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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第5章

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291.結婚の挨拶4


「ロード!! 待っていたぞ!!」


日が沈んでそう経たないうちに、家族用であろう居間に呼ばれて足を運べば、そこに居たのはビッグフットだった。


「親父っ 止めろ!! 抱きつくんじゃねぇよ!!」


ビッグフットに抱きすくめられるゴリラの図…。


親子の感動の再会を眺めていると、ゴホンッとヴィヴィアンさんからわざとらしい咳が聞こえ、ビッグフットがビクリと肩を震わせた。


「大旦那様、ロード様のつがい様の前ですよ」

「お、おおっ そうだった、そうだった!! 貴女がロードのつがいの精霊様か!! 私はこの薄情なバカ息子の父で、グレッグ・ハーヴィー・ロヴィンゴッドウェルという!!」


ロードが解放され、力強く自己紹介されて戸惑う事しか出来ない。が、とりあえず自分も挨拶しなくてはと背筋を伸ばす。


「初めまして。ロードのつがいでミヤビと申します。結婚の挨拶が遅れました事、お詫び申し上げます」


ペコリとお辞儀をし、反応を待つ。

私は貴族ではないのでこれ以外の挨拶が思い浮かばないのだが、お義兄さん達への挨拶もおかしくなかったとロードに言われているので、間違ってはいないはずだ。


「おおっ 精霊様に頭を下げさせてしまうとは申し訳ない!! 挨拶に関しては様々な事情があったと理解しているので気にする事はない。顔を上げてくれ!!」


どうやら気にしていないようなので顔を上げると、ビッグフットの隣には、上品なご婦人の姿が在る事に気づく。

50代位のマダムだろうか。優しそうな雰囲気の美人だ。


その女性と目が合って、優しげに微笑みかけられこちらもヘラリと笑えば、ビッグフットが気付いて紹介してくれた。「私の愛するつがいだ」と。


つまりロードのお義母さんという事だ。


「騒がしい家でごめんなさいね。(ワタクシ)はソフィア・アディー・ロヴィンゴッドウェル。ロードの母ですわ」


ソフィアさん…何とも若い奥様だ。あれ? でもお義兄さんが50過ぎ位だったよね? 人族はつがい以外とは子供はもうけられないから…え? この人少なく見積もっても70間近!?

ビッグフットもある意味年齢不詳だが、お義母さんの方は美魔女だった。魔族かとも思ったが、人族という事はロードからあらかじめ聞いていたので美容にこだわりを持つ方なのかもしれない。


この後お義兄さんのお嫁さんも紹介してもらい、食卓を囲む事になったのだが…………



ご飯が激マズッッ!!



「まぁ、ミヤビ様は少食なのねぇ」


心配そうに見てくるご婦人方だが、今目の前にあるこの肉…血抜きもちゃんとしていないのか生臭い!! 下処理が上手く出来ていないので食べれたもんじゃないのだ。


チラリとロードを窺うと、ロードも私と同じ反応だった。

しかし言えるわけがない。不味いなどと。


「あー…身体が生まれつき小さいもので、食事量もそれに比例すると言いますか…? 決して美味しくないとかそういう事ではなく、その、そう!! 肉の新鮮さをビシビシ感じるであります!!」

「ハッハッハ!! そうだろう、そうだろうっ この肉は獲れたてだからなぁ! ロードの好物でねぇ、幼い頃はバクバク食べていたものだよ!!」

「そうなんですか~あ、ロードこれも食べる? 好物なんでしょ?」


そっと肉が入った皿をロードに寄せると、すごい目で睨んできたのでさっと顔をそらしたのだ。


「あらあら。仲が良いのねぇ。でもミヤビ様もきちんと食べなくてはいけませんよ。お腹にはロードの子供もいるのだから」

「そうですわ。ミヤビ様。沢山食べねば子は育ちませんもの」


ロヴィンゴッドウェル家のご婦人方の、たんと食えの言葉にロードがニヤニヤしている。

助けろよ!? つがいだろ!? とは思うが、このおっさんはこういう奴だ。


「皆さんがもてなしてくださるので、もうお腹がはち切れそうにいっぱいデスワ。ホホホ」


「ホホホじゃねぇよ。何だその喋り方」という目でロードが見てくるが、もう限界だ。肉の生臭さと獣臭さに吐きそうである。


「もしかしてミヤビ様はつわりが酷いのではありませんか?」


ヴィヴィアンさんが私の顔色に気付き、そっと声を掛けてくれたので、つわりなど今の所欠片もないが勢いで頷いてしまう。


するとヴィヴィアンさんはお義母さんに耳打ちして、お義母さんが大変だと退室を許してくれたのだ。

その際ロードもここぞとばかりに付いてきたので睨んでおいた。




「いや~あんなクソ不味いもん久々に食ったわ」

「好物なんでしょ。私の事はいいから食べておいでよ」

「本気で言ってんのか。ガキん頃は食うもんがなかったから、何でも食ってたに決まってんだろ」


ソファにぐったりもたれている私を膝の上に乗せ、ミヤビの機転で助かったとごちるロードに背を預けて気持ち悪さが無くなるのを待つ。


「まぁ、わざとじゃねぇから許してやってくれ」

「分かってるよ」


優しくて明るくて、良い家族だと思う。

多少脳筋ではあるが、そこはこのゴリラの家族なのだからと頷いていると、コンコンとノックがして扉の外から声を掛けられた。


「ロード様、ミヤビ様、お時間をいただいてもよろしいでしょうか」



その声は、件の執事……オリバーさんのものだったのだ。



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