276.ワクワク、ドキドキ! 2泊3日浮島ツアー
「はい!! というわけで、本日より“2泊3日、浮島ツアー”に出発致します。皆様、準備は宜しいでしょうか~!!」
ドンドンパフパフ~という昭和なノリで始まったツアーであるが、50名程の参加者の表情は困惑しまくっていて全くノッてこない。
「えーわたくし、3日間このツアーのガイドを致します、精霊のミヤビと申します!」
「同じく!! ツアーガイドの精霊トモコです!!」
「同じくです~。ドラゴンのショコラです~」
私達の自己紹介を聞いた瞬間、困惑しまくっていた人々が慌てて膝をつき頭を垂れる。
立っているのはトリミーさん夫婦とコリーちゃん一家、そしてリンとルーベンスさんだけだった。
しかしルーベンスさん以外は皆困惑している。
そう。お世話になった人達もツアーに誘ってみたのだ。と言っても、ルーベンスさんは仕事で今回は行けないらしいが。
なのに何故ルーベンスさんがここに居るかというと、集合場所をルマンド王国の王宮前にしたからに他ならない。
冤罪で捕まっていた敬虔な信者がことのほか多く、このツアー、3回に分けて行う事になったのだが、今回は栄えある第1回というわけだ。
「み、ミヤビちゃん? あの、これは一体…旅行に連れて行ってくれるって聞いて来たんだけど…」
恐る恐るトリミーさんが話し掛けてくるが、旦那さんはトリミーさんの腰を抱いたまま固まっている。
さらにリンはお前またかよ…という目を向けてくるのだ。
「ミヤビお姉ちゃん、コリー楽しみにしてたんだよ!! どこに連れてってくれるの?」
唯一コリーちゃんだけがニコニコしているのが救いか。
「今日から2泊3日で浮島に行きたいと思います!! 美しい景色と美しい人々、そして迫力のドラゴン達、さらに様々なアトラクションを体験出来るワクワク、ドキドキな3日間をお楽しみ下さい!!」
「冤罪で捕まった皆様には、心を癒して頂く旅となるでしょう。これは神王様と神々からのお詫びです!! 心よりお楽しみ下さい!!」
「それでは~、この腕輪を付けて下さい~。これは浮島に行く為の特別な腕輪です~。外すと浮島へは行けませんのでご注意下さいね~」
トモコとショコたんの3人で決めたセリフを言い切ると、ショコラが魔石の付いた腕輪を配り始めた。
この腕輪は、所謂ご招待券のようなものであり、これをしている者は転移扉を通れるようになっている。さらに危険な事は回避し、迷子になっても自動的に家族の元へ戻れるよう設定している。家族ごと迷子になった場合は、浮島内の安全な場所へと転移してくれる優れものだ。
そしてこれを見せればエルフ街で買い物も可能である。
腕輪を魔石で創ったレジに読み込ませると支払いが可能で、それぞれの腕輪に予め5万ジットチャージしておいたので好きに買い物を楽しんでほしい。
これでエルフ達のお金の使い方の練習にもなるだろう。
キャッシュレス時代に突入だ。
腕輪の説明と注意事項をトモコとショコラがしている間に私は転移扉を準備する。
皆困惑しているが、コリーちゃんのお陰で何となく和んできているようだ。
「ルーベンスさん、今日は王宮前を集合場所に使わせてもらいありがとうございました」
「ふむ。私も第3回目のツアーには参加するつもりなのでな。ミヤビ殿、妻達も連れて来て良いかね」
「勿論ですよ。あれから色々アトラクションも増えたので、きっと楽しんでもらえますよ!!」
「それは楽しみだ」
ルーベンスさんはいちいち突っ込んでいたら身がもたないと思ったらしく、素直に楽しむつもりでいるらしい。
「ところでミヤビ殿、体調はどうなのかね」
「ああ、万全ですよ~。そもそも私の体には防御魔法や強化魔法がかかりまくってますから、転んでも空から落ちてもぴんぴんしてると思うんですけど、ロードは過保護なんですよね~」
「…子供が出来たのだから男が過保護になるのは仕方ない事だと思うがね」
ロードから子供が出来た事を聞いたのだろう。ルーベンスさんは心配そうに言うのだ。
「もういないとはいえ、私は何度か子を育てた経験もある。今度妻達も連れて来るのだし、不安な事があれば相談しなさい。神獣様にも伝えてあるのでな。心配はいらん」
お、お父さん…っ
「ありがとうございます!!」
「ああ。それと、今回のツアーだが1日が終わったら随時報告しに来なさい」
「え゛」
「各国の民をお預かりしているのだ。何かあってはならないだろう。しっかりと報告はしてもらう」
うげぇという顔をしてしまうが、鋭い瞳で睨まれるものだから頷くしかなかった。
「後、第3師団長には伝えているので羽目を外さんようにな」
はぁぁぁぁ!?




