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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第2章

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56.パーティーの準備


100人の珍獣達とロードと共に天空神殿へ転移する。

こんなに大人数での転移は初めてだったが、特に問題もなくダンスホールに移動出来た。


珍獣達はキョロキョロと、嬉しそうにパーティー会場を見ている。


『ミヤビ様…これは一体どういう事でしょうか? 私に分かりやすく説明していただきたいのですが』


案の定引きつった表情で100人の珍獣達と私を見比べ、どす黒いオーラを放ちながら近付いてくるヴェリウスに怖くなって、ロードの影へと隠れると…


『ミヤビ様!!』


ガウッと一喝される。

心の中でヒィィィ! と叫んでロードを盾にすれば抱き締められて頭を撫でられる。


「ミヤビ、諦めて説教されようぜ」


悟ったような顔をして私を見るロードは、まるでお坊さんのようだった。




ロードと2人、散々説教されて1時間。

正座で延々説教を聞かされた私達の足はお決まりのように痺れて立ち上がれない状態であった。


「こんなん拷問だろ…っ」

「あばばばばッッ 足が、死んだっ」


少しでも動かせばもっとヤバイ事を知っている私は、足を崩した後その場でじっとしていた。しかし、


《ミヤビ様ぁ、ロードさん、2人で何して遊んでるんですか~?》


ここでのマカロンの登場に顛末が見えてしまった。

そう、コイツはバカロンなのだ。


「るせぇっ 遊んでんじゃねぇよ。あっち行け」


しっしと追い払うロードに何故か食いつくマカロン。


《遊んでるようにしか見えないよぉ~。こぉしてぇ、足を伸ばしてぇ~》


ドラゴンなのに後ろ足を私達と同じように伸ばそうとしているバカロンから距離をとりたいが動けない。


「へループ!! 誰かぁ!! ヘループ!!」


必死で叫ぶが100人以上いる割に誰もやって来ないのだ。


《? ミヤビ様ぁ、ヘループって何ですか~?》


そうコテンと首を傾げた瞬間、後ろ足を伸ばそうとしていたバカなドラゴンはバランスを崩し、首を傾げた方へと倒れた。


私達とは反対側に倒れたので助かったと思ったのも束の間、バカデカイドラゴンが倒れた衝撃で体か宙へ浮き、地面へと落とされたのだ。


「「ッッぎゃああああぁぁぁぁ!!!!」」


ダンスホールに2人の絶叫が轟いたのは言うまでもない。




『さて、人手問題も解決しましたし、この者達には暫く此方に泊まりこんで徹底的にマナーを仕込むとしましょう』


大ダメージを受けて回復してからの、ヴェリーちゃんからの第一声がこれである。


「ヴェリウスがマナー教師になってくれるの?」


流石ヴェリウス。パーティーの裏方のマナーまでご存知とは博識だ。


『いえ、教師役は私ではありません。そもそも私は給仕や案内係等のマナーは存じ上げませんので』

「え?」


じゃあ誰が教師役?

ランタンさんや珍獣達を見るが、皆首を横に振っている。

マカロンやショコラは絶対無いし、ロード…もどうやら違うらしい。


『ここはその道のプロに教えを請うのが一番かと』

「プロ…」

『ルマンド王国の王宮に、こやつらを送り込みます』


ヴェリウスの言葉に一番驚いたのはロードだっただろう。

というか、まるでスパイを送り込むかのような言い様である。


人間を天空神殿に入れる事はできないとの事なので、ルマンド国王を脅して優秀な執事やメイドを教師役とし、短期間で様々な事を学ばせるという、身勝手極まりない事を仕出かしたわけだが、珍獣達はかなり優秀だったようで、結果的には城の人員不足も(短期間だが)解消され、国王に喜ばれたらしい。



2週間程教師役をしてくれたルマンドの優秀な方々も、彼らよりさらに優秀な珍獣達の飲み込みの早さに舌を巻き、素晴らしいと絶賛してくれたようで、何故か私が一番誇らしい気持ちになった。

いや、一番はヴェリウスかもしれない。胸を張って鼻息を荒くしていたからね。





そしてとうとう、本番の日がやって来たのだ。


まだ日も昇っていない朝方、ショコラのベッドへのダイブで起こされた私は、眠気と戦っている最中に天空神殿へと引っ張ってこられた。


神殿の日本建築ゾーンにて無理矢理朝食を食べさせられ、お風呂に入れられて磨かれ今に至る。


私は現在何をされているのかと言うと…

珍獣(女性)達3人に着替えさせられているのだ。


「ミヤビ様、腕を床と平行になるよう上げていただけますか?」

「ミヤビ様、足袋をはいていただきとうございますので、右足を上げていただきたく存じます」

「ミヤビ様、ウェストを締めますので頑張ってくださいましね」


等と、かかしスタイルにされて着付けられているのは着物だ。


とはいえただの着物ではない。

赤穂浪士のあの松の廊下で着ていたような長い袴の着物(色味は違うが)で、ウェストを帯で絞られ、久保○一竹の辻が花染めの振袖のように色鮮やかな着物を羽織らされているのだ。

しかし意外にも軽いのは勿論私が色々と魔法をかけているからなのだが、実に動き辛い。特に足元が。


「美しいですわぁ~」

「本当に。うっとり見惚れてしまいます」

「素敵ですわ。ミヤビ様」


着付けが終わり、3人に褒められ恥ずかしくていたたまれなくなっていると、部屋のふすま障子の外から声がかかった。

ヴェリウスの声だ。


『ミヤビ様、準備は整いましてございますか?』

「うん。もう着替え終わったよ」


返事をすると『失礼致します』とふすま障子がスーッと開き、ヴェリウスが入ってきた。


漆黒の毛がいつもよりツヤツヤと輝いており、美犬度が上がっているヴェリウスに自然と目が細まる。


何という圧倒的美しさか。


額には金色のどこかの紋章のような飾りを付け、首もとにも青と紫の飾り紐を重ね、金の金具でとめられていて格好良い。前足にも金色の腕輪が2つ重なり、下に落ちてこないよう浮いている。

全体を金色と青系でまとめている装飾は非常にヴェリウスに似合っていた。


ヴェリウスの向こう側に日本庭園が見える為か、和風に見えてくるのは気のせいだろうか…。


そんな彼女に触れたくなって一歩踏み出せば……


バタンッ


近年まれに見る程の見事さで転けた。


「いやぁ!! ミヤビ様ぁ!!」

「折角の麗しいお姿がぁ!!」

「お怪我はありませんかぁ!!?」


騒ぎ出した3人娘と、顔から床にダイブした私を呆れたように見ているヴェリウスに、恥ずかし過ぎてしばらく顔を上げられなかった。


せめて笑ってくれれば救いだったのに。

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