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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第5章

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279.満喫


「モピットの幼虫っていやぁ高級食材じゃねぇか。幻の珍味って言われてる虫だぜ」


ロードがそう言って、興味深そうにモピットの唐揚げ屋に近付いていく。

他のツアー客も瞳をキラキラさせながら、それぞれ興味のある虫…路面店に入って行くのだ。


「え゛、嘘でしょう? 虫だよ!? ちょっと!! 店に行くのは良いけど、私を置いて行って!! むり…ムリムリムリ!!」

「んだよ。虫は貴重な栄養源だぜぇ? 見た目は悪ぃが旨いもんもあるしよぉ」

「それは否定しないけど、私は虫以外で栄養を摂ってるから大丈夫!! う、ヒィィ!!」


ズンズン進んだロードは、ダンダンダンッと迫力の包丁音を響かせている店主に、「一つくれ」と声を掛けたのだ。


「はいよ!! って、ミヤビ様にロード様!? し、失礼しました!!」


私達に気付いた店主は背筋を伸ばして直立不動になり、謝罪と共に跪こうとした。


「いい。俺らも観光客に紛れてんだわ。だから一つくれ」


ショコラに渡された腕輪をいつの間にか付けていたロードは、それをレジ前に掲げる。

店主は慌ててレジを操作すると、ピッと音がして会計が終わった事を知らせたのだ。


「ありがとうございました!!」


商品を渡し、90度以上のお辞儀を繰り出して私達を見送る様を死んだ目(元々の死んだ目よりもさらに死んだ)で眺める。


モピットの幼虫の唐揚げは食べ歩きできるようコンビニの唐揚げが入っているような紙の箱(より少し大きめのもの)に入っており、ぶつ切りにしてあるおかげで一見芋虫とはわからない。中からシチューのような白いトロリとしたクリームが出てきており、虫だと知らなければ美味しそうに見える。


しかし私は知っている。それはデカい芋虫だという事を!!


「旨そうだなぁ!」


サクッと、あの揚げたてのそれはおいしそうな音をさせて食べたロードに、ひっと息を飲む。


「ッうっめぇぇ!! 本当に外はカリカリで中はトロットロじゃねぇか!! しかも唐揚げの衣がスパイシーで、中のクリーム状のもんがコクと甘味があって、ん~っっ 身に絡んで最っ高だ!! 酒がありゃ天国だな!!」


お前は料理漫画の登場人物か。モピットの唐揚げ屋の回し者か。

心の中て盛大にツッコミながら、何故か森アリの胡桃のキャラメリゼが売っている店に足を向けているロードに叫ぶ。


「何でそっちに向かってるの!?」

「あ? ミヤビは甘ぇもんが食いてぇだろうと思ってな」

「全然食いたくない!! 大丈夫!!」


全力で否定し何とか回避したが、周りを見ると皆嬉しそうに虫料理を食べている。

食糧難だったこの世界の人は、虫料理に抵抗は無いようだ。


「酒売ってねぇかな」

「エルフのお酒は果実酒だから、ロードには甘いかもね」


仕事をサボって午前中からお酒を飲もうとしているおっさんに冷たく言い放つと、果実酒ねぇ…と残念そうに表情を崩したロードは私を見てニヤリと笑う。


「ま、俺にゃ“ビール”があるからな」


無人のオープンカフェの椅子に私を降ろすと、ロードの手が空を斬りそこがパカッと裂けたと思ったら、そのまま裂けた空間に手を入れて何かを取り出したのだ。

裂けた空間はそのうちに元通りになり、ロードは空間から取り出したものを机の上に置いた。


「さぁて、飲むかねぇ」


嬉しそうに笑ったロードの目の前にあるのは、“瓶に入ったビール”であった。


「空間魔法を使える、だと!?」


いつの間に!? と驚いていると、ロードは嬉々として指で瓶の蓋を弾くように開け、ゴクゴクと飲み出したのだ。


「っかー! 最っ高だな!!」


サクッサクッと音をさせながらモピットの幼虫の唐揚げを食べ、ビールを飲むロードは幸せそうだ。


「皆さーーんっ これから皆さんを宿に案内しますので、一旦集まって下さ~い。宿に荷物を置いてから宿内の説明とエルフ街、そして各浮島の説明等を致します。そこからは自由行動になりますので、こちらでお買い物されたい方はそれからでお願いしますね~」


トモコがツアー客の集合を促しているのでロードを見れば、丁度唐揚げを食べ終わり、残りのビールを一気に飲み干してそばにあったゴミ箱へそれらを捨て、「行くか」と私の手を取った。


「何かロードが満喫してない?」

「旅行だろ。満喫して何が悪ぃんだよ」

「ツアーガイドとして来てるんだから、遊びじゃないよ」

「それはオメェだろ。俺ぁ客として来てんだからちゃんとおもてなししてくれよ。ガイドさんよぉ」


いやらしく笑ったロードは、私の腰を抱きながら撫で回してきたのでセクハラは禁止!! と撫で回す手を叩いて睨み付けた。


「ミヤビは俺専用のガイドだろ。特に夜はさぞかし俺好みなおもてなし(・・・・・・・・・)をしてくれんだろうなぁ」

「するかァァ!! バカな事言ってないで集合ッ」


すでに“送迎バス”がトモコの後ろに待機しているので早歩きで向かえば、ロードはニヤニヤと笑みを浮かべながらついて来たのだ。


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