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5.始まりの日

時が経つのは早いもので、異世界に来てから2年が経っていた。35才を過ぎると一年一年があっという間に感じる。

若者とは時間の流れ方が違うのだ。

まぁ、若返りの薬と美肌の薬のおかげで見た目年齢だけは23、4なのだが。


「見た目が若けりゃ全てよし!!」


ハッハッハと笑って今日も今日とて薬作りと同人誌作りに励む。


少し休憩と手を止め、窓から見上げた空は快晴で、穏やかに雲が流れていた。


「いい天気だね~」


誰もいない部屋に虚しく響く独り言。


今の生活は天国と言っていい程楽しい。

しかし最近独り言が増えた気がする。話す人がいないとそうなるのだろうか?

しかし異世界に人間が居るとは限らないし、もし居たとしても面倒事に巻き込まれそうで嫌だ。


大体20年来の親友さえ裏切るのだから、遺伝子レベルで異なりそうなものなどなおのこと信頼できない。いくら寂しくなっても、人になど近づくべきではないのだ。


ウン。この2年で自分の世捨て人レベルが上がっている気がする。


そんな事を考えながら、ズシンズシンと家の周りを歩く恐竜を見ていると、突然…

「ガアアァァッッ」「ギャオオォォッッ」

と怪獣映画のような雄叫びが上がり、バサバサッと鳥らしき巨大な生物が空へと舞い上がった。


おおっこの森に鳥がいたんだ~と思っていると、研究室のそばの木々が数本


メキ…メキ、メキィッ…ズシン━━…


倒れたかと思えば、いかつい筋肉マッチョのオッサンといつもウチの周りを巡回している爬虫類型の恐竜を含めた3匹が飛び出してきたのだ。


ものすごくビビった。


マッチョなオッサンは苦戦しているらしく、全身傷だらけで額から流血している。

しかしマッチョな割に武器は2本の剣なのだ。マッチョなら肉弾戦だろう!


しかし人間が恐竜に立ち向かってるってスゴイ。

あの恐竜達の全長は日本住宅の一階の屋根を少し超えているのだ。その巨体を人間が…。


戦いの行方を見守っていると、恐竜の鋭い爪がオッサンの背中を引っ掻き、オッサンは倒れてしまった。


これはマズイ!


私はすぐ恐竜達を強制送還させ、研究室から飛び出した。念のため自身とオッサンに結界を張り、家の周りの結界の境目近くに倒れていたオッサンを引っ張りこもうと腕を掴んだ。丸太のように太く固い腕に驚くが今はそれどころではないと、思いっきり力と気合いを入れて引っ張った。


動かね━!!


オッサン重すぎる! デカイし重いっ無理。

女の子1人じゃ運べない。オッサンの体重よ、運ぶ時だけ羽のように軽くなれ。


念じて再度引っ張れば、結界の中へ入れる事が出来た。

引っ張った時に軽すぎて尻餅をつかなかったのは、オッサンが持っている2本の剣の重さがあったからだろう。

オッサンを羽のように軽くしたのに、2リットルのペットボトルを10本位一気に持ち上げたような重さがあったのだ。

剣ってあんなに重いのかと呆然とする。


「っ…!?」


オッサンはどうやらまだ意識があったようで、突然現れた私に驚いて目を見開いている。身体を起こしかけたが、背中の傷が痛んだのだろう。すぐに唸って倒れてしまった。



研究室から出てくる時に持ってきていた治療薬を取り出し、飲ませようとするがものすごく警戒されている。なかなか飲まないオッサンに焦れ、声をかけた。


「傷によく効く薬だから飲むといい」

「っ…」


久々に人に話し掛けた気がする。声が裏返らなくてよかった。

しかし、息を飲んで固まってしまったオッサンにハッとする。

もしかして言葉が通じないのではないか…。




「oh~ダイジョブデス。毒じゃありまセーン。飲まなければアナタ死んでシマウヨ」


通じただろうか?


口元に小瓶を持っていけば、恐る恐る飲み始めた。どうやら通じたらしい。


血の跡は服にべったりついているし、革で出来た鎧みたいなものはズタズタに裂かれたままだが、傷は消えホッとした。

薬がちゃんと効いて良かった。


「!? 痛みが消えた…っ」


日本語喋れるんか━い!!!


つまりさっきのは言葉が通じなかったんじゃなくて怪しい奴だと思われてたのか。なるほど。


オッサンは起き上がると、革で出来た鎧? を外し背中に手を回して怪我していた場所を触っている。

地面にドスッと音を立てて落ちた鎧? は先程の戦いの凄惨さを物語るように原型がない。


「傷が無くなっている…!?」


誰に問うでもなくつぶやき、その後こっちを見た。


「…あー…誰かは知らねぇが助かった」


ふむ。見た目は40代位の白人のオッサンである。

髪の色は焦げ茶で無精髭を生やしている。そのお陰で、整った顔をしているのに厳つさが増して熊っぽい。

そしてゴツくてデカイ。腕なんて私のウェストよりも太く見える。多分立ち上がると2メートル以上あるとみた。

そんな男が日本語を喋っていると、違和感が凄まじい。


「おい、聞いてんのか?」

「あ、はい。元気になって良かったです。ではお帰り下さい」


すぐにお帰り願おうと丁寧に声をかけてみる。


「あ゛?」

「え?」

「「…………」」


いや、このオッサンものすごく凄んでくるんだけど。ヤクザみたいなんだけど。

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