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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第3章

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89.嫉妬


普段はこんな無表情な顔は向けられた事がない。

怒っていても、ヤクザか鬼で睨まれるがすぐに機嫌を直してくれる。

大体どんな感情の時にも常にくっついてくるのに、今日は机を挟んだ向かいに座られた。

こんな事は初めてだ。


何だかスースーする。いつもの温もりがないからだろうか。

何だかんだとボディタッチは毎日の事だったし、ニヤニヤ笑う顔を見るのも日課みたいな所があったから、こんな風に切なくなるのだろうか。


「……あのガキ、そんなに気に入ったのか?」


今まで沈黙していたロードが冷静な声で聞いてきた。

俯いていた顔をあげて、彼を見る。


「今まで、誰に会っても興味を示さなかったオメェが、あのガキには随分と積極的だよな」


理想の受ですから! とはとても言える雰囲気ではない。


「そんな事ないでしょ。いつもと同じだよ?」

「……オメェは俺の唯一無二のつがいだ」


真剣に真っ直ぐ私を見るロードに、身体が固まる。


「俺にゃあ、オメェを諦める事は出来ねぇ。絶対に」

「ロード?」

「オメェが俺じゃなく、あのガキを選ぶってんなら……」


いや、何を言ってるの?


「奴を殺す」


そう言ったロードは無表情で、目は見たこともない位冷たかった。


「いや、ちょっと待って。落ち着いて。リンを選ぶなんて事はないから!! あの子15歳の子供だよ!? むしろどうしてそうなった!?」


慌てて立ち上がると、無表情のまま「話は終わりだ」と打ち切られた。が、終わってない。

このままではよく分からないうちにリンが殺されロードはヤンデレになってしまうだろう。

それは困る。


「終わりじゃないよ! 何でそんな話になるのっ」

「ッ……オメェがっ ……俺の所に来てからずっと、リン、リンってあのガキの話しかしねぇ」

「それはっ」

「分かってる! あのガキが問題を抱えてんのは。けど、オメェがアイツに興味を持ってる事も分かるんだよ!! 俺はっ オメェをずっと見てるから……っ 好きだから…」



どんどん声が小さくなって掠れていくロードは、泣いていた。




「っ悪ぃ……独りにしてくれ」


背中を向けられ、そう言われて胸が苦しくなった。


オッサンが、涙を流す所なんて初めて見たし、それが私のせいで……それに、初めて拒絶されたから…?


呆然としていたら、いつの間にか部屋を追い出されていた。

もう少し時間を置いてからまた話しに来ようと思うのに、まるで床に足を縫い付けられたみたいに動けなくなっていて。



もし、ロードが人族じゃなかったら。


こんな時にいつか考えていた事が頭をよぎった。


もし、彼が人族でなければ、きっと私を好きにはならなかった。

もっと早くにきっとすごく美人な人と結婚して、子供も居て、家族を大切にして、幸せに暮らしていただろう。

そして私と出会っても、素通りされるだけだっただろう。




私は、どうだろうか…。



素通りした彼を振り返って見る位はしたかもしれない。

もしかしたら、凄い筋肉だ~って、興味を持ったかもしれない。

奥さん美人だな~。子供可愛いけど、将来あの顔でマッチョになるのかなぁなんて、彼の家族を見ていたかもしれない。


訓練している、彼の姿を。

執務室で「こういう仕事にゃ向いてねぇんだよ」と愚痴をこぼしながら事務処理をこなす彼を、ずっとずっと見ていたかもしれない。


そして、嬉しそうに家族の元に帰る姿を見て、こんな風に胸が痛くなって、苦しくなって……涙が止まらなくなるのだろう。



「っふ…ぅえ……ろ、ど…っが、苦しい、なら…ッ しゅ、ぞく…っかえ、変えて、つがい、っく、止めても、い……から、泣かないで……っ」



好きだから。



貴方を苦しめるなら、私は……貴方に相応しくないから。




「!!? っ……何でッ そうなるんだ!!」


バンッ と勢いよく扉を開けられて、勢いよくぶつかった私は「ぎゃっ」という自身の間抜けな声と共に吹っ飛んで転がった。

きっと扉には私の涙と鼻水がべったりくっついているだろう。



◇◇◇



「大丈夫か?」

「お手数をおかけしてスミマセン……」


只今、ロードの膝の上でおしぼりで顔を拭かれています。


「オメェは本当に、ろくな事考えねぇなぁ」

「スミマセン」


ロードの顔が見れないので、思いっきり目をそらしています。


「俺ぁ種族を変える気はねぇし、つがいはオメェだけだからな。大体、そんな事言うって事ぁフラれたって事か?」


どんどん雰囲気が怖くなっていくので、首をブンブン横に振って否定した。


「……す、きです」


さっき、“もしも”の思考の海に溺れてしまって初めて気付きました。


今も、私がロードに相応しい相手とは思えないけれど。

だから、この気持ちを伝えてもいいものか躊躇いがあった。


が、言ってしまったものは後には引けないものなのだ。



「あ゛ぁ゛?」


告白してんのにヤンキーなんですけどぉぉ!? メンチ切られてんですけどォォ!?


「ロードが好きだから……えっと、泣かないでほしくて?」

「…………」


反応がありません。何でしょうか? これ、告白したらフラれたパターン?


あまりにも反応がないので、そーっと顔を上げてみると、ロードは口を開けたまま固まっていた。



「また、芝居か何かか?」


信じてもらえませんでしたぁ!!


「違うから! さっき、ロードが泣いたから……」

「……同情か」


冷たい声を出したロードは、私を膝の上から降ろして立ち上がった。


「違うっ だから、あの、ですね、その……」


あれ? 恥ずかしいぞ。今恥ずかしさが一気に襲ってきたんだが。


「ミヤビ?」


不審に思われたのか顔を凝視された。


「ッさっき! 自分の気持ちに気付きましたーーー!!」


言ったァァァ!!!!

うぉぉぉっ 逃げだしてェェ!!


「ミヤビ?」


顔が上げられない!!


「ミヤビ」


名前を呼ばれているが、無理だ。ロードの顔が見れない。

生まれて初めてした告白がこんなに恥ずかしいものだとは!!


あ゛~言うんじゃなかったかなぁ……段々恥ずかしさと気まずさが、好きだって気持ちを追い越し始めたぞ。


告白って好きって気持ちで頭がいっぱいになった時に、勢いに任せて言う。みたいなシーンを(BL)マンガでよくみるが、自身が経験してみて初めて知る告白後の()


告白した方は俯いて目をぎゅっと瞑り、ドキドキしながら返事を待っているが、あの間の思考はどうなっているのだろうか。

やはり私のように、逃げ出したいとか、告白するんじゃなかったとか思っているのか。


少女マンガでは、何で返事をしてくれないの? やっぱりあの子の事を……や、勢いに任せて言っちゃったけど○○君を困らせてしまったかも等数パターンあるが、逃げ出してェェ!! なんていうヒロインは皆無であろう。


つまり私はヒロインではない、と。

いやいや、一体何の分析をしているんだ。今は告白の返事を待っているはずだろう。現実逃避しすぎだわた、じぐぇぇぇ!!!?


「ミヤビィ!! ミヤビッ ミヤビッ ミヤビィィ!!!!」

「ぅぐ、ぐるじぃ……っ」


突然暴走したロードにぎゅうっと抱き締められ、落ちかけている告白後の私。


これはハグか。いいや、ベアハッグだ!!

何故にプロレス技、ベアハッグをかけられねばならんのか。


お互いの涙からの告白で恋愛小説っぽくなってたよね?

君を苦しめる私など相応しくないのだ的な話から、何をバカな事を。俺にはお前だけだ的返しからの告白だったよね? 芝居か同情か? 違うわ!! 貴方が好きなのっ な流れでしたよね? そしてそこからのベアハッグ。



おかしくないですかァァァ!!!?



「ギブ…っ ギブ、アップ…」

「本当に?」

「ほ、んと…ギブ…」


あ、お父さんが川の向こうから手を振ってるや。おばあちゃんも一緒だ。

おーい、今そっちに行くからね~。


「本当に、俺を好きだって……っ」

「お、はな…きれぃ……」

「あ゛? 花だぁ?」

「…………ガクッ」

「…おい、ミヤビ? ミヤビ!? 何寝てやがんだ!? ミヤビィィィ!!!?」



◇◇◇



「悪かった…」


バツが悪そうに謝るロードに、じと目を向ける。

告白した女の子にプロレス技をかけて落とす男はいない。


「なぁミヤビ、さっきの、もう一度言ってくれないか?」

「嫌だ」

「そんな事言わずに。な?」


猫なで声を出すロードの膝の間に、後ろから抱き込まれるような感じで座らされているが油断は出来ない。

結界よ仕事をしろと念じるが、多分結界がなかったら私の身体が腰から真っ二つになっていただろう。


おかしい。結界は最近強化したはずだが、ロードの強さが神の域に達しつつあるのだろうか。

後でステータスを見せてもらえるように頼んでみよう。


「なぁ、本当に俺の事好きか?」

「……さっき言った通りデス」


しつこく聞いてくるので渋々答える。


「ただの好意や同情じゃなく、恋愛感情で好きか?」


必死で確認してくるので、その言葉に頷いた。

それに真っ赤な顔で悶えているので、疑問に思っている事を聞いてみた。


「ロードは、私みたいなのでいいの?」


ロードを苦しめて泣かせてしまった、ズボラの干物女でいいのかと聞けば、ククッと笑われたのだ。


「ずっと言ってんだろ。オメェが好きだって」


今までピンとこなかったロードの告白が、今さらながらに甘い囁きに聞こえて顔が燃えるように熱くなる。


「いつもソファでゴロゴロしてようが、腹出して、足を開いて寝てようが、料理が下手だろうが、何するにしても面倒くさがろうが、全部が愛しくて仕方ねぇよ」


おい、お前ディスってんだろ。

熱を持ってた顔が一気に冷めたわ。


「ミヤビ」


声だけは歯が浮く程激甘で、耳から溶けていきそうだ。

だってこの人、声優さんにも負けてない位いい声してんのよ。


「ロード、耳元で喋られたら腰が砕ける」


魔の激甘ゾーンから抜け出そうと正直に言えば、ロードの拘束は余計強固となり、嬉しそうに微笑まれた。


何だか嫌な予感のする笑みだった。



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― 新着の感想 ―
[一言] 好き好きと言われ続けると錯覚させられるのでしょう。: 「ロード<の料理は美味しくて>が好きだから……えっと、泣かないでほしくて?」
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