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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第2章

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74.新たな神


「ハイハイッ」


トモコが何故か手を挙げたので「何かねトモコ君」と促す。


「一応この人は私の“つがい”です。“つがい”の尻拭いは“つがい”である私がします!!」


等と言い出したので、人族の神がぎょっとして「トモコ!?」と叫んだ。


「神王様」


トモコは私をそう呼ぶと片膝をつき続けた。


「不肖トモコ、人族の神となり(・・・・・・・)、人族、そして人族として新たにやり直すこの人の管理を致します!!」


ええぇェェェ!!!?


『「おおっ」』


ヴェリウスとランタンさんが驚嘆の声を上げ、人族の神は感涙している。


騙されるな!! コイツは……この女は……っ


「さぁ神王様(・・・)!! 人族の神の力の譲渡を!!」


完全に楽しんでやがるッッ



「良いんじゃねぇか。ミヤビの言うように人族の神(ソイツ)を人族としてやり直させるんならどうせ人族の神の席は空くわけだしよぉ。ソイツも自分のつがいに管理してもらえりゃあこんな嬉しい事ぁねぇだろ」


今まで黙っていたロードの口出しにトモコの目が輝く。トモコからしてみれば追い風が吹いた気分だろう。


『ふむ……トモコのミヤビ様を想う心は、確かに我らにも劣りません。私もそれで異存はありません』

「そうねぇ。何といっても神王様の心友ですもの。アタクシ達もフォローしますし、宜しいのではないでしょうか」


ヴェリウスとランタンさんまで納得している。トモコのニヤニヤ具合が止まらない。見えてるぞ、トモコさん。


「……分かった。取り敢えず魂を浄化してから…」


現・人族の神の様子を伺えば、床にへたりこんで大人しく頭を下げている。


容赦なく魂の浄化を願えば、彼は光に包まれた。

その光をボンヤリ見ながら思う。


殺された時の事を覚えてはいないからかもしれないが、彼に恨めしい思いは一切ない。

むしろクズ男を()った事は良くやったと誉めたい位だし、この世界に戻って来た(・・・・・)事も自分の意思(・・・・・)だったわけで、彼が勝手に連れて来たわけではない。




……ん? 今私は何て思った?

自分の意思? いやいや、人族の神に連れて来られたんだよね……何か思考がおかしかったぞ?



『ミヤビ様、アーディンの魂が浄化されたようです』


声をかけてきたヴェリウスに、今考えていた事が全部ふっ飛んだ。

人族の神に目を移せば、先程よりも美人度が増したようで少しイラっとした。


「男なのに何であんなに美人かなぁ~」


と目が据わっているトモコに同意する。


「次は神の力の剥奪だけど……何か言いたい事はあるかな?」


一応剥奪したら一からやり直させる為に魂の状態に戻して、人族の赤ん坊として生まれ変わらせる予定だ。

そうなると、これが人族の神としての最期の言葉となる。


「神王様……我が君……っ 申し訳ございませんでした。私は何という愚かな事を……っ」


はらはらとキラキラした涙を流すアーディンに頷く。


我が創りし(・・・・・)人族の神よ。そなたは人族として生まれ変わり、今度こそ道を違わぬよう生きろ。幸せにな」

「っ……我が君、有り難き幸せにございます…っ」


神の力の剥奪とアーディンの魂を人族の輪廻へ。



「おー…何だかみーちゃんが別人のようだ…」

『神王様……』

「本当、“前”の神王様だわぁ」

「…………」



3人と1匹がそんな会話をしているとも知らず、私は力を行使していた。

勝手に口から出てきた言葉に戸惑いながら。


どうやら、私の中にはお奉行が住み着いているようだ。北町奉行か南町奉行かで迷う所である。ちなみにやりたいのは北町奉行だが、推しメンは南町奉行だ。


「というかみーちゃん、あの人を魂の状態に戻したけど……それって葬った事になるんじゃあ……」


え゛……


「そうねぇ~。あの感じじゃあ生まれ変わらせるつもりのようだし」

『やはり相当お怒りだったのだろう』



……や、()っちまったアアァァァァァ!!!



トモコをお願いします━━…



そう残して消えていったアーディンの魂は、すぐ人族の赤ん坊としてこの世に生を受けるだろう。

もしかしたら“つがい”はトモコのままかもしれないが……。トモコをちら見するが、当の本人はどこ吹く風でヴェリウス、ランタンさんと話している。


え? 葬った事?

人間1つや2つ間違いはあるものだ。記憶から消してほしい。


「さて、次はトモコの番だね」


固まっている女子? 達の元へ行けば、トモコがキラキラした瞳で見てくるのでロードを盾にした。


「ねぇヴェリウス、人族の神ってどんな事してるの?」


心友に神の力を譲渡する前に聞かなければならない。

また辛い目に合わせるわけにはいかないのだから。


『そうですね…………眷族や担当種族を管理する位でしょうか。後は特にこれといって……』

「そういえば私達神族って特に何もやってないわね~。自分達の創りだした種族が多すぎたり少なすぎたりしないように管理してるだけですもの」


神族の存在意義…。


「稀に、気に入った子に祝福あげたりする事もありますのよ~ホホホ」


何だか気に入ったホストに貢いでいるマダムのようだな。


「まぁ、それならトモコでも大丈夫かなぁ……」

「みーちゃん!? 私でもってどういう事!?」

「他に辛いなぁなんて思う事はない?」

「無視したーー!? 酷いよみーちゃーん!!」


ギャーギャーと騒がしいトモコは放置して、ロードの影に隠れつつ聞けば首を横に振る1人と1匹に取り敢えず安堵した。


「トモコ、大丈夫そう?」

「任せといて!! 分からない事はワンちゃん…先輩方に聞くし、あ゛ーーってなったらみーちゃんに頼るから!」


堂々とサムズアップしてくるので呆れたが、それならと人族の神の力をトモコに譲渡したのだ。


というかお前……自分のつがいが葬られたのにそんな嬉しそうにしていて良いのか。






「ぅおおっ こ、これが神の力…っ 何という!!

……て、あまり変化ないよ~みーちゃん」


等とのたまう新・人族の神となったトモコは、やはり美人度がアップしていた。なんというか、キラキラオーラが増したのだ。

神になるとキラキラが増すのか? ならば何故私は変わらないのだ。

キラキラになりたいと思ったらただの光る人になりそうなので願うのは止めておこう。


「大丈夫。光ってるよ!!」


サムズアップ返しをしておいた。


「光ってるの!?」

「あら~神力が制御できなくて溢れてるわね」

『まずは力の制御から覚えていかねばな。力を垂れ流す事になる』


何だと!? 力の垂れ流しで光る!?

待て待て。私は力を垂れ流しても光ってないけど!?


「オメェとは力の質が違うんじゃねぇか? 神王だしよぉ」


私の心の声が聞こえたのか、ロードにそう言われて頭を撫でられる。力を加減しろと言いたい。


「全部口に出してんぞ」


可愛いねぇとニヤニヤされるので足を踏んづけておいた。ダメージゼロなのは知っている。鎧だしね。


「あーっ みーちゃん達がイチャイチャしてるーー!! 見せつけてくれるねぇ。このリア充が!! てか怖っ ロードさんめっちゃ顔怖っ ヤクザ!!?」

「イチャイチャしてないし!! リア充じゃないし!! ロードはヤクザだよ!!」


小学生みたいな事を言ってくるので小学生返しをする。ロードはそれを見て更にニヤニヤしてくるので余計腹が立った。

というかいつの間に兜を外したんだ。


トモコも兜を取ったロード初めて見るんだっけ?

そういえば……人族の神の神殿に転移した時もずっと外してなかったような?


その後もトモコがロードの顔に本気で怯えていたので、若干ロードが傷付いていたがスルーした。




そうそう。アーディンの精霊だが、主が突然変わった事で大騒動に発展したのだが…それは後々語る事にしよう。

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