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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第3章

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81.夢とキノコ


トモコをからかって遊んでいると、ロードが「こりゃアイツ(・・・)が荒れそうだなぁ」と他人事のように呟いた。

アイツとは勿論、元人族の神“アーディン”である。

そして彼も“白薔薇のアドラーブル”では攻略対象者の1人なのだ。赤ちゃんだけど。(←勝手に妄想しているだけ)

まさか異世界に来て間近で乙女ゲームのような恋愛を目撃しようとは。


「みーちゃんっ もう!! 私は恋愛は暫くしません!!」


そうね。色々あったしな。まぁ心友の恋愛模様は大人しく見守ってやるか。

うんうんと1人頷き納得していると、


「んじゃ、観光に行くとしようや」


と歩き始めたロード。

当然抱き上げられている私も一緒に移動する事になり、その後を慌てて追いかけてくるトモコとショコラ。2人に向かって「あ~れ~お助け~」と助けを求めてみる。


「みーちゃん待ってて! すぐに助けるからっ 止まれ巨人! 我が姫を返すのだーー」


等と棒読みの台詞を吐きながら走ってくるトモコに、ハハハと笑いながら移動しているロード。「主様ぁ~」と街中で翼を出して飛ぼうとするショコラと賑やかで、注目され始め、恥ずかしくなり顔をロードの肩へ埋めて隠した。



観光ガイドのロードは、意外と女性が好きそうな場所へ案内してくれた。

可愛い小物が売ってる雑貨屋さんだったり、アクセサリーが売ってるお店だったりとオッサンなのに乙女心がわかっているのだ。

しかも3人お揃いのヘアアクセサリーを購入してくれるなど、とてもゴリラとは思えない行動に驚きが隠せない。


楽しいし嬉しいのだが、乙女心を掴むロードのガイドにまた胸がざわつくのは何故だろうか。


「はぁ~楽しいね~!! 異世界バンザーイ」


と思いっきり楽しんでいるトモコと、


「キラキラ綺麗です~。主様とお揃い!」


嬉しそうに買ってもらったばかりのヘアアクセサリーを髪に付けているショコラを横目に、「後一軒連れていきたい所がある」と言って街中を慣れたように歩くロード。


今度はどこに行くのだろうかと楽しみだったが、胸のざわつきは止まなかった。




そうして、ロードが連れて来てくれたのはーー…


「服の、店……?」


大きな窓ガラスから見える洋服に心臓が跳ねる。


「おーーっ!! 洋裁店だぁ!!」


今までで一番瞳を輝かせて店に飛び込んだトモコを呆然と見送る。


「……どうして服のお店に?」


ロードの腕の中から彼を見上げれば、優しく微笑まれて


「オメェ前に酔っ払った時言ってたろ。服屋を親友と始めるのが夢だったって」


お酒に酔ってそんな事言っちゃってた!?


「結構泥酔してたからなぁ~覚えてねぇかもな」


ハハッと笑われて顔が引きつる。

私は一体何をしているんだ……。


「ま、せっかくその親友もそばに居るんだし、この世界の流行をリサーチしといても良いんじゃねぇかなぁってよ」


ニッと笑うロードは相変わらず凶悪で、だからだろうか。恐怖で涙が出てきたんだと思う。

感動じゃないんだ。これは恐怖だ。そうに違いない。だってこのゴリラが、こんなに気が利く男前なわけがないんだ。


「っ…とも、っトモコ、は…っ 一緒にやってくれるかなぁ?」

「さぁなぁ。ま、あんだけテンション上がってんだし、やりてぇって言うかもなぁ。暇してるし」

「っう~~~ッッ」


たまらなくなって、肩に顔を埋めると大きな手で頭をポンポンと触られた。


「店をやりてぇのかやりたくねぇのか、オメェの親友にはっきり伝えてこい」


そう言って下に降ろされたので、頷き涙を拭うとトモコの元へズンズンと進む。


「みーちゃん!! 見てこれ!! 可愛い生地っ」


私を見つけて、これ可愛いとワンピースを見せてくるトモコを屹然と見やる。


「? みーちゃん、どうしたの、」


首を傾げるトモコを見据え、拳をぎゅっと握って腹に力を込め大きな声で名前を呼んだ。


「トモコ!!」

「ハィィ!!?」


驚いて姿勢を正す彼女に一拍してから手を差し出し、言い切った。


「私と一緒に服のお店をやって下さい!!!!」


手を出したまま頭を下げる。某お見合い番組の申し込みのような体勢でドキドキしながら待っていると、すぐにその手が握られた。


「ヘイ! 喜んでぇ!!」



後にその場に居たものは語った。

まるでプロポーズのようだったと。そして返事が居酒屋の店員だったと。



大声で“これから商売仇になりますぜ!! ”と叫んだようなものの私達はそれからすぐ店主に追い出され、けれど2人でテンションが上がっていたものだからウヒャヒャッと笑いが止まらず、周りからおかしな目で見られたのだった。


ちなみに服屋の店主は私達を追い出す時に、「頑張りな!!」と激励してくれてウィンクをバチーン!! とかましてから外にポイッと追い出した。


今日はもう帰ってお酒でも飲み交わそうよという雰囲気になり、転移(ドコデモ)扉を出した所で突然ロードに捕獲されたのだ。

それに対してトモコがウヒャウヒャと笑いながら、


「こっちの世界の連れ込み宿がどんなだったかまた教えてね~」


と爆弾を落として扉を潜ったので、口が開いたまま塞がらない。

しかし、


「やばーい!! お土産買ってなかったー!!」


となに食わぬ顔で戻ってきたので頭を両拳でグリグリしてやった。

「ギャァァァ」と悲鳴を上げているが知らん! お前はさっきの女子力をどこに落としてきたんだ。今すぐ拾ってこい!!


「ミヤビ、許してやれって。オメェの言葉にテンションが上がってんだ。よほど嬉しかったんだろうよ」


等と私の腰を抱いた(捕獲した)まま宥めてくるロード。


「そうだよみーちゃ~ん!! 許してぇっ お土産買いに行かせてーー!!」


半泣きのトモコとそれを見て苦笑いするしかないロードに、仕方ないと頭グリグリ攻撃を止める。

するとホッとしたのか、トモコがロードの前に手を出して、「おみや代下さーい」とたかり始めた。

お前、本当にご飯屋さんの時のトモコと同一人物か!?


「……やるからデートの邪魔すんなよ」


と懐から革で出来た袋を取り出しているロードを見てぎょっとする。


「ハーイ!! ショコたん行きますぞーー!! あっみーちゃん扉そのままにしておいてね~」

「トモコ様ぁ、ショコラは主様をお守りしなくてはいけないのです~」

「ダイジョブ、ダイジョブ~。みーちゃんにはロードさんがついてるものぉ。ショコたんは私と一緒にヴェリーさん達のお土産買って帰ろう!」


そう話しながらショコラを引きずって行ったトモコを黙って見送ったのは、あまりの事に声が出なかったからだ。


「っし!! 邪魔者は消えたし、デートすんぞ」


ニッと笑って私を見下ろすロードに胡乱な目を向ける。


「邪魔者って……。しかも買収した」


ボソリと呟けば、顔を耳元に近づけてくる。


「なぁミヤビ」

「ナンデショウカ?」


嫌な予感がして一歩下がろうにも、腰を抱かれていて動けない。


「トモコが家に来てからひと月。全然俺の事構ってくれてねぇよなぁ」


掴まれていた腰を両手で持って、クルンと回され向かい合わせにさせられる。


「…3人と1匹で飲んだりしてるよ?」

「2人きりでは飲んでねぇだろ。それに……」


右手の親指でちょん、と唇に触れられて心臓が跳ねた。


「キスも、してねぇ」


耳元で吐息を感じながらの色っぽい声と言葉に、心臓どころか身体が跳ねた。さながら、しっぽを太くしながら硬直して跳ねる猫のように。



き、き、き、くぅぇあーーー!!!?


「ミヤビ…」


ゾクリとするような色っぽい声で呼ばれて「うひゃい!?」と声を出してしまった。


耳がっ耳が溶けそうだ!!


「ミヤビ、好きだ」


私の反応が面白かったのか、そう言ってククッと笑うロードがいつもより男らしく見えて顔に熱が集まってくる。

しかし、ニヤニヤ笑うロードの余裕そうな態度に段々と腹がたってきた。


「何だかロードは女慣れしてる」


だから言ってしまった。子供のような事を。


「あ゛?」


眉間にシワを寄せるロードから顔を反らし、さっきからモヤモヤしていた事を口にする。


「だって女の子の好きそうな所に詳しいし、エスコート慣れしてた」


自分でも一体何を言っているんだと心の中では思うのに、口は勝手に言葉を紡ぐ。


「騎士はレンメイさんやカルロさんみたいに紳士だから、ロードも女の子には紳士なんでしょ」


ロードは私をつがいだと言って好いてくれているが、実質恋人でもないのにこんな発言はおかしいんだと分かっている。

なのに何故か止まらない。

あれだけ助けてくれたのに。お礼を言わなくちゃいけないのに。何だコレ!?


「ちょっと待て、そりゃあオメェが好きそうな所は事前にチェックすんのが当然だろ。大体、レンメイとカルロが女に対して紳士っつーが、アイツらが紳士なのは好きな女とその関係者にだけだぜ。騎士とか関係ねぇからな。俺だってオメェとその家族以外にゃこんな接し方しねぇよ。……つーか、オメェ何かおかしくねぇか?」

「おかしくないよっ ロードなんてレンメイさんとカルロさんと3人でお付き合いしてれば良いんだよ!!」


何言ってんだぁ!? 私の口ィィ!? ちょ、これ違う。私じゃない。そりゃちょっとはロード×レンメイとか色々よぎったけどもォ!?


「ミヤビ…オメェ変なもんでも食って……あ゛」


あ゛? あ゛って何だ。


「オメェがさっき食ってたサラダにキノコが入ってなかったか?」

「入ってたけどそれが何!? 」

「それって、ほんのりピンクがかってなかったか?」


……確かにピンクがかってた。けど味は椎茸だったよ。サラダに椎茸って微妙って思ったから覚えてる。


そう言うと、ロードの顔が引きつり「やっぱりな」と小さな声で呟いた。


「もしかして、毒キノコだったり……?」


私の顔も盛大に引きつる。


「いや、毒じゃねぇ。毒じゃねぇがちょっと厄介なやつだな」

「厄介!?」


解毒!! 解毒しろ私の身体!!


「そのキノコな、“ジェラシータケ”って言って…食った人間の嫉妬心を増幅(・・・・・・)させるキノコなんだわ。しかもシータケとそっくりで間違い易いから、割りと頻繁に飯に紛れてる」


ジェラシータケ……嫉妬心の増、幅……?


はいぃぃ!!!?

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