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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第2章

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68.愛想笑い


人族の神を深淵の森に入れる気にはなれず、結局場所は天空神殿のゴシック建築ゾーンにある一室でとなった。


時間の5分前にやって来た人族の神は几帳面な性格なのかもしれない。

天空神殿行きの扉は30分前から繋げていたのだから。


「…神王様と“創世の神”との交流会とお伺いしましたが、まだ貴女方しか来てはいないようですね」


訝しく思っているのだろう。それを表に出さないよう穏やかに微笑みながらヴェリウスとランタンさんに話し掛けている。



『そうであろうな』

「そもそもアタクシ達しか呼ばれていないもの」


ヴェリウスとランタンさんの言葉に笑みを消した人族の神が、空間を繋げようとした事に気付き、逃げ出さないよう強力な結界を張る。

やはり異界に行けるだけあって、空間魔法が得意なのだろう。


「っ…何の真似でしょうか? 今日は神王様との交流会とお伺いしておりましたが…」


困ったように笑っているが、やはり目は笑っていない。


「あらあら、何をそんなに警戒しているのかしら? 交流会は神王様と個別での歓談ですのよ。

ちなみにアタクシ達は神王様のお手伝いをさせていただいているの。羨ましいでしょう」


オホホと笑いながらヴェリウスと共に部屋へ案内しているランタンさん。


「そうだったのですか……個別で、とは。光栄ですね」

『どうした“アーディン”。お主は私同様神王様に執心していたはずであろう。もっと喜ぶか我らを妬むかと思っていたが』

「ヴェリウス、勿論喜んでおりますよ。しかし、ここは神王様の神殿です。騒がしくするのは本意ではありませんので。それに、妬むだなど…私の心はそれほど狭くはありませんよ」


クスクスと笑いながら答える人族の神は、一見穏やかで敵対するようには見えない。

昔から彼を知るヴェリウスとランタンさんも、私の思い違いではないかと考えているかもしれない。



「ミヤビ……人間ってなぁ、あの神を基に創られたらしいぜぇ」


案内している様子を別室でホログラムにして観ていると、後ろからそう言ってくるロードに振り返る。


「人間は他の種族に比べりゃあ裏表がある生き物だ。騙し騙され、ずる賢く生きてる。演技なんてお手のもんだろ」


ロードの言葉に頷いて再びホログラムに注目する。


あれは演技だ。間違いない。

だって最初に警戒して力を使おうとしたのは人族の神だ。それにあの笑顔…完全に愛想笑いじゃないか。


「酷ぇ笑顔だなぁ、ありゃ。ウチの陛下でももちっとマシな愛想笑いするぜぇ」

「愛想笑いって人間の特徴だもんね。人族の神は愛想笑いなんてしなくてもいい立場だから上手くないんだよ」


とはいえ、社会の荒波に揉まれていないと分からない位には人好きのする笑顔だとは思う。美人だし。


「というか、ロードも裏表があるって事?」


さっきから気になっていた事を聞けば、ニヤリと笑われた。

脳筋のクセに…とは思ったが、あえて触れない事にする。墓穴掘りそうだしね。


「さて、人族の神も部屋に入った事だし私も移動しようかな」


ホログラムを消し立ち上がれば、やっぱりロードに抱き上げられる。


「何でいつも抱き上げるの?」

「つがいにゃいつでも触れていてぇんだよ」


そう言って移動し始めるので、いつも通り歩くのを諦めた。

部屋の前に来るとさすがに降ろしてもらったが。


珍獣3人娘が部屋の前で待っており、私が来た事を中に伝えている。



すぐに扉が3人娘によって開けられ、入るよう促された。

少し緊張気味に入室すれば、2人と1匹は片膝をつき頭を下げたままの体勢で待っていた。


どうもこういうのには慣れない。


「顔を上げて楽にして下さい」


そう言えば面を上げた2人と1匹にますます緊張する。


「どうぞ椅子に座って」


自身も座り目前を見る。

人族の神が席につくと、ヴェリウスとランタンさんがこちらにやって来た。


背後で立ったまま護衛についているロードには申し訳ないが、

ヴェリウスとランタンさんは神という立場上立たせているわけにはいかない。なので席についてもらうことにした。


「2人も席について」


はいと返事をして私の横に座ったのを見、もう一度人族の神を見た。

あのピアスはやはり彼の耳に付いている。


「今日はわざわざお越しいただきありがとうございます。貴方にお会いするのは3度目(・・・)ですか」


ニッコリ笑えば目の前の彼は口の端を引きつらせながら、いいえと否定した。


「私が神王(アナタ)様とお会いするのは今日で2度目です。しかし、2度も神王様と間近でお会い出来る機会を与えていただけるとは光栄の極みです」


キラキラスマイルとでも言えばいいのか、人族の神は輝くような笑みを向けてくる。

しかし表面ばかり取り繕っても所詮偽物の笑顔である。


空々しいにも程があった。

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