62.パーティーの開始
「…俺じゃあ不満か?」
引き続き夫から浮気を責められる妻の図デス。
「不満って…そんな事考えた事もないというか……」
ロードから目をそらしながら答えると、壁ドンならぬソファドン(?)をされ、丸太のような腕に囲われて逃げられなくなる。
「ミヤビは俺のつがいなのに……俺が居るってのに、他のヤローにうつつを抜かすのか…っ」
抜かしてねぇよォォ!? 何言ってんの!?
「どんな曲解をしてそんな事をいってるのかなぁ!?」
「オメェ、さっきあのガキを抱き締めようとしただろ」
ジト目で見られながら痛い所をつかれる。
「あれは私が泣かしてしまったから、慰めようとして…でも一切下心はありません!! 私はショタではない!!!」
「オメェになくても相手にはあんだよ!!!! 大体他の男を抱き締めようとするなんざ俺に監禁されてぇのか、あ゛ぁ゛!?」
監禁!?
「申し訳ございませんでしたぁぁぁ!!!! 泣いていた子供とはいえ、私が浅はかでございました!!」
ソファの上で土下座である。
ヤンデレはいかんよ。ヤンデレは。
「ったく…こりゃ仕置きだな」
土下座をしている私の頭上から降ってきた言葉に、恐る恐る顔を上げると…
「ミヤビから、俺に対しての愛の言葉を聞かせてもらわねぇと今回ばかりは許せねぇなぁ~」
チンピラのクリーニング代請求のごとく理不尽な言いように顔が引きつった。
「あいのことば…?」
「そうだ。オメェのこの可愛い唇から、“ロード好き好き大好き”って聞きてぇなぁ~」
そんな事言えるか馬鹿野郎。
何言ってんだこのオッサン。おかしくなったのか。そうなのか。
「ロードバカバカ大バカ?」
「違ぇよ!! 誰がバカだこの野郎!! “ロード好き好き大好き愛してる!!”だ阿保!!」
一言増えてるよ!! そして誰が阿保だっ
「ロードアホアホ大バカゴリラ死ね?」
「テメェいい加減にしねぇと襲うぞコラァ」
ヒイィィィッ 目が本気だ。
これは言わないと襲われる。こうなったら言うしかない。言えばロードの機嫌も直るんだ!! 言え、雅!! お経を唱えるのだと思って言うんだ!!!!
自身を奮い起たせ、口を開いた…
「ロード、す《ミヤビ様ぁ~、ショコたんどこ行ったか知りませんか~。皆が座って下向いてたから真似してたら、いつの間にか誰もいなくなっててびっくり~》」
救世主ーーーーー!!!!
「ショコラなら待ってたら来るからここで待ってなさい!! それにしてもマカロン、その竜王スタイル似合ってるね~!」
《じゃあ待ちます~。えへへ。嬉しいなぁ。ショコたんも褒めてくれるかなぁ~》
「勿論褒めてくれるよ!!」
照れながら控えの間の床に座ると、マカロンは嬉しそうに尻尾を振っている。
チラリと目の前のロードを見れば、じっと私を見つめていてかなりびっくりした。
「ミヤビ…覚えてろよ」
負けたヤンキーの捨て台詞を耳元で囁かれ、身が縮こまったがその後は普段のロードに戻りホッとした。
◇◇◇
ダンスホールに音楽が流れ出し、ザワザワとし始めてから人が入ったのだと気づく。
控えの間にはタイミング良く戻ってきた3人娘とショコラが居り、マカロンがショコラに褒めてもらおうとマントを自慢している所だった。
「…ミヤビ様、ヴェリウス様より念話がありました。
一際大きなざわめきが聞こえれば、ダンスホールに全ての神々が入室した合図だと。流れている音楽が止めば出て来て欲しいとの事です」
3人娘の1人がそう言って声をかけてきた。
頷き返すと、暫くして確かに一際大きなざわめきがおこった。
どうやら招待客全員の入室が完了したようだ。
何だか緊張してくるんだが…。あー…落ち着かない。
「ミヤビ様、そろそろです。ご準備を」
3人娘の声にソファから立ち上がると、ロードとショコラが左右に、マカロンと3人娘は後ろへと回りカーテンの扉の前に立つ。
音楽が段々と小さくなり、聞こえなくなった。
ダンスホールの人々の喧騒も徐々に静かなものへと変わっていく。
そして…
ダンスホールへと再び一歩を踏み出したのだ。




