301.最終回は突然に
ルーベンスさんに言われ、意気消沈しているロードと同じように耳と尻尾をたらしているヴェリウスを見れば、先に気を取り直したヴェリウスが、
『助産師のスキルは、深淵の森の魔獣数人にマスターさせました』
と教えてくれた。
ならば深淵の森に転移すればいいかと思ったが、やはり不安なのでルーベンスさんにも来てもらえるようお願いした。
「……私は人間なのだが? 神王様の神域に入るなど…」と躊躇っていたが大丈夫だと説き伏せ(かなり嫌がっていたが)、特にヴェリウスやロードから文句も出なかったのでそのまま転移したのだ。
またジクジクと、生理痛のように痛みだしたお腹と腰にげんなりしながら、ロードに抱き上げられて村の一番大きなホール(村人の集いの場)に運ばれる。
何故ホール!? と思っていると、豪華な出産室がその一角に作られており、助産師のスキルをマスターしたであろう、いつも天空神殿でお世話してくれる珍獣3人娘が待っていた。
「安産をお約束いたします!!」
「超安産です!!」
「安心・安全・スピーディーです!!」
どこの標語ですか? というセリフを吐き、白い服に身を包んだ3人娘はかなり気合いが入っている。
「…女とはいえ、ミヤビの下半身を見られるなんて耐えられねぇ…ッ」
「第3師団長、つがいならば耐えなさい」
私がその豪華なベッドに横にされた途端、ロードがこれから死地に向かいますみたいな顔をして呟いたのだ。それをルーベンスさんが至極真面目な顔をしてたしなめている。
恥ずかしいから止めてほしい。
「みーちゃん!! もう産まれた!?」
そこへ息を切らせて飛び込んできたのはトモコとショコラで、そんなすぐにすぐ産まれないだろうとツッコミたかったが、痛みで呻く事しか出来ない。
その後もジュリアス君やランタンさんなど色んな神々がやって来たが、私に負担がかかると追い出されていた。
マカロンなどはホールに顔をねじいれようとして怒られ、首を傾げていたので相変わらずおバカだな。とあきれ半分、面白さ半分で一瞬だが痛みが和らいだ。
そこからは激しい痛みで記憶が飛んでいるのだが、朦朧とする中でとにかく力んだ事と、自分の下半身が光っていた事だけは覚えている。
◇◇◇
「「オギャア!! オギャア!!」」
まるで恐竜のような泣き声に驚いて、朦朧としていた意識が浮上する。
「さすが神王様の御子様達ですわ!!」
「産湯も、へその緒の処理も不要なんて!!」
「とってもお元気ですよ!!」
珍獣3人娘がそう言って、おくるみに包まれた赤子を二人、私の枕元(両サイド)にそっとおさめてくれたのだ。
「え、双…「産まれたのか!!!!?」」
バタバタと足音をたてて駆けてきたロードに話を阻まれる。その後ろにもヴェリウスやトモコ、ショコラにルーベンスさん。ジュリアス君やランタンさんもついてきているようで、駆けてくる足音が重なって地鳴りのようだ。
ベッドの周りはカーテンで囲まれており、中は見えないようになっているのだが、ロードはそのカーテンを引きちぎるように開け、私と私の両サイドにいる赤ちゃん達を見て目を丸くしていた。
「ふ、二人居るじゃねぇか!? 分裂したのか!?」
「分裂じゃなくて双子だよ!!」
そんなわけないでしょうがと呆れた目でロードをみていれば、
「いえ、間違いではございません」
「御子様方は、産まれた時はお一人でした」
「それが外に出てきた刹那、お二人になられたのです」
3人娘はそう自信満々に言い切り、さすが神王様の御子様です!! と今度は3人同時に発したのだ。
「はい? 本当に分裂? にしては似てないし…性別も違うよね??」
そう。この赤ちゃん達は男女の双子で、女の子は彫りの深い外国人顔、男の子は完全に私似ののっぺりした日本人顔であった。
「ふ、双子……っ 双子かぁ…ッ」
笑っているのか泣いているのか。ロードはありがとうなと呟いて、私ごと赤ちゃん達を抱き締めたのだ。普段よりも優しく。
「キターーーーーッ 双子ちゃん!! みーちゃんの子供は双子ちゃんだーーー!!」
ロードとの、少し感動的な場面はトモコの声で遮られる事となった。
トモコが騒ぎ出したおかげで、ヴェリウスも他の皆も騒ぎ出し、それが村に伝わって大騒ぎになったのだ。
「「ふぇっ、ふぇぇ~」」
大人達の騒ぎに眠っていた双子が起きて、ふぇ、ふぇと泣き出した。涙は出ていないから嘘泣きか? と思っていたら、ルーベンスさんがある程度成長してからでないと涙は出ないのだと教えてくれた。
「かっっわいいな~!!」
すでにメロメロで、赤ちゃん達を抱き上げているロードにぎょっとする。潰さないでよ!? とつい叫んでしまったのも仕方ない事だろう。
『ふむ…姫御子様はロードに似たか。皇子様の方がミヤビ様似とは、成長が楽しみだな』
「そうねぇ~。どっちも鬼神族なのかしらぁ?」
「分裂とは面白いな!! どうなってんだ?」
ヴェリウスとランタンさん、そしてジュリアス君はそれぞれ好きな事を言って、興味深そうにロードの抱いている赤ちゃん達を見ている。
「主様ぁ。お疲れ様でした~。ショコラとっても心配しましたよ~」
ショコたん!! 私を心配してくれるのはルーベンスさんとショコたんだけだよ!!
思わずショコラを抱き締めたら、思ったより喜んでくれた。
ルーベンスさんは、世話人が居ないと聞いて驚いたが、問題ないようで何よりだとほっとしていた。
この人には色々迷惑を掛けてしまったが、一番知識と良識があるのだから頼るしかないだろう。
赤ちゃんの育て方もわからないし、これからも頼ろうと心に決めた。
しかし、私の産んだ赤ちゃん達を嬉しそうにあやす、沢山の人や神を見ていて不思議な気持ちになるのだ。
人間不信になって、殺されて、転生したらたった一人で森に居た。
もう誰も信じないと、独り生きていこうと決めて、その通り2年間は誰とも接触しなかった。
それがいつの間にか周りには人…いや、人外が集まってきて。
臆病で我が儘で、面倒くさがりな私に夫と赤ちゃんまでできた。
予想外な事は多いけど。むしろ予想外な事しかないけれど、こんな騒がしい生活も悪くはないだろう。
とはいえ、ゴロゴロするのも昼まで寝るのも止められるものじゃあない。
子供達が大きくなったら、そんな私を見て言われるだろうか。
いい加減にしろよズボラババァって。
それとも、
ズボラに過ごすのも良いもんだよね。
って言ってくれるかな?
どちらにしても、返事は決まっている。
「このズボラライフで世界は出来たんだよ」
長々と続けてまいりました【異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ】。
とうとう完結致しました!!
ずーーっとお付き合い下さった皆様、本当に長いお話に付き合っていただきありがとうございました!!
皆様の応援のお陰で無事完結することができました。
本当にありがとうございました!!
もうちょっと物足りない、気になるアレはどうなった!? 等々思って下さっている方、実はズボラ2を2021年から更新していこうと考えております。
お忘れでなければ、是非来年もお付き合いいただければ幸いです。
それではまた、異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ2でお会いできる事を楽しみにしております。




