないし、あまり良い物を選んでも誤解を生むかもしれない上に他の女子から反感を買う可能性もある
そういうこともあり、加減がよく分からないというのが本音だ
「ねえ、そういえばみゆきちゃんってお菓子作り得意?」
「え?うん…」
「今日、うちに来て作り方教えてもらいたいものがあるんだけどいい?」
「いいけど何を作るの?」
「さすがに学校では言えないかな…」
「うん、分かった」
その直後、チャイムが鳴り、授業が始まった
〜放課後〜
「みゆき、一緒に帰ろう」
「ごめん、今日は詩織ちゃんと約束があるから」
「なるほど、了解。まあたまには女子同士ってのもいいんじゃねえか?」
「ありがとう」
私は佐藤君と別れ、詩織ちゃんと一緒に詩織ちゃんの家に行った
「それで、何の作り方を教えればいいの?」
「実は彼氏が今年はチョコケーキが欲しいって言ってきたんだよね…」
「はあ…」
「でも私、ケーキなんて作ったことないし、バレンタインのチョコだって溶かして型に流し込んでおしまいっていう簡単なものだし…」
「うーん…一概にチョコレートケーキって言ってもいろんなのがあるんだけどどんなのがいいの?」
「お菓子作りが苦手でも簡単に作れるやつ?」
「じゃあシンプルなのにしよっか」
「うん」
私たちはチョコレートケーキを作り始めた
材料買いに行くところからかと思っていたけど、詩織ちゃんのお姉さんがお菓子作りが趣味らしく、材料はたくさんあった
「でもなんでお姉さんじゃなくて私に?」
「お姉ちゃん、最近あんまり帰ってこないから教えてもらうことできなさそうで…」
「なるほどね」
私たちはお喋りをしながら着々とケーキを作っていった
そして、生地を型に流し込んで空気抜きをした直後、詩織ちゃんのスマホが鳴った
「ちょっと電話出てくるね」
「うん」
詩織ちゃんはスマホを持ってキッチンを出た
私はオーブンを温め詩織ちゃんを待った
数分後、詩織ちゃんが戻ってきた
「おかえり。じゃあ続きだけど…」
私は詩織ちゃんに生地の焼き方を教えた
そしてオーブンに入れた後、30分くらい待った
生地に竹串を刺してみたが、生地がつくことは無かった
「あとは型から取り出して、冷めたらデコレーションなんだけど、今日はここまでにして、残りは金曜日にやろう」
「うん、ありがとう」
私は詩織ちゃんの家をあとにして電車に乗った
ーーーまもなく、はるかぜニュータウンです。3番線到着、お出口は左側です。次のはるかぜニュータウンで特急しろつめくさ26号の待ち合わせを致します
その時、私のスマホが鳴り出した
スマホの画面には新着メールのお知らせが表示されていた
内容は、佐藤君からのデパートへのお買い物のお誘いだった
(急にデパートに誘ってくるなんてどうしたんだろう…。また誰か女の子にプレゼントする物を選ぶの手伝ってほしいのかな…。まあ私も行く予定だったからいいかな…)
私はメールを返し、スマホをスカートのポケットにしまおうとした
ブーン、ブーン
(え?返信早くない?えっと…明日は…あ、迎えに来てくれるんだ…)
私はスマホをスカートのポケットにしまい、電車を降りた
そして、そのまま行きつけのスーパーに行ってお買い物をして帰宅した
翌日、デパートに行く準備を済ませた私は、リビングでゆっくりしていた
「でも久しぶりね。みゆきがチョコを誰かにあげるなんて」
「みゆきももうすぐ16だ。恋の一つや二つ、経験あってもいいと思うけどな」
「それはそうだけど、みゆきもついに男の子に興味を持つようになったのかぁ…」
「もう…お父さんもお母さんも私のこと一体何だと思ってるの?」
「まあまあ。俺も綾香も、みゆきが成長したとこを見れて嬉しいんだよ。綾香、今日みゆきに化粧してやったら?」
「それもそうね。みゆき、おいで」
「え?でもお買い物に行くだけなのに?」
「気にすんな。綾香、今日はCでやってやんな」
「はーい」
「もう…そのアルファベット何なの?」
私はお母さんに連れられ、二人の寝室に入った
そして、お母さんの化粧台の前に座らされてた
「お母さん、本当にいつも私にメイクする時楽しそうにしてるよね」
「まあね。本音言うと、みゆきもあかりみたいにお化粧に興味持ってくれたらって思ってるんだよ」
「え?」
「みゆきだって女の子なんだから、人前でかわいくありたいって思うでしょ?」
「まあ…」
「女の子がお化粧に興味を持つきっかけなんて普通そんなもんだと思うけどなー」
「でも自分で初めてお母さんのを使ってした時よりもお父さんが教えてくれた方法の方がかわいかったから…」
「そうなのよねー。涼介君、昔から観察眼とそれに基づくアドバイスの能力だけは確かだったんだよね…。なのに私からのアプローチには全く気付かなかったんだよ」
「あはは…」
「はい、できた」
私は鏡を見てびっくりした
「凄い…。前は確かBだっけ?それでやってたのに前と同じみたい…」
「お化粧は肌のコンディションとか色々な要因で変化するものだから、毎回同じようにやればいいってものじゃないの」
「そうなんだ…」
「その辺りはいずれちゃんと教えてあげる。大人になると、お化粧はマナーの一つだからね」
「うん」
私は寝室を出てリビングに戻った
「うん、完璧だ」
「お父さんって本当に凄い観察眼持ってるよね」
「まあ仕事柄、必要な…」
「なのにお母さんからのアプローチには気づかなかったんだよね」
「うぐっ…。お前本当に母さんそっくりになってきたな…」
「お母さんはそういうタイプじゃ…あ、おばあちゃんか」
ピンポーン…
「あ、来たかな?」
「約束してるのか?」
「うん」
「気をつけて行って来いよ。あと、今日は俺も綾香も外で済ますからみゆきも適当に済ませな」
そう言ってお父さんは私にいつものお小遣いよりもかなり多い額のお金を渡してきた
「え?お父さん、いつもよりも…」
「買い物すんだろ?それに飯代もあるんだから多めに持ってけ」
「ありがとう…」
私はお父さんからお金を受け取り、家を出た
門の前には佐藤君が立っていた
「あれ?もう出れるの?」
「うん。行こう」
私たちは駅まで歩いた
「あれ?みゆき、今日もメイクしてきたの?」
「え?」
「だって、いつもかわいいけど今日はいつもよりかわいいから…」
「ありがとう…」
私たちは駅前からバスに乗り、デパートに行った
「今日は俺が出すから」
「そこまでしてもらうのは悪いよ…。さすがに自分の分は自分で出すよ…」
「そう?じゃあせめて昼飯だけでも…」
「佐藤君、なんでそんなにお金出したがるの?」
「まぁ…男のプライドってやつだよ。女の子に財布出させてるのって周りからはダサいって見られるから」
「私はそうは思わないけど…」
「ホントにみゆきは天使…いや、女神様だよ」
「もう…大袈裟なんだから…。じゃあ12時にここに集合でいい?」
「ああ、分かった」
私は佐藤君と別れ、チョコの専門店に行った
レジのところに行くと、桜井さんが立っていた
「いらっしゃい…って愛野さんじゃん」
「桜井さん?何してるの?」
「何ってバイトよ。私、毎年この時期ここでバイトしてるの」
「なるほど…」
「愛野さんももしかしてバレンタインのチョコ買いに来たの?今年はこれが凄く人気で…」
「いつものを貰えるかな?」
「いつもの?」
「オーナーさんに私の名前と、いつものって伝えれば分かるよ」
「分かった。聞いてみるね」
そう言うと桜井さんはお店の奥に入って行った
そして数分後、少し大きめのチョコの塊を持って戻ってきた
「お待たせ。愛野さん、いつもこれ買ってたの?」
「うん。チョコ用意する時はいつもこれ使ってるの」
「え?でもこれテンパリングも何もしてないから出してないってオーナーが…」
「問題ないよ。えっと…これで足りたよね?」
「えーっと…うん、ちょうどだね。はい、レシート」
「ありがとう。じゃあ、頑張ってね」
「ありがとうございましたー」
私はお店をあとにすると、そのまま地下の食材売り場に行った
ここの食材売り場は、色々なものが量単位で販売されている
私は必要な物を買い揃え、集合場所へ移動した
時計を見ると、わりといい時間だった
「お待たせ…って凄い荷物の量…。よくそんな大量に運べるな…」
「そう?お正月のお買い物の時と比較したら遥かに少ないんだけど…。でも確かにちょっと荷物が多いから一回帰りたいかな…」
「お、おう…。とりあえず手伝うよ」
私たちはタクシーで一旦帰宅し、荷物を置いてから再びデパートに戻ってきた
その後、二人でお昼を済ませ、再びお買い物に行った
「佐藤君のお買い物は終わってるの?」
「あ、うん。めっちゃ悩んだけど終わったよ」
「えっと…私、必要だった?」
「あー、みゆきを誘ったのは別件」
話によると、お買い物はついででメインは今日ここの催事場でやるイベントらしい
ここの催事場でのイベントはたまに見るけど、有名アイドルのライブがほとんど
基本的にその手のことには興味が無いので最近はここの情報収集はしなくなってしまった
だから今日ここで何をするかは私も知らない
私は佐藤君と一緒に催事場に向かった
そこには男の人ばかりがたくさんいた
「うーん…予想はしてたけど男ばっかだな…」
「佐藤君、これ、私への嫌がらせ?」
「いやいや、そうじゃないよ。まあとにかく見てみて」
しばらくすると、照明が消えた
そして、舞台のスポットライトが点くと、そこには5人の女性たちが立っていた
「最近巷で有名な『ブロッサムガールズ』って5人組のユニットなんだ。歌は合唱曲だけなんだけど、半端なく上手いって評判で…って、みゆき?」
「私、あの人たちよく知ってる」
「へ?」
「あの人たち、私の先輩の歌姫の方たち…」
「へ?全員、元ブロッサム・ディーバ?」
ブロッサムガールズというユニットについては以前晩ご飯を作っていた時に聞いたことがある
メンバーは全員音大で声楽を専攻していた人と元つむぎの歌劇団メンバーという、歌のエリート集団の女性たち
最終学歴だけを聞けば、ただ歌のプロだけを集めたよく分からないユニットではある
でも彼女たちは全員、元ブロッサム・ディーバ
つまり私の先輩の歌姫たちである
「どうりで歌が上手いわけだ…」
私たちは最後まで歌を聴き、催事場を出た
中の熱気が凄かったのか、外がかなり涼しく感じられた
私たちはそのまますぐそばのカフェで休憩を取ることにした
「みゆきちゃん」
「え?あ、詩織ちゃん、どうしたの?」
「みゆきちゃんもブロッサムガールズのファンなの?」
「私の場合は違うかな…。あの人たち、みんな私の先輩方だから…。詩織ちゃんはファンなの?」
「うん。合唱曲だけなのにあんなに魅力感じさせられるなんて思わなかった。なんていうか…歌姫として舞台に立ってる時のみゆきちゃんみたいな感じ?」
「あ、あはは…」
私たちは休憩している間、ブロッサムガールズの話で盛り上がった
そしてお茶を飲み終えた後、私たちは三人でお買い物を楽しんだ
帰り道、佐藤君は私の荷物を持ってくれた
「みゆき、楽しめた?」
「うん、ありがとう」
私たちはバスとタクシーに乗り、家に帰った
2037年2月14日
私は朝早く登校した
実は昨日、詩織ちゃんのチョコレートケーキを完成させ、帰宅してから今日渡すチョコを作っていた
そのせいで夜更かししてしまったため少し眠かった
私は自分の席につくと、そのまま眠りに落ちた
そして、次に目が覚めた時にはクラスメイトたちがどんどん登校してきていた
「おはよう、みゆき」
「おはよう…佐藤君…。あれ?佐藤君、上着着てないけど寒くないの?」
「…ったく…ストーブも点けないでこんなとこで寝てたら風邪引くぞ」
「え?」
肩のところに触れると、上着がかけられていた
どうやら佐藤君が私にかけてくれたみたい
私は佐藤君にお礼を言い、上着を返した
時計を見ると、予鈴まではまだ余裕があった
周りを見ると、男子も女子もみんなそわそわしていた
「あ、そうだ」
佐藤君は自分の席へ戻り、鞄から何かを取り出して戻ってきた
そして、持って来た物を私の机に置いた
「何これ?」
「プレゼントだよ。今日お前の誕生日だろ?」
「あ、ありがとう…」
どうやらこれは私の誕生日プレゼントらしい
佐藤君から私への誕生日プレゼントなんて4年ぶりだった
私はプレゼントを受け取り、鞄にしまった
「中、見ないの?」
「え?でももう…」
キーンコーンカーンコーン…
「チャイム鳴るからって言おうと思ってたんだけど、先に鳴っちゃったね」
「ああ」
佐藤君は自分の席へ戻った
あんなふうに言ったけど、本当はささっと中を見るくらいの時間はある
でもそれはプレゼントを見てもらいたいという彼の気持ちを無碍にすることになる
これはお昼休みに一緒に見よう
〜昼休み〜
私は佐藤君に声を掛けようとした
しかし、佐藤君はすでに購買に行く気満々だった
「腹減ったー…。立花、購買行こうぜ」
「おう。てか佐藤、お前今朝愛野さんに…」
「みゆきちゃん、一緒に食べよ」
「あ、うん…」
佐藤君は教室を出て行ってしまった
今日もお弁当作って来たのにな…
「みゆきちゃん、もしかして佐藤君のこと好きなの?」
「え?なんで?」
「さっき、佐藤君を目で追ってたから…」
「あー、それはお弁当を…」
私がそう言った瞬間、男子たちの雰囲気が変わった
たぶん私が作ったって言ったら確実に佐藤君が食べる分がなくなる気がする
「…家に忘れて行ったから届けてほしいって佐藤君のお母さんに頼まれたの」
「なるほどね」
私の一言の後、男子たちの雰囲気が一気に元に戻った
やっぱり学校でお弁当を渡すのはリスクが高過ぎるかもしれない
「はぁ…。またろくなもん買えなかった…」
「俺なんかろくなもんどころか何も買えなかったんだからお前の方がマシだろ…」
「佐藤君、みゆきちゃんが用あるみたいだよ」
「へ?何?」
「忘れ物」
私は佐藤君にお弁当を渡した
そして、佐藤君にアイコンタクトを交わした
「ありがとう。いやー、みゆきが届けてくれなかったら昼抜きになるとこだった…」
「いいなー。俺も弁当忘れた時に届けてくれる幼なじみがいてくれたらなー」
「くだらねえこと言ってないで食おうぜ」
「ああ」
佐藤君が無事お弁当を食べることができたところを確認していると、みらいちゃんが小声で私に声をかけてきた
「あれ、本当はみゆきちゃんが作ったんじゃないの?」
「うん。でもさっきお弁当の話をした瞬間、周りの男子の雰囲気が変わった気がしたから…」
「あー、狙ってるって感じが凄かったもんね。でもお弁当作ってあげてるってことはやっぱり佐藤君のこと好きなの?」
「佐藤君のお父さんに頼まれて作ってるの。そしてそのための材料代も渡されてるから…」
「やらないわけにはいかないと…」
「そういうこと」
でも正直なところ、最近は佐藤君のお弁当を作るのが楽しいと思ってるのも事実ではある
なんでこんな気持ちになってるのか、私には答えが分からない
「あ、そうそう。これ、みゆきちゃんに渡そうと思ってたんだった」
「え?」
「誕生日プレゼント。今年はチョコの準備もしたからお小遣いちょっとやばくて大したもの買えなかったんだけどね…」
「チョコ?」
「今日バレンタインでしょ?それでたくさん買っちゃったから…」
そう言うとみらいちゃんは私に紙袋の中を見せてきた
中にはかなりの数のチョコが入っていた
「何人に渡す気でいるの…」
「とりあえずクラスの男子全員と、部活の男子全員ってとこかな…」
「それだったら大きいの1個買って溶かして型に流して分けた方が安上がりだったんじゃ…」
「あー…。まあそういうわけで、あんまりいいもの買えなかったってわけ」
「事情は分かったけど、それなら相談してくれれば私が行ってるお店教えたのに…」
「そんなお店あるんだ…。まあとにかく、今年はそういうわけで大したもの買えなくてごめんね」
「あ、うん…」
「中、見てみて」
「う、うん…」
私はみらいちゃんがくれたプレゼントを開けてみた
中には私が普段乾燥対策に使っているのと同じリップが入っていた
「これ、私がいつも使ってるやつ…。もうそろそろ無くなりそうで買う予定だったの。ありがとう」
「それなら良かった」
その時、佐藤君が私の方にやって来た
「俺のは見てくれた?」
「え、まだだけど…」
「早く見てみてよ」
「う…うん…」
私は鞄から佐藤君がくれたプレゼントを取り出して開けてみた
中には2つの髪留めが入っていた
「これ、この前高いから買うの諦めたやつ…」
「うん。この前お前と上山と一緒にデパート回ってた時に欲しそうにしてたから昨日買って来たんだ。それに今使ってるの、小2の時から使ってるからボロボロになってるだろ?」
「気付いてたの?」
「まあな」
「ありがとう、佐藤君」
私は今使っている髪留めを佐藤君がくれたのと交換した
「これは…」
「似合いそうとは思ったけど想像以上だった…」
「お?もしかしてみゆきちゃんのこと、ますます好きになっちゃった?」
「茶化すなよ…。みゆき、めっちゃ似合ってる。想像してた以上にかわいいよ」
「あ、ありがとう…」
私は鞄から小さな包みを取り出し、佐藤君に差し出した
「へ?これは?」
「プレゼントのお返し」
「ありがとう」
佐藤君はすぐに私が渡した包みを開けた
「おお…」
「何それ凄い…」
「チョコってこんなに輝くもんなのか…。これ、どこに売ってたの?」
「え?デパートのショコラティエで買ったクーベルチュールだけど…」
「しかも愛野さんが買ったの、テンパリングもされてないやつだったよね?」
「うん」
その瞬間、周りにいたクラスメイトたちが驚いて声を上げた
普通、みんなが買っているチョコレートはテンパリング等の加工が済んでいてすぐに食べられるようになっている
でもクーベルチュールは、加熱してから使うことが前提となっているものであり、その中でも私が買ったのは、テンパリングもしていないもの
いわば、そのまま食べるには向いていないものである
「愛野さん、もしかして…テンパリングできるの?」
「小さい時にチョコレートケーキ作ろうとして、その時に教えてもらったの」
「マジか…」
その話をした瞬間、一気に男子たちが集まってきた
どうやら私が1から作ったチョコが目当てみたい
「男子って本当に単純ね…」
「でも私も食べてみたいかも」
「確かに」
「二人で話してないで助けてよー…」
「ちょっと男子、愛野さんが困ってるじゃない。ちゃんと1列に並んで待ちなさい」
「そういうことじゃないよー…」
結局私が作ったチョコはクラスの男子全員に貰われてしまった
それと引き換えに、男子たちは私にお誕生日プレゼントを渡してきた
「チョコ無くなっちゃった?」
「あと少しなら…」
「あるんだ…」
「本当は詩織ちゃんやみらいちゃんたちと一緒にお喋りしながら食べようと思って作ったのになぁ…」
「私たちのおやつだったんだ…」
「私たち、さすがにあんなに食べられないよ?」
「うん…。そう考えると男子たちが貰ってくれて良かったと思うよ…」
「一応他の子たちが入ってきてもいいように多めに作っておいたの」
「なるほどね」
その後、私たちは残ったチョコを食べながらお喋りをした
〜放課後〜
「みゆき、重くない?」
「ちょっと重い…」
「家まで持つよ」
「ありがとう…」
私は佐藤君にプレゼントが入った紙袋を預けた
「あ、そうだ。みゆき、チョコめっちゃ美味かったよ」
「それなら良かった」
「あれ、義理?」
「うーん…義理とかそういうの全く考えてなかったんだよね…」
「やっぱ誕生日プレゼントのお返しか…」
「佐藤君に渡すってなるとやっぱりそんな感じかな…。本命が欲しかったの?」
「貰えるに越したことは無いって感じかな…」
「でも佐藤君、お昼休みの終わりくらいに本命っぽいチョコいくつか貰ってなかった?」
「うん。本当に本命かは分からないけど手作り感は結構あったね」
「お返しはちゃんとしてあげないとだめだよ」
「分かってるよ。貰った子たちにはもちろん、みゆきにもちゃんと渡すから」
「え?うん…」
実は佐藤君からチョコのお返しは一回も貰ったことが無い
私もプレゼントのお返しということで渡していたからお返しを貰えなくても全然気にしていなかった
でも佐藤君は今年はお返しをくれるらしい
バレンタインのチョコとして貰ったという意味なのかな…
私たちはゆっくり電車で帰宅した
女子の手作りチョコって言ったら大抵市販の板チョコを溶かして型に流し込んでってやってるだけってよく言われますよね。でもあれ、プロからしたらチョコの味を落とす最悪の行為が含まれてるみたいなんです。
チョコって温度管理が厳しい上に少しの水分も嫌うということで、高い温度で湯煎するのって温度は最悪だし水分も入るという悲惨な状態らしいんです。
まあ…私も最初に知ったのは夢色パティシエールだったんですけどね…。まあ…男だからバレンタインにチョコ渡す側ではないがw
ちなみに今回ちらっと出したクーベルチュールチョコレートっていうのが調理加工するためのチョコで、店で売ってる板チョコは食べるために加工が済んでるものなんです。だから勉強する気がある子はみゆきちゃんみたいにテンパリングを習得してクーベルチュールからバレンタインのチョコ作ってみるのも良いのではないでしょうか?美味いチョコ作れれば料理できる子だと思ってもらえて男子からモテるかも?知らんけどw
皆さんはバレンタインの思い出って何かあります?
コメントでぜひ書いてみて下さい。
ちなみに私は小学校低学年の時にビンに詰めたチョコを近所の子がくれたっていう記憶があります。
それ以外は全く思い出がありません!




