55.“珍獣”の誕生
「ちょっと深淵の森に戻って来る!!」
そう言って転移しようとすれば、ガシッとロードに抱き込まれ止められる。
「ちょ、ロードさん…?」
「俺も一緒に行くからな」
あ、ハイ…。
『ミヤビ様!?』
「え? 神王様どちらに!?」
ヴェリウスとランタンさんが何やら言っていたが、私達は深淵の森へと転移した。
畑のそばへと戻って来たわけだが、家に帰るわけではない。
「魔獣達ーーっ 集まってーー!!」
結界の外に出てそう叫べば、ロードが何してるんだコイツというような表情で見てくる。
この男は本当に私をつがいだと思っているのだろうか。
暫くすれば、ドスンッドスンッと地面が揺れて巨大な恐竜達が集まってきた。
深淵の森に住む“恐竜警備隊”の面々だ。
ロードを襲って瀕死にした魔獣も来た為に、恐竜警備隊を見る本人の顔は引きつっていた。
ちなみに“恐竜警備隊”とは勝手に私が心の中で呼んでいるだけだ。
「集まってくれてありがとう」
アパート並に巨大なやつから、小さな(といっても大型犬程の大きさはある)魔獣までかなりの数が私達の周りに集まっている。
見たこともない子もいるけれど、大きい子のほとんどは顔見知りだった。
「皆にお願いがあって集まってもらったんだけど、話を聞いてもらえるかな?」
グルルル、ギャーギャー、グピグピ、ガウガウと色んな声が飛び交う中で話し始めれば一斉に静かになり、注目される。
「あのねーー…」
私は天空神殿の事や近々行われるパーティーの話をし、人手が必要な事を説明した。
魔獣達は真剣な眼差しで聞いており、その瞳が段々輝き出した事でさっそく切り出したのだ。
「私と契約して、魔法少女に…ゴホンッ 天空神殿で働かないかい?」
すると魔獣達はすぐに私の前へと列を作り始めた。ざっとみるだけでも300はいる。
「成る程なぁ。深淵の森に住む魔獣を使うたぁ考えたな」
行列が出来るパンケーキ屋に並んでいるような魔獣達を見て関心しているように呟くと、私を後ろから抱き締めてきたロードは心なしか魔獣達にも嫉妬しているように見えた。
「ショコラは名付けたら人型になったでしょ。だから他の魔獣も名付けをして人型になってもらったら天空神殿に連れて行けるかなって」
「オメェが名付けるなら、そりゃあ人型にもなれるだろうが…ヴェリウスに怒られるんじゃねぇか?」
だからこそ名付けには触れずに来たのだよ!
魔獣はヴェリウスの眷族だけど、ショコラは私の護衛でも大丈夫って判断されたのなら、多分私が名付けた魔獣は他の神からは私の眷族に見えるんだと思う。その証拠にランタンさんはショコラに関しては問題視しなかった。マカロンにもね。(こっちはロードが名付けたから、ロードの物扱いかもしれない)
「あ、深淵の森に残る魔獣達は並ばなくていいからね~」
流石に全員は連れて行けないのでそう言ったが、誰も列から離れない。
「「…………」」
ロードと顔を見合せて、また行列を見る。
しかし誰も列から離れない。
「これ……皆天空神殿に連れて行けって事かな?」
「違うだろ。多分全員ミヤビから名付けしてもらいたいんだよ」
ムッとした顔で行列を睨みながらそう返事をするロードにぎょっとした。
「全員って、名前考えるだけでも時間がかかるんだけど!?」
「そこじゃねぇだろ」
結局、誰も列から外れないので皆に名付けしていく事となった。どちらにしてもヴェリウスに叱られるのでヤケクソである。
こうなったら深淵の森の魔獣達は全員人型になれる珍魔獣にしてやる!!
ようこそ。珍淵の森へ。
「はい次~…あ、君で最後だね。えーと…アルファベットシリーズはもう付けたし…いろはシリーズも全部使いきったし、あいうえおシリーズも使ったし…後は~…カラーもやったな。どうするかなぁ…大トリだしなぁ…あ、じゃあ君は“鳳”くんで!!」
名付けた途端、強烈な光とともに人型に変化していく鳳くん。
光が収まり、自身の手足を確認した後ものすごーーーく嬉しそうな顔をして、私に45度の完璧なお辞儀をし、お礼を言うのだ。これは今まで名付けた珍獣たちも同じである。
てな具合にかなりの数を名付けしていきました。
皆問題なく人型になれたようで、上品で紳士な執事的おじい様から有能メイドや忍者まで様々な種類の珍獣達が出揃いました。
7割はマッスルという男性陣。女性陣は美人揃いでレベルがたこうございます。
恐竜警備隊の面々はやはりマッスルマン達で構成されているのかと思いきや、特撮ヒーローの5人組のような感じの細マッチョ達デシタ。
流石に彼らは森の警備隊だけあって居残り組になるそうだが、結構な人数が天空神殿まで来てくれる事になった。
その数ざっと100人。
森を空っぽにするわけにはいかないから、何とかこの100人に絞ったのだ。
さぁ、この100人を連れて神殿に戻りますよ。
ヴェリウスに怒られにな。




