49.天空神殿
何で眷属狩りの話からパーティー!?
話の流れがおかしくない!?
それにパーティーって、コミュ障の私には面倒くさいイメージしかない。
出来る事なら参加したくないんだけど……。
顔合わせと言うくらいなら知らない人達と話したり、挨拶等を大勢の前でしないとならないのだろう。
人に会いたくないから森に引きこもったっていうのに、何故パーティーなんぞに行かなくてはならないのか。
『ミヤビ様、私も神族との顔合わせには賛成です。顔合わせであの映像の者が誰か分かるかもしれませんし、分からずとも手掛かりが見つかるやもしれません。
それに、どこかの大馬鹿者のせいでミヤビ様が偽者と言われる事も看過出来ません。顔合わせさえすれば誰もミヤビ様が偽者だと言う者は居なくなるでしょう』
あ、そういう狙いなのね。
私は別に偽者って言われても気にしないんだけどなぁ。
『ミヤビ様!』
「ハイ、すみません」
どちらかというとヴェリウスは私が偽者と言われる事が我慢ならないのだろう。
逆らってはいけない雰囲気が滲み出ていて怖い。
「でもパーティーなんて行った事ないし、知らない人ばかりの所に行くのも躊躇われるというか…」
『ならばショコラやロードも護衛として連れて行けばよろしいでしょう。常にそばに置けばミヤビ様も安心でしょうし』
「神族のパーティーに人族やドラゴンを連れて行っても大丈夫なの?」
ヴェリウスはよくても他神がNGって事もあるし、連れて行けないならそれを理由に断る事も出来るかも。
「神王様の護衛にドラゴンちゃんはまだしも、人族では頼りないのではなくて?」
私の創ったメロンを揺らしながら不満気に口を出してきたランタンさんに、ヴェリウスが鼻を鳴らした。
『人族とはいえロードは私の弟子。何の問題もないわ』
「はぁ!? アンタの弟子ぃ!? 神族が弟子を取るなんて聞いたこともないわよ!! しかも人族なんて…」
『人族とはいえミヤビ様のつがいだからな。私が鍛え上げるしかなかろう』
胸をはるヴェリウスは弟子思いの良い師匠だ。
「つがいィィィ!!!? 嘘でしょう!? 神王様をつがい認定した人族が居るの!?」
『神族をつがいとする人族は珍しいが稀に居るだろう。そう驚く事でもない』
「驚くわよぉ!! 神王様はそこらの神族とはわけが違うのよ!?」
そこらの神族…ロードよ。君はどうやらとんでもないものをつがい認定したらしいぞ。
『そういうわけで何の問題もなかろう』
「問題しかないわよ!!?」
『しかし2人を連れて行けないとなると、ミヤビ様はそれを理由に嬉々としてパーティーの参加を断る事だろう』
ギクゥッ
ヴェリウスの言葉に肩が跳ねた。
『ミヤビ様が居なくては何の意味もないパーティーになるな』
「何の問題もありませんわ! 神王様はお好きな護衛をお連れ下さい!!」
えー…
『神王様との謁見もかねたパーティーだからな。どこで行うかだが…』
「私達が場所を提供すると他神からの妬みが凄い事になるでしょうね…」
場所が問題視されているようだ。
2人があーでもないこうでもないと案を出し合っているので畑の収穫に戻る事にした。
こういう話で私が居ても何も出来ないしね。
『ミヤビ様、どちらに行かれるのですか』
しかし、ヴェリウスの唸るような声が後ろから聞こえそーっと振り返れば…邪神がいた。2人も。
『貴方様の御目見えのパーティーの話ですよ。しっかり聞いていただきませんと』
「神王様、パーティー場所ですが、神王様のお力で新たな神殿を建てていただけないかと思いましてぇ」
グイグイくる2人に圧されて後退するが、一向に引く様子はない。
しかもランタンさんの新たな神殿建設案はちょっと遠慮したい。
ここに人を呼ぶ気はないし、家は今のままで十分なのだから。
『ミヤビ様、こちらに神殿を創る必要はないかと』
「え?」
『この場所ではなく、天空に神殿を建ててしまうというのはいかがでしょうか?』
◇◇◇
「━━…それで、空に神殿を創るのかよ」
あの後、一旦ランタンさんには帰ってもらい家族会議を開く事となった。
10時頃に帰宅したロードを待ち始まった家族会議だが、そのロードの呆れた声が我が家のリビングに響く。
「う…だって天空のしろ……ゴホンッ 神殿なんて面白そう…いや、必要みたいだし、ここに人を呼びたくはないし…」
『ミヤビ様、はっきりおっしゃった方が良いのでは? もう創ったと』
ヴェリウスゥゥゥ!!!
それは言わない約束でしょうー!? 面白そうだと3人で悪ノリして創ったとかバレたら……
「…すでに創っただぁ?」
「ずるいですヴェリウス様ぁ!! ショコラも主様と一緒に天空神殿のデザインを考えたかったのにぃ!!」
やっぱり。
ロードが呆れるのは仕方ないけど、ショコラが騒ぐんじゃないかなぁとは思ってたんだよね。ただでさえ、ショコラはバカロンと修行の為に遠くに行ってたってヴェリウスが話してたし。
『さすがミヤビ様よ。立派な神殿が出来上がったわ』
ヴェリウスが色々とこだわった箇所もあるし、満足なのだろう。私もぶっちゃけ満足だ。雲の中に隠した天空神殿。別に隠さなくても結界で見えないんだけどね。そこはほら、ロマンなのだよ。
「天空神殿ねぇ…そこにゃ俺らも行けんのか?」
『勿論ここに居る者は全員結界を抜けられるようになっている』
「なら、マカロンに乗って行きゃいいってこったな」
『貴様は飛行時間が10分に延びたからといって浮かれておるのか。そんな近くに天空神殿は創っておらんぞ』
「マジかよ……なら俺は行けねぇって事か?」
ヴェリウスの話に情けない顔をして私を見るので、安心しろと笑いかける。
「大丈夫。天空神殿に繋がる扉を創ったから」
「ミヤビ…俺の為に…」
違う。私がもうドラゴンに乗るのを遠慮したいからだ。
だから抱き締めなくていいから。ちょ、潰れるから!
こうして翌日、さっそく皆で天空神殿に行ってみる事となった。




