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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第2章

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38/303

38.突然恋愛編に突入だと!?


「へくちっ」


突然寒気がしてくしゃみが出た。

パジャマで夜に外へ出ていたからだろうか。


「っんだその可愛いくしゃみ! 薄着してっから身体が冷えたんじゃねぇか? 早ぇとこウチに入って薬飲んで一緒に寝ようぜ。俺が温めてやっから!」


家に入って薬を飲むのは賛成だが、一緒には寝ないからな。


よりロードに抱き込まれながらウチに連れて行かれる。

その後をヴェリウスがついてき、結界の境目で遊んでいたショコラが気付いて追い掛けてきた。


「主様ぁ、おウチに入るのですか?」

「うん。ショコラの部屋も案内するからついておいで」

「はいっ」


ショコラは素直に返事をするとヴェリウスの後ろに行き、ポテポテとついてくるので可愛らしいなと思う。

ロードは特に気にすることなく歩き家の中に入った。


「ショコラの部屋は2階の私の部屋の隣ね」


そんなに大きな家ではないので、2階には3部屋とクローゼットしかない。当然その内の2部屋は私とロードが使用しているのでショコラがウチに住む事によって3部屋全てが埋まる事となる。

ヴェリウスは1階の和室を自身の部屋にしているので全部屋使用状態になるのだ。

ちなみに階段を上がってすぐの部屋がロード。その隣が私の部屋で、ショコラは一番奥の部屋となる。普通なら音漏れが気になるが、そこは防音にしてある。隣のオッサンの部屋からの音漏れなど恐ろし過ぎるからね。


「主様のお隣!! 畏れ多い事ですが嬉しすぎます!!」


ドラゴンの時は出来るお姉さん系だと思っていたけど、人型になると途端に幼くなるんだなと思いつつ、お風呂やトイレの場所も教えるが、ロードがキッチンに向かって足早に歩くのできちんと教えられない。


「ロード、降ろしてもらえるかな?」

「薬を飲んだらな」


そう言うと台所に予備で置いていた薬を棚から取りだし、ご丁寧に蓋まで開けてくれて飲まされた。

別段変わった感じはないので風邪ではなかったのかもしれない。しかしこの薬、自分が作ったものながら美味しいな。ジンジャーエールの味だ。


「これで大丈夫だな。んじゃ寝るか」


等と言いながら一向に降ろす気配がない。マズイぞ。このままでは寝室に連れ込まれるかもしれない。


ヴェリウスは『ミヤビ様おやすみなさい』と言って和室に入って行ったし、ショコラは子供だからこのピンチがわからないだろう。どうする!?


「主様、“オフロ”と“トイレ”って何ですか?」


ショコラからすれば恐らく初めて聞く単語だったのだろう。首を傾げつつもじもじしながら私を見る様が可愛すぎる。

しかしナイスだショコラ。よくこのピンチを乗り切る材料を提供してくれた!!


「よし、説明するね! ロード、ちょっと降ろしてくれるかな」


ロードの目は据わり、こちらに何か言いたげだったが舌打ちをしてゆっくりと降ろしてくれた。


だから舌打ちは止めろ。


「ありがとう。ショコラ、こっちについておいで」


ロードにお礼を言って、ショコラに声をかける。

ショコラは頷いて私の後についてきた。ロードも部屋に戻らずついてくるが放っておく事にする。


トイレやお風呂の説明をすれば何とか分かってもらえたので、ショコラにはお風呂へ入ってもらう事にした。

さすがにお風呂までロードは連れていけないので、自分の部屋に戻ってもらったが、立ち去る時に「次は俺と一緒に風呂へ入ってくれねぇと、嫉妬でどうにかなりそうだ」等と言われ血の気が引いた。


別にショコラと一緒にお風呂に入ったわけじゃないのに。

ただシャンプーやコンディショナーの説明をしただけだ。なぜ脅されなければならないのか。


ショコラがお風呂に入っている間に歯磨きやらをしてリビングに行くと、部屋に戻ったはずのロードが1人酒盛りをしていたので驚いた。


「1人で酒盛りする位なら隊舎に行ってくればいいのに」


隊舎なら酒盛りに付き合ってくれる人もいるだろうしと言えば、ロードに腰を引かれて膝の上に座らされた。


「野郎と酒盛りして何が楽しいんだよ。俺ぁミヤビをそばに酒盛りする方が良い」


お酒に強いのか、すでに酒瓶一本を開けているにもかかわらず顔色ひとつ変えていないロードは、コップにまだ半分以上残っているお酒を一気に煽ると、コップを置き自分で注ぎだす。


「お酌しようか?」


ロードの手が止まり、驚いた顔でこっちを見られた。


「え? 何か変な事言った?」

「いや…頼むわ」


ほんのり頬を染めてそう返事をすると、自身で注いだものを一気に飲み干し空のコップを差し出してくるので、そこへお酒を注げば何故だかちょっと緊張したような表情で、さっきとはうって変わりゆっくりと杯を傾けている。


「……おい、じっと見られると飲みにくいんだが」

「あ、ごめん」


注目してしまっていたらしい。そりゃ飲みにくいよねと思いつつ酒瓶に目を移す。

作りの粗い、少し歪んだ茶色い瓶は無骨で、ロードのイメージにあってるなと思う。しかもワインじゃなくてビールっぽいお酒な所がまたロードらしい。


「ミヤビ」


頭上から声をかけられ顔を上げる。


「ん? もう一杯い……」


気付けばロードの顔が目の前にあり、口の中にお酒の味が広がっていた。

しかもぬるっとしたなにかが口の中に入ってきて…っ


苦しいっ 死ぬっ 口の中に何入れられた!? 明太子丸々入ってきてない!? そんなに口一杯に入れられても逆に食えんわ! ちょ、一回出して! 明太子出して!


パニックになっていたらやっと明太子を出してくれたのでほっとして息を吐いて吸い込む。


「はぁ…もう、何すん、の…」


ロードの顔を見れば、真っ赤になっていて…目がとろとろにとろけていた。


「へ…? 何で…」


何かBLマンガでこんな顔した攻めを見た記憶が…。

色気が…っ オッサンの色気が半端ねーー!!!!


「ミヤビ…」


そんな顔で愛しそうに名前を呟かれるとこっちが恥ずかしくなってくるんですけどぉぉ!?


「可愛いな…」

「うぉぉ…っ」


むず痒い事を言われて変な声が出てしまった。


ロードの指が頬を撫で、唇をなぞる。

背中がゾクゾクして仰け反ると、腰を引かれてその腕に捕らわれた。

もう一度ロードの顔が近付いてきて……


「主様ぁ!! オフロから出ましたー!! シャンプーの甘い香りが美味しそうでお腹空きますねー!!」


ショコたんーーー!!!!


「あら? 何だか美味しそうな匂いがしますね~」


くんくんと鼻を鳴らしてこっちへやってくるショコラちゃんに、空気クラッシャーショコたんの二つ名を捧げたい。

ナイス! ナイスやで~ショコたん!!


ロードの顔をチラリと見れば、遠い目をしていた。


「あっ この瓶から匂います。主様ぁ、これ何ですか?」


お酒の入った瓶を指差すショコラにヘラリと笑い、お酒だからショコラにはまだ早いかなぁと遠ざけておつまみのチーズを口に放り込んでおいた。


「ふぁ~美味しいですぅ~」


蕩けた顔でチーズをむしゃむしゃ食べるショコラは子供らしくて可愛い。


遠い目をしたままのロードは、コップをガシッと掴むと凄い勢いでお酒を飲み干した。


「さ、さ~てと、私はそろそろ失敬させてもらいましょうかね~」


恐る恐る膝から降りようとするが、腰に回った腕を離してもらえず壊れたロボットのようにギギ…っと顔を上げると、口だけ笑って目が笑ってないロードの顔にぶち当たり、ついヒッと声を上げてしまった。


「何言ってんだぁ? 酌してくれるって言ったばかりじゃねぇか。もうちっと付き合えやミヤビちゃん」


絡まれたー!! ヤクザに絡まれたよー!!


「ヴェ、ヴェ、ヴェリウスーーーッッ」


半泣きで叫べば、すーっと続きの扉が開き、ゆったりとやって来たヴェリウスにロードが舌打ちをする。

お前は舌打ちばっかりだな。


『ミヤビ様、お任せ下さい。さて人族の男よ、今日こそ貴様を飲み潰してくれるわ』

「はっ 俺ぁ酒にゃめっぽう強いんでねぇ。また勝負はつかねぇと思うぜぇ」


ヴェリウスとロードの間に火花が散り、ロードの膝からやっと降ろされた私が呆然と見ていると、ロードがどこからか酒瓶を大量に持ってきて机の上にドンッと乗せた。


キョトンとしているショコラをこっちにおいでとリビングの扉まで連れていき、2つのジョッキにだばだばとお酒を注いでいるロードを最後に、逃げるように2階へと上がった。




翌日、私の部屋の前で二日酔いで倒れているロードと、リビングと自分の部屋の間に同じく二日酔いで倒れていたヴェリウスを発見して溜め息を吐いたのだった。


飲み比べは程々にしようね。

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