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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第5章

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282/303

280.送迎はまさかの…


トモコの後方に待機している送迎バス(・・・・)を見て、一様に驚いているツアー客。

皆が口を開けたままバスを凝視している姿は何だか見ていて面白い。


しかしそれも無理はない事だろう。この世界に車は存在していなかった。今も地上を走っているのは馬車で、自転車さえないのだ。

それが突然大きな鉄の箱を見せられ、しかも動いているとなれば驚くしかない。


見た目はロンドンバスで、イギリス風のエルフ街と相まってますますハリーポッタ○色が強くなっている。

気分が高揚する光景だ。


「それではこちらに乗って下さ~い」


トモコとショコラに促されるまま、困惑しながらも乗り込むツアー客は素直な人が多いようだ。


バスの中は地球の高級な観光バスという感じで、椅子もなかなか座り心地が良い。

運転席にはこれまた美形のお兄さんが座っているが、エルフではなくウチの珍獣の一人のようだ。


「これは“バス”と言って、皆様をここから宿まで運んでくれる乗り物です。まぁ馬車の大きいバージョンのようなものだと思って下さい。この“バス”は今日から3日間、宿、各バス停、駅を回送していますので、行きたい所があればご利用ください。詳しくはこれからお配りするパンフレット(・・・・・・)に書いておりますので必ず目を通して下さい」


バスが動き出す前に、ツアー客へパンフレットを配るショコラ。ロードにも何故か配っている事に首を傾げる。


「ちょっとショコラちゃん、何でロードに渡すのかな?」

「ロード様はツアー客として来ているそうなのでお渡ししました~」

「え、本当にツアー客として来てるの!?」

「はい。ミヤビ様はロード様専用のガイドさんだとも聞いてます~」


いや、誰から!?


顔に出ていたのだろう。トモコ様から伺いましたと言われ顔がこわばった。ロードはやはりニヤニヤとこちらを見ている。


「信じられない!! 浮島(こっち)に来る前に怒って帰ろうとしてたのは芝居だったの!? 本当は旅行を満喫する気満々だったと!?」

「俺に内緒にしてた事ぁ勿論怒ってたぜ? けど、ツアーに関しては一応仕事で来てんだよ」


ロード曰く、他国民をルマンド王国経由で浮島ツアーに連れて行っている為、何かあってはルマンド王国の責任になるので、師団長が自ら護衛をするという体裁をとったのだとか。

そういえばルーベンスさんもそんな話をしていたなと思い出す。


「のわりにはお酒飲んでるけど?」

「ビールなんぞ酒のうちに入るかよ」


お巡りさん、コイツです。


心の中のポリスに通報するが捕まえてくれるはずもなく、リクライニングの椅子をゆったり倒してふんぞり返っているロードに殺意が湧く。


動き出したバスの中、トモコがツアーガイドさんらしくマイクを手に持ちエルフ街の説明を始めた。

最初は動く鉄の塊(車)に驚いていたツアー客だが、トモコの説明に段々引き込まれていき、すぐ夢中になって瞳を輝かせているのだ。

当然のように道を走る窓の外の車達に諦めの心境に至ったのかもしれないが。


街の説明、バス停の場所、お店、車等の説明を聞いているとあっという間に宿の前へ到着した。


バスが停車したので皆がトモコを見ると、


「はーい、宿に到着で~す。お忘れ物のないようにお降り下さ~い」


降りるよう促し、先に降りたショコラが手を振ってこちらです~と待っている。完璧な連携に脱帽だ。


皆は荷物を持って立ち上がり、恐る恐る外へと出始めた。


「ミヤビお姉ちゃん、私達本当にここにお泊まりしてもいいの?」


私がロードに抱えられてバスを降りた後、コリーちゃんが少し不安そうに声を掛けてきたので頷く。


それもそのはず、バスを降りた先にあった宿はちょっとしたお城のように大きな建物だった。


「ここお城だよね!? エルフの王様が住んでる所でしょ!?」


コリーちゃんの声に周囲がざわめく。


「エルフの王様は別の場所に住んでるよ~」


だから安心してね~等とトモコがお城…ホテルへと入って行く。ツアー客は戸惑いながらもトモコについて行き、コリーちゃんはお姉ちゃん…と上目遣いで見てくるので、「大丈夫、宿もすっごく楽しいよ」とついて行くように促したのだ。


「俺たちのガキもあんな素直なガキに育ってくれりゃあいいな」


両親にかけより、一緒に宿へ入って行くコリーちゃんを眺めていると、ロードはそう呟いて私のお腹を見つめ目を細めた。




ホテルの中に入ると、光るシャンデリアに重厚感のある内装、広い室内とまさにお城のようで、ツアー客は顔を引きつらせキョロキョロと落ち着きなく周りをうかがっている。


「皆様、お待ちしておりました」


そこへ美声を響かせながら登場したのは、エルフ族一の美貌を持つ男性。

そう、デリキャットさんだった。

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