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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第3章

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86.きな臭い国


トモコとヴェリウスを見れば、ブンブンと首を横に振っている。ルマンド王国に加護を与えているというのはただの噂らしい。


噂といえば、ロード達の事だ。

格好良くて優しくて強いって……いや、確かにその通りかもしれないが、この国とルマンド王国は結構な距離があるはずだ。そんな所まで届いている噂……。


「オレは4人の中でもロード様が一番だと思ってる! 双剣の使い手で、5人がかりで倒さないといけない魔獣も1人で倒せるんだぜ!! すげぇよな!」

「あ~そうなんだ……」


そういえば、初めて会った時武器は双剣だったな。

リンの話に思い出す。


今は大剣だけど、仕事に行く時は双剣なのかもしれない。


しかしリンはロードが好きなのか。

何故綺麗所のレンメイさんやカルロさんではないのか。そっちのカップリングの方が見た目的にマッチしているが。

やはり現実は、男が憧れる男はムキムキで強そうな、ムサイ男なのかもしれない。


「あ、悪い。話が逸れちまったな」

「いえいえ」


リンは慌てて話を戻すと、フォルプローム国に住む獣人族の出稼ぎの実態について語った。


「出稼ぎに行くのは大概食い扶持にあぶれた子供が主なんだ。フォルプロームは周りが砂漠で滅多に雨が降らねぇし、水源も王都のそばにある湖と、各村にある小さな井戸だけだから、なかなか食物も育たねぇ。だから、一般人は子供を生んでも1人食わせるのがやっとで……けど獣人族は一度に3人以上ガキを生む種族だから、育てて行くのは無理なわけだ」


これは魔素が満ちた今でも変わらないらしい。むしろ、枯れていた水源が復活しただけマシなんだとか。


「幸い獣人族のガキは早熟で、5年も経ちゃ働けるってんで、人手が足りねぇ人族の国に出稼ぎに出てんだよ」


成る程……しかし5歳で親元を離れて外国に働きに出るとは、フォルプロームは国として成り立っているのだろうか?


「じいさんに育てられたオレはこの年まで出稼ぎに出る事はなかったけど、ふた月前にそのじいさんも死んじまって、この機にルマンド王国へ行ってみようと一念発起したんだ。で、出稼ぎに出るキャラバンに合流させてもらったんだよ」


リンは出稼ぎではなく旅に出る予定だった人のようで、出稼ぎに出る人達が集まるキャラバンに合流して砂漠越えする事にしたらしい。しかし、まだフォルプロームに居るということは、そこで何かが起こったのだろう。


「“グリッドアーデン王国”行きのキャラバンに合流して砂漠越えを始めてから、フォルプロームを発ってすぐのキャンプ地で一泊したんだけど……そこで聞いちまったんだ」


眉間にシワを寄せ、苦しそうに唇を噛むリン。

その様子に話を促す事も出来ず、見ていることしかできないでいた。


暫くして話を再開したので、拳を握るリンの話を黙って聞く。


「……夜中にふと目が覚めて、けど寒かったからそのまま布にくるまってたんだ。キャラバンには砂漠の魔獣から身を守る為の護衛がいるんだけど、そいつらが丁度交代する時間だったらしくてさ。小声で話してたのが聞こえてきたんだ」


顔を上げて一度私達を見ると、はっきりとした声で言った。


「“コイツら皆、性奴隷にされるとも知らずにグリッドアーデンに向かってんだよな”って」


ハッと息を飲み、トモコとヴェリウスの様子を見る。

ヴェリウスは難しい顔をしてリンを見ており、トモコは唇を噛んで怒りに震えていた。


「グリッドアーデンから、竜人の国へ転売されるって……だからオレ、助けを呼ばないとって逃げ出して王都に戻って来たんだ。オレ1人じゃ、20人もの子供を助けられないから……っ」


余程悔しかったのだろう。握った拳から血が出ていた。


リンの手をそっと取り、バッグから傷薬を取り出して塗ると直ぐに傷は塞がった。

驚いていたがまぁいいだろう。


「で、王都に来てからどうしたんですか?」

「勿論騎士団に直談判した!! けど、全然本気にしてくれなくて……挙げ句に不審者だって追われてっ 多分まだオレの事を探し回ってると思う」


いや、おかしくないか? 本気にされないのは有り得る反応だけど、それだけで騎士団が不審者だって追うのだろうか? しかも未だに探してるって、警備隊ならまだしも騎士団だよ?



人族(グリッドアーデン)の貴族が獣人族の子供を転売してるって聞いたから、オレ、人族が信じられなくなって……嫌な態度を取ってごめん」


リンが素直に謝るので、青年なのに可愛いなぁおい。と益々創作意欲がたぎってくる。


今度の薄い本は獣人本に決まりだな。


『キャラバンの護衛は人族か?』


ヴェリウスが真剣な表情で問いかけた。


「人族の服装をしていたから、そうだと思う」

『ふむ……つまり種族の特徴が見えぬ格好をしていたという事か』

「え?」


ヴェリウスの言葉にリンが怪訝そうな顔をした。


キャラバンの護衛は人身売買の内情を知っていた。

という事は、人族側の息がかかった者という事になる。

リンの話から護衛は人族の格好をしていたが、ここでは人族は男女共に顔以外は布で隠しているのだ。

例えばその護衛が獣人族や竜人族だったとしたら……ヴェリウスの言うとおり種族の特徴が見えない格好だった事は確かだ。


「それって…キャラバンの護衛が獣人族って事かよ」

『そうは言っておらん。人族ではないやもしれぬという可能性の話だ』

「…………」


しかし、例えば獣人族がその人身売買に関わっていたとして、一体どんなメリットがあるというのだろうか?

人族が関わっていた場合も同じだ。つがいしか愛せない人族に性奴隷は必要ない。わざわざ危ない橋を渡ってまで竜人に獣人族を売る必要はあるのか? 下手を打つと国同士の戦争に発展するだろうに。


大体、一度に20人の子供を売る規模を考えても国が気付かないのはおかしい。

もしフォルプローム国がこの件に関わっていたとしたら、奴隷輸出を産業にしている最悪の国という事になる。

国が関わっていなかったとしても、自国民を性奴隷にされている事実を見逃している事は確実で、どちらにしてもフォルプローム国は腐っているだろう。


「これは、フォルプローム国を調べる必要があるかもね」


真剣な顔をして呟くトモコは、まるでどこかの探偵のようだった。

眼鏡をしてもいないのに、クイッと上げるフリをするのは止めなさい。


『何故お主はそう厄介事に関わりたがるのか…』


呆れた目で見て、トモコの今後の行動を予想したのか、溜め息を吐くヴェリウスがその内黒から白の毛になるのではと本気で心配になった。


「トモコお嬢様。調べるのは良いのですが、彼はどう致しますか?」

「え? えっと、ルマンド王国へ行きたいって言ってたし、連れて行ってあげるとかは?」


確かにここに置いて行くのは気が引ける。しかし天空神殿に連れて行くには今のままだと行った時点で帰ると言い出しかねない。


『……それが一番無難でしょう』


ヴェリウスが私を見て頷いた。


「リンさん、ちなみに貴方はルマンド王国へ何をしに行くつもりだったのですか?」


観光とかだったら、結局すぐに家に帰りたいってなるから聞いておかないとね。


「オレ、ルマンド王国の騎士団に入りたいんだ!!」



◇◇◇



「━━…ってわけだから、何とかならないかなぁ」

「…………」

「ほら、ルマンド王国ってまだ人手不足でしょ。騎士団も人手が足りないって嘆いてたし、種族関係なく雇ってるし? あ、リンさんは身元は確かだよ! 素直な良い子でロードに憧れてるんだって!!」

「…………」


現在、わたくし雅は、鬼のような形相をしたヤクザのオッサン……ロードと話しているのですが、話せば話すほど顔が険しくなっていきます。どうしたら良いのでしょうか。


ルマンド王国に皆を連れて転移し、仕事中のロードの執務室に押し掛けたのだ。

勿論リンは王宮の外でヴェリウスと待っている。


「…俺に何も言わずにフォルプロームに行って、そんなに必死になる程気に入った男を連れて来て部下にしろだぁ……」


顔に血管を浮かせて激怒してるんですけどぉぉ!?


「みーちゃん、これは浮気を疑われてるんだよ」


トモコがコソコソと話しかけてくるが……浮気だぁ?


「何で浮気?」

「だってつがいから、気に入った男がいるんだけど、部下にしてあげて。とかもう……」


そんな事言ってないしぃ!? 事件に巻き込まれた被害者を救済して下さいって言ってるんですけどぉぉ!?


「だからみーちゃん、誤解を解く為に、ここは私の言うとおりにして!!」

「う、うん……?」

「一言一句違えちゃダメだからね」


トモコの心強いフォローに全て委ねようとした私がバカだったのかもしれない。



「━━…違うの。誤解だから。私が好きなのはロードだけ」


ってうぇぇぇぇ!!!?


「ミヤビ……」


((みーちゃん、そこで胸に飛び込んで!! 早くっ))


ええ!? これで本当に誤解が解けるの!?


((みーちゃん!!))


急かされて、ロードの胸に飛び込むとぎゅっと力強く抱きしめられた。


「ロード、だ、大好き」

「っミヤビ、俺も大好きだ!! 愛してる!!」

「雅、嬉しい」


気持ち悪っ なんだ雅、嬉しいって!! 言ってて鳥肌がたったわ!!


トモコを睨めば、ドヤ顔でサムズアップされた。


最近習得したという“念話”でフォローしてくれるのは良いが、これ、完全に私で遊んでないか?


((あともうひと押しだよ!!))


「…ねぇロード、ロードしか頼れる人がいないの」


((そこで上目遣い!!))


「っミヤビ、何でも言ってくれ。どんな願いも叶えてみせる」

「ロードぉ。じゃあ、リンさんの事お願いしてもいい?」

「…………」


眉間にシワが寄ったんですけど。どんな願いも叶えてみせるって言ったのに嫌そうなんですけど。


((みーちゃん、胸に指を這わせて!! こう、円を描くように!!))


「ダーリン、だめぇ?」


くるくると人差し指でロードの胸に円を描く。

さっきから自分が気持ち悪すぎる。何がダーリンだ。


「ミヤビぃ。勿論構わねぇよ」

「や、や~ん! ダーリン格好良い!! ありがとう」


((はい、そこで頬にキッス!!))


監督ーーー!!!! もう止めませんかーーー!!!?


((みーちゃん!!))


「……大好き」



◇◇◇



ええ、しましたよ。頬にキッス。

トモコ監督の言うとおりにな。


え? リンはもう騎士団の入隊試験を受けてる所ですから。後は本人次第じゃないっスかね。

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