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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第2章

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60.修羅場?


「って、そんな事はいいのよ!! ジュリーちゃん、とにかくここから出なさい!!」


和気あいあいと会話をしているので、もうこのまま開演時間を待つのかと思っていたが、ランタンさんは一応ルールを守らせようとしている。


「え~、ランタンもヴェリウスもここに居んだから俺が居たって良いだろ。何で俺だけ追い出されんだよ」


もっともな意見を述べる魔神にランタンさんが怯む。


「あ、アタクシ達はもう神王様に謁見させていただいて挨拶も済ませているから良いのよ!」

「マジかよ!? 何で!? お前らだけズリィよ!! 俺、今日の拝謁まで神王様に会いに行くの我慢してたのに!! 何2人して抜け駆けしてんだよ!!」

『神王様はお生まれになったばかりだぞ。お世話をする者が必要なのは当然であろう』


フンッと鼻を鳴らし、自分を正当化するヴェリウス。


「はぁ!? それなら俺だってお世話出来るし!! 大体お前がまだ会いに行ったら駄目だって言ってきたんだろっ 生まれたばっかで繊細だからって! 俺らを騙したのかよ!!」

『騙してなどおらんわ。お主のように乱暴で敬語すら満足に話せん神に、神王様をお世話する事など到底出来ぬ。しかも本能に従って生きているような脳筋を神王様のおそばに置くなど、そのような者はこやつ1人で十分よ!』


多分ロードの事を言っているのだろう。

しかし乱暴者で脳筋…そんなんばっかりか。


「そこの、暗黒騎士が神王様のおそばに侍ってる…?」


魔神が呟いた刹那、空気が張りつめてピシッとラップ音が聞こえた気がした。


静電気か? とあまり気にしていなかったのだが……


「おい、ちょっと待てよ。どういう事? 俺の大切な神王様(・・・・・・・・)に、お前らだけじゃなくて、どこの馬の骨ともしらねぇ暗黒騎士が侍ってるって言ったの?」


ピシッ、ピシッ

とやはりラップ音がする。心霊現象か!?


『…貴様ももうすぐ神王様に拝謁出来るのだから良かろう』

「お前何、言ってんの?」


ビキ…ビキィッ

一瞬この空間に亀裂が入り、すぐに元に戻る。

多分結界を張っていなかったら建物自体に亀裂が入っていただろう。

魔神の神力が私の結界に干渉しているのだろうか。


『ジュリアス、落ち着け。この男は神王様の“つがい”だ。おそばに侍るのは仕方のない事。お前だとて知っておろう。人族のつがいに対する習性を』

「神王様の、つがい…?」


愕然としたような魔神の声が聞こえてきて、何があったんだと心配になる。多少ヴェリウスが焦っている気もするし。


「何、つがいって…っ 俺の神王様(・・・・・)につがい? この、暗黒騎士が…?」

「そうよぉ。素敵な話よね~。神王様と竜騎士の純愛…!」


ピシッピシッ

またもやラップ音。さっきから亀裂やらこのラップ音やら、人の張った結界に力をぶつけてきやがって。この魔神、私に恨みでもあるのだろうか。


「ぜんっっぜん、素敵じゃねェェェェ!!!!」

「テメェ、さっきから俺の神王、俺の神王と……っ 人のつがいを馴れ馴れしく呼んでんじゃねぇぞォォォ!!!!」


ビキバキバキィィィッッ


まるで雷のように空間が割れる。

すぐ元に戻るけどね!!


というかこの現象、魔神だけじゃなくてロードの仕業でもあっただとォォ!!!?


『力を抑えぬか2人共!』

「神王様の御前で何て事をしているのよ!?」


ヴェリウスとランタンさんが止めているが、空間を裂く雷のような音は鳴り止まない。




「……全く。何やってんだか」


飲んでいたお茶のカップを机に置くと、ソファから立ち上がる。

するとそばに待機していた3人娘がささっと近付いてきて、


「失礼致します」


と着物を整えてくれた。


「主様、ダンスホールに行かれるのですか?」


ショコラがそう問いかけてくるので頷けば、


「裾をお持ちします」

「準備万端でございます!」

「いつでも参れますわ」


等と私の後ろに回った3人娘に声をかけられた。


「勿論ショコラも主様と一緒にダンスホールへ行きます!」

「ならついておいで」


と先程のように10センチ程浮き上がり移動し始める。

直したばかりのカーテンの扉を潜りダンスホール側へと入れば、一触即発状態のロードと魔神と思わしき15、6才位の少年の姿が目に飛び込んできた。


2人の周りの空間には亀裂が入り、しばらくすると消えてまた入るという現象が繰り返し起こり、ビキビキだのピシピシだのと音が響いている。


結界の強化を念じればそれらはすぐに消えたので、ホッとしつつ階段をゆっくりと降りる。

後ろには着物の裾を持ってくれているベールガール…もとい、3人娘がいるのでさくさくとは降りられないのだ。

そして1歩前を私の手をとってエスコートしてくれているショコラ。何と格好良くて可愛らしい騎士様だろうか。


いち早く私に気付いたヴェリウスが、何故かお座りをして頭を垂れた。それを見てランタンさんが此方を見、片膝をついて頭を垂れる。マカロンはそれに流されて頭を垂れているので、遊びだと思っているに違いない。

ヴェリウスとランタンさんの行動に気付いたロードが此方を見てハッとし、ランタンさんと同じように片膝をついた時には愕然とした。


皆して、なんでそんなに他人行儀なんだ!?


パラレル的な世界にいつの間にか迷い込んでしまったのだろうかと本気で考える。

そうなると徐々に緊張してきて挙動不審になってくるわけで…


『神王様の御前にありながら、騒動を止める事も出来ず御手を煩わせてしまい申し訳ございません』


え゛…何これ。何のドッキリですか? ヴェリウスさん。

止めて。本当にその手の冗談はやめてもらえませんか? 緊張してくるから!!


ちょっと!? マジでここ、パラレルワールドですか!?

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