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あまいろパステル 〜紡がれる恋の1ページ〜  作者: 神御田
1年生

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12/32

9時間目 過去の記憶

この話は前半と後半で話の中身が違います。

前半部分は


性犯罪というものは、自身の人生だけでなく、被害者の人生をも壊すことにもなる行為です。ほとんどの女性は男性よりチカラは弱いです。そんな女性がチカラで男性に押さえつけられて欲の限りを尽くされるというのは恐怖でしかありません。絶対にやらないようにして下さい。

そして、恋人がいるそこのあなたも、「自らが親になる覚悟ができるまでは行為を行わない、やる場合は避妊する」。これをしっかり守りましょう。赤ちゃんができてしまってからでは手遅れです。

中絶すればいいと思ったそこのあなた、中絶は女性の心に傷を負わせ、さらに不妊にしてしまうこともあるんです。そういう安易な考えは今すぐ捨てて下さい。


という思いを込めて書きました。

後半部分はみゆきちゃんの過去に軽く触れた内容になっています。

2036年11月14日

〜放課後〜

俺は今、コンクールの絵を描いている

しかし、なかなか思ったような絵にならず、何度も描き直している

俺が腕組みして考えていると、部員の一人が声をかけてきた


「佐藤、もうすぐ最終下校時刻だぞ」

「あと少しなんだ」

「お前最近根を詰め過ぎだろ」

「仕方ないだろ。コンクールまであと少ししか無いんだから」

「…ったく…じゃあ鍵の返却頼む」

「おう」

「それとさっき、愛野さんが迎えに来てたぜ。教室で待ってるってさ」

「了解」


立花は机に美術室の鍵を置いて帰宅した

俺は一人きりになった美術室で黙々と作業を続けた

しかし、最終下校時刻までに絵を完成させることはできなかった

俺は教室に行き、みゆきと合流した


「悪かったな、待たせたみたいで」

「本当は私一人で帰っても良かったんだけどね」

「いやいや、さすがに女の子が一人で帰るには遅いだろ」

「じゃあ早織と一緒なら大丈夫なの?」

「まあ…一人よりはマシかも?」


正直、時間自体は別に大して遅くはない

ただ、今は冬が近いこともあり、この時間でもかなり暗いため、かなり危険だ

特に、みゆきは運動能力が絶望的なので、何かあっても逃げるだけのチカラは無いだろう

だからこそ俺は、最近はみゆきと一緒に帰宅しているのだ


「そういえばもうすぐコンクールだよね?間に合いそう?」

「ギリギリかな…。なかなか難しいんだよな…」


その時、ホームから大きな音が鳴り出した

放送を聞くと、どうやらはるかぜニュータウン駅で人身事故があったようだ

振替輸送もやっているらしいが、はるかぜニュータウン駅は乗り換えが無いため、動き出すのを待つしかない

俺たちは一旦電車を降り、動き出すまで時間を潰すことにした

しかし、駅を出てみたが、駅の周りには何も無かった


「ここ、何もないんだな…」

「最近、各駅停車しか停まらない駅の周辺からはいろんなお店が撤退してるからね…」


俺たちは少し駅から離れてみることにした

少し歩くと、小さな公園に着いた


「こんなところに公園あったんだ…」

「お店は無いけど住宅街は広がってるからね」

「ただ、街灯が一つも無いから真っ暗だな…」

「ありはするんだけど、電球が切れてるのかもね」

「やけに詳しいな」

「この近くに彩音さんの家があるんだよ」

「彩音さんって、桜女子からの交換交流生の今川さんのこと?」

「うん。よくお呼ばれしてたから来たことが…」

「あら?もしかしてディーバ様とその幼なじみの佐藤様ですか?」


俺たちが振り返ると、そこには護衛と共に歩いている今川さんがいた


「あの…彩音さん、その呼び方…」

「あっ…これは失礼を致しました。ところでみゆきさんたちはどうしてこちらに?」

「実は…」


俺は人身事故に巻き込まれたことと、振替輸送の手段が無いことを話した


「でしたら私の家に来られますか?」

「でも急にお邪魔したら迷惑じゃない?」

「いえいえ、問題ありませんよ」

「では、お邪魔させていただきますね」

「みゆき、また…」

「あ…」


俺たちは今川さんについて行き、今川さんの家まで行った

今川さんの家はまさにお金持ちの家という感じだった

今川さんが家に入ると、数人のメイドさんたちがお出迎えしてくれていた


「お帰りなさいませ、お嬢様」

「ただいま戻りました。こちらの二人は私の大切な友人ですので丁重にお願いします」

「かしこまりました、お嬢様」


俺たちはメイドさんたちに案内され、客間に通された


「広っ…」

「何かありましたら何なりとお申し付け下さい」

「は、はい…」


そう言うとメイドさんは部屋をあとにした


「めっちゃ広いな…」

「落ち着かない?」

「いや、みゆきはこの広さびっくりしないの?」

「何回か来たことあるからね」

「あ、なるほど…」


その時、今川さんが部屋に入ってきた


「これから夕食ですけどお二人もいかが?」

「いや、そこまでしてもらうのは…」

「お気になさらないで下さい。一人よりも三人の方が楽しめますから」

「一人?」

「彩音さんのご両親、お仕事で帰りが遅い日がよくあるの」

「そうだったんだ…。じゃあ一緒にお願いします」

「『じゃあ』って…」


俺たちは今川さんに案内され、食堂へと足を運んだ

食堂もかなりの広さがあった

みゆきの話だと、桜女子にいた時はここで何度か食事会もやったらしい


「どうぞこちらに」

「お嬢様、それは私が…」

「お二人は私の友人だけど、私のお客様でもあるのよ。だから自分でさせて」

「お嬢様…」


俺たちは今川さんの案内で席についた

そして、今川さんが席についた直後、料理が運ばれてきた


「あの、今川さん。俺、テーブルマナーとか…」

「お気になさらなくて大丈夫ですよ」

「それじゃあそうさせてもらうよ」


俺たちは食事を楽しんだ

その後、スマホを確認すると電車の運転が再開したと表示されていた


「そろそろ帰るか」

「動き始めたの?」

「そうみたいだよ」

「駅までお送りしましょうか?」

「いや、そこまでしてもらうのは悪いよ。それにちょっと夜風に当たりながら帰りたいし」

「そうですか…。ではみゆきさんだけでもお送りしましょうか?」

「私も歩いて帰ります。少し寄りたい場所もあるので」

「そうですか。ではお気をつけてお帰り下さい」

「ああ。ありがとうな」


俺たちは今川さんの家をあとにした


「みゆき、寄りたい場所って?」

「あれは嘘。私も家で休ませてもらった上に夕食までご馳走になってさらに送ってもらうのは気が引けたから」

「なるほど…」


俺たちは駅の方へと歩いていった

気付くと、さっき見た公園の近くまで来ていた


「やっぱり暗いな…ってみゆき、大丈夫?」

「うん…ちょっとお手洗い行きたいだけ」

「わりとやばい?」

「なんとも言えない…」

「じゃあ待ってるから行っておいで」

「うん…」


みゆきはそそくさと公園のトイレに走って行った

俺は近くの自販機の前に来た


「俺はこれで、みゆきのは…」


その時、トイレの方から悲鳴が聞こえてきた


「みゆき…!」


俺はトイレの方へ走って行くと、女子トイレから男の声が聞こえてきた

俺は急いで警察に電話して警察が来るのを待った

その時、トイレの中から殴られてるような音が聞こえてきた

俺は女子トイレに飛び込んだ

そこには恐怖で怯え、床に座り込んで水溜まりを作ってお腹を押さえているみゆきと、いかにもヤバそうな数人の男がいた

おそらくこいつらにお腹を殴られたのだろう


「てめえら…」

「あ?なんだてめえ」

「ここ女子トイレですよー。ぎゃはははは」


男たちは俺をバカにするかのように笑ってきた

こいつらに反省する気はないようだ

俺はぐっと拳を握った


「てめえら…俺の女に何してくれてんだー!!」

「お?やるか…ぐはっ!」


俺は男の一人に正拳突きを入れた

男はそのまま壁に叩きつけられた


「なっ…てめえ!」


俺はそのまま残りの男たちもそのまま一掃し、みゆきのもとに行った


「みゆき、だいじょ…」

「いや、来ないで!」


みゆきは俺の手を振り払ってきた

どうやらこいつらのせいで男に対しての恐怖心が蘇ってしまったようだ

こうなったみゆきは男の俺では手に負えない

その時、警察が駆け込んできた


「動くな!」

「おまわりさん、犯人はそいつらです」

「え?どうなってんだ?」

「この子がやばかったので一発入れたんです」

「そ、そうか…」

「あと、女性の警察官いません?この子をお願いしたいんですけど」

「分かりました。ちょっと待って下さい」

「110番したのは君かい?」

「はい」


俺は駆けつけた警察官に事情を話した

そして、みゆきは応援に来た女性警察官に連れられ、俺や男たちとは別に警察署に連れて行かれた

そして、俺は警察署で事情聴取を受け、会議室まで連れて行かれた


「あの女の子は念のため病院に連れて行くことになった」

「俺も行かせて下さい」

「お、おう…」


俺はみゆきと一緒にパトカーに乗り、病院まで行った

病院に向かう途中、俺がみゆきに声をかけると、みゆきは俺に抱きついて大泣きしてしまった

俺はみゆきが泣き止むまでそっと抱きしめてあげた


「着いたわよ。大丈夫?」

「はい…」


俺たちは一緒に病院に入った

院内には他に患者は誰もおらず、すぐに呼ばれた

俺は待合室で待っていた

その時、横に誰かが来た


「久しぶりだな、幸二君」

「あ、お久しぶりです、みゆきのお父さん…って親父も!?」

「おう。どうしたんだ?こんな時間に」

「みゆきが暴漢に襲われて、念のために検査にって」

「みゆきが?」

「本当に間一髪でした。恐怖のあまり、被害の直後は俺ですら近付けませんでしたから…」

「あー、みゆきの男性恐怖症が再発したってわけか…」

「犯人は?」

「現行犯逮捕」


その時、診察室からみゆきが警察官と一緒に出てきた


「みゆき、大丈夫か?」

「うん…。お腹を強く殴られはしたけど異常は特に見られないって…」

「良かったー…」


その時、診察室から担当の先生が出てきた


「あ、下柳先生。この子の所見は?」

「上腹部に痣がありますけど、触診と超音波やった限り、内臓には特に何の異常も見られませんでした。痣もそんなには酷くないので自然に綺麗になると思いますよ」

「冷静だな…みゆきのお父さん」

「慌てず冷静に物事を見極めることが大事っていつも言ってるくらいだからね」

「では、今から親御さんに連絡しますので」

「あ、お巡りさん。このお医者さんがこの子のお父さんです」

「あら、そうでしたか。では私はこれにて失礼致します」


警察官はそのまま病院をあとにした


「ところで、なんで二人はこんな時間に外に?」

「人身事故に巻き込まれちまって、そしたらクラスの人が家で休ませてくれて…」

「大方、その帰り道で公園かなんかの公衆トイレに寄ったら襲われたってとこか?」

「はい…」

「何やってんだか…」

「まあでも幸二君。みゆきを守ってくれてありがとな」

「え?」

「その手の怪我、みゆきを守ろうと挑んで負ったものだろ?」


俺が右手を見てみると、確かに怪我をしていた

奴等を倒した時は全然気付いていなかったが、手にはちょこちょこ傷跡があった


「二人とも待ってな。今準備してくるから」

「おい佐藤、夜勤サボる気か?」

「いや、このまま二人だけで帰すわけにはいかんだろ。とはいえ、病院に置いたままにするわけにも…。だから家まで送ってすぐ戻って来るよ」

「絶対戻って来いよ。ER一人とか無理だからな」

「おう」


俺たちは親父の準備が終わるのを待ち、一緒に車に乗った


「それにしても愛野も薄情だな…。娘が事件に巻き込まれた後だってのに一緒に帰らないって…」

「今日は帰ればお母さんがいるので…」

「あ、そうなんだ」

「佐藤君、あの時は助けてくれてありがとう。あと、助けてくれたのに手を振り払ったりしてごめん」

「気にしなくていいよ。てか親父、さっきみゆきのお父さんとタメで話してたけど、友達か何か?」

「あいつとは小学生の時からの腐れ縁で、こもれび高校に通ってた時も学年で1、2を争ってたんだ。まあ…全敗だったけどな」

「ふーん…って親父たちもこもれび高校行ってたの…ってそういや小林先生が言ってたな」

「俺たちだけじゃなくて、楓も、みゆきちゃんのお母さんも、正一君の両親と早織ちゃんの両親もみんなこもれび高校出身だぜ」

「マジかよ…」

「ここだけの話、実は愛野の奴、綾香ちゃん…みゆきちゃんのお母さんの猛アピールに気付かないほど恋については鈍感だったんだぜ」

「へー」


俺たちは親父たちの高校時代の話を聞きながら帰宅した


「そんじゃ、俺は病院に戻るから。そうしないとまた愛野に怒られちまうからな…。戸締まりしっかりしろよ」

「ああ」


親父は車を走らせ、病院へと戻って行った


「あ、みゆき」

「どうしたの?」

「月曜日からはしばらく一緒に登下校してやるから待っててくれる?」

「あ、うん…」

「じゃあ、おやすみ」

「おやすみ」


俺はみゆきが家に入るのを確認し、家に入った

その直後、スマホが鳴り出した

石川からの電話だった

電話に出ると、石川はいきなり捲し立ててきた

どうやら俺が帰宅してなかったから心配になってかけてなかったようだ

俺は今日あったことを全て話し、月曜日からしばらくはみゆきと登下校すると伝えた


「なるほどな…。じゃあ俺も行きくらいは一緒に行くよ。そんなことがあった直後なら愛野だって不安だろうからな」

「いいのか?朝めっちゃ早くなるぞ」

「気にすんなって。愛野は俺たちにとっても大事な幼なじみだ。牧野にも伝えておくよ」

「悪いな。頼むよ」

「おう。じゃあな」


俺は通話を終えると、手洗い、うがいを済ませ、着替えて机に向かった

そして、パソコンの電源を入れるといきなりみゆきからSkipeで電話がかかってきた

電話に出ると、月曜日の昼飯について聞いてきた

どうやら月曜日は俺の希望通りのものを作ってくれるらしい


「佐藤、それは偏りすぎじゃない?」


俺はみゆきに食べたいものを伝えていると、突然野次が飛んできた

画面を見ると、牧野が通話に入ってきていた


「たまにはいいだろ。てか偏ってるとだいたいみゆきが栄養調整してくれるからあんま気にしなくても大丈夫ではあるんだよ」

「今回は佐藤君の頼んだものだけ入れるつもりだったんだけど…」

「みゆきにしては珍しいね。いつもは栄養が偏るからとかで好きな物だけなんてやらないのに…」

「今日は佐藤君に助けられたからね…」

「あー、そっか。佐藤、よくやったわね」

「そういえば佐藤君、あの時私のこと『俺の女』って言ってた?」

「ほー?」

「そ、それは…そう!俺の幼なじみの女って言おうとして間違えたというかなんというか…」

「とかなんとか言っちゃって、本当はみゆきのこと、結婚したいくらいに好きなくせに」

「ばっ…!牧野!」

「ふふっ」

「あ、みゆきが笑った」

「でも牧野、お前は許さん」


その後も牧野は俺のみゆきへの想いを暴露しまくってきたので俺はあたふたしてしまった

しかし、その結果みゆきは笑顔を取り戻していた

そして、みゆきは疲れたと言い、通話を切った


「牧野、今日みゆきが襲われた時なんだけど、俺が近付いただけでも拒絶してきたんだけど何か知らない?」

「あー…実はみゆき、小6の時、学校のトイレに侵入した男たちに襲われそうになったのが凄く怖かったって…。元々いじめで男子に対して不信感があった中での出来事でね、それをきっかけに完全に男性恐怖症になったのよ」

「あー…そりゃ男の俺でも怖いわ…」

「だからその時の記憶がフラッシュバックしちゃったんじゃないかな…。あたしもその時はみゆきと一緒にトイレ行ってたからあの時のことはよく知ってるわ」

「なるほどな…。今はもう平気だったのかな…」

「顔には出してないけど、知らない男はまだ怖いらしいわよ」


まあ…男性恐怖症のきっかけが知らない男なら、恐怖の対象のままでもおかしくはないか

そんなことを考えていると、牧野はさらに言葉を続けた


「まあそんな感じだから、歌姫の仕事でも男の人が多いステージはかなり怖いらしいわよ」

「無理もないな」

「だから佐藤、あんたしっかりみゆきを守ってあげるのよ。そうすればもしかしたらみゆきもあんたのこと好きになってくれるかもしれないわよ」

「なんかもうツッコむ気も失せたわ…」


俺は牧野としばらく雑談して通話を終えた


2036年11月17日

俺はいつもより早く支度し、みゆきの家に行った


ピンポーン


「はい」

「みゆき、迎えに来たよ」

「うん。もうすぐお弁当できるからもう少し待ってて」

「おう」


通話が切れると、ちょうど石川と牧野が家から出てきていた


「どう?」

「もうすぐ弁当できるから待っててとさ」

「あー、あの偏りまくり弁当ね」

「余計なお世話だ」


俺たちみゆきが来るまでくだらない話で盛り上がった


「お待たせ」

「平気平気。時間結構余裕あるし」

「みんな、ごめんね。私のためだけに」

「気にすんなって。あんなことあってすぐに一人でってのは怖いだろうしさ」


俺たちは駅に向かった

いつもよりもかなり早いこともあり、ホームはかなり空いていた

ここからオフィス街に向かうには、はるかぜ高校を経由する

つまり、朝の時間帯にこもれび高校方面の電車に乗るのは学生ばかりだ

しかし、ここからこもれび高校まではかなり距離がある

それゆえに学生たちはほぼ特急通学で、みゆきみたいに特急を使わずに通学する学生はわりと珍しい

そして、特急が来るまでまだかなり時間がある

だから、こもれび高校方面のホームは必然的に空くのだ


「それにしても冷えるな…」

「こんな中でもスカートで登下校する女子ってすげーと思うよ…」

「いやいや、さすがにスカートだけでは行かないわよ。流石に寒すぎるもの」

「じゃあどうしてるの?」

「人にもよるけど、だいたいは黒のタイツを穿いてることが多いんじゃない?」

「なるほど…。じゃあ愛野は別の方法か?」


牧野は黒のタイツを穿いていて脚全体が覆われていた

それに対してみゆきはスカートから生脚を出していた

おそらく防寒対策の方法が違うのだろう


「物にもよるけどスパッツだけでも十分暖かいのもあるのよ」

「なるほどな…。じゃあみゆきはそれを?」

「たぶんね。でしょ?みゆき」

「え?何?全然聞いてなかった…」

「女子は寒さ対策どんなことしてるのかって話をしてたの。で、私はタイツだけどみゆきは何なのかって話をしてたのよ。みゆきはスカートの中、何穿いてるの?」

「え?下着以外何も…」

「え?寒くないの?」

「寒いけど無いから…」


みゆきの話だと、みゆきも冬場はタイツを穿いているらしい

ただ、クローゼットから取り出したら1枚を除いて全部虫にやられていた上、その1枚も金曜日に襲われた時に破られたらしい

ある意味、間が悪かったようだ


「土日に買いに行けば良かったのに…」

「行ったんだけど、小さいサイズのが無くて…」

「ありゃま…」

「まもなく2番線に、各駅停車こもれび高校行きが到着致します。黄色い点字ブロックまでお下がり下さい。この電車は当駅で…」

「おっ、来るぞ」

「愛野は牧野と女性専用車に乗れよ」

「石川、女性専用車は反対方面だけ…」

「あ、そうだった…」

「佐藤君もあんまり人のこと言えないからね。乗るのは急行だよ」

「あ、そうだった…」

「あんたたちねぇ…」


俺たちは各駅停車が来た後に向かいに来た急行に乗車し、俺と石川と牧野でみゆきを挟むように座った

到着時刻自体は特急に乗って行く時と大して変わらない

ただ、所要時間はかなり伸びるので出発時間もかなり早くなっている

そのせいか俺は席に座るなりそのままみゆきに寄りかかって寝てしまい、目が覚めたらこもれび高校駅到着直前だった


「おはよう。良く眠れた?」

「うん…。悪かったな。急に寄りかかって寝ちまって」

「無理もないよ。みんなの時間よりかなり早く出てるんだから。それに早織と石川君も私の方に倒れて寝てたから」

「重くなかった?」

「ちょっとだけね」

「ホントすまん…」

「気にしないで大丈夫だよ」


そう言うとみゆきは俺に笑顔を向けてきた

そのかわいさに俺はドキッとしてしまったと同時に、この笑顔を守る事こそが俺の使命なのだと思った


駅の階段を上がると、学校直結の改札前が閉鎖されていた

どうやら改札機が故障してしまったようだ

俺たちは別の改札から出た

直結の改札を通らない場合、こもれび高校の正門から入らないといけない

そのため敷地を半周ほど回らないといけないので少し時間がかかる

でも俺たちの到着時間はそもそもかなり余裕があるので、遅刻することなく教室へと辿り着いた

しかし、元々そこそこギリギリに来ていた生徒たちの中には遅刻した者もいたようだ


〜昼休み〜

俺はみゆきと一緒に中庭に行った

今日はみゆきがお弁当を作って来てくれている

しかし、教室で食べるとクラスの男子たちに奪われてしまうので、中庭で食べることにしたのだ


「悪いな。いつもいつも」

「ううん。一人分作るのも二人分作るのも大して変わらないから。まあ…今日は佐藤君が食べたいって言った物作ったから作る品数増えちゃったけどね…」


そう言われて俺の弁当とみゆきの弁当を見比べてみると、確かにメニューが違った

俺の弁当は金曜日に注文した通り、そこそこガッツリした感じだが、みゆきのは基本的には野菜中心の軽めな感じだった


「なんかごめんな。手間かけさせちゃったみたいで…」

「私のことは気にしなくていいんだけど、お昼からこんなに重そうなのばっかりで大丈夫なの?」

「大丈夫大丈夫。午後、一発目から体育だからむしろこういうのがいいんだよ」


そう言いながら俺はおかずを一つ口に入れた


「やっぱみゆきの料理めっちゃ美味いな」

「それなら良かった。じゃあ今度から5時間目に体育がある日はこういうのにした方がいい?」

「うん。あとできれば4時間目が体育の日も」

「うん、分かった」

「…っとと、早く食べねえと休み時間終わっちまう」

「そうだね。それに次の授業体育だから着替えないといけないもんね」

「だな」


俺は弁当を味わいつつも急いで食べ切った


「ふぅ…。ごちそうさま」

「じゃあ急がないとね」

「女子も体育でしょ?」

「ううん。今日は保健の授業」

「あ、そうなんだ。じゃあ急ぐのは俺だけか。じゃあ先行くね」

「うん、頑張ってね」


俺は急いで教室に戻り、体育着を持って更衣室に行き、急いで着替えて校庭に出た

わりとギリギリではあったが、なんとか間に合った


体育の授業後、教室に戻ると女子たちが騒がしかった

女子は保健の授業だったみたいだが、一体なんでこんなことになったのだろうか

すると飯島が俺に気づいてこえをかあつして


「あれ?佐藤君、何してるの?」

「いや、何があったの?やけに騒がしいんだけど」

「あー、それはね…」


飯島の話によると、さっきの保健の授業で人形を使った応急処置の実技があったらしい

そして、そこでみゆきの手技を見て、先生が手本としてみんなに見せたようだ

そしてそれからというものの、みゆきの手技に感激した女子たちが興奮して騒がしくなっているらしい


「あー…まああいつ、あれでも医者と看護師の娘だからな…」

「そういえば佐藤君、はるかぜニュータウン駅前で8年前に起きたトラックが喫茶店に突っ込んだ事故って知ってる?」

「ん?ああ。俺もあそこにいたから」

「さっき、応急処置の大切さを学ぶための参考ビデオとして最後にその時の現場の状態が映ったもの見せられたんだけど、みゆきちゃんがそれ見てる最中に過呼吸起こしちゃったんだよね…」

「え!?あれみゆきに見せたの!?」


俺が飯島に迫ると、クラスメイトたちが一斉にこちらを見てきた


「え?ちょっ…」

「みゆきは今どこ!?」

「加藤先生が保健室まで連れて行ったけど…って佐藤君!?」


俺は飯島から場所を聞くと、大急ぎで保健室に行った

保健室に着くと、そこには加藤先生と佐々木先生がいた


「あら、どうしたの?」

「あの…俺、1年1組の佐藤です」

「もしかして、愛野さんの様子を見に来たの?」

「はい…。大丈夫そうですか?」

「今はもう落ち着いて、そこのベッドで寝てるわ。でも加藤先生、どうしてこんなことに?」

「さあ…。私はただ、応急処置の大切さを教えるために8年前の事故の映像を交えながら…」

「それが原因です」

「どういうこと?」


俺は加藤先生に8年前の事故のことを話した


「そう…。あの事故に巻き込まれて3ヶ月もの間生死の境を彷徨ってた少女が愛野さんだったなんて…」

「つまり、事故当時の映像がきっかけでフラッシュバックを起こして…」

「当時7歳だったあいつにはものすごい恐怖だったでしょうね」

「なるほどね。次からは気をつけるようにするわ。ちなみに佐藤君、他にも愛野さんがトラウマになってる話ってある?」

「あとは…」


俺は金曜日の出来事と、それに関する生々しいものはおそらくアウトであることを加藤先生に伝えた

その時、ベッドの方から声が聞こえてきた

佐々木先生はベッドの方へ向かった

そして少しするとすぐに戻ってきた


「どうしたんですか?」

「今、愛野さんが目を覚ましたんだけど、落ち着いてからまだあんまり経ってないからもうしばらく休むように言ってきたの。佐藤君だったかしら?次の授業の先生に、愛野さんを休ませること伝えてもらえるかしら?」

「あ、はい。分かりました」

「そうしたら小林先生には私から伝えておきます。元々は事情を知らずにビデオを見せてしまった私の責任ですから」

「分かりました。お願いします」


俺は保健室をあとにし、教室に戻った

そして、大倉先生にみゆきが休むことを伝えた

そして、そのままみゆきはホームルームにも姿を現すことは無かった

トラウマって簡単に克服できるものではないと思います。たとえ克服できたと思ったとしても、何かしらのトリガーを引けばたちまち思い出し、恐怖を蘇らせてしまうものなんだと思います。だからこそ、周囲のサポートっていうのが非常に大事なんだと思います。まあ…個人的にはそう思ってるってだけなので、「それってあなたの考えですよね?」と言われてしまえばそれまでなんですけどね…。


8年前、みゆきちゃんの身に何があったのかはお昼休みで投稿します。楽しみ(?)にしていて下さい。

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