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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第5章

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277.天国と地獄


「ミィ~~ヤァ~~ビィ~~!!」


ルーベンスさんの言葉に固まっていると、地を這うような声が耳に届き、頭をガシッと掴まれた。


「ッ、ろ、ロードサン…」


一瞬凍りつくが、覚悟を決めて振り返る。


これはこれは、第3師団長ではありませんか~。とへらへら下っ端の悪役感丸出しで媚びてみた。


「オメェ俺に内緒で外出たぁどういうこった? あ゛ぁ゛?」


ヤクザーーーー!!


怖すぎる絡みに、ルーベンスさんへ助けを求めるがいつの間にか遠くへ離れており、トモコやショコラはツアー客を連れてすでに転移扉を潜り始めているではないか。


「はいは~い。皆さん2列から3列を作って前に進んで下さ~い」


というトモコの声が聞こえる中、私は(ロード)に捕まって尋問されているのだ。


「さ、サプライズだよ~。ハハハ…」

「ほぅ、全く嬉しくねぇサプライズだなぁ」


ルーベンスさんが優しく見える程、恐ろしいガンつけをしてくる夫から目を逸らす。


「どこ見てんだ。こっち見ろ」


無理です。ガンつけで殺されそうです。


「…ったく。ウチに戻るぞ」


軽々と抱き上げ戻ろうとするロードに、うがぁ!! と暴れるのだがびくともしない。


「嫌だ、嫌だ!! 私はツアーガイドだから行かないといけないの!!」


子供のように駄々をこねる私を、またしても睨みつけてくるロード。それに対してさらにジタバタ暴れる私という図にルーベンスさんが動いた。


「第3師団長、妊婦に心労を与えては危険ではないかね」


ルーベンスさんの言葉にピタリと足を止め、眉間にシワを寄せたロードは彼を睨むようにして見ている。


「あの奔放なミヤビ殿が外出も自由に出来んとなれば、心労がたたり子供に影響が出かねんと思うが、どうかね」

「…チッ」


舌打ちをして、苦虫を噛み潰したような表情をするロードに嘆息するルーベンスさん。

私はそんなルーベンスさんを期待を込めて見つめるのだ。


「分かった。ただし、俺も一緒に行くからな」


ロードが吐き捨てるように言った言葉に、一瞬何を言われたのか理解が追い付かなかったが、ルーベンスさんが頷いて私を見た事でハッとし、勢いよく頷いたのだ。


本当はロード無しで行きたかったが仕方ないだろう。


「ロード!! 早く行こうっ」


最後尾が転移扉を潜った所が見えたので服を引っ張れば、私を見て大きく溜息を吐いたロードは、苦笑いをして頷くと転移扉へと足を進めてくれたのだ。


「ルーベンスさん、行ってきまーす」


手を振り、ロードに抱き上げられたまま転移扉を潜ると、途端に真っ青な空が広がった。


歓声が耳に届き周りを見ると、ツアー客が浮島の美しさに歓声を上げていたのだ。


「あっ ミヤビちゃん!! 凄いねここは!! まるで空を飛んでいるみたいだよ!!」


興奮したトリミーさんが、私に気付いてそう話し掛けてきた。喜んでくれているのが嬉しくて、うんうん頷き微笑むと、トリミーさんの腰を彼女の旦那さんが引き寄せ、私は私でさらにロードに抱き込まれたのだ。


人族の男は本当に独占欲が強い。



「はいはーい、皆様、ここが神の楽園、浮島の一つです」


トモコが注目~っ と手と声を上げる。


「浮島とは文字通り、空に浮かんだ島であり…このように島の端っこに寄ると雲の上にあるという事がわかります」


トモコが説明しながらツアー客を島の端に連れて行って下を覗き込むと、ツアー客が悲鳴や歓声を上げるのだ。


「この絶景を楽しむ為、柵などは一切ございませんが、ここから落ちてしまったらどうなるのか…気になりませんか?」


ニヤリと笑ったトモコは、そう言うと片足をプランと浮島から外へ伸ばしたのだ。

ツアー客からは悲鳴が上がり、皆が真っ青になった所でトモコの身体が空へと傾く。そして…


「キャアァァァァーーーー!!!!」


悲鳴とともにトモコの身体が空へと投げ出された。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




浮島ツアーの20日前、某国。



「キャアァァーーーー!!」

「何なんだこれは!!?」


長閑な村の一角にある畑で、若い男女の悲鳴がこだました。


教会関係者ではなかったが、家族を魔素の枯渇で失い神王の排斥に協力してしまった姉弟である彼らは、教会の消失の混乱に乗じて役人の目の届かない、小さな村へと脱走を図っていた。


上手く逃げおおせたと安心し、こっそり暮らし始めたのだが、突如お互いの顔に“背信者”という文字が浮かんできたのだ。


互いの顔を見た姉弟は叫び声を上げてパニックに陥っていた。




翌日、国から国民に向けてある告示がなされる事となる。


“神王様を排斥した者には、顔に【背信者】という文字が浮かびあがる。それは何をしようと消える事はない。

顔に【背信者】の文字がある者を見つけた者はただちに騎士団へ報告せよ”


それは漏れなく姉弟の居る村にも通達されるのだが、彼等がその事を知るのはマークが出てから1週間も後の事であった。

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