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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第3章

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88.リンの正体


やって来たのは騎士団の訓練場から目と鼻の先にある、体育館のように大きなドーム型の建物であった。


騎士団の入団テストは外でやっているイメージだったが、建物の中という事実に意外だと思う。


「ここで入団テストをしてるってギャレッドさんは言ってたよ」

「へぇ」


しかし、入団テストとはどういったものなのだろうか?

やはり力比べや実践形式で戦ったりだとか、そういった事をするのか?

まさか建物の中だから、筆記試験とか?


「入ってみよ~」


トモコに連れられその建物に入る。

中は仕切りもなく、体育館そのもので広々としている。


そこに3人の騎士とリンの姿が在った。しかも丁度模擬戦のような事をしている最中であった。


相手は同じ獣人族のようで、2人共軽やかに動き回っている。

リンは力というよりはスピード重視のようだ。

剣技はお手本のように型にはまった美しいものと表現すればいいのか。

荒々しい相手の剣よりよっぽど騎士らしいのだ。しかし、荒々しい剣に押されているように感じる。


「お~。リン君騎士になりたいって言うだけあって、剣を扱えるんだね~」


隣で感心したような声を出すトモコ。


「トモコ、リンが誰に剣を師事したか聞いた?」

「聞いてなーい。おじいさんに田舎の村で育てられて、そのおじいさんが亡くなるまで村から出たことなかったって話は聞いたけど、剣の師匠の話はしてなかったよ」

「そっか。そのおじいさんが剣の師匠とかかなぁ」

「そうかも。あ、みーちゃん、そういう時こそ“ステータスオープン”だよ!」


トモコにすすめられ、またやるの? と思いつつ、先程のように“ステータスオープン”と心の中で思う。



名前: スイ

年齢: 25

種族: 獣人 (レッサーパンダ)

LV: 28

HP: 35

MP: 1

装備: 騎士の訓練着(支給品・効果: 防御力1)

騎士のブーツ(支給品・効果: 脚力向上1)

訓練用の剣(支給品・効果: 攻撃力3)


スキル: 威嚇

殴打

魅了


性格: 凶暴。短気。

可愛いと言われると殴ってくる。



レッサーパンダァァァ!!!!


リンの相手からステータスを調べれば、まさかのレッサーパンダだった!!

スゴイ。耳も尻尾もフワフワモコモコで、容姿も25歳なのに小さくて可愛らしい。

スキルの魅了は分かるが殴打ってなんだ。性格も恐すぎる。

というか、何故性格が表示されたのか……。可愛いって言わないように気を付けろって事だろうか?



次はリンだ。



名前: リン(フォルプローム国第3王子)

年齢: 15

種族: 獣人(獅子と猫のハーフ)

LV: 10

HP: 36

MP: 2

装備: フォルプローム国の綿の服(効果: 防御力0)

フォルプローム国のブーツ(効果: 脚力向上1)

訓練用の剣(貸与品・効果: 攻撃力3)


スキル: 咆哮

引っかき

パンチ

騎士の剣技


備考: 食糧難での口減らしの為、第1王子以外は皆養子に出された。第3王子のリンは世話役の老騎士に養子に出される。

国外へ渡る予定であったが、老騎士の体力と当時3歳であったリンの体力では砂漠越えは出来ず、フォルプロームの片田舎にある村へ留まる事となる。

ふた月前に老騎士が亡くなり、旅に出た。



え……?



うええェェェェ!!!?

王子!? フォルプロームの第3王子!?

備考ゥゥ!! 詳しく説明出ちゃった!! 何これ。私が悪いの? 私のステータスを調べる能力がおかしな風に表示させてるの!?


「みーちゃん、どうだった?」


そんなにリンのステータスに興味が無いのか、先程よりワクワク感のないトモコだが、これ…どうやって説明しよう…。


「…相手の人はレッサーパンダで、LV28。対するリンはLV10。LVではリンの方が低いよ」


と、一応無難な所をまず伝える。トモコは「レッサーパンダ!!」と喜びをあらわにしつつも、フムフムと頷き続きを促してくる。

そもそもこのLVってなんのLVなんだろうか? 職業のLVとか?


「HPは35と36でリンの方が1高いよ」

「体力はリン君のがちょっとあるんだね~」

「若いからかもね。リンって、ああ見えて15歳らしいし」

「15!? 嘘っ 20代かと思ってた!!」


そう。20代前半かと思っていたリンの年齢だが、15歳だった。

そういえば、獣人族は早熟だってリン自身が話していたなと思い出す。


「MPは2人共ほぼ無し。スキルは互いに剣というより己の肉体を使って戦う感じのものだよ」

「へぇ~」

「後、リンは王子様だって」

「へぇ~……え?」

「フォルプローム国の第3王子。食糧難の為に当時世話役だった老騎士の所に養子に出され、ふた月前その老騎士が亡くなった事で、旅に出た……らしい」

「ええェェェェ!!!?」



「…それ、ロードさんにバレたら不味くない?」


トモコがひきつった顔で乾いた笑いをもらすので、ロードを思い浮かべる。

いかん。鬼のような形相で睨まれる様しか想像出来ない。


「みーちゃん、身元は確かだって言い切ってたもんね…」

「……確かでしょ。身元は」


だって王子様だもの。


「「…………」」


ロードもだけど、ヴェリウスにも怒られるかもしれない。


「どうやって切り出そうか?」

「トモコが話すとかどうかな?」

「止めてよぉ!? ロードさんみーちゃんにしか甘くないんだから、みーちゃんが話して!」

「ロードが甘い!? あんなヤクザか鬼みたいな顔で睨んでくる男が甘い!?」


甘い男はそもそも自分のつがいに睨みをきかせたりしません!!


「みーちゃん……」

「もういっそのこと、黙っておくのはどうかな?」

「誰に何を黙っておくって?」

「いや、だからロードにリンの……ん? トモコいつから声変わりした?」


随分低い声で話すなぁとトモコを見ると、ものすごい勢いで首を横に振っている。


「俺に、何を、黙っておくって?」


さっきよりも低い声が耳元で聞こえた。


「と、トモコさん……もしかして私の後ろに、ろ、ろ、ロードさんとかいないデスよね!? いないと言って! お願いだから!!」

「居るよーーー!!!!」


叫んですぐ逃げようとしたトモコの腕をガシッと掴む。

逃がさんぞ!! 死なばもろともだ!!


「!? 離せみーちゃん!! 1人で大人しく逝ってくれよォォォ」

「ふざけんなぁ!! 死なばもろともじゃあぁぁぁ!! 離さんぞっ」

「ギャアーーーッ みーちゃんの後ろに鬼がァァァ!!!」


私の後ろに居るであろうロードの顔を直視したトモコが、恐怖のあまり叫び声をあげている。

私? 見ない見ない。見たらダメ。


腰に腕を回されてすでに逃げられない状態の私は、決してトモコを逃がさない。


「ミヤビぃ、オメェは俺に黙って何をしようとしてんだぁ」


優しげな声で問いかけてくるが、トモコの反応から表情は鬼のままだろう。騙されないぞ。


「何もしようとしてません」


無表情で淡々と答える。勿論ロードの顔は見ない。


「ほぅ……ならまずは、黙っていようと思った事を一字一句もらさず答えてもらおうか」


こうして恐怖の尋問が始まった。


「さて、どっちが素直に答えてくれるかねぇ」


多分凶悪な顔で笑ったであろうロードに、顔が引きつる。


「ハイ!! みーちゃんが、ステータスを見れるようになりました!!」


即行心友を売ったトモコを半目で見る。


「ステータスだぁ? 何だそりゃあ」

「ハイ! ステータスとは、名前や年齢、さらにレベルやスキル、装備等の状態を数値化して表す事を言います!!」

「ほぅ、それがミヤビには見れるんだな」

「ハイであります!!」

「…で、そのステータスからあのガキの重要な何かが分かり、俺に黙っておこうとした、と?」

「そうであります!! さすがボス!! 理解が早い!!」


トモコォォォ!! お前なに敵の子飼に成り下がってんだコラァ!!


揉み手をしながらロードをよいしょするトモコ。

もしかしてコイツのスキルのetc.って、よいしょと手のひら返しなんじゃ……。


「何がわかった?」

「え゛っと…」


こういう時にトモコが私を見てくるので、素直に答えるしかないかと観念した。


「リンが……」


口を開いたところで、くるりと体を反転されて向かい合わせになった。

こめかみに血管を浮かべつつも無表情なロードは、鬼を通り越していた。


「っ…お、怒ってらっしゃる?」

「怒ってねぇと思ってたのか?」


怒ってるとは思ってたけど、そこまで激おことは思わなかったんだよ。


「何でそんなに怒ってるのか分からない……」

「…………」


黙ってしまったロードは、やっぱり無表情で怖い。


((みーちゃん、ロードさんは嫉妬してるんじゃない?))


はぁ? 一体何に嫉妬するというのか。


トモコの念話に顔をしかめた。


((みーちゃんこっちに来てからずっとリン君の事気にしてるもん))


いやいや、それは仕方ないでしょ。大体その話はさっき終わったんじゃなかったの!?


((終わってないでしょ。だってさっきのは演技だったし、今もみーちゃんはリン君関係の話をロードさんに黙っておこうとしてたわけだし))


う゛……


((きちんと話した方が良いと思うけどなぁ))


「……ロード、リンの話をする前に、その……少し話を、しようか」


トモコにすすめられ、2人で話をする事にした。

了承したロードに連れていかれたのは、騎士寮のロードの部屋だった。

久しぶりに来た気がする。


「……」

「……」


沈黙が重い。

とりあえずソファに腰かけて周りを見る。相変わらず何もない部屋だなぁと思いながら。


「話って何だ」


地をはうような声で、ボソリと呟くので空気がさらに重くなる。


「あの、誤解してるようだから。えっと、リンの事」


口に出してなんだが、ロードは誤解しているのだろうか? さっきも詳しく話したのだから、誤解はしていないのではないかと思い始めた。

では一体何に怒っているのか。

トモコは嫉妬だというが、何が気にくわないのだろう。


黙ってこっちを見ているロードをチラリと見れば、先程と変わらない無表情で、何だか切なくなった。


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