94.ロードのステータス
人(神)生初の気絶を一気に2回も経験してしまったワタクシ、北野 雅はペットのヴェリウスに1時間程説教されてやっと解放されました。
「ミヤビ、大丈夫か?」
一緒に説教を受けていたロードは随分と元気デス。
「色んなダメージを受けすぎて精神が崩壊しそうデスが何か」
リビングのソファに手足を投げ出して、いつものようにゴロゴロだらだらしながら大きく息を吐く。
「そりゃヤベェな。俺が介抱してやるから安心して身を任せろ」
「一番安心出来ねぇよ」
デレッとしたロードとそんな会話をしながら、何か忘れているような……と考える。
「どうした?」
「う~ん……何か忘れてるような?」
何だったっけ?
ゴロリと体勢を変えてうつ伏せになり、足をバタバタさせながらクッションに顔を埋めて思い出そうとするが、ロードが背中を撫でてきたのでくすぐったくて笑ってしまった。
「くふふっ くすぐったい!」
「ほぉ…くすぐってぇのか」
ニヤニヤしながら私の顎にその太い指を滑らせて、クッションからロードの方へと強制的に顔を向けられ、チュッと音をたててキスされる。
「むーっ」
バシバシッと腕を叩くが、いつの間にか仰向けにされて何度もされるので力が抜けてきた。
『ゴホンッ』
わざとらしい咳払いが耳に届き、覆い被さっていたロードが「ぅげッ」と声をだした刹那、目の前から消えていたので、はぁっと深呼吸をして息を整える。
『ミヤビ様、トモコとリンが待っていますよ』
さっきまでロードが居た場所にはヴェリウスがお座りしており、ふっさふさの尻尾を上下に振って、床にバシンッバシンッと叩きつけていた。
「あっ トモコ!! そうだっ それだよ!!」
ヴェリーちゃんの言葉にハッとしてソファから起き上がると、部屋の隅にロードの屍が転がっているのが見え、目をそらした。
ヴェリーちゃんの蹴りは最強だ。
さて、ヴェリーちゃんとロードを伴って再びルマンド王国の騎士団訓練所に戻ってきたが、すでに入団テストは終わっていたらしく、レッサーパンダのスイ君と、他2名の騎士が集まって話している所であった。
トモコは入り口付近で体育座りをして、その様子をじっと見ていた。
「トモコ」
声をかけると、トモコの顔が喜色に変わり、
「みーちゃん!!」
立ち上がってこちらへとやって来た。退屈していたのだろうか。
「結局レッサーパンダのスイ君が勝ったけど、リン君も健闘したんだよ! 良いところまでいってたんだけどなぁ。やっぱり経験の差かなぁ~」
等と結果報告をしてくれるので、ふむふむと頷く。
「師団長!!? どうしてこちらへ!?」
トモコと話していれば、リンのそばにいた3人の騎士の内の1人、その中では一番偉いっぽい人がロードに気付いて声を上げた。
「入団テストの様子を見に来たんだが」
私の頭を撫でてから、3人の騎士達の方へと歩いていくロード。
3人は直立してロードに敬礼している。
「師団長がわざわざいらっしゃるなど、光栄であります!!」
3人共、何故か顔を赤く染めて興奮している。
まさかロード、この3人に手を出したんじゃあ……。
上司という逆らえない体育会系の序列を利用して、部下に無体な事をするなんて……っ イイ!!
1人1人を相手にしたんですかー?! それとも一気に3人ですかーー!?
「テストはどうだった」
「はっ 何の問題もありません!! 基礎は出来ているようですし明日からでも騎士団の一員として訓練に参加させようかと!!」
「ほぅ…」
ロードがリンへと視線を移した。
次はリンをターゲットに!? 何という欲深な!!
「…………第3師団……師団長、ロード様……?」
呆然と呟くリンに、レッサーパンダのスイ君がハッとして頭を下げさせる。
「申し訳ありません!! 新人の教育はこれから私がきっちりしていきます!!」
「し、失礼致しました!!」
スイ君の対応にリンが慌てて姿勢を正し、敬礼する。
「いや、驚かせたみてぇで悪かったな」
ニッと笑うロードに、リンの顔が真っ赤になり、目には涙を浮かべている。
「あ、憧れのロヴィンゴッドウェル師団長に会えて光栄であります!!」
リン君んんんん!!!? 恋する乙女ですかァァァァァ!?
「リン、つったか?」
「は、はい!!」
憧れの師団長様に声をかけられ、更に名前を呼ばれたリンは顔を真っ赤にして、キラキラした瞳でロードを見ている。
「手続きが終わったら、聞いておきてぇ話があるから執務室まで来てくれるか」
「話……ですか?」
少し不安そうな表情をするが、入り口の私達に気付き納得したのか「承知しました」と返事をしていた。
「悪ぃが後でコイツを俺の執務室に案内してやってくれ」
とレッサーパンダのスイ君に声をかけると、他の2人にもそれぞれに声をかけてから入り口へと帰って来たロードは、理想の上司そのものであった。
「ミヤビぃ、アイツの手続きが終わるまで暇だからお茶にでもしようぜぇ」
ちゃんと仕事しろ。
「さっきまで仕事の出来る上司っぽい感じだったのに、みーちゃんの前ではただのエロいダメなおっさんだね~」
「ミヤビの前では俺ぁ1人の男なんだよ。エロい事考えんのも当然だろ」
トモコにダメなおっさん呼ばわりされた事に否定せず、エロい事も認めた目の前のゴリラは、私を当然のように抱き上げて自身の執務室へと移動したのだ。
その際にぎょっとした顔でこちらを見ていた3人の騎士と、驚愕な表情で顎が外れそうになっていたリンが視界の端にうつったが見なかった事にした。
◇◇◇
「それで、ミヤビが見たっつってたあのガキの“ステータス”ってのは結局どんな内容だったんだ?」
執務室に戻ると、ロードがさっそく切り出してきた例の王子様騒動であるが、ヴェリーちゃんが違う方に食いついた。
『その“ステータス”というのは一体何でしょうか?』
「あ~、トモコに教わった魔法でね、ステータスオープンって念じるとターゲットの情報が数値化されて見えるっていうものなんだけど、それをリンで試したら……」
『成る程、リンの情報に見逃せない事柄があったのですね』
「その通りデス」
ヴェリーちゃんは理解が早いので助かります。
『それで、リンの情報とは?』
「「……」」
私とトモコは顔を見合わせて目配せし合う。
どうする? 言っちゃう? 言わなきゃダメでしょ。というような感じにだ。
「…実は、リンは━━…」
「はぁ!? フォルプローム国の第3王子だぁ!?」
ロードが案の定、開いた口が塞がらないとばかりに私を見下ろしてきた。
勿論後ろから抱き込まれ、彼の腕の中に居る状態なので顔は見えない。声からそうだろうなと想像するだけなのだが、間違ってはいないだろう。
「いや~びっくりだよねぇ。アハハ」
『「……」』
乾いた笑いを披露するトモコに、ヴェリウスは半目になっている。きっとロードもだろう。
「オメェ、身元は確かだって自信満々に言ってたよなぁ」
「身元は確かでしょ! 王子様だよ!!」
「そうだな。王子だな」
冷気が……後ろから冷気が漂ってきています!!
『食糧難で養子に出された年齢が3歳となると、リンは自身がフォルプロームの王子だと覚えていない可能性が高いでしょう』
「確かに、自分の事は完全に田舎から出てきた村人って思ってそうだったし」
嘘を吐いている感じでもなかった。
「養子に出されたとはいえ、他国の王族がウチの騎士団に入ったとなるとなぁ……」
「元王族だよ。養子に出されてるんだからもう王子じゃないって」
急にリンの騎士団入りを渋りだしたのでフォローする。
「大体ここでリンを保護してもらえないなら、もう天空神殿に連れていって私がリンを直々に保護するしかないよ?」
「入団は許可する。保護は俺が責任を持ってするから任せろ」
チョロいな。師団長。
『まぁ王子といっても名ばかりだろう。当分はお主の所で面倒をみてやると良い』
ヴェリウスにまでそう言われれば否とは言えないロードは、「わかったよ」と渋々返事をして私を抱き締めた。
『そんな事よりミヤビ様、ロードのステータスとやらを確認していただけませんか?』
「良いけど、どうしたの? 突然」
ヴェリウスの突然の言葉に聞き返せば、
『ミヤビ様と気持ちが通じただけで、何やら奴の力が上がっているようなのです。一旦確認していただければ、今の訓練を効率の良いように改める事も出来ますので』
「え!? みーちゃんとうとうロードさんとドッキングしちゃったの!?」
ドッキングいうな。してないからな。
「残念ながら最後まではシてねぇが、惜しいところまではいったんだよ」
ロードよ!! 余計な事をトモコに話すんじゃない!!
「なんだ~。みーちゃん、ロードさんが下手だったの?」
もっとオブラートに包めないかなぁ!? 明け透けすぎて耳を引きちぎりたくなるわ!!
「そんな事よりロードのステータスだよ!! はいっ ステータスオープン!!」
恥ずかしくて言えなかった“ステータスオープン”の言葉を口に出すほどヤケになっていたのだ。
名前: ロード・ディーク・ロヴィンゴッドウェル
年齢: 41
種族: 半鬼神
LV: 100(MAX)
HP: 100(MAX)
MP(GP):80
装備: 神王の創った綿の服(効果: 防御力∞)
神王の創ったブーツ(効果: 脚力向上∞)
双剣(攻撃力45) ▽
スキル: 気配察知
騎竜
空間魔法(アイテムボックスレベル5)
悪鬼の睨み
鬼才料理
念話
悪鬼の筋力
怒りの雷撃
ミヤビラブ
etc.
称号: 神王のつがい
鬼才の料理人
主夫
暗黒騎士
etc.




