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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第2章

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73.判決! 有罪である!!


こうして、この事件は幕を閉じ……「おい、人族の神はどうすんだよ」てはいなかった。


泣きつかれて、今度は「異世界だよ~!」とトモコの瞳が輝き出した時にロードに突っ込まれたのだ。


「そうだった。トモコ、どうする? トモコをそんな厨二病のような容姿にした神(犯人)だけど」


私はトモコの白雪のような髪(・・・・・・・)に触れ言った。



心友が目を覚ました事には安堵した私だったが、どうした事かトモコの髪色は白のままであった。

とはいえ、眠りについていた時の透明に近い白ではなく、白雪のような白であったが。

更に肌も雪のように白く、瞳は薄い琥珀色へと変化しており、もしかしたら魂が世界に拒否されたなごりかもしれないと勝手に思っている。


「おばあちゃんになっちゃった~」


等と彼女は言うが、サラ艶な若さ溢れる髪は、おばあちゃんとは全く別物の“白”である。


白雪のようなサラ艶の腰まである癖の無い髪は、ほんの少し人族の神と似ている気がした。

もしかしたら、彼の力で身体が創られている事も要因かもしれない。


「そうは言われてもなぁ~。会った事もない人だし…あ、でも私を思ってあのクソ男を消滅させてくれた事と、異世界に連れて来てくれた事には感謝したい。でも、みーちゃんを殺した事は許せないし、私のピアスを取り返したい!!」


ムキーッ と怒っている心友は、滅茶苦茶美人なのにどこか残念だ。


「総合的に考えた結果…」

「結果?」


難しい表情で唸っているトモコに続きを促す。


「会って説教コースなり~!!」


オタク全開の言い回しは止めろ。


しかし会うのか? トモコを錯乱している人族の神に会わせても良いものかとロードを見る。

好きにさせりゃ良いだろ、というように頷いたので危険がないように予め結界でも張っておこうと決めた。


「うっわ~! みーちゃん達見つめあっちゃってイヤラシ~」


バカな事を言ってくるトモコのほっぺをつねりつつ、


「じゃあ会いに行く?」


と確認すれば痛い痛いと言いながらも頷くので、転移するからねと、結界をトモコに張りながら説明する。

「転移!!」とハイテンションになり、それを見たロードがまるで園児を引率する先生のように「危ねぇからあまりはしゃぐなよ~」と注意していた。



◇◇◇



「ーー…っ神王め!! 私のつがいに…っっ」

「アーディン!! 落ち着きなさい! ……駄目だわヴェリウス。この子、もう魂自体が穢れてる…っ」

『……我らを創りし“親神”ともいえる御方を手にかけたのだ。こやつはもう神ではない』


ヴェリウスとランタンさんが暴れる人族の神を取り押さえて、重苦しい話をしているという微妙な所へ転移してしまった。


「おお!! メロン閣下…っ」


トモコの呟きに、私達はやはり類友だったと痛感する。

考え方が似ているのだろう。何だか物悲しくなってきた。


『ミヤビ様!!? どちらへ行かれていたのですか!? 急にいらっしゃらなくなったので心配しました!!』


私達にすぐ気付いたヴェリウスが、ふわっふわの体毛をなびかせながらこちらに掛けてくるので撫でくり回したい衝動に駆られたが、ぐっと我慢する。

隣で心友が目を輝かせている事は気掛りではあるが。


コイツ……いきなり飛び付いたりしないだろうな? 等とチラチラ見ていれば、


『ん? ミヤビ様、こやつは一体…?』


ヴェリウスは初めて見るトモコに少し警戒している様子だったので先に紹介する事にし、自己紹介をと隣を見る。


「ふぉぉっ 喋るワンちゃん!! 真っ黒で格好良い!!」


と興奮している心友に、首を傾げるヴェリウスの愛らしい仕草がさらにトモコを悶えさせているので、一歩後退していた。


このままではトモコの印象が変態になってしまうと急いで私から紹介する。


「この子は……「トモコ!? 目覚めたのか…っ」」


しかし紹介を始めてすぐに人族の神の声に遮られた。

それをすかさずランタンさんが押さえ込んだ様は、まさに“(おとこ)”であった。


「この子は私の親友の「心友ね!!」……心友のトモコ。人族の神の“つがい”で2年前異界から連れてこられたのだけど、ずっと眠りについていて、さっき起こしてきた所」


改めて紹介するが、私の紹介が雑だったのか簡略化しすぎたのか、ヴェリウスもランタンさんもキョトンとした顔のまま固まっている。


『……アーディンの、“つがい”!? しかも異界からの“来訪者”ですか!?』


いち早くフリーズが解け、信じられないと目を見開いて問いかけてくるヴェリウスと、人族の神とトモコを同じ様な表情で見比べているランタンさんに続ける。


「正確には“転生者”みたい。魂の状態で連れてこられて身体を再構築されているから」

『何とっ ……トモコとやら、同族であるアーディンが大変な事を仕出かしてしまったようだ。何とお詫びしたらよいか……申し訳ない』


尻尾を垂らして耳をふせ、トモコに向かって頭を下げたヴェリウスに続いて、ランタンさんも「本当にごめんなさいね」と謝罪している。

同じ“創世の神々”という立場だからこそ人族の神の仕出かした事に罪悪感があるのかもしれない。


「あ、いえ。異世界に来られるなんて夢のようですし、ここにはみーちゃんも居るので私は逆に嬉しいというか」


1人と1匹のしおらしい態度に慌てたトモコがわたわたしている。



「何故……、何故貴様がトモコのそばに居る!? 忌々しい神王めっ 貴様のせいで……っ 貴様のせいでトモコは傷付いたというのに!!」


人族の(ストーカー)は、やはり私がトモコのそばに居ることが許せないようで、狂ったようにわめいている。


しかし、それに怒りを爆発させたのは他でもない、トモコだった。


「みーちゃんに……ッ何て事言ってんだ! この、顔だけ男ォォォ!!」


わめく人族の神にキレたトモコが、負けない位大声で叫ぶ。

自身のつがいの怒鳴り声に怯んだ人族の神は、目を見開いてトモコを凝視して固まっている。


「誰がみーちゃんのせいで傷付いたって!? 私はねぇ、みーちゃんが居たからあんな事をされても生きてこれたの!! それを一度でも私から奪ったアンタが、何ふざけた事言ってんだーーー!!!」


あ、殴った。


トモコが人族の神の方へ走って行って、グーで頬を殴ったのだ。その後殴った方の手を涙目でブンブン振っている様子から、自分の手にダメージがあった事が伺えた。

仕様がないのでこっそり治療しておいた。


「と、トモコ…」


一方、殴られた側は心にダメージは負っても身体はピンピンしているようだ。にもかかわらず殴られた頬を手で押さえ、トモコを驚愕の表情で見つめている。


「あのクズ男を殺してくれた事と、この世界に連れて来てくれた事には感謝するけどね…」


その言葉に人族の神の瞳が輝いた。が、


「けど、みーちゃんを殺した事は一生許さない!! みーちゃんを責めた事も!! 後、そのピアス私がみーちゃんから貰ったんだから返して!!!」


キッと睨んで捲し立てるので人族の神は徐々に力が抜けていき、ついには崩れ落ちた。追い討ちをかけるようにランタンさんがピアスを取り返してトモコに渡したので、ハラハラと泣き始める始末である。


見た目だけはハラハラと涙を溢す、美貌の精霊王のような姿だが、同情はできない。


「す、すまなかった…っ トモコ、トモコ許して……っ」

「嫌! 許さないっ」

「そんなぁ~」


子供のように泣き出した人族の神にとどめをさし、ズンズンとこちらへ戻ってきたトモコは、フンッと鼻から息を吐いて取り戻したピアスを私に見せたのだ。ドヤ顔で。


『ミヤビ様、アーディンは……あやつはもう、“神”ではありません』


尻尾を垂らしたヴェリウスが、私の隣で人族の神の様子をうかがいながら哀しそうな声をもらした。


『神王という存在を手にかけたあの者の魂は穢れてしまっているのです』


だからか。


魂が穢れてしまっているから、あんなに不安定な状態なのかと納得する。


ヴェリウスは前足でカリカリと、大理石の床を意味もなく引っ掻くと耳をふせて私を見上げた。


『ミヤビ様…』

「なぁに?」


言い辛そうにしているヴェリウスに聞き返す。

もしかして魂を浄化して欲しいのかな?


『……あやつをどうか、ミヤビ様の手で葬ってやって下さいませんか。……最期の情を、かけてやっては下さいませんか?』


ヴェリウスから殺人(神?)を推奨された件んんん!!!


ムリムリ、無理だから!!!

生粋の日本女子である私が人を殺せるわけがないだろう!?

チラッとトモコを見ると、話が聞こえたのか「あばばばば」と言いながら足をガクガクさせていた。

ランタンさんは険しい表情でこっちの様子をうかがっているのでプレッシャーがすごい。

ロードは……兜で顔が見えない。


『勝手な事を申しているのは重々承知しております。ですがこのまま我らが消してしまうのはあまりに憐れで……』


消す!? ヴェリーちゃん、消すって何ですか!? 思考が危ない人になってますよー!!


ヤバイ。このままでは私が人族の神を殺す流れになってしまう。

一体どうしたら……これはもう、穏便に断るしかない!!




「……殺しはしないよ」


ヴェリウスとランタンさんを見てはっきり伝えた。


「この人がこんな風になったのは、元はといえば私のせいでもあるから。「みーちゃん!?」」


トモコがそれは違うよと首を横に振る。その様子に笑いかけると話を続けた。


「けど、“神”としての力は剥奪する。彼の穢れた魂は浄化して、人族として一からこの世界でやり直させる」




これが、裁判官としての私の判決だ。


ん? 私はいつから裁判官になった? ま、いっか。


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