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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第2章

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29.野良ドラゴンVS箱入りドラゴン


「ロード?」


すぐに私を抱き寄せたロードは、険しい顔のまま窓に近付き外を見る。

私には暗すぎて何も見えないが、この世界の人間は夜目もきくのか、ロードには何かが見えているらしい。

警戒している様子で目付きが普段よりも鋭くなっているのだ。

体格もだが、身体能力が地球人とは明らかに違う事を改めて実感する。



ヴェリウスはすでに庭に出ているようで、外から彼女の鳴き声が耳に届く。



ざわざわと、木々が激しく擦れあっている音が耳に届く。どうやら風が強く吹いているらしい。


何だか不気味さが増してうすら寒い気がしてくる。


「ロード、何かいるの?」


「こっからじゃよく見えねぇが、ありゃ……」


睨むようにじっと見ているので、ヤバイものでも来たんじゃないかと緊張してきた。




「ミヤビ、ちょっと行って来るからオメェはここに居ろ」


「え!? 外に行く気!?」


「犬っころもいるし大丈夫だ。オメェは念のため家の中に居ろよ」


ロードは私の頭をぐりぐり撫でると玄関に向かい、きちんと靴を履いて外へ出て行った。

ボサボサになった髪を撫で付けると、ロードの言い付け通り外へは出ず、急いで2階へとかけ上がる。


何かが居るらしいので、魔獣達も集まってくるだろうし、2階からならよく見えるだろうと考えたのだ。




自身の部屋へ入り窓を開けてベランダへ出るが、やはり真っ暗で何も見えない。しかも結構な風が吹いているようで、あっという間に髪がぐちゃぐちゃだ。


とりあえず暗視出来るように願い、風の影響も受けないよう結界も強化する。

すると視界がクリアになり、夜なのにはっきりと見えるようになった。


よくテレビで目にする暗視カメラの映像よりもよりクリアに見える。色まではっきり分かるアニメの夜のシーンのような感じだ。



あ、ヴェリウスとロードが見えた。



私の部屋は家の南側に面しており、丁度リビングの上に位置している。

3ヶ所ある部屋の窓のうち、2ヶ所は南側にありもう1ヶ所は西側にある。西側の窓は出窓になっているが、それはどうでもいい。


今開けているのは南側の窓でそこからは畑がよく見える。その畑の奥に1人と1匹の姿が確認出来た。


結界外に出ているようで、何故か空を見上げている。


1人と1匹の目線を追い、同じように見上げるとすぐに理由が分かった。




森の大木よりも高い場所にあったのは、鋭い牙に赤黒い、蛇のような長く伸びた舌と、ゴツゴツとしたワニのような緑黒の皮膚。ギョロリと光る鋭い目だった。


顔の周りには角のようなものがいくつも生えている。


その後ろにチラチラ見えるのは、ばかデカイ蝙蝠のような羽だ。



……何だかこれの小さいバージョンを見た事があるぞと思考を巡らせる。


そんな時、3階建てアパート位になった元トカゲ型魔獣、現ドラゴンの姿が見えてハッとした。

どこかで見た事があると思ったら、



あのデッカイの、“ドラゴン”だ!!!!




大きさは深淵の森ウチのドラゴンよりももっとデカイ。5階建てのマンション位ありそうだ。

それにウチの子より顔もデカくてゴツい。

色だってウチの子が薄い水色なのに対して苔のような深い緑に黒が混ざったような渋い色だった。


ウチの子が箱入りドラゴンなら、ソイツは野良ドラゴン。というような外見をしている。



その野良ドラゴンは、箱入りなウチの子に目を付け、グルル…と唸りながら顔を近付けていく。


しかし次の瞬間、箱入りドラゴンが野良ドラゴンの首に噛みついたのだ。




グ、ギュ…ギャア゛ア゛ア゛ァァァッ!!!!




まるで恐竜映画のような咆哮が夜の森に響く。



痛そうに首を振る野良ドラゴンだが、噛みつき亀のごとく離さない箱入りドラゴン。


息の根を止める気だなとその心意気を感じた。



やっとの事で箱入りドラゴンを振りほどいた野良ドラゴンは、首から血を流しながらも距離を取り、様子をうかがっている。


ドラゴンの血の色も赤いのだと初めて知った。


箱入りドラゴンの方はというと、足元にいるヴェリウスとロードに向かって何かを伝えているようだ。

ニュアンスとしては、ここは自分に()らせてくれと言っているのではないかと思われる。


その証拠にヴェリウスとロードが後退し、結界内に入ってきたのだ。


離れた所で1人見ているのも何だったので、ヴェリウス達の所へ転移する事にした。




「一体何がどうなったの?」




1人と1匹に声をかければ、驚いたように振り向いたヴェリウス達。

驚かせるつもりはなかったが、あまりにも機敏に振り返るものだから、こっちの肩がビクリと跳ねた。



『「ミヤビ(様)!!!?」』



声を揃えて名前を叫んだので仲が良いなと思いつつ近付くと、フワリと身体が浮き、当然のようにロードに抱き上げられる。


「家の中に居ろって言っただろうが」


『結界内なので安心ですが、あまり歩き回らないようお願いします。何かの拍子に結界外へ出てしまう事もミヤビ様でしたらあり得るのですから』


2人から同時に注意されいたたまれない。


というか、ヴェリーちゃんそれはどういう意味だ。



「それより、あのドラゴンは何?」



野良ドラゴンを指差すと、ヴェリウス達は野良ドラゴンを振り返り、遠い目をしてため息を吐いた。


『魔素で満ちた世界で復活を果たしたドラゴンの一匹のようですが、より濃い魔素に覆われた深淵の森へ移住して来たようなのです。しかし…』



ヴェリウスの言葉が途切れるので首を傾げる。



「何でもあの水色のドラゴンに一目惚れしたらしくてなぁ。口説こうとして反撃にあってんだとよ」


苦い顔をしてヴェリウスの後に続けたロードは、他人事とは思えないのだろう。




「一目惚れぇ?」




そんな面白そうな事を聞いたら興味が湧いてきたんだけど。ドラゴンの恋愛ってどんななの?


目を輝かせながらドラゴン達を見れば、体格差は歴然にもかかわらず、もの凄く弱気になっている野良ドラゴンと、今にも食い殺さんばかりの箱入りドラゴンの姿があったのだ。




うん。こりゃダメだな。


野良ドラゴンよ。諦めなければ本気で()られるぞ。

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