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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第3章

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97.ヒロインはリン!?


『リンよ。気にするでない。いつもの事だ』


ヴェリウスがそう言って話を進めようとするので、リンは戸惑いながら、キャラバンであった事、王都であった事等を語りだした。


私達が聞いた時と何の矛盾もなく話し終えたリンは、気まずそうにソファに座ってソワソワとしている。

たまにこちらをチラチラ見ては目をそらしを繰り返していて、いたたまれない気持ちにさせられる。


何故ならば、ロードの接触がただ膝の上に乗せるから抱き締めるに変わり、今は耳元で囁かれるように話されている。頬擦りする勢いでだ。


「ミヤビ、コイツの話にオメェが聞いた時と違う点はあったか?」

「ちょ、近い近い! 違う所はなかったよ! 耳元で話すの止めて!!」

「そうか……」


私達がリンの話をした時のように考え込んだロードだが、顔の近さは変わらない。


「あ~……気にしないでリン君。みーちゃんとロードさん、蜜月だからさ」

「本当にミヤビ……様が、師団長のつがいなんですね」


トモコとリンの会話に顔が赤くなる。蜜月とか言うな。


「みーちゃんがロードさんのつがいって意外?」

「いや…あ、いえ」


まぁそんな反応だよね~。ロードはおっさんでゴリラだけどイケメンだ。対する私は平凡に輪をかけたような顔立ちで目が死んでる。


「私はロードさんがみーちゃんに何で惹かれるのか、分かるけどなぁ~」

「え?」

「みーちゃんは面倒臭がりだけど、素直でお人好しで騙されやすくて、お節介焼きで、子供や動物にものっすごく好かれる子なんだよ」


トモコさん、ディスってるの? 誉めてるの?


「……確かに、初めて会った時からお節介で、騙されやすそうな奴だなって思ってた」


リン君ンンン!?


「きっとそんなみーちゃんだから、ロードさんは惹かれたんだろうね。ゴリラだし」

「ごり??」


トモコ、お前実は私とロードの事嫌いだろう。

というか、何故そんな話になったんだか。


「だからねリン君。ロードさんは諦めなさい」

「「は?」」


リンと私の声がかぶった。


「君がロードさんに恋してるって、ロードさんに声をかけられたリン君を一目見て分かったの」

「はぁぁ?!! ちょ、ちがっ」

「皆まで言うな!! 分かっているからっ BとLの事ならお任せ下さい!!」


何だと!? リンのロードへの気持ちはやはりBとL!? つまり私はリンのライバルに!? とんでもない!! BとL様が最優先ですよ!!


「ロード、私の事は忘れてBとL…ゴホンッ 幸せになって」

「あ゛ぁ゛!? テメェはまた何言い出してんだコラァ」


頭をこづかれた。こづかれたっていうか、殴られたから。こづかれた時にゴッて音が出たから。

悪鬼の筋力恐るべし。


「冗談でもそんなバカな事言うんじゃねぇぞ」

「スイマセン」


ロードのステータスを見た後だったので、即平謝りした。


「俺のは恋じゃなくて憧れだ!! ガキの頃にロード様に助けてもらってから、ロード様のような騎士になりたいって! だから変な誤解すんなよな!?」

「恋を憧れだと勘違いしているパターン!?」

「違うって!!」


しつこいトモコにリンも口調が元に戻ってしまっている。

しかし、リンが子供の頃ロードに助けられたって……。その過去、正統派ヒロインすぎる!!



リンは過去、騎士ロードに救われた。

恩返しをしようにも、ロードは他国の人間。しかも身分のある騎士だ。

リンは考えた。今すぐには無理でも、いずれ彼の人の元へ行き恩を返そうと。

その為には自身が強くなり、騎士になって彼の人に近づくしかないのだと。

そうして時は流れ、小さな恋心を憧れだと勘違いしたまま受けた騎士団の入団テストで、晴れて合格を果たしたのだが、いざ騎士団へ入ると……憧れのロードが婚約したとの噂が飛び交っていたのだ。

噂は事実であり、さらに婚約者はロードにとても相応しいとは思えない女性だった。

ショックを隠しきれないリンだったが、入団してすぐにロードから声を掛けてもらうという出来事で自分の気持ちに気付き…………


みたいな!?

完全に恋愛小説のヒロインポジションじゃないですかァァァ!!

そして私は悪役令嬢…いや、悪役精霊(ショボい)ポジションですか?


「よく話してくれた。フォルプロームの事が気になっているとは思うが、今はお前自身が騎士としてここでやっていけるよう頑張ってくれ」

「は、はい!!」


案外まともな激励をするロードを意外だと思いながら、緊張しながらも嬉しそうに返事をするリンを観察する。


「この後は騎士団の宿舎を案内してもらえ」

「はいっ」


退室を促し、リンは頬を赤く染めたまま執務室の扉を開けた。長く細めの尻尾がピンッと上がり、緊張と喜びをあらわしている。何だか可愛いなぁと扉が閉まるまで目で追っていれば、


「オメェは俺を妬かしてぇのか?」


と耳元で囁かれてゾクリとした。


「猫の尻尾が可愛いなぁって思っただけだよ」

「みーちゃん猫と犬好きだもんね~」


トモコのフォローにそうそうと頷けば、ヴェリウスが尻尾を振りながらそばにやって来て、「狼はお好きですか?」と聞かれたので、ふわっふわの首もとに抱きつこうとしてロードに後ろからハグという名の固め技をかけられた。


「さぁ、みーちゃん! さっきの続きをお願いします!!」


いや、今固め技かけられてるから。動けないから。


『ロードよ。貴様は師団長会議があるのではないか? さっさと行くがいい』


弟子のスケジュール把握済み!? ヴェリーちゃん、出来る女。


「ちっ ミヤビィ、すぐ戻るから待っててくれよ」


ヴェリウスの言葉に渋々動き出し、固め技を外してくれたので、ヴェリーちゃんのふわっふわの首に顔を埋める。


はぁ~…幸せぇ~~


「……ミヤビ、俺には?」

「え? 何が?」

「ヴェリウスには抱きついて、夫の俺に抱きつかないってのはおかしいだろうが。ほら」


好きな事をのたまって手を広げたので首を傾げた。


「ロードはヴェリーちゃんみたいなふわっふわの毛がないし」


あえて夫発言は無視して答えれば、それを聞いたヴェリーちゃんがフフンッとどや顔でロードを見るのでそこもまた可愛く思う。


「あるだろうが。ふっさふさの髪の毛が」


いや、あるけどさぁ…おっさんの髪の毛に顔を埋めるのって抵抗があるよね。ゴリラだし。


「なんなら毛はねぇが、厚い胸板に顔を埋めてもいいぜぇ。その代わりに俺もミヤビの胸に顔を埋めさせてくれりゃあ」


何代わりを要求してんだ!! 鼻の下が伸びてるぞ!!


「も~みーちゃんさっさと胸に顔を埋めさせてあげなよ。早くステータスの続き!!」

「何て事言ってんのォォ!?」

「減るもんでもなし、さっさとロードさんをお仕事に送り出してステータスの続き見ようよ~」

「減るわ!! 主に精神面がゴリゴリ削られるわ!!」


トモコの暴走と自由奔放スキル、誰か封印してくれませんかーーー!?


「いいじゃん。みーちゃんは一応胸がDカップもあるんだし!!Aマイナスじゃないんだし!!」


いや、何マイナスって? それ胸がまな板どころか抉れてるって事?


「胸がディー? 何だそりゃ」


トモコの僻みにロードが反応する。

ブラジャーのないこの世界では、当然カップなどわかるはずもなく、首を傾げている。


「知らなくていいから!! トモコ! 変な事を言うんじゃない!!」

「ヘッ 胸のある人間には、胸の無い人間の気持ちなんてわからないんだよ。電車を待つホームで、たまたま左右に並んだ人がどちらも山盛りで、自分の胸を見た瞬間、あれ? 私男だったっけ? って本気で考えた貧乳の気持ちなんてわからないんだァァァーーー!!!!」


一体何の話ィィィ!?


「胸のあるなしなんて、そんなに気にする事か? 俺ぁミヤビの胸が有ろうが無かろうが、揉んで吸った時にミヤビが気持ち良いって思ってくれるなら問題ねぇが」

「今の発言には問題しかねぇよ!!!? 伏せ字入れろっ 伏せ字!!」

「でも結局みーちゃんの胸は盛り上がってるわけですよ」

「君ら一体この小説を何だと思ってる!?」

「…まぁ、そうだけどよぉ」


私の胸を凝視してくるんじゃない!!

大体、C~Dカップは普通の大きさだ。決して大きくはない。中の中なのにランタンさん位あるようなものの言い方をするな!


「だから男って嫌なのよ!! 結局女は皆胸か尻!! どっちもない女は女じゃないって言うのね!! 男だって言うのね!!」


誰もそんな事は言っていない。変な事で暴走スキルを使うのは止めなさい。後、ロードは会議に行って下さい。




そんなトモコの暴走を後に、私にキスを落として会議に行ってしまったロードを見送った後、ステータスのetc.にとんでもないものがうつしだされる事を、今の私は知るよしもなかった。


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