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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第3章

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82/303

80.“白薔薇のアドラーブル”発売間近!!


「いっただっきまーす!!」


元気いっぱいに食事を始める挨拶をして、いつもキラキラした瞳をさらに輝かせ、目の前に並んだ料理を見ているトモコ。


「お料理取り分けましょうか?」


ヘラリと笑って向かいに座るレンメイさんに伺いをたてている。

女子力高すぎて拍手しそうになった。

私ならそのまま自分の料理だけ取って食べるがトモコは違う。当然のように聞くのだ。

これは性別に関係なく、気遣い屋のトモコの癖と言ってもいい。

ちなみにここで勝手に取り分けてはいけない。中には自分で取り分けたい人もいるので、トモコのように伺いをたてる事が大事である。


「ありがとうございます。料理は我々が取り分けるので、トモコさんは御気遣いなさらず料理を楽しんで下さい」


こちらの世界では男性が取り分けるのが普通なのだろうか? 「何が食べたいですか?」とにこやかにレンメイさんが対応している。これは女子からすればポイントが高いぞ。


「ありがとうございまーす! じゃあ遠慮なく。そこの麺料理と、あ、こっちのお肉も! お肉のお皿は分けてほしいです。それとサラダ下さい…エヘヘ美味しそー!!」


本当に遠慮なしに注文をつけるわりに、最後のはにかみと美味しそー!! が図々しさを可愛さに変えているだと!?

なんという天然女子……可愛いぞトモコ!! お前の可愛さにレンメイさんが頬を赤く染めている。


「はい、みーちゃん。レンメイさんが取り分けてくれたよ~。みーちゃん最初はサラダ食べるもんね!」


トモコォォォ!! アンタ女子や!! ショコラにもお肉を渡して……アンタやっぱり気遣いの天使やでぇ!!


と心の中で解説と絶叫をしつつ、「いただきます」とポソリと言う私、絶賛人見知り中です。

ハムハムと虫のように菜っ葉を食していると、「美味いか」とロードがニヤニヤしながら聞いてくるので頷いた。しかし、正直ウチで育てた野菜の方が美味しいし、ロードの作るドレッシングの方が好みだ。


トモコも食べ進めるうちに瞳のキラキラが収まっていく。

その様子を見てククッと喉の奥で笑うと、「王都ではマシな部類に入るんだがなぁ」と私だけに聞こえる声で呟いたロードの顔を見る。


「美味しくないのにオススメしたの?」


そうだったらロードらしくない意地悪だと、つい低い声で咎めるような言い方をしてしまった。


「そうじゃねぇよ。実際ここは評判のいい飯屋だしな。オメェも見ただろ。下の席が満席だったのを」


確かに賑わっていた。しかし、味が美味しいかといえばお店の人には悪いのだが、美味しくない。


「オメェ、忘れてるみたいだがなぁ……この世界の飯はウチで食ってる飯みてぇに発展してねぇんだよ。香辛料の類いもあまりねぇし、食材も最近まで流通してなかったんだぜ」

「あ」


そういえばこの世界、崩壊一歩手前デシタ。


「ここの飯屋は親戚が農家らしくてなぁ、食材も他より手に入り易いし、まだマシな方なんだよ」

「そっか、ごめん。ロードの作ってくれるご飯の方が美味しいから、ついそれを基準にしてた……」


せっかくオススメしてくれたのに文句を言うなんてダメだよね。


「っ……ミヤビ、オメェんな可愛い事言ってたら襲っちまうぞ」


真っ赤な顔をして耳元で囁いてくるので、何で!? とビックリして固まった。


「あまり美味しくないです~……ショコラはお家のご飯の方が良いです」


突然正直に口に出してしまったショコラにぎょっとした。

ロードとコソコソ話していた内容がショコラにも聞こえていたからか、口に出してしまったのかもしれない。


「ハハッ そうかぁ。お嬢ちゃんはお家の味が好きなんだね」


カルロさんがそう言ってショコラの頭を撫で、フォローしてくれたので悪い雰囲気にはならなかった。

さすが落ち着いた大人の雰囲気を持つ男は違うな。

これも女子からしてみればポイントが高い。


「ここの料理は王都でも評判が良いのですが、やはり食べなれた料理の方がお口に合っているのかもしれませんね」


ニコニコと優しい眼差しでショコラを見ながら、お店のフォローもするレンメイさんは御気遣いの紳士だ。


「あっでも珍しいお料理が食べれて嬉しいですよ~。ねぇみーちゃん!!」

「そうだねぇ。ここの料理も(この世界では)美味しい(方だ)と思うよ。ただウチのシェフ(ロード)の料理が美味しすぎるから、ショコラの舌が肥えちゃったんだねぇ」


しかし私の言葉に場の空気が変わってしまった。

悪い空気ではない。が、ちょっと……


「おや、ミヤビさんのお宅ではシェフを雇っていらっしゃるのですか?」


意外そうに聞いてくるレンメイさんに、貴族だと勘違いされたかもしれないと変な汗が浮かぶ。


「ブハッ 違ぇよ!! コイツらに飯作ってんのは俺な」


吹き出したロードに、レンメイさんが訝しげな表情をする。


「嘘だろ!? お前が料理番!! お前の得意料理ってマカロンだろ!? そのお前がシェフ!! シェ……ブハッ ハハハハッ」


そのレンメイさんの横でカルロさんが爆笑しているものだから、レンメイさんが困り顔になった。

キャラ変わってますよカルロさん。


そしてね、マカロンってお菓子の事じゃないよ。この世界ではマカローっていう鹿の丸焼き料理をマカロンって言うんだよ。分かったかい。トモコ君。


「ロードの料理は世界一美味しいよ」


カルロさんがあまりにも笑い続けるので、そんなに笑うことないだろうと腹が立ってきて言い返してしまった。


「ミヤビっ」


するとロードが抱き締めてきたので、骨の軋む音とカルロさんの「見せつけてくれるねぇ」というからかい混じりの声をBGMに昇天しそうになった。



「ロードの料理がそんなに美味しいとは初めて知りました。是非私もご相伴にあずかりたいですね」


レンメイさんがそう言うと、「あ~また合同遠征の時になぁ」等とロードが気安い様子で答えていたので、何だか胸がざわついた。

ざわつくって何だ? と思ったが、まぁいいかとサラダをまた口に含む。


「ロードの料理もいいが、ここのスイーツは特に評判だからね。楽しみにしているといい」


キャラが崩壊していたカルロさんが何とか己を取り戻し、イケメンスマイルを繰り出したが先程の爆笑している姿が忘れられず、鼻で笑いそうになったのでいかんいかんと鼻を摘まむ。


「オメェ何してんだ?」


そんな様子をロードに見られて恥ずかしくなったが、なんでもないと頭を振り誤魔化したのだ。




カルロさんオススメのスイーツはフローズンミルクセーキもどきで、評判なだけあり美味しかった。

料理のこともあってそんなに期待はしていなかったので、これは思いがけない事であった。良い意味でね。


トモコもショコラもスイーツだけは嬉々として食べていた為、口に合ったのだろう。


「やはり女性は甘いものがお好きなのですね」


と、自分こそが甘さたっぷりに微笑むので、心の中でレンメイさんの必殺技はハニースマイル、と唱えてしまったのは仕方ない事だろう。

しかも必殺ハニースマイルはトモコに向いているのだが、奴は右から左へと受け流している。


ちなみにカルロさんもトモコ狙いのようで、さっきからチラチラとトモコを気にしているが気づかれていない。


「ショコラ美味しかった?」


ロードの腕の中からショコラに話しかける。


「はい!! 主様ありがとうございます~」


特に私は何もしていないがお礼を言われた。これは暗に奢ってくれと言っているのだろうか? 私はお金を持っていないんだが、偽造するか?


食事を終えてひと休憩し、そろそろと皆が席を立つ。

男性陣3人はその辺にいた店員に「ご馳走さん」と声をかけると私達を連れ、そのまま外に出てしまった。


え゛…食い逃げ?


そう思ったが、どうやら先にお金を払っていたらしい。

何とスマートな男性陣の対応だろうか。スペックが高いと感心してしまう。


「ああ……私の“ホワイトローズ”。せっかく貴女のように素敵な女性と出会えたというのに、運命はなんて残酷なのか……っ」


レンメイさんが何か芝居がかった口調で頭のおかしな事を言い出したぞ。と注目すれば、片膝をついてトモコの右手を取り囁いていた。


「貴女にこの街をご案内出来ればいいのですが…申し訳ありません。職務を放棄するわけにはまいりませんので…っ」


と悔しそうに呟くと、潤んだ瞳でトモコを見つめた。


「え゛……っと、これからお仕事なんですよね? 仕方ないですよ。頑張って下さいね」


若干引き気味に当たり障りのない事を言うトモコ。


「何とお優しい…次は是非、私に街を案内させて下さい」

「あ、はい……」


美男美女は絵になるなぁと思いつつ、ロードに「騎士って皆あんな感じ?」と聞いてみる。


「んなわけあるか。あんな芝居がかった真似すんのは一部の貴族上がりの騎士だけだ」


と即否定された。けど、一部でもああいう騎士が居るには居るらしい。


「麗しの“ホワイトローズ”。貴女とまたお会いできる日を楽しみにしております」


レンメイさんはそう言って、手に取っていたトモコの右手にそっと口づけすると白馬に乗って走り去っていった。

最後の最後のまで騎士だったが、時間が切迫していたのだろうか。カルロさんを置いて行ってしまった。


トモコよ、見えないように服で手を拭うんじゃない。こっちからは見えてるぞ。


「では私も職務に戻るとしよう。ロード、お前もつがいとのデートであまり浮かれ過ぎないようにな。ではミヤビさん、ショコラちゃん。麗しのホワイトローズ。また会おう」


マントを翻し、黒い馬にまたがって「ハァッ」と馬を走らせる様はレンメイさんより騎士らしかったが、最後、トモコの名前な。それ、ネタですか?


「何か面白い人達だったね~」


お前の対応が何より面白かったわ。

とトモコの言葉にツッコミながらボソリと呟いた。


「……乙女ゲーム“白薔薇のアドラーブル”」


題名を付けるとしたらこんな感じだろうか。

ちなみにアドラーブルはフランス語で愛らしいといった意味がある。


「何それ!? みーちゃん止めてよーっ」

「異世界から人族の神によって召喚された乙女が、見目麗しい騎士達と共に冒険を通して愛を育む物語である。主人公トモコは一体誰を選ぶのか!? 乙女ゲーム“白薔薇のアドラーブル”来月発売予定。予約受付中」


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