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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第5章

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296.結婚の挨拶9


最初の精霊(・・・・・)である私は、アーディン様のお力の他に、神王様のお力も加わって生まれました。ですから、私は人族の眷属の中で唯一、主をお諌めできる立場にあったのです」


そういえば、神族の最初の眷属は私も力を貸したっけ。と思い出していれば、オリバーさんは拳を握り話を続けた。


「アーディン様が神王様を追って異界に渡った事は存じておりました。ですので、私はアーディン様に代わり人族を守るお役目を全うする為、世界各地を巡っておりました。

不思議な事に、ここルマンド王国は魔素の減少速度が他より遅く、こちらへ移住させた者もおりました。

……あれはいつだったか。そんな事をくり返していると、私はロヴィンゴッドウェル家の者達に出会ったのです」


学校の授業を聞くように集中して話を聞いていると、オリバーさんが意外な事を口にしたのだ。


「ロヴィンゴッドウェル一族は皆人が善すぎるようで、しかも頭の中も筋肉で出来ているものですから、代々私を精霊と知る事もなく親交は続きました。今の主、グレッグ・ハーヴィー・ロヴィンゴッドウェル様もそんな中出会ったのです。

そんな折りに、異界で神王様が見付かったとアーディン様より報告があり、私は天にも上る思いで喜びました。

しかし、神王様を見つけた後もこちらに帰って来る様子のないアーディン様に、人族が蔑ろにされているような気がした事も事実でした。神王様を捜索する期間があまりにも長過ぎたのです。

あろうことか、主であるアーディン様に…私は不信感を抱いてしまいました」


後悔するように唇を噛み、眉をひそめるとコクリと喉を上下させて、大きく息を吸い込み吐いたオリバーさんは、また冷静になった声で続けた。


「その気持ちを素直に伝えれば良かったと、今は後悔しております……。

そんな時ロヴィンゴッドウェル家にロード様がいらっしゃったのです」


ロードを初めて見たオリバーさんは、「何故だか分かりませんが…この子供を守らなければならない。私が生まれたのはそれを成す為なのだ」と、そう思ったのだとか。


それを聞いたロードはその瞳を見開くと、今度はいぶかしむように眉間にシワを寄せる。


「私はすぐ、グレッグ様にロヴィンゴッドウェル家で働かせて貰えないかと頼み込み、執事として仕える事となりました。

今でも何故、あのような事を思ったのかは分かりませんが…。それから私はロード様を陰ながらずっと見守ってまいりました次第です」


多分それは、ロードが私の…神王のつがいだと無意識に気付いたからではないだろうか。

ルマンド王国にあの水晶があった事といい。多分“世界”が神王のつがいに“守り”を用意したという事なのだろう。


「暫くして、アーディン様がつがいを見つけたと連絡が入りました。そこからです。あの方がおかしくなっていったのは。

その頃になると、私もさすがに何もしなかったわけではございません。何度もご忠言致しましたが、私共の間には溝が深まるばかりでした。

そしてついに、私はアーディン様から放逐されてしまったのです」


放逐……。

だからアーディンの精霊の中にオリバーさんは居なかったのか。


「まさかアーディン様が……っ 主が神王様を手にかけるなどと…ッ 私がっ 私が、放逐されたとしても諦めなければ……っ」


どこから得たのか、私が地球で死んだ事まで知っていたオリバーさん。

その情報を知る者は神々でも一部だけである。


「……神王様が復活し、二度もかの御方を手にかけようとしたなど信じたくはありませんでした。

そして神王様の手によって人族へ堕とされたなどと」


考えを振り払うように首を振り、ロードと私をもう一度見たオリバーさんは、


「ロード様が神族のつがいになり、ご自身も神の御一人として存在される今、私はもうロヴィンゴッドウェル家に居る必要はないと判断致しました」


と言いましても、辞する事は神王様が復活される前から考えていた事ですが。と自重するように小さく笑ったのだ。


「おい…っ 辞するって、お前……」


オリバーさんの決意を聞いたロードは驚き、瞳を瞬かせて絞り出すように声を出した。


「私は、アーディン様を探しに行こうと思います」


今度こそ、おそばに━━━…


もう後悔はしたくないのだと、そんな瞳をしたオリバーさんが私達の前に跪いていたのだ。

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