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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第5章

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278.エルフ、本気出します!!


「キャアァァァァーーーー!!」


悲鳴が響き渡る中、まるでスカイダイビングでもしているかのように身体を大の字に開いたトモコが地上に向かって落下していく。

それを真っ青な顔で見ているツアー客は今にも倒れそうだ。


しかし、そんな彼等の目の前から、フッとトモコの姿が消えた。


「え!?」


誰が出したのか、そんな驚いた声が上がった次の瞬間。


「あ~楽しかった~!!」


震えながら、浮島の端で呆然と地上を見下ろしていたツアー客の後ろから、何かが降り立ったような音がして皆が振り返った。


「これが浮島名物、スカイダイビング!!」


じゃじゃ~んとポーズを取り、満面の笑みを浮かべたトモコに、皆が固まったのだ。


「……おい」

「違うって! あれは落ちても浮島に戻ってくる安全措置であって、決してアトラクションとして使用する目的はなかったんだよ!!」


私を懐疑的に見てくるロードに、違う、違うとぶんぶん首を振り、私じゃない!! トモコが勝手にやり始めたんだと言い訳する。


「さぁ、勇気のある方、やってみたいと思われる方はいませんか!!」


しかしトモコはさもアトラクションのように皆を煽り、ロードは益々私を疑いの目で見てくるのだ。とんだとばっちりである。

ツアー客の8割は完全に引いてしまっているし、残りの2割に至っては困惑すらしているわけだが、ここに一人の勇者が現れた。


「アタシやりたい!!」


はい!! と勢いよく手を上げたのはコリーちゃんだった。


「コリー!?」


コリーちゃんのお父さんが真っ青な顔で止めているがトモコは止まらない。


「オッケー!! じゃあ浮島の端っこに立って、私のスリー、ツー、ワン、バンジー!! という掛け声で飛び降りてね」


バンジーじゃねぇだろォォ!? 命綱すらねぇよ!!

女神のような笑顔で幼子に話す内容!! 危険を通り越して狂気だよ!!


「止めるんだコリー!!」


コリーちゃんの父親は必死の形相で止めているが、母親の方はその形相がツボに入ったのか爆笑している。

精神力2アップは人を悪魔に変えるのか。


「じゃあいくよ~!! スリー、ツー…」


地獄へのカウントダウンが始まった。

ツアー客は皆そう思っただろう。私ですら思った位だ。


「や、止めてくれェェ!!」

「ちょ、フフッ、止めてちょうだいその顔!! アハハッ 面白すぎるわ!!」


必死で声を上げるお父さんと、お母さんの笑い声が響き渡る中、


「ワンッ」

「「バンジーーー!!」」


トモコの掛け声でコリーちゃんが飛び降りたのだ。


「コリィィーーーーー!!!」

「アハハハッ もう、ヌードル!! だからその顔止めてってば!! ウフフッ」


きゃー!! と楽しそうな声を上げて手足を大きく広げたコリーちゃんは、地上に向かってぐんぐん落ちていく。と、やはり途中で消えて、ふわりふわりと落ち葉のような緩さでこちらに背を向け、浮島の上空からゆっくりと落ちてきたのだ。



「あーーっ楽しかったーー!! もう一回やりたーい!!」


背中からふわりと浮島に降りたコリーちゃんは、すぐに立ち上がって興奮したように叫ぶ。


「何だか楽しそう…」


誰かがそう呟いたかと思ったら、「私もやりたいです!!」と次々手が上がり、トモコがどうぞどうぞとダチョ○倶楽部よろしく進めれば、集団自殺かと言わんばかりに大人達が次々と身投げしていったのだ。


そして浮島の上空に現れては降ってくる。中には恐かったと足をガクガクさせている人もいたが、大概楽しそうに笑っているというカオスが生まれた。



「…ミヤビ」

「だから私じゃないでしょ!? トモコに言って!?」




トリミーさんとご主人のラブラブスカイダイビングで締め括られた安全装置の確認、という名のアトラクションは好評に終わり、いよいよエルフ街へと入る。


50名もの人を観光客として迎えるのは初めてなエルフ達。

最初は虐げられてきたエルフ族の歴史が頑なにそれらを拒んだのだが、デリキャットさんやアルフォンス君達若いエルフの説得を受けて、今回のツアーに全力を尽くしてくれる事になったのだ。勿論エルフ族だけでなく、他の人間達も勇気を振り絞ってくれた。


私としては、今回のツアーはエルフ達が他種族の人間への恐怖を克服して、今後世界中を自由に行動できるようになる為の治療の一貫だと思っている。


アルフォンス君の夢が世界中を旅する事だったように、エルフの中には自由に生きたいと思っている者もいるだろう。

そんな者達に、他種族が恐ろしいからと一生を浮島に籠って過ごして欲しくはないのだ。

勿論、私のようにインドア派ならば別だが。

とにかく、人生の選択肢は多い方が良いと思うわけだ。




しかし、全力を尽くすというエルフ達の歓待ぶりは、予想だにしない方向へ突っ走る事となる。






「さぁ! いらっしゃいませ、いらっしゃいませ~! おっ そこのお兄さん、エルフ街名物モピットの幼虫の唐揚げはどうだい!! 揚げたては外がカリッと中はトロ~リ、旨すぎて昇天間違いなしさ!!」


揚げられたばかりのデカい芋虫を、中華包丁のような包丁でドンドンドンッと勢いよく切っていく美形のエルフのお兄さん。


「モピットも美味しいけれど、森アリの胡桃のキャラメリゼも最高よ!!」


隣のお店では、オシャレなガラスのビンに胡桃のキャラメリゼを入れて売っているエルフ美女。


「昼食に、キノコとモピットの幼虫シチューはいかが!!」


向かいのレストランでは日替わり定食のモピットの幼虫シチューがイチオシらしい。



そう、虫だ。



エルフ街入り口は見渡す限りむし、ムシ、虫!! 雑貨ですらなんかオシャレな感じのカラフルな虫のクッションやぬいぐるみが並んで、ここぞとばかりに虫を押し出してくるのだ。


忘れていた。

エルフのここぞという時のご馳走が虫だという事を!!




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人物紹介



コリーちゃん(8)

森でヴェア(熊)に襲われている所を雅とリンに救われた少女。


フルート

コリーちゃんのお母さん。息子を亡くし精神を病んでいたが、雅に精神力2アップされて逞しくなりすぎた女性。


ヌードル

コリーちゃんのお父さん。人族の薬師で家族をこよなく愛する男性。腕を怪我していたが、雅に治してもらった。




モピット

全長50センチ程の大きな蝶。幼虫は栄養満点で、生でも食べられるが、揚げ物や体液をシチューにするのが一般的。

エルフ族のここぞという時のご馳走。


森アリ

全長10センチのアリ。お尻から甘い分泌液を出す。

分泌液はエルフ族のここぞという時の甘味。

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