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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第2章

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71.オタク、目覚める


錯乱しているような状態で、何故、どうしてと叫ぶ人族の神が、私を憎む理由を話してくれるはずもなく、仕方ないので彼の記憶を読んだのだが……


「そうか……」


私は、トモコに何て酷い事をしてしまったのだろう……っ

あの子はあんなにも優しくて気を遣う子だったじゃないかと、過去の自身の行動を後悔する。

今更悔やんでも遅いのだと分かっているが、自分を罵る事しか出来ずにいた。


涙がこぼれないようにジッと天井を睨み、拳を握った。


私にトモコを思って泣く資格などないと。


「ミヤビ……?」


記憶を読んだと知らない周りから見れば不可解な行動だったかもしれない。

ロードが私を心配して触れようとしたので、片手を上げてそれを拒んだ。


今、彼に甘やかされるわけにはいかない。


人族の神はランタンさんに押さえ込まれ、大声で喚いている。それを見て、この人は心を病んでしまったのかとどうしようもない憤りを感じた。


「トモコの所へ行ってくる」

「ミヤビ!?」


私の言葉に驚いたロードに腕を掴まれたが、既に転移中だった為、そのままロードまで連れてきてしまった。


ヴェリウスとランタンさんが目を見開いて何か叫んでいたが、今は緊急事態だ。許してほしい。




転移した先……人族の神の神殿だろうそこは、この間覗き見た部屋と同じように白で統一されて、神聖な雰囲気が漂っている。


色々な家具がきちんとそろえられているにも関わらず、使用していないような印象が見受けられた。

まるでモデルルームのようなそれに物寂しさを感じる。


広々とした部屋の、真ん中寄りの壁際には豪奢なつくりの天蓋付きベッドが置かれ、その存在を主張していた。

まるで王様が眠るような立派なベッドだ。


「ミヤビ、ここは一体…?」


転移に巻き込んでしまったロードが、周囲を警戒しつつ話し掛けてくる。


「…人族の神の神殿だよ」


私の言葉にぎょっとしつつ、もう一度周囲に気を配ると今の所は大丈夫だと思ったのか、警戒しながらも表情は若干和らいだ。

そしてその後は特に何か言うでもなく、私の行動を見守っている。


天涯付きベッドに近付き、その閉じられたカーテンを見て胸が苦しくなる。

まるでトモコが私を拒んでいるかのように感じられたからだ。


大きく息を吐いて、思いっきり吸い込む。

それを何度か繰り返すと、思いきってカーテンへと手を伸ばした。


閉じられた薄手のカーテンを恐る恐る開けば、見えたのは真ん中が盛り上がっているかけ布団だった。

徐々に目線を上げていけば、そこに横たわっていたのは…トモコに似た顔のつくりの、全身が透明に近い白色の人形だった。


「人形……?」


後ろから覗くロードの呟きにドキリとする。


人族の神の記憶では、こんな人形のような姿容でも生きている人間(トモコ)だったはずだ。


震える手で、消えそうなトモコの腕を掴む。

冬場の指先のようなヒヤッとした冷たさを感じて息を飲んだ。

冷静に、落ち着いてと心の中で唱えながらトモコの脈を測る。

トクトクと指先に伝わってきたその感覚に、ホッと息を吐いた。


「トモコ…っ」


そのままぎゅっと手を握り込み、顔を見つめる。


長い睫毛は相変わらず綺麗にカールされ、すっと通った鼻筋と小さな唇がバランスよく配置されたその顔は、本当に人形じみていてこのまま目覚めないのではないかと恐怖させる。


「ごめん…何よりも私が気付いてあげないといけなかったのにっ ごめんね…っ」


この世界が、自害したトモコを受け入れないというのなら、その理すらも変えてみせよう。


そう決意し、そして願う。


トモコが世界に受け入れられるように。

そして、目覚めるようにと━━━…………



◇◇◇



「━━……知らない天井だ」


目覚めた一言目がそれだった。


「トモコ…」


恐る恐る、必死で絞り出した声で話しかける。

するとトモコはゆっくりとした動作で頭だけを動かしてこちらを向いた。


トモコと目が合って心臓が跳ねた。次の瞬間。


「みーちゃんだぁ」


ふにゃっと嬉しそうに笑ったトモコに、涙がこぼれた。


「っ…とも、ッ…ぅっ」


言葉にならない声が嗚咽となって出る。


「みーちゃん? どうしたの……? どこか痛いの!? ハッ まさか生理痛!?」


慌てて手を伸ばしてきたトモコに生理痛じゃないと言いたいが嗚咽しか出てこない。

オロオロしながら起き上がると、「みーちゃん」と心配そうに私の手を握ってくれたトモコの表情が、私の後ろを見た瞬間に驚愕へと変わった。


「っ…ぁ…あ……」


ホラー映画の女優も真っ青な驚愕の仕方である。


「あ、暗黒騎士だとぅぅぅ!

!!?」


この言葉が出てくるまでは。

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