42. 核と神王
“精霊”って、神の使いっていうあの“精霊”? この男が??
精霊のイメージがくずれたんですけどぉ!! 私のイメージする精霊はもうちょっと妖精寄りっていうか!? 何かこう、白くて小さいカタカタいってる奴!
そんなのを想像していたのに何て事だ! 中性的で美人な男じゃねぇか!! 何だかなー!!
『ミヤビ様? 何故そんなにガッカリされているのですか?』
「するよねー!! ガッカリ! 私の可愛いこ○まはどこに行った!? カタカタ言ってみろコラァ!」
半ばやけくそに男に絡んで見るが、素知らぬ顔で無視された。
『…カタカタ?』
ヴェリーちゃんが言わなくてもいいんだよーー!!
《主様ぁ、○だまって何ですか?》
「私の知ってる精霊だよ。こう、白くて小さくて、カタカタカタカタ…って首振って鳴くの」
「そんな精霊はいない」
こ○まの真似をしていたら、気持ち悪そうな顔をした男に否定された。
その後も胡乱な目を向けてくるので、え? こ○まも知らないの? 正気? という目を逆に向けてやった。
『そんな事より主様、話を進めてもよろしいですか?』
「あ、ハイ。スミマセン…」
ヴェリーちゃんに怒られたのでショコラのそばにとぼとぼ戻る。といっても、2、3歩後退しただけだが。
『貴様、どこの手の者だ』
男の周りをゆっくりと回り、グルルと唸りながら匂いを嗅いだりしているヴェリウスはまるで狼のようだ。犬なのに。
「…………」
男はまた黙りを決め込み、目を閉じた。
答える気はないらしい。
『…フンッ ならば先に“核”を返してもらうぞ』
鼻を鳴らし突然男の胸元に噛みつくと、着ている服ごと引きちぎった。
あれは絶対肉ごと引きちぎっている。
だって血がボタボタッと地面に落ちているから!
「っぐ…ぅ」
痛そう!! ていうかもはやグロいホラーだ。
鼻にシワを寄せたヴェリウスの口の回りに血がついていて本当に狼のようで怖い。
『ミヤビ様、その様にお心を痛める必要はございません。あやつは精霊ですから、多少傷付けた所ですぐ修復します。何しろ精霊の身体は神力で出来ておりますから』
そんな話を聞くやいなや、男の怪我をしている部分に銀色の光が集まり、元通りになった。破れたはずの服もだ。血の跡すら消えている。
しかし、男の雰囲気が若返っている気がするんだが気のせいだろうか?
『傷付けばそれを治そうと自身を型どっている神力を消費しますから、身体も残りの神力で維持できるように姿を変えます』
「て事は、使う神力が大きければ大きい程それに比例して身体が若返っていくと!?」
私の言葉に頷き、先程地面に落とした青い宝石に目を移すのでつられてそれを見る。
「それは?」
『その男に狩られた幻獣の“核”です』
「“核”? 何それ」
『“核”とは体内に蓄積された魔力の塊です。確か人間は“魔石”と呼んでいたかと。とはいえ、“魔石”とは少し異なるものではあるのですが』
魔石!? またもや出ました異世界あるある!! 魔石って生活で使用したり、魔道具作ったりする時に使うアレでしょ。
へぇ。手の平サイズの宝石なんだ…しかも丸っこい。思っていたより大きいなぁ。
なんて思いながら拾い上げれば、男が睨んできた。
『さて、核は取り戻した。次は貴様の番よ』
私の手の中にある事に安心したのか、ヴェリウスは男に向きなおりまたグルルと唸った。するとーー…
「神獣様、どうか核をお渡し下さい。これは神王様の命でもあるとお考え頂きたい」
男はそう言ってヴェリウスをじっと見つめている。
神王様の命令? いや、私はそんな命令を下した覚えもないし、大体貴方の事も知りませんけど。
『ふんっ 戯れ言を。神王様はそのような命令などせんわ』
「神王様に謁見されていない貴方様がどうしてそう言いきれるのですか?」
え? この展開ってアレ? 本当の神王様が別に居る的な?
『神王様ならば目の前に居るではないか。まぁ貴様に神族と神王様の判別が出来るとは思えんがなぁ』
氷点下の目をして男を見下し鼻を鳴らすのでハラハラする。
ヴェリーちゃん、やめて。
本当の神王様が出て来て君の立場が悪くなったらどうするの。
「目の前に神王様…? 戯言をおっしゃっているのは貴方では?」
『何だと? 貴様余程死にたいらしいな…』
何だかこっちが悪役みたいになってんだけどーー!!!
唸り声を上げて噛み殺さんばかりに牙をみせつけているのでより凶悪さが増している。
《この男、許せません…っ》
ショコラまでもが男の発言に激怒している。
ヤバイ。私にはこの2人(匹)を止められない。何しろ怒っている原因が私の事を偽者扱いされたからだ。
そんな事で精霊を殺してしまうのは避けたい。
誰かこの2人(匹)を止められる人はいないのか?
「2人とも落ち着いて…」
『これが落ち着いていられましょうかっ』
《そうですよ!! ミヤビ様を偽者扱いなんて不敬にも程があります! 死罪決定ですよ!!》
『ショコラの言う通りです』
どうしよう…ヒートアップしている。
こうなったらロードを呼ぶしかない!! あいつなら何とか止められるはずだ。
いつも家ではマカロンとショコラの仲裁をしているし、何だかんだとヴェリウスとも仲が良いしねっ
ロード!! 今すぐここに来ておくれーーー!!!!




